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22 桜の本音
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「すみません、いま空いているのはベッド一つの部屋しか無いんです」
空いている部屋は無いかと尋ねた咲と桜の二人に宿屋の女将はそう言った。
「ベッド一つ……」
咲と桜は顔を見合わせる。
すると咲と目が合った桜はすぐさま視線を逸らすのだった。
「ほ、他を探すのにももう遅いし、今日はここにしようか」
「桜がそれでいいなら……」
結局二人はベッド一つの部屋に泊まることとなり、早速部屋へと案内された。
そこはベッドが一つであると言う事以外は他の部屋と造りも変わらず、窓と松明、そして机と椅子が一つずつあるだけであった。
ひとまず荷物を置いた二人は女将から桶と布を貰い、体を拭くことにしたのだが……。
「桜、どうしたの?」
「えっ!? な、何でもないよ……?」
シャツを脱ぎ終え、下着姿になった咲を間近で見た桜は頬を染めて俯いていた。
「顔赤いけど、本当に大丈夫?」
「あっ待って今は……!」
咲が覗き込んできたため、桜は咄嗟にそう叫ぶ。
「桜、やっぱり顔赤い……熱でもあるの?」
「ごめん、そういうのじゃないの。その……咲ちゃんの下着姿を見てたら胸がドキドキしちゃって」
「……? 体育の授業の前とかで着替える時に普通に見てたでしょ?」
今までも何度も見てるじゃんと言いたげな表情で咲はそう言う。
「違うの……咲ちゃんがカルノライザーだなんて知らなかったから。私、カルノライザーのこと……好きだったから」
「え……」
桜のその言葉に咲は驚いていた。
普段の会話の中でもそう言ったことを聞いたことは無かったのだ。
「咲ちゃんには言ってなかったね。カルノライザーは皆のヒーローだから、この気持ちは私の中にだけとどめておこうと思ってたの。でもやっぱり、無理だった。あのとき助けられてから、頭の中はずっとカルノライザーのことで一杯だった」
「桜……。そういえばあの時……桜を助けたね」
咲はその時の事を思い出していた。
あれはまだ二人が高校一年だった時の事である。ドラゴラゴンの兵士に襲われ、裏路地に逃げ込んだ桜を保護した事があった。
「だから、この世界でカルノライザーに会った時すごくうれしかったの。確かにカルノライザーは皆のヒーロー……だけどそれは元の世界での話。こっちの世界でなら私の物にしちゃってもいいんじゃないかなって」
「さ、桜……?」
気付けば桜は咲の腰に手を回しており、明らかにこのままでは不味いと言うことに咲も気付いていた。
だが、その体は動かない。
動かなくともいいか、と心のどこかで思っていたのだ。
「咲ちゃんがカルノライザーだっていうのを知った時、確かに私の中のカルノライザー象は崩れちゃった。けどよく考えたら、大事な咲ちゃんと大好きなカルノライザー……同時に私の物にできたらすっごくし幸せだと思うの」
「ま、待って桜」
そう思っていた桜は心の中で前言撤回していた。
このままでは本当に不味い。本能的にそう感じていた。
なにしろ桜の顔は真っ赤に染まり、その目は獲物を前にした肉食獣のようなそれになっていたのだ。
しかし時既に遅し。
「ぁっ、あぁ……」
もはやこれまで。こうなってしまってはもう咲にはどうしようもなかった。
結局その後は桜の好きなように……それこそ、ここには記せないようなことまでされてしまうのだった。
――――――
「おはよう咲ちゃん」
「お、おはよう……」
夜が明け、部屋の中に光が差し込む。
狭いベッドの上で抱き合ったまま寝ていた二人はほぼ同時に目を覚まし、互いに挨拶をした。
「昨日はその……いきなりあんなとしちゃってごめんね?」
「ううん、気にしないで」
桜は昨夜の事を流石にやり過ぎたのではないかと思い咲に謝罪する。
しかし咲もまた桜を大事に思っていたのは確かであり、それ以上の感覚だって無い訳では無かった。
「……それじゃあ、もう一回……していい?」
「……うん」
咲のその返答を聞いた桜は目を閉じ、咲と唇を重ねる。
「サキさーん、サクラさーん朝食が用意出来ましたよー」
その時、扉の向こう側から女将の声が聞こえてきたのだった。
「……行こっか」
「……うん」
二人は女将を待たせないように急いで服を着ると、手を繋いだまま一緒に部屋を出た。
空いている部屋は無いかと尋ねた咲と桜の二人に宿屋の女将はそう言った。
「ベッド一つ……」
咲と桜は顔を見合わせる。
すると咲と目が合った桜はすぐさま視線を逸らすのだった。
「ほ、他を探すのにももう遅いし、今日はここにしようか」
「桜がそれでいいなら……」
結局二人はベッド一つの部屋に泊まることとなり、早速部屋へと案内された。
そこはベッドが一つであると言う事以外は他の部屋と造りも変わらず、窓と松明、そして机と椅子が一つずつあるだけであった。
ひとまず荷物を置いた二人は女将から桶と布を貰い、体を拭くことにしたのだが……。
「桜、どうしたの?」
「えっ!? な、何でもないよ……?」
シャツを脱ぎ終え、下着姿になった咲を間近で見た桜は頬を染めて俯いていた。
「顔赤いけど、本当に大丈夫?」
「あっ待って今は……!」
咲が覗き込んできたため、桜は咄嗟にそう叫ぶ。
「桜、やっぱり顔赤い……熱でもあるの?」
「ごめん、そういうのじゃないの。その……咲ちゃんの下着姿を見てたら胸がドキドキしちゃって」
「……? 体育の授業の前とかで着替える時に普通に見てたでしょ?」
今までも何度も見てるじゃんと言いたげな表情で咲はそう言う。
「違うの……咲ちゃんがカルノライザーだなんて知らなかったから。私、カルノライザーのこと……好きだったから」
「え……」
桜のその言葉に咲は驚いていた。
普段の会話の中でもそう言ったことを聞いたことは無かったのだ。
「咲ちゃんには言ってなかったね。カルノライザーは皆のヒーローだから、この気持ちは私の中にだけとどめておこうと思ってたの。でもやっぱり、無理だった。あのとき助けられてから、頭の中はずっとカルノライザーのことで一杯だった」
「桜……。そういえばあの時……桜を助けたね」
咲はその時の事を思い出していた。
あれはまだ二人が高校一年だった時の事である。ドラゴラゴンの兵士に襲われ、裏路地に逃げ込んだ桜を保護した事があった。
「だから、この世界でカルノライザーに会った時すごくうれしかったの。確かにカルノライザーは皆のヒーロー……だけどそれは元の世界での話。こっちの世界でなら私の物にしちゃってもいいんじゃないかなって」
「さ、桜……?」
気付けば桜は咲の腰に手を回しており、明らかにこのままでは不味いと言うことに咲も気付いていた。
だが、その体は動かない。
動かなくともいいか、と心のどこかで思っていたのだ。
「咲ちゃんがカルノライザーだっていうのを知った時、確かに私の中のカルノライザー象は崩れちゃった。けどよく考えたら、大事な咲ちゃんと大好きなカルノライザー……同時に私の物にできたらすっごくし幸せだと思うの」
「ま、待って桜」
そう思っていた桜は心の中で前言撤回していた。
このままでは本当に不味い。本能的にそう感じていた。
なにしろ桜の顔は真っ赤に染まり、その目は獲物を前にした肉食獣のようなそれになっていたのだ。
しかし時既に遅し。
「ぁっ、あぁ……」
もはやこれまで。こうなってしまってはもう咲にはどうしようもなかった。
結局その後は桜の好きなように……それこそ、ここには記せないようなことまでされてしまうのだった。
――――――
「おはよう咲ちゃん」
「お、おはよう……」
夜が明け、部屋の中に光が差し込む。
狭いベッドの上で抱き合ったまま寝ていた二人はほぼ同時に目を覚まし、互いに挨拶をした。
「昨日はその……いきなりあんなとしちゃってごめんね?」
「ううん、気にしないで」
桜は昨夜の事を流石にやり過ぎたのではないかと思い咲に謝罪する。
しかし咲もまた桜を大事に思っていたのは確かであり、それ以上の感覚だって無い訳では無かった。
「……それじゃあ、もう一回……していい?」
「……うん」
咲のその返答を聞いた桜は目を閉じ、咲と唇を重ねる。
「サキさーん、サクラさーん朝食が用意出来ましたよー」
その時、扉の向こう側から女将の声が聞こえてきたのだった。
「……行こっか」
「……うん」
二人は女将を待たせないように急いで服を着ると、手を繋いだまま一緒に部屋を出た。
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