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94 最終決戦①
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魔龍神王が一歩を踏み出すのと同時に浮遊城の地面がゴゴゴ……と揺れる。
それどころか彼を包む空気すらも震えていた。
まるで空間自体が彼を恐れているかのようである。
「さあて、お手並み拝見と行こうかぁ!!」
「ッ!!」
最初に動いたのは魔龍神王だ。
彼は一瞬にして咲の懐へと潜り込み……。
「あらよっとぉ!」
その長い足を巧みに操り、無数の蹴りを繰り出したのだった。
とは言え咲も無抵抗のまま攻撃を受けるはずもなく、初手の一撃を腕でガードした後に後方へと大きく飛んで攻撃を避けた。
「一撃が……重い……」
たった一撃受け止めただけだと言うのにも関わらず、咲の腕には今なおビリビリとした反動が残っていた。
「おお、避けるねえ。ま、あの曲者揃いの魔将を討ち取ったんだからそう来なくっちゃあ面白くない」
魔龍神王はそれまでの不敵な笑みとは違い、まるで玩具を前にした少年のように楽しそうな笑みを浮かべながらそう言った。
「……今の攻撃、全然本気じゃなかったでしょ」
一方で咲は今の攻撃が明らかに手加減されていたことに気付く。
やろうと思えばメルトライザーの装甲など容易に貫ける程の威力を出せると、今の魔龍神王の攻撃から読み取ったのである。
「あららぁ、わかっちゃった? だって初手でやられちゃったらつまらないからねえ」
「私との戦いはあくまで遊びの範疇ってことね……」
彼の言葉を聞いた咲は目の前にいる存在が規格外の化け物なのだと言うことを改めて認識したのだった。
そして振り払ったはずの恐怖心が再び戻ってきてしまう。
……だが、そうなってしまっても仕方がないだろう。
先程の攻撃もかなりギリギリの所でかろうじて避けることに成功していたのだ。
そもそも魔龍神王が動き出す瞬間は彼女には見えていなかった。常人を凌駕する咲の反射神経と動体視力をもってしてもそれが限界だったのである。
「そりゃあ、ここ数百年間でこの魔龍神王様に敵うものなんていなかったんだから、少しくらいは遊びたいじゃない?」
「そう、それならこれで……どうかな!!」
咲は胸の中心にある水晶から熱線を放つ。
しかし魔然王の本体にも通用しなかったそれが魔龍神王に効くはずもなく、彼は真正面からそれを受け止めてなお全くダメージを負っていないのだった。
「おーあちち……ま、こんなのじゃ火傷にもならないけどね」
彼の言葉通り、熱線が当たっていたはずの場所には火傷どころか僅かな痕すら残っていなかった。
正真正銘の化け物。咲の持つメルトライザーの力でさえ全く歯が立たない圧倒的な存在。
それが魔龍神王という男なのだった。
「やっぱり、やるしかないんだ……」
メルトライザーの攻撃程度では全く通用しないのだと理解した咲はベルトのケースへと手を伸ばす。
こうなった以上、もう彼女に残された手は一つしか無いのである。
「ごめん、桜……。私、戻れないかも」
ケースから全てのリングを取り出した咲はそれをベルトへと装着し、アルティメットカルノライザーへと変身する。
「……気配が変わったねえ。それが君の本気ってやつなのかな?」
「そう、この形態が私の持つ全ての力を使った最強の形態。今までの私と同じだと思わない方がいいよ」
「ハッタリ……って訳でもなさそうだ。こりゃあまた随分と楽しませてくれるじゃないの」
そう言うと魔龍神王は再び地面を蹴り、咲へと肉薄する。
だが彼の攻撃が彼女に当たることはなく……。
「おっとぉ!?」
むしろ咲側が蹴りによる強烈なカウンターをお見舞いしたのだった。
「いやぁ、良い一撃だ。流石のおじさんも、ビビッておしっこちびっちゃいそうだよ」
「……そんな事、一切思って無いくせに」
「あららぁ、バレちゃった?」
咲を煽るようにそう言う魔龍神王だが、その表情と声色は確かに楽しそうであった。
当然だが彼ほどの化け物と戦いあえるような強者がそこら辺にポンポンいるはずもなく、魔龍神王にとって咲は実に数百年ぶりの逸材なのである。
故に彼のテンションがこれでもかと爆上がりしてしまうのも無理も無いことだった。
だが生憎と咲には遊んでいる余裕など無い。
アルティメットカルノライザーに変身していられる時間は五分も無いため、さっさと決着を付けなければ彼女に……いや、人類に勝ち目は無いのである。
「悪いけど、私には時間が無いの。だから、さっさと倒させてもらうよ」
「いいねえ……その殺気! それじゃあ準備運動もこれくらいにして、そろそろ本気で行こうかぁ!!」
「くっ……! でも、これなら食らいつける!!」
魔龍神王はそれまでとは比べようも無い程の速度で空を飛び始めた。
そして咲も間髪入れずに彼を追い始める。
こうして戦闘の舞台は空中へと移ったのだった。
それどころか彼を包む空気すらも震えていた。
まるで空間自体が彼を恐れているかのようである。
「さあて、お手並み拝見と行こうかぁ!!」
「ッ!!」
最初に動いたのは魔龍神王だ。
彼は一瞬にして咲の懐へと潜り込み……。
「あらよっとぉ!」
その長い足を巧みに操り、無数の蹴りを繰り出したのだった。
とは言え咲も無抵抗のまま攻撃を受けるはずもなく、初手の一撃を腕でガードした後に後方へと大きく飛んで攻撃を避けた。
「一撃が……重い……」
たった一撃受け止めただけだと言うのにも関わらず、咲の腕には今なおビリビリとした反動が残っていた。
「おお、避けるねえ。ま、あの曲者揃いの魔将を討ち取ったんだからそう来なくっちゃあ面白くない」
魔龍神王はそれまでの不敵な笑みとは違い、まるで玩具を前にした少年のように楽しそうな笑みを浮かべながらそう言った。
「……今の攻撃、全然本気じゃなかったでしょ」
一方で咲は今の攻撃が明らかに手加減されていたことに気付く。
やろうと思えばメルトライザーの装甲など容易に貫ける程の威力を出せると、今の魔龍神王の攻撃から読み取ったのである。
「あららぁ、わかっちゃった? だって初手でやられちゃったらつまらないからねえ」
「私との戦いはあくまで遊びの範疇ってことね……」
彼の言葉を聞いた咲は目の前にいる存在が規格外の化け物なのだと言うことを改めて認識したのだった。
そして振り払ったはずの恐怖心が再び戻ってきてしまう。
……だが、そうなってしまっても仕方がないだろう。
先程の攻撃もかなりギリギリの所でかろうじて避けることに成功していたのだ。
そもそも魔龍神王が動き出す瞬間は彼女には見えていなかった。常人を凌駕する咲の反射神経と動体視力をもってしてもそれが限界だったのである。
「そりゃあ、ここ数百年間でこの魔龍神王様に敵うものなんていなかったんだから、少しくらいは遊びたいじゃない?」
「そう、それならこれで……どうかな!!」
咲は胸の中心にある水晶から熱線を放つ。
しかし魔然王の本体にも通用しなかったそれが魔龍神王に効くはずもなく、彼は真正面からそれを受け止めてなお全くダメージを負っていないのだった。
「おーあちち……ま、こんなのじゃ火傷にもならないけどね」
彼の言葉通り、熱線が当たっていたはずの場所には火傷どころか僅かな痕すら残っていなかった。
正真正銘の化け物。咲の持つメルトライザーの力でさえ全く歯が立たない圧倒的な存在。
それが魔龍神王という男なのだった。
「やっぱり、やるしかないんだ……」
メルトライザーの攻撃程度では全く通用しないのだと理解した咲はベルトのケースへと手を伸ばす。
こうなった以上、もう彼女に残された手は一つしか無いのである。
「ごめん、桜……。私、戻れないかも」
ケースから全てのリングを取り出した咲はそれをベルトへと装着し、アルティメットカルノライザーへと変身する。
「……気配が変わったねえ。それが君の本気ってやつなのかな?」
「そう、この形態が私の持つ全ての力を使った最強の形態。今までの私と同じだと思わない方がいいよ」
「ハッタリ……って訳でもなさそうだ。こりゃあまた随分と楽しませてくれるじゃないの」
そう言うと魔龍神王は再び地面を蹴り、咲へと肉薄する。
だが彼の攻撃が彼女に当たることはなく……。
「おっとぉ!?」
むしろ咲側が蹴りによる強烈なカウンターをお見舞いしたのだった。
「いやぁ、良い一撃だ。流石のおじさんも、ビビッておしっこちびっちゃいそうだよ」
「……そんな事、一切思って無いくせに」
「あららぁ、バレちゃった?」
咲を煽るようにそう言う魔龍神王だが、その表情と声色は確かに楽しそうであった。
当然だが彼ほどの化け物と戦いあえるような強者がそこら辺にポンポンいるはずもなく、魔龍神王にとって咲は実に数百年ぶりの逸材なのである。
故に彼のテンションがこれでもかと爆上がりしてしまうのも無理も無いことだった。
だが生憎と咲には遊んでいる余裕など無い。
アルティメットカルノライザーに変身していられる時間は五分も無いため、さっさと決着を付けなければ彼女に……いや、人類に勝ち目は無いのである。
「悪いけど、私には時間が無いの。だから、さっさと倒させてもらうよ」
「いいねえ……その殺気! それじゃあ準備運動もこれくらいにして、そろそろ本気で行こうかぁ!!」
「くっ……! でも、これなら食らいつける!!」
魔龍神王はそれまでとは比べようも無い程の速度で空を飛び始めた。
そして咲も間髪入れずに彼を追い始める。
こうして戦闘の舞台は空中へと移ったのだった。
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