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56 心眼スキル
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どういう訳かメンシスはローブで顔を隠しているはずの咲のことを指名手配中の少女であると見抜いたのだった。
「……人違いでは?」
突然のことに一瞬動揺した咲だったが、すぐにそう言ってごまかす。
「いや、私には見えているんだ。嘘をついても意味はないよ。うーん、そうだね……ここだと都合が悪いから、私についてきてくれないかい?」
「……」
そう言ってギルドを出て行くメンシスとソリスに咲は黙ってついて行く。
「あ、まって……!」
そんな咲に桜も付いて行く。
このまま彼女たちについて行って良いものかと咲は思っていたが、少なくとも彼女が自身の正体を見抜いた方法を知らなければならないのもまた事実だった。
そもそもの話として、咲一人だけならともかく桜を抱えた状態で超位冒険者二人から逃げ切れるかもわからないのだ。
この選択が一番無難であり安牌であることは確かであった。
「さあて、この辺りなら問題ないかな」
ギルドから離れ、人気のない裏路地まで来るとメンシスはそう言って立ち止まったのだった。
途中までついてきていた冒険者たちもメンシスとソリスによる巧妙なかく乱によって完全に撒かれていた。
「じゃあ改めて……君、指名手配の子だよね?」
「……先程も言いましたけど、人違いではありませんか?」
「なら、その顔を見せてもらおうかな」
メンシスは不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
それに対し、咲は今すぐにでも彼女の一撃を入れて退散出来るように身構えていた。
「はぁ……姉さんったら」
その時、それまで一言も発さなかったソリスがこれ以上は我慢できないと言った様子で口を開いたのだった。
「メンシスがごめんなさいね。私たちはあなた方の敵では無いのです。……と言っても、突然そう言われていきなり信じるのは難しいかもしれませんが」
「おいおい、せっかく面白くなってきた所だったのに」
謝罪と共に自分たちは敵では無いと話すソリス。
そんな彼女に向けてメンシスは先程の不敵な笑みはどこへやら、残念そうな顔をしたままそう言った。
「……だとしても、どうして私が指名手配中の少女だとわかったんですか?」
しかし咲は変わらず警戒を解く様子は無く、何故自分の正体が分かったのかを尋ねる。
「「それは私たちが『心眼』スキルを所持しているから(だね)です」」
流石は双子の姉妹と言った所だろうか。
その問いに対し、二人は息ぴったりでそう返した。
「心眼スキル?」
「そうですね……私たちを信用してもらうためにもスキルについて教えます。心眼スキルは鎧などの装備を貫通して相手の姿を見たり、弱点を透視出来るようになるスキルなのです」
「なるほど、それで私の顔をローブ越しに見たと……」
ソリスによる説明を聞き、咲は彼女らが自身の正体を見抜いた方法を理解したようだった。
「おまけに心眼スキルは対象の嘘を看破出来るんだ。嘘をついても意味が無いと言ったのはそのためだよ」
そこに続けてメンシスがそう補足をした。
もはや言うまでも無いだろうが、彼女らが説明したように心眼スキルと言うのはとてつもなく強力なスキルなのである。
特に弱点の透視は強大な魔物と戦う際に重宝するものであり、二人の持つ桁外れな戦闘能力と心眼スキルの合わせ技が彼女らを超位冒険者にまで押し上げたのだ。
「で、嘘を言っているかどうかがわかるってことはだよ。……国王が嘘を言っていることも、知ってるんだよねぇ私たち」
「ええ、色々と事情があり公には出来ませんがね」
また心眼スキルは嘘を見抜ける能力も持っていた。
これは知能が低い魔物に対してはほとんど効果が無いが、思考を持ち相手を騙そうとする人族相手となれば話は別である。
国王の演説で咲の指名手配の話が出たその瞬間から、二人は彼が嘘を言っていることに気付いていたのだった。
「それじゃあわざわざ私に声をかけてきたのは……」
「君を保護するためさ。いくら外れ勇者だからと言っても、指名手配は流石にやり過ぎでしょ。なにより勝手に呼び出しておいてスキルが使えなかったから放棄って、ちょっと許せないと思うんだよ私は」
そう言うメンシスの表情は怒りに満ちていた。
まるで自分も似たような経験をしたことがあると言わんばかりの様子だ。
「姉さん……」
そんな彼女をソリスは心配そうな目で見つめる。
「……ごめん、ちょっと昔の事を思い出しちゃってね。……にしても笑っちゃうよ。国王自身君のことを外れ勇者って言っていたのに、魔物に有力な勇者を襲わせた反逆者ってさ。中々に言ってる事が矛盾していると思うんだけど、本人は気付いていないのかねぇ」
自分を心配そうに見ているソリスに気付いたのか、メンシスは元の様子に戻るとそう言いながら国王を笑うのだった。
半分はソリスを心配させまいと思っての行動であり、もう半分は単純に国王を笑いたかっただけだろう。
それでもそんな彼女の様子を見て、ソリスは少し安心したのか胸をなでおろしていた。
「さて、立ち話もあれですし、ここにずっといるのも危険かもしれませんからね。是非、私たちの屋敷に来てください。あそこなら安全なはずです」
そしてすぐさま本題へと入る。
元々彼女らが咲にコンタクトを取ったのは彼女を保護するためなのだ。
「良いんですか?」
「構いませんよ。それに二人で暮らすには大きすぎるくらいですから。部屋もいくつか余っていますし」
「それじゃあ……」
咲は桜に目配せをする。
それに気付いた桜はコクリと頷いた。
「それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
桜の了承がとれた咲はそう言う。
どちらにしろこのまま街の中を移動し続けるのもリスクがあり、素性を明かせない以上は宿屋に泊るのも難しい状況だった。
そのため、ソリスのその提案は二人にとって願っても無いものであったのだ。
「では案内しますね」
ソリスはそう言うとメンシスと共に二人の前を歩き始める。
こうして二人は金銀姉妹の屋敷へ向かうことになったのだった。
「……人違いでは?」
突然のことに一瞬動揺した咲だったが、すぐにそう言ってごまかす。
「いや、私には見えているんだ。嘘をついても意味はないよ。うーん、そうだね……ここだと都合が悪いから、私についてきてくれないかい?」
「……」
そう言ってギルドを出て行くメンシスとソリスに咲は黙ってついて行く。
「あ、まって……!」
そんな咲に桜も付いて行く。
このまま彼女たちについて行って良いものかと咲は思っていたが、少なくとも彼女が自身の正体を見抜いた方法を知らなければならないのもまた事実だった。
そもそもの話として、咲一人だけならともかく桜を抱えた状態で超位冒険者二人から逃げ切れるかもわからないのだ。
この選択が一番無難であり安牌であることは確かであった。
「さあて、この辺りなら問題ないかな」
ギルドから離れ、人気のない裏路地まで来るとメンシスはそう言って立ち止まったのだった。
途中までついてきていた冒険者たちもメンシスとソリスによる巧妙なかく乱によって完全に撒かれていた。
「じゃあ改めて……君、指名手配の子だよね?」
「……先程も言いましたけど、人違いではありませんか?」
「なら、その顔を見せてもらおうかな」
メンシスは不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
それに対し、咲は今すぐにでも彼女の一撃を入れて退散出来るように身構えていた。
「はぁ……姉さんったら」
その時、それまで一言も発さなかったソリスがこれ以上は我慢できないと言った様子で口を開いたのだった。
「メンシスがごめんなさいね。私たちはあなた方の敵では無いのです。……と言っても、突然そう言われていきなり信じるのは難しいかもしれませんが」
「おいおい、せっかく面白くなってきた所だったのに」
謝罪と共に自分たちは敵では無いと話すソリス。
そんな彼女に向けてメンシスは先程の不敵な笑みはどこへやら、残念そうな顔をしたままそう言った。
「……だとしても、どうして私が指名手配中の少女だとわかったんですか?」
しかし咲は変わらず警戒を解く様子は無く、何故自分の正体が分かったのかを尋ねる。
「「それは私たちが『心眼』スキルを所持しているから(だね)です」」
流石は双子の姉妹と言った所だろうか。
その問いに対し、二人は息ぴったりでそう返した。
「心眼スキル?」
「そうですね……私たちを信用してもらうためにもスキルについて教えます。心眼スキルは鎧などの装備を貫通して相手の姿を見たり、弱点を透視出来るようになるスキルなのです」
「なるほど、それで私の顔をローブ越しに見たと……」
ソリスによる説明を聞き、咲は彼女らが自身の正体を見抜いた方法を理解したようだった。
「おまけに心眼スキルは対象の嘘を看破出来るんだ。嘘をついても意味が無いと言ったのはそのためだよ」
そこに続けてメンシスがそう補足をした。
もはや言うまでも無いだろうが、彼女らが説明したように心眼スキルと言うのはとてつもなく強力なスキルなのである。
特に弱点の透視は強大な魔物と戦う際に重宝するものであり、二人の持つ桁外れな戦闘能力と心眼スキルの合わせ技が彼女らを超位冒険者にまで押し上げたのだ。
「で、嘘を言っているかどうかがわかるってことはだよ。……国王が嘘を言っていることも、知ってるんだよねぇ私たち」
「ええ、色々と事情があり公には出来ませんがね」
また心眼スキルは嘘を見抜ける能力も持っていた。
これは知能が低い魔物に対してはほとんど効果が無いが、思考を持ち相手を騙そうとする人族相手となれば話は別である。
国王の演説で咲の指名手配の話が出たその瞬間から、二人は彼が嘘を言っていることに気付いていたのだった。
「それじゃあわざわざ私に声をかけてきたのは……」
「君を保護するためさ。いくら外れ勇者だからと言っても、指名手配は流石にやり過ぎでしょ。なにより勝手に呼び出しておいてスキルが使えなかったから放棄って、ちょっと許せないと思うんだよ私は」
そう言うメンシスの表情は怒りに満ちていた。
まるで自分も似たような経験をしたことがあると言わんばかりの様子だ。
「姉さん……」
そんな彼女をソリスは心配そうな目で見つめる。
「……ごめん、ちょっと昔の事を思い出しちゃってね。……にしても笑っちゃうよ。国王自身君のことを外れ勇者って言っていたのに、魔物に有力な勇者を襲わせた反逆者ってさ。中々に言ってる事が矛盾していると思うんだけど、本人は気付いていないのかねぇ」
自分を心配そうに見ているソリスに気付いたのか、メンシスは元の様子に戻るとそう言いながら国王を笑うのだった。
半分はソリスを心配させまいと思っての行動であり、もう半分は単純に国王を笑いたかっただけだろう。
それでもそんな彼女の様子を見て、ソリスは少し安心したのか胸をなでおろしていた。
「さて、立ち話もあれですし、ここにずっといるのも危険かもしれませんからね。是非、私たちの屋敷に来てください。あそこなら安全なはずです」
そしてすぐさま本題へと入る。
元々彼女らが咲にコンタクトを取ったのは彼女を保護するためなのだ。
「良いんですか?」
「構いませんよ。それに二人で暮らすには大きすぎるくらいですから。部屋もいくつか余っていますし」
「それじゃあ……」
咲は桜に目配せをする。
それに気付いた桜はコクリと頷いた。
「それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
桜の了承がとれた咲はそう言う。
どちらにしろこのまま街の中を移動し続けるのもリスクがあり、素性を明かせない以上は宿屋に泊るのも難しい状況だった。
そのため、ソリスのその提案は二人にとって願っても無いものであったのだ。
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