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36 ダニエルの執着①
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一通りイチャイチャし終えた二人は冒険者ギルドに向かっていた。
金貨はレイナに返してしまったため、コツコツと依頼を達成して日銭を稼がなければならないのだ。
少ししてギルドに辿り着いた二人は何か良い依頼は無いかなーなどと思いながら中へ入る。
「あっ」
するとそこにいた人物に驚くのだった。
「ほう、来たか」
そこで二人を待っていたのはついさっき屋敷で会ったダニエルであったのだ。
「冒険者である以上、ここに来ることはわかっていたよ」
「……まだ何か用?」
「誰だ貴様は? ……ああ、そう言う事か」
ダニエルは変身前の咲とは会っていないため、彼女が誰なのかはわからなかったようだ。
だが桜が咲と共にいることから、先程の冒険者が彼女であるということに気付いたのだった。
「おいおい、そう早まるな。別に今すぐ何かをしようって訳じゃあないんだ」
睨んでくる咲をあざ笑うように彼は不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
それを無視して二人は依頼書が張ってある掲示板へと向かった。
「えっ……?」
しかしそこには見習い向けどころか下位冒険者向けまでの依頼が一切無いのだった。
つい昨日までは採集や探し物などの雑用に加え、危険度の低い魔物の討伐依頼が張ってあったのだ。
どう考えたって明らかな異常事態であった。
「ああ、そうそう。下位冒険者までの依頼は全て私の騎士団が終えてしまったよ」
「どうしてそんなことを……」
「簡単な事さ。そうすれば貴様らは稼ぐ方法が無くなるだろう?」
「そ、それじゃあ他の冒険者の方はどうなるんですか……!」
「こんな時に他人の心配とは、随分と優しいのだな。それとも状況が理解できていないだけか? ……別にどうだっていいだろう。所詮は低級の冒険者だ。私が気にする事でも無い」
桜の叫びに対してダニエルは心底どうでもいいといった様子でそう返した。
「そんな……!」
「それよりも自分の心配をしたらどうだ? このまま私は毎日依頼を潰していく。貴様らが受けられる依頼は無いと思え。その年ではきっと大した蓄えも無いのであろう? そこでだ。もう一度だけ言ってやろう。……私と共に来いサクラ。そうすれば毎日を生きるのにも困らない優雅な生活が待っているぞ」
ダニエルは勝ちを確信した表情でそう言う。
「……ごめんなさい、何度言われても私は貴方と行くつもりはありません」
「……なんだって?」
桜の返答は予想外だったのかダニエルは一瞬その思考を停止させた。
しかしすぐに我に返ると、怒りの表情を露にしたまま桜に詰め寄るのだった。
「貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか? 私はブルーローズ家の次期当主なんだぞ。今はこうして間接的な範囲で済んでいるが、いざとなればその影響力は計り知れないんだ。それをわかっているんだな?」
「だとしても……私は咲とずっと一緒にいると決めたんです」
そう言いながら桜は咲に抱き着いた。
同時に咲も彼女を守るように腕を回す。
「は、はは……そうか。ならいいさ。実力行使と行こうじゃないか」
これ以上はもう限界だと、ダニエルは実力行使に出たのだった。
「……何事?」
彼が合図をしたと同時にギルドの中に大量の騎士が入って来る。
「最悪、私との子さえ産めればそれでいい。殺さない程度に痛い目に遭わせてやれ」
ダニエルのその言葉からもわかる通り、彼は穏便に済ませる気は毛頭無かった。
結局のところ彼が欲しかったのは桜の持つ魔力の才であり、彼女を孕み袋として使えればそれでよかったのだ。
「いいか、絶対殺すなよ」
「了解しましたダニエル様」
命令を受けた騎士たちが二人の元に向かっていく。
「すまないが命令なのでね。抵抗しなければ命までは取らん」
「そう言って抵抗しないと思う?」
咲は即座にベルトを呼び出し、カルノライザーへと変身した。
「な、なんだ今のは……!」
その様子を見た騎士たちは何が起こったのかわからず混乱する。
だが仮にも訓練を積んだ騎士である。すぐに冷静さを取り戻し、再び咲に向けて槍を構えたのだった。
「痛かったらごめんなさい」
「ぐぁっ!?」
しかし一般的な実力の騎士が咲の動きに対応できるわけも無く、一人また一人と倒れて行く。
「お、おい何をしているんだ貴様ら! 相手はたかが見習い冒険者一人なんだぞ!? それでも誇り高きブルーローズ騎士団なのか……!!」
ダニエルはあまりにもサクサク倒されていく騎士たちを見ながらそう叫ぶ。
これもまた彼にとって想定外の事態だった。
とは言え、実際のところ彼の元に残った騎士たちは金に目がくらんだ半端者がほとんどであったのだ。
高い実力を持つ者の多くはブルーローズの名誉を取り戻そうとするレイナについて行っており、今彼の所に残っているブルーローズ騎士団は言わば残り物集団なのである。
当然そのような騎士団で咲を相手出来るはずもなく、結局一人残らず咲によって無力化されてしまうのだった。
金貨はレイナに返してしまったため、コツコツと依頼を達成して日銭を稼がなければならないのだ。
少ししてギルドに辿り着いた二人は何か良い依頼は無いかなーなどと思いながら中へ入る。
「あっ」
するとそこにいた人物に驚くのだった。
「ほう、来たか」
そこで二人を待っていたのはついさっき屋敷で会ったダニエルであったのだ。
「冒険者である以上、ここに来ることはわかっていたよ」
「……まだ何か用?」
「誰だ貴様は? ……ああ、そう言う事か」
ダニエルは変身前の咲とは会っていないため、彼女が誰なのかはわからなかったようだ。
だが桜が咲と共にいることから、先程の冒険者が彼女であるということに気付いたのだった。
「おいおい、そう早まるな。別に今すぐ何かをしようって訳じゃあないんだ」
睨んでくる咲をあざ笑うように彼は不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
それを無視して二人は依頼書が張ってある掲示板へと向かった。
「えっ……?」
しかしそこには見習い向けどころか下位冒険者向けまでの依頼が一切無いのだった。
つい昨日までは採集や探し物などの雑用に加え、危険度の低い魔物の討伐依頼が張ってあったのだ。
どう考えたって明らかな異常事態であった。
「ああ、そうそう。下位冒険者までの依頼は全て私の騎士団が終えてしまったよ」
「どうしてそんなことを……」
「簡単な事さ。そうすれば貴様らは稼ぐ方法が無くなるだろう?」
「そ、それじゃあ他の冒険者の方はどうなるんですか……!」
「こんな時に他人の心配とは、随分と優しいのだな。それとも状況が理解できていないだけか? ……別にどうだっていいだろう。所詮は低級の冒険者だ。私が気にする事でも無い」
桜の叫びに対してダニエルは心底どうでもいいといった様子でそう返した。
「そんな……!」
「それよりも自分の心配をしたらどうだ? このまま私は毎日依頼を潰していく。貴様らが受けられる依頼は無いと思え。その年ではきっと大した蓄えも無いのであろう? そこでだ。もう一度だけ言ってやろう。……私と共に来いサクラ。そうすれば毎日を生きるのにも困らない優雅な生活が待っているぞ」
ダニエルは勝ちを確信した表情でそう言う。
「……ごめんなさい、何度言われても私は貴方と行くつもりはありません」
「……なんだって?」
桜の返答は予想外だったのかダニエルは一瞬その思考を停止させた。
しかしすぐに我に返ると、怒りの表情を露にしたまま桜に詰め寄るのだった。
「貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか? 私はブルーローズ家の次期当主なんだぞ。今はこうして間接的な範囲で済んでいるが、いざとなればその影響力は計り知れないんだ。それをわかっているんだな?」
「だとしても……私は咲とずっと一緒にいると決めたんです」
そう言いながら桜は咲に抱き着いた。
同時に咲も彼女を守るように腕を回す。
「は、はは……そうか。ならいいさ。実力行使と行こうじゃないか」
これ以上はもう限界だと、ダニエルは実力行使に出たのだった。
「……何事?」
彼が合図をしたと同時にギルドの中に大量の騎士が入って来る。
「最悪、私との子さえ産めればそれでいい。殺さない程度に痛い目に遭わせてやれ」
ダニエルのその言葉からもわかる通り、彼は穏便に済ませる気は毛頭無かった。
結局のところ彼が欲しかったのは桜の持つ魔力の才であり、彼女を孕み袋として使えればそれでよかったのだ。
「いいか、絶対殺すなよ」
「了解しましたダニエル様」
命令を受けた騎士たちが二人の元に向かっていく。
「すまないが命令なのでね。抵抗しなければ命までは取らん」
「そう言って抵抗しないと思う?」
咲は即座にベルトを呼び出し、カルノライザーへと変身した。
「な、なんだ今のは……!」
その様子を見た騎士たちは何が起こったのかわからず混乱する。
だが仮にも訓練を積んだ騎士である。すぐに冷静さを取り戻し、再び咲に向けて槍を構えたのだった。
「痛かったらごめんなさい」
「ぐぁっ!?」
しかし一般的な実力の騎士が咲の動きに対応できるわけも無く、一人また一人と倒れて行く。
「お、おい何をしているんだ貴様ら! 相手はたかが見習い冒険者一人なんだぞ!? それでも誇り高きブルーローズ騎士団なのか……!!」
ダニエルはあまりにもサクサク倒されていく騎士たちを見ながらそう叫ぶ。
これもまた彼にとって想定外の事態だった。
とは言え、実際のところ彼の元に残った騎士たちは金に目がくらんだ半端者がほとんどであったのだ。
高い実力を持つ者の多くはブルーローズの名誉を取り戻そうとするレイナについて行っており、今彼の所に残っているブルーローズ騎士団は言わば残り物集団なのである。
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