固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

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25 レイナと呪い

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「て、てめえがどうしてここにいるんだ……レイナァ!」

 グレイグは目の前にいる女性の事を知っているらしく、困惑半分怒り半分と言った様子で彼女の名を叫んだのだった。

「予定よりも早く討伐が済んだだけのことです。それよりも、この騒ぎはどう言う事?」

 レイナはレイピアを構えたままグレイグに詰め寄る。

「こ、こいつが鑑定を持っているとかいう嘘を言うもんだからよぉ……。ほんの少しばかり冒険者としての洗礼を……そう、教育をしてやろうと思っただけだ」

「教育? 斧を振り下ろしているのをこの目で見たのですけど。私が止めなければどうなっていたか、わからないはずは無いわよね」

「うぐっ……わ、わかったって」

 先程まであれだけ威張っていたはずのグレイグはそれまでの様子からは想像もつかない程に委縮し、そのままギルドから逃げるように出て行った。

「はぁ、私がいない間にこんなことになっているとは……。まあそれは今はいいか。貴方、大丈夫だった?」

 レイナはグレイグの事を考え頭を痛めるものの、すぐに気を取り直して咲にそう言った。

「はい、おかげさまで。レイナさん……でしたっけ? ありがとうございました」

「無事ならよかったわ。それよりも……鑑定スキルを持っていると言うのは本当なのかしら」

 その瞬間、レイナの雰囲気が変わる。
 まるで凍てつく氷のように冷たく、それでいて鋭い空気が彼女を纏っていた。
 
「はい、詳しいことを話すと長くなるんですが……」

 咲は受付嬢の時と同じように鳥人遺跡で鑑定スキルを入手した事をレイナに伝えた。
 最初の内は半信半疑であったレイナだが、咲の話を聞き終わる頃にはもう彼女の事を疑ってはいなかった。

「偶然たどり着いたなんてこと信じたくは無いけれど……貴方の言う情報と私の持つ鳥人遺跡に関する情報は大体一致するのよね。ただの新人冒険者が得られる情報でも無いし、ここは一旦信じることにするわ」

「……自分で言うのもあれですけど、相当怪しいのに信じてくれるんですね」

「まあね。貴方が嘘を言っているようにも、ましてや悪意を持っているようには見えないもの」

 レイナは微笑みながらそう言った。
 その柔らかい笑みは青色の美しい長髪と合わさり、まさに絶世の美人といった雰囲気を醸し出す。
 
「それで早速で悪いのだけど、私に鑑定スキルを使ってみてくれないかしら」

「レイナさんにですか?」

 思っても見なかったことをレイナに言われ困惑する咲。
 とは言え彼女自身がお願いしているからと、咲は快く引き受けるのだった。

「えーっと……」

――――――

個体名:レイナ・ブルーローズ
年齢:20
レベル:82

所持スキル:『身体強化』『上位剣術』『狂狼の呪い』
所持称号:『剣聖』

――――――

 咲は視界に映し出されたレイナの情報を彼女に伝える。

「狂狼の呪い……やっぱりそうなのね」

 するとレイナはやっぱりと言った様子でそう呟いた。

「それ、何か不味いものなんですか?」

 レイナのその様子があまりよろしくないことに気付いた咲は思わず彼女にそう聞いていた。
 面倒事に首を突っ込んでしまうのはもはや咲の生まれつきの習性と言っていいだろう。
 もっとも彼女にとってはただ困っている人を放っておけないだけなのかもしれないが。

「ええ、常に魔力を消費してしまう上に身体能力にも悪い影響を及ぼすものなの。以前私はシャドウウルフの親玉を討伐したことがあって……多分その時に付けられたのだと思う」

 咲の質問に対してレイナはそう答えた。
 決して生まれつきそのような曰く付きのスキルを持っていた訳では無く、あくまで特殊な魔物を狩った時に後天的に付けられたものだった。

「これまで確証が持てなかったのだけれど、貴方のおかげで確信したわ。ありがとう」

「いえいえ、これくらいどうってことは無いですよ」

「ふふっ、四大伝承スキル持ちなのに謙虚なのね。それじゃあ私は行くわ。またあのグレイグってのがちょっかいかけて来たらその時はまた私に声をかけてちょうだい。何度でも追っ払ってあげるから」

 そう言うとレイナはギルドから出て行く。
 その後、ギルド内は少しずつ元の喧騒を取り戻し始めたのだった。

「四大伝承スキル……ってなんだろう?」

 そんな中、咲はレイナと別れる前に彼女の口から出た『四大伝承スキル』と言う物が気になっていた。
 しかし彼女どころか桜ですらもそれらスキルについては知らず、結局モヤモヤとした気分のままとなるのだった。
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