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52 出発、からの襲撃
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咲が護衛を引き受けた行商人の馬車隊は予定通りフェーレニアを出発した。
それから少し経った頃だろうか。木々に挟まれた街道を進んでいる途中で、咲はいくつもの敵意を感じとっていた。
「止まってください」
「……うん? 一体、どうしたと言うんだ」
咲の突然のその言葉に、先頭の馬車に乗っていた行商人は首をかしげる。
その時であった。
「ヒャッハー!」
甲高い叫び声と共に大量の盗賊が馬車を取り囲んだのだった。
この馬車隊には高価な貴金属を積んでいる馬車もあり、盗賊にとってこれ以上に無い程のカモだったのである。
「なんだコイツらは!?」
「さあ、積み荷を全部おいて行ってもらおうか。そうすりゃ命まではとらねえよ」
「そんなこと、出来る訳がないだろう……!」
襲撃してきた盗賊の要求を断固拒否する行商人。
それを見た盗賊のリーダーと思わしき男が前へ出る。
「おいおい、自分の立場がわかってねえようだなぁ。こっちにはそうだなぁ……ざっと二十人はいるんだぜ? 行商人が数人だけで何が出来るってんだ」
「サキと言ったか!? 頼む、わしらを助けてくれ!!」
「ご安心ください、元よりそのつもりです」
行商人に頼まれるまでも無く、咲は馬車から飛び降りて盗賊リーダーの前に降り立った。
「おお、なんだなんだ? ……ぷっ、笑わせてくれるなぁおい。護衛はたったの女一人ときた。それも相当な上玉だぜこいつは。奴隷にして貴族にでも売りつければ相当儲かりそうだなぁ」
下品な笑みを浮かべながら咲の全身をジロジロと見た盗賊リーダーは最後に彼女の豊満な胸へと視線を移す。
「いやぁ……やっぱこいつは俺のモンにしちまってもいいかもな。壊れるまで遊びつくしてやるよぉ」
「ちょ、ずるいっすよリーダー!」
「そうっす! 俺たちにも使わせてくださいって!」
盗賊リーダーに続いて取り巻きたちも咲の体を嘗め回すように見ながらそう言った。
「……言いたいことはそれだけ? じゃあ……変身」
そんな盗賊たちに軽蔑の視線を向けながら、咲はいつの間にやら呼び出していたベルトでカルノライザーへと変身する。
「な、なんだ!? 急に鎧を……いや、どんな装備を着ようが女一人であることに変わりはねえ! お前らやっちまえ!! いいか、絶対に殺すんじゃねえ……ぞ?」
子分をけしかけた盗賊リーダーは最後まで言い終える前に、その表情をまるで豆鉄砲をくらった鳩のようなそれに変えていた。
「これで終わり?」
「う、嘘だろ……俺らは最低でもレベル40、下位冒険者程度は余裕でぶち殺せるはずなんだぞ……! なのに、なんで一瞬でやられてんだよ!?」
無理も無い。たった数秒の内に二十人はいたであろう盗賊たちが全員無力化されてしまったのだ。
「レベル40……か。そう言えば私は今どうなんだろう」
レベルの話が出たことで自身のレベルがどうなっているのか気になった咲は鑑定スキルで確認する。
「あれ、342だ……あの時よりも上がってる?」
「さ、342ィ!?」
咲は鳥人遺跡で確認した時よりもかなりレベルが上がっていることに驚いていた。
魔獣を倒したことでレベルが上がっていたのだ。
だがそれ以上に盗賊リーダーの方がそのレベルを聞いて驚愕していた。
なにしろこの世界では100レベルを超えれば英雄として語り継がれる程なのだ。
それを遥かに凌駕する342レベルなど、到底信じられるはずが無いものだった。
「あ、ああそうかハッタリだな! レベルで自分の実力が知られたら困るもんなぁ!?」
「別にそう言う訳じゃないけど……どちらにしろ、アンタじゃ私には勝てないでしょ?」
「ば、馬鹿にしやがって……!! いいぜ後悔させてやる!」
盗賊リーダーは咲に向かって走り出す。
だが……。
「ぁ……?」
一瞬にして彼の体は宙を舞っていたのだった。
「何が、起こって……くそっ、もう一度!」
「何度やっても同じだからさ。もう降参してくれない?」
咲は何度も何度も向かって来る盗賊リーダーに、何度も何度も足払いするのだった。
しかし割と温厚な咲と言えどだんだんとむかついてきていたようで、とうとう彼女は彼の首にチョップをくらわせた。
「いい加減……諦めて!」
「ギュミッ」
その瞬間、盗賊リーダーはおおよそ人が出していい音では無いものを口から出し、その場にドサッと倒れ込んだ。
「お、おお……! 流石は超位冒険者だ。あの数の盗賊をあっという間に倒してしまうなんて」
「いえいえ。この程度、大した相手じゃないですよ」
「はっはっは! そう謙遜なさんな。うむ、誠に頼もしいものだ。この分なら予定よりも早くアルタリアに着きそうだな」
行商人はそう言いながら咲の肩をバシバシと叩く。
なお、カルノライザーの装甲が思いのほか堅かったためか彼はしばらくヒリヒリとした手の痛みに耐えることとなった。
その後、行商人は一度フェーレニアに戻り、捕まえた盗賊たちを兵士へと引き渡したのだった。
そしてその謝礼金のほとんどは咲に渡されることとなり、予想外の臨時収入が咲の懐を潤わすこととなった。
それから少し経った頃だろうか。木々に挟まれた街道を進んでいる途中で、咲はいくつもの敵意を感じとっていた。
「止まってください」
「……うん? 一体、どうしたと言うんだ」
咲の突然のその言葉に、先頭の馬車に乗っていた行商人は首をかしげる。
その時であった。
「ヒャッハー!」
甲高い叫び声と共に大量の盗賊が馬車を取り囲んだのだった。
この馬車隊には高価な貴金属を積んでいる馬車もあり、盗賊にとってこれ以上に無い程のカモだったのである。
「なんだコイツらは!?」
「さあ、積み荷を全部おいて行ってもらおうか。そうすりゃ命まではとらねえよ」
「そんなこと、出来る訳がないだろう……!」
襲撃してきた盗賊の要求を断固拒否する行商人。
それを見た盗賊のリーダーと思わしき男が前へ出る。
「おいおい、自分の立場がわかってねえようだなぁ。こっちにはそうだなぁ……ざっと二十人はいるんだぜ? 行商人が数人だけで何が出来るってんだ」
「サキと言ったか!? 頼む、わしらを助けてくれ!!」
「ご安心ください、元よりそのつもりです」
行商人に頼まれるまでも無く、咲は馬車から飛び降りて盗賊リーダーの前に降り立った。
「おお、なんだなんだ? ……ぷっ、笑わせてくれるなぁおい。護衛はたったの女一人ときた。それも相当な上玉だぜこいつは。奴隷にして貴族にでも売りつければ相当儲かりそうだなぁ」
下品な笑みを浮かべながら咲の全身をジロジロと見た盗賊リーダーは最後に彼女の豊満な胸へと視線を移す。
「いやぁ……やっぱこいつは俺のモンにしちまってもいいかもな。壊れるまで遊びつくしてやるよぉ」
「ちょ、ずるいっすよリーダー!」
「そうっす! 俺たちにも使わせてくださいって!」
盗賊リーダーに続いて取り巻きたちも咲の体を嘗め回すように見ながらそう言った。
「……言いたいことはそれだけ? じゃあ……変身」
そんな盗賊たちに軽蔑の視線を向けながら、咲はいつの間にやら呼び出していたベルトでカルノライザーへと変身する。
「な、なんだ!? 急に鎧を……いや、どんな装備を着ようが女一人であることに変わりはねえ! お前らやっちまえ!! いいか、絶対に殺すんじゃねえ……ぞ?」
子分をけしかけた盗賊リーダーは最後まで言い終える前に、その表情をまるで豆鉄砲をくらった鳩のようなそれに変えていた。
「これで終わり?」
「う、嘘だろ……俺らは最低でもレベル40、下位冒険者程度は余裕でぶち殺せるはずなんだぞ……! なのに、なんで一瞬でやられてんだよ!?」
無理も無い。たった数秒の内に二十人はいたであろう盗賊たちが全員無力化されてしまったのだ。
「レベル40……か。そう言えば私は今どうなんだろう」
レベルの話が出たことで自身のレベルがどうなっているのか気になった咲は鑑定スキルで確認する。
「あれ、342だ……あの時よりも上がってる?」
「さ、342ィ!?」
咲は鳥人遺跡で確認した時よりもかなりレベルが上がっていることに驚いていた。
魔獣を倒したことでレベルが上がっていたのだ。
だがそれ以上に盗賊リーダーの方がそのレベルを聞いて驚愕していた。
なにしろこの世界では100レベルを超えれば英雄として語り継がれる程なのだ。
それを遥かに凌駕する342レベルなど、到底信じられるはずが無いものだった。
「あ、ああそうかハッタリだな! レベルで自分の実力が知られたら困るもんなぁ!?」
「別にそう言う訳じゃないけど……どちらにしろ、アンタじゃ私には勝てないでしょ?」
「ば、馬鹿にしやがって……!! いいぜ後悔させてやる!」
盗賊リーダーは咲に向かって走り出す。
だが……。
「ぁ……?」
一瞬にして彼の体は宙を舞っていたのだった。
「何が、起こって……くそっ、もう一度!」
「何度やっても同じだからさ。もう降参してくれない?」
咲は何度も何度も向かって来る盗賊リーダーに、何度も何度も足払いするのだった。
しかし割と温厚な咲と言えどだんだんとむかついてきていたようで、とうとう彼女は彼の首にチョップをくらわせた。
「いい加減……諦めて!」
「ギュミッ」
その瞬間、盗賊リーダーはおおよそ人が出していい音では無いものを口から出し、その場にドサッと倒れ込んだ。
「お、おお……! 流石は超位冒険者だ。あの数の盗賊をあっという間に倒してしまうなんて」
「いえいえ。この程度、大した相手じゃないですよ」
「はっはっは! そう謙遜なさんな。うむ、誠に頼もしいものだ。この分なら予定よりも早くアルタリアに着きそうだな」
行商人はそう言いながら咲の肩をバシバシと叩く。
なお、カルノライザーの装甲が思いのほか堅かったためか彼はしばらくヒリヒリとした手の痛みに耐えることとなった。
その後、行商人は一度フェーレニアに戻り、捕まえた盗賊たちを兵士へと引き渡したのだった。
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