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39 次期当主にして上位冒険者のダニエル
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咲とダニエルが互いに殺気を放ち始める。
それに浴びせられた観客はそれまでの騒ぎはどこへやら。固唾をのんで二人の様子を見るのだった。
「勝利条件は相手が死ぬ、もしくは降参した場合のみ! どれほどの怪我を負おうが、決闘が終了するまで我々は関与しないこととする! それでは……始めぃ!!」
「さあ、始めようじゃないか。決闘……いや、蹂躙を!!」
決闘開始の合図と共にダニエルがそう言って一歩踏み出した。
「死ぬか降参とは言ったものの、残念だが降参する間もなく死んでしまうだろう。何故なら、私は上位冒険者の中でもトップクラスに実力のある魔術師なのだからね!」
ダニエルはそう叫ぶと同時に腰に差していた杖を抜き、咲へと向けて構える。
その後、詠唱を開始したのだった。
「世界を焦がす数多の業火よ。我の導きに答え、全てを焼き尽くせ……!」
「お、おい……あれ上級魔法の『マイクロエクスプロージョン』じゃねえか? くそっダニエルのやつ、この辺り一帯を吹き飛ばすつもりかよ……!?」
観客の一人である魔術師がそう言った通り、ダニエルが詠唱していた魔法は上級魔法であるマイクロエクスプロージョンというものだった。
この魔法は指定した範囲内に小さな爆発を無数に発生させるものであり、そんな物をこの闘技場内で使えば観客が巻き込まれるどころかこの闘技場が崩壊してしまうだろう。
「マイクロエクスプロージョン!!」
しかしダニエルは詠唱を止めることなく魔法を発動させた。
彼が構えている杖の先端が光り、そこから無数の炎の弾が発射される。
だがその炎はものの見事に咲の元にだけ向かっていき、彼女の周りだけを奇麗に爆発させたのだった。
結局のところ、いくらあのダニエルであっても流石に何の考えも無しにそのようなとんでもない魔法を使ったりはしなかったのである。
「どうだ私のマイクロエクスプロージョンは。範囲を極限まで狭めることでその威力を向上させているんだ。いくら貴様が頑丈とは言え、流石にこの爆発を受けて無傷ということはあるまい」
ダニエルは余裕に満ちた表情を浮かべ、爆炎の中にいるであろう咲にそう言った。
実際その威力は凄まじく、並みの魔物であれば一撃で死滅してしまうだろう。それほどの威力の爆発だった。
とは言え、本来マイクロエクスプロージョンはこれほどの威力がある魔法ではない。
爆発を起こせる範囲こそ広いものの、その威力はせいぜい大岩を砕けるくらいである。
そのためワイバーンなどの上位の魔物に対してはかすり傷を負わせられれば儲けものくらいの感覚であり、中々火力面で難のある魔法であった。
だが今回は違う。何しろダニエルには高い魔法の才があるのだ。
生まれ持った高い魔力と精密な魔力操作が出来る彼にかかれば、そんな低威力広範囲の魔法を高威力にまで押し上げることが可能だった。
さらには先程ダニエルが自分で言ったように、彼は次期当主としての格を見せつけるために上位冒険者にまで上り詰めているのだ。
才だけではなく、洗練された経験も積んでいる……そんな彼が放ったからこそ、マイクロエクスプロージョンがこれほどの威力になったのである。
「まさか、これで終わりとは言わないよな? 私にはまだまだ試したい魔法があるのだ。この程度で死なれては困……っ!?」
「中々良い爆発だったね。大したダメージにはならなかったけどさ」
そんなとんでもない魔法をお披露目し、上機嫌となったダニエル。
しかし彼の顔は一瞬にして驚愕のそれへと移り変わっていった。
何故なら煙が晴れた後、そこにはあれだけの爆発を真正面から受けたにも関わらずほぼ無傷の状態の咲が立っていたのだ。
「嘘だ、そんなはずは……! いやそうか、何か裏があるのだな! きっと爆発魔法への耐性を得られるマジックアイテムか何かが……ならばこれならどうだ!!」
咲が何かしらの方法でマイクロエクスプロージョンを退けたのだろうと思ったダニエルはすぐさま次の魔法の準備を始めた。
「サウザンドウェーブ!!」
そしてダニエルが魔法を発動させたその瞬間、今度は杖の先端から大量の水があふれ出すのだった。
彼が発動させたサウザンドウェーブと言う魔法は、生み出した大量の水で大波を作り攻撃するといったものである。
これもまた上級魔法であり、習得すること自体がまず困難であった。
さらにはそんな高レベルの魔法すら彼は卓越した魔力制御によって高威力化することに成功していた。
先程のマイクロエクスプロージョンと同じように、波の範囲を狭めて威力を上昇させているのだ。
凡人がやろうとすればあっという間に魔力切れを起こしてしまうだろうその制御を、彼は難なく行うのだった。
「これでどうだ……流石に二つの属性を完全には対策出来まい」
ダニエルは今度こそやっただろうと言った様子でそう言う。
と言うのも、基本的にはこの世界において魔法は適性のある一属性しか使えないものなのだ。
そのため魔法への耐性を持つマジックアイテムも一つの属性に特化してあるものがほとんどだった。
それ以上となれば作るのが難しい上に、そもそも二属性以上の使い手自体がほとんどいないため無意味に値段だけが上がってしまうのである。
だが『基本的に』とあるように、もちろん例外はある。
ダニエルがその一人であり、彼は炎・水・風・土の四属性が使えるのだ。
故に、複数属性が使える彼は耐性を持つマジックアイテムに特効を持つと言える。
「……な、なんだと!?」
そんな彼ではあるが、再びその顔は驚愕のそれへと変わっていた。
またもや咲が無傷のままのその姿を見せたのだ。
それに浴びせられた観客はそれまでの騒ぎはどこへやら。固唾をのんで二人の様子を見るのだった。
「勝利条件は相手が死ぬ、もしくは降参した場合のみ! どれほどの怪我を負おうが、決闘が終了するまで我々は関与しないこととする! それでは……始めぃ!!」
「さあ、始めようじゃないか。決闘……いや、蹂躙を!!」
決闘開始の合図と共にダニエルがそう言って一歩踏み出した。
「死ぬか降参とは言ったものの、残念だが降参する間もなく死んでしまうだろう。何故なら、私は上位冒険者の中でもトップクラスに実力のある魔術師なのだからね!」
ダニエルはそう叫ぶと同時に腰に差していた杖を抜き、咲へと向けて構える。
その後、詠唱を開始したのだった。
「世界を焦がす数多の業火よ。我の導きに答え、全てを焼き尽くせ……!」
「お、おい……あれ上級魔法の『マイクロエクスプロージョン』じゃねえか? くそっダニエルのやつ、この辺り一帯を吹き飛ばすつもりかよ……!?」
観客の一人である魔術師がそう言った通り、ダニエルが詠唱していた魔法は上級魔法であるマイクロエクスプロージョンというものだった。
この魔法は指定した範囲内に小さな爆発を無数に発生させるものであり、そんな物をこの闘技場内で使えば観客が巻き込まれるどころかこの闘技場が崩壊してしまうだろう。
「マイクロエクスプロージョン!!」
しかしダニエルは詠唱を止めることなく魔法を発動させた。
彼が構えている杖の先端が光り、そこから無数の炎の弾が発射される。
だがその炎はものの見事に咲の元にだけ向かっていき、彼女の周りだけを奇麗に爆発させたのだった。
結局のところ、いくらあのダニエルであっても流石に何の考えも無しにそのようなとんでもない魔法を使ったりはしなかったのである。
「どうだ私のマイクロエクスプロージョンは。範囲を極限まで狭めることでその威力を向上させているんだ。いくら貴様が頑丈とは言え、流石にこの爆発を受けて無傷ということはあるまい」
ダニエルは余裕に満ちた表情を浮かべ、爆炎の中にいるであろう咲にそう言った。
実際その威力は凄まじく、並みの魔物であれば一撃で死滅してしまうだろう。それほどの威力の爆発だった。
とは言え、本来マイクロエクスプロージョンはこれほどの威力がある魔法ではない。
爆発を起こせる範囲こそ広いものの、その威力はせいぜい大岩を砕けるくらいである。
そのためワイバーンなどの上位の魔物に対してはかすり傷を負わせられれば儲けものくらいの感覚であり、中々火力面で難のある魔法であった。
だが今回は違う。何しろダニエルには高い魔法の才があるのだ。
生まれ持った高い魔力と精密な魔力操作が出来る彼にかかれば、そんな低威力広範囲の魔法を高威力にまで押し上げることが可能だった。
さらには先程ダニエルが自分で言ったように、彼は次期当主としての格を見せつけるために上位冒険者にまで上り詰めているのだ。
才だけではなく、洗練された経験も積んでいる……そんな彼が放ったからこそ、マイクロエクスプロージョンがこれほどの威力になったのである。
「まさか、これで終わりとは言わないよな? 私にはまだまだ試したい魔法があるのだ。この程度で死なれては困……っ!?」
「中々良い爆発だったね。大したダメージにはならなかったけどさ」
そんなとんでもない魔法をお披露目し、上機嫌となったダニエル。
しかし彼の顔は一瞬にして驚愕のそれへと移り変わっていった。
何故なら煙が晴れた後、そこにはあれだけの爆発を真正面から受けたにも関わらずほぼ無傷の状態の咲が立っていたのだ。
「嘘だ、そんなはずは……! いやそうか、何か裏があるのだな! きっと爆発魔法への耐性を得られるマジックアイテムか何かが……ならばこれならどうだ!!」
咲が何かしらの方法でマイクロエクスプロージョンを退けたのだろうと思ったダニエルはすぐさま次の魔法の準備を始めた。
「サウザンドウェーブ!!」
そしてダニエルが魔法を発動させたその瞬間、今度は杖の先端から大量の水があふれ出すのだった。
彼が発動させたサウザンドウェーブと言う魔法は、生み出した大量の水で大波を作り攻撃するといったものである。
これもまた上級魔法であり、習得すること自体がまず困難であった。
さらにはそんな高レベルの魔法すら彼は卓越した魔力制御によって高威力化することに成功していた。
先程のマイクロエクスプロージョンと同じように、波の範囲を狭めて威力を上昇させているのだ。
凡人がやろうとすればあっという間に魔力切れを起こしてしまうだろうその制御を、彼は難なく行うのだった。
「これでどうだ……流石に二つの属性を完全には対策出来まい」
ダニエルは今度こそやっただろうと言った様子でそう言う。
と言うのも、基本的にはこの世界において魔法は適性のある一属性しか使えないものなのだ。
そのため魔法への耐性を持つマジックアイテムも一つの属性に特化してあるものがほとんどだった。
それ以上となれば作るのが難しい上に、そもそも二属性以上の使い手自体がほとんどいないため無意味に値段だけが上がってしまうのである。
だが『基本的に』とあるように、もちろん例外はある。
ダニエルがその一人であり、彼は炎・水・風・土の四属性が使えるのだ。
故に、複数属性が使える彼は耐性を持つマジックアイテムに特効を持つと言える。
「……な、なんだと!?」
そんな彼ではあるが、再びその顔は驚愕のそれへと変わっていた。
またもや咲が無傷のままのその姿を見せたのだ。
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