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74 罠
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それまで玉座に座っていた国王は盛大に笑いながら檻の前へと歩いて行く。
「まさかこんな簡単に洗脳出来てしまうとはな。ふははっ、罠だとも知らずに褒美目当てに王城へと来るからこうなるんじゃ! じゃがこれで我が国は最強の戦力を手に入れた。召喚した勇者が思ったよりも使えん者ばかりだった時はもう駄目かと思ったものじゃが、案外何とかなるものじゃのう」
「こ、国王様! これで私の妹たちを返していただけるのですよね……?」
洗脳魔法を得意とする魔術師の女性は、いまだ馬鹿笑いを続けている国王に向けてそう尋ねた。
と言うのも、彼女は自分の意思でこのような事をしたかった訳では無いのである。
それは遡ること数か月前。
有力な洗脳魔法の使い手であった彼女は妹を人質にとられ、半ば無理やりに王国直属の魔術師としてその力を彼女の意思に関係なく使わされることとなったのだった。
「あぁ、そう言えばそうじゃったか」
そんな彼女の問いに対して国王はやる気なさそうにそう返す。
「……残念ながらそれは叶わん」
「そんな……!? 約束と違うではありませんか!」
そして彼はそれが不可能であることを述べた後、その口でとんでもない事を語るのだった。
「既に貴様の妹は他の貴族に売ってしまっているのじゃ」
「……え?」
国王によるその返答は予想だにしていないものであったらしく、女性は一瞬理解できずにいた。
しかしそんなことなどお構いなしに国王は続ける。
「仕方のないことじゃった。国を維持するためにも、有力な貴族との友好関係を壊すわけにはいかんのじゃ。彼らはどうしてもあの娘らが欲しいと言って聞かなかったのでな……我は受け入れるしか無かったんじゃ」
決して自分のせいでは無い。あくまで王国の今後のためを思ってのことであると、そう言い訳をするかのように国王は語る。
……だがそれらは全て出鱈目であり、真っ赤な嘘であった。
彼女の妹は貴族に売られた訳ではなかったのである。
そしてその真相は、最悪と言わざるを得ないものだった。
国王は街で好みの女を見つけるたびに食っては捨てるといった行動を繰り返す程、欲に塗れた最悪の権力者なのだ。
そんな彼が年頃の、それもかなり美人であった少女たちに何もせずに放って置けるだろうか?
いや無理だろう。
事実、彼は彼女たちを食ってしまったのである。
抵抗心のあった少女たちは痛みや恐怖で無理やりに言う事を聞かされることも多く、彼女たちにとって捕えられてからの数か月間は地獄の日々となっていたことだろう。
そんなある日のことだ。
少女が一際強く抵抗したその日、国王はついカッとなって少女たちを殺してしまったのだった。
人質として捕えて慰みものにするだけでは飽き足らず、しまいには自分勝手にその命を弄んだのだ。
最悪と言わずして何と言えるだろうか。
当然そのことを魔術師の女性が知ることは無い。
彼女はとっくに亡くなっている妹たちを思い続けたまま今後を生きていくのである。
「嘘……でしょ……?」
「……邪魔じゃ」
「うぐっ……」
現実を受け入れることが出来ずただうわ言のように妹たちの名を呟いている女性を、国王は邪魔だと言って床へと突き飛ばした。
その後、拘束魔法を解くように魔術師たちに合図をするのだった。
「さて、こやつをどうするか。既に洗脳済みの勇者たちと共に軍隊を構えてもよいが……」
国王は一切微動だにしない咲を見ながらそう言う。
「やはりこやつの一番の強みは単体性能の高さじゃろう。ゆえに今すぐにでも敵国に送り込みたい所ではある。しかし……」
そう言うと今度は地面に倒れている女性の方を見た。
「洗脳魔法の使い手がこの有様ではしばらく命令を与えることも出来んな」
洗脳状態の相手に命令を与えられるのは術者のみなのだ。
そのため、彼女がまともな精神を取り戻すまでは彼は咲に対して何をさせることも出来ないのである。
仕方がないと、国王がもう一度咲の方を見たその時だった。
「国王陛下! 御下がりください!」
突如、騎士の叫び声が部屋内に響き渡る。
「それで、勇者が洗脳済みって……どういうことかな?」
「……ッ!?」
そして振り返った国王の目の前には、洗脳状態であるはずの咲がどういう訳かピンピンした様子で立っていたのだった。
「まさかこんな簡単に洗脳出来てしまうとはな。ふははっ、罠だとも知らずに褒美目当てに王城へと来るからこうなるんじゃ! じゃがこれで我が国は最強の戦力を手に入れた。召喚した勇者が思ったよりも使えん者ばかりだった時はもう駄目かと思ったものじゃが、案外何とかなるものじゃのう」
「こ、国王様! これで私の妹たちを返していただけるのですよね……?」
洗脳魔法を得意とする魔術師の女性は、いまだ馬鹿笑いを続けている国王に向けてそう尋ねた。
と言うのも、彼女は自分の意思でこのような事をしたかった訳では無いのである。
それは遡ること数か月前。
有力な洗脳魔法の使い手であった彼女は妹を人質にとられ、半ば無理やりに王国直属の魔術師としてその力を彼女の意思に関係なく使わされることとなったのだった。
「あぁ、そう言えばそうじゃったか」
そんな彼女の問いに対して国王はやる気なさそうにそう返す。
「……残念ながらそれは叶わん」
「そんな……!? 約束と違うではありませんか!」
そして彼はそれが不可能であることを述べた後、その口でとんでもない事を語るのだった。
「既に貴様の妹は他の貴族に売ってしまっているのじゃ」
「……え?」
国王によるその返答は予想だにしていないものであったらしく、女性は一瞬理解できずにいた。
しかしそんなことなどお構いなしに国王は続ける。
「仕方のないことじゃった。国を維持するためにも、有力な貴族との友好関係を壊すわけにはいかんのじゃ。彼らはどうしてもあの娘らが欲しいと言って聞かなかったのでな……我は受け入れるしか無かったんじゃ」
決して自分のせいでは無い。あくまで王国の今後のためを思ってのことであると、そう言い訳をするかのように国王は語る。
……だがそれらは全て出鱈目であり、真っ赤な嘘であった。
彼女の妹は貴族に売られた訳ではなかったのである。
そしてその真相は、最悪と言わざるを得ないものだった。
国王は街で好みの女を見つけるたびに食っては捨てるといった行動を繰り返す程、欲に塗れた最悪の権力者なのだ。
そんな彼が年頃の、それもかなり美人であった少女たちに何もせずに放って置けるだろうか?
いや無理だろう。
事実、彼は彼女たちを食ってしまったのである。
抵抗心のあった少女たちは痛みや恐怖で無理やりに言う事を聞かされることも多く、彼女たちにとって捕えられてからの数か月間は地獄の日々となっていたことだろう。
そんなある日のことだ。
少女が一際強く抵抗したその日、国王はついカッとなって少女たちを殺してしまったのだった。
人質として捕えて慰みものにするだけでは飽き足らず、しまいには自分勝手にその命を弄んだのだ。
最悪と言わずして何と言えるだろうか。
当然そのことを魔術師の女性が知ることは無い。
彼女はとっくに亡くなっている妹たちを思い続けたまま今後を生きていくのである。
「嘘……でしょ……?」
「……邪魔じゃ」
「うぐっ……」
現実を受け入れることが出来ずただうわ言のように妹たちの名を呟いている女性を、国王は邪魔だと言って床へと突き飛ばした。
その後、拘束魔法を解くように魔術師たちに合図をするのだった。
「さて、こやつをどうするか。既に洗脳済みの勇者たちと共に軍隊を構えてもよいが……」
国王は一切微動だにしない咲を見ながらそう言う。
「やはりこやつの一番の強みは単体性能の高さじゃろう。ゆえに今すぐにでも敵国に送り込みたい所ではある。しかし……」
そう言うと今度は地面に倒れている女性の方を見た。
「洗脳魔法の使い手がこの有様ではしばらく命令を与えることも出来んな」
洗脳状態の相手に命令を与えられるのは術者のみなのだ。
そのため、彼女がまともな精神を取り戻すまでは彼は咲に対して何をさせることも出来ないのである。
仕方がないと、国王がもう一度咲の方を見たその時だった。
「国王陛下! 御下がりください!」
突如、騎士の叫び声が部屋内に響き渡る。
「それで、勇者が洗脳済みって……どういうことかな?」
「……ッ!?」
そして振り返った国王の目の前には、洗脳状態であるはずの咲がどういう訳かピンピンした様子で立っていたのだった。
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