固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

文字の大きさ
上 下
12 / 101

12 ダンジョン訓練とパーティ決め

しおりを挟む
 実戦訓練が始まってから数日が経った頃。
 とうとう咲たちは国外のダンジョンで実戦訓練を行うことになったのだった。

 ここアルタリア王国付近には多くのダンジョンが存在しており、それぞれに難易度が設定されている。
 トラップの数やその凶悪性、出現する魔物の危険度など、色々な要素によってその難易度が設定されている訳だが、今回彼女たちが挑むこととなったのはその中でも一番難易度の低い場所である。

 彼女らにとっては初めてのダンジョンとなるため、そうなるのもやむなしだろう。
 それでも得られる知識や経験は相当な物であり、魔物やダンジョン内に自然発生する宝箱からは希少な道具や装備品もドロップするのだ。 
 少なくとも超初心者と言える彼女たちが挑むのであればメリットしかないレベルではある。

 しかしそれを良く思わない者もいた。

「はぁ? なんで俺がこんな低級ダンジョンなんか挑まないといけないんすか」

 佐上は騎士団長ガルドに向かって抗議するかのようにそう言う。
 上級剣術と高い勇者適性を併せ持つ彼は低級ダンジョンなどに挑む意味が無いと考えていた。

「君の能力が高いことは理解している。だがダンジョンには危険が多い。難易度の低い所から慣らしていくのも重要なことなんだ。どうか受け入れて欲しい」

 ガルドの言う事ももっともだった。
 佐上の戦闘能力は高く、確かに低級のダンジョンには過剰過ぎる程ではある。しかしそれだけでは無いのがダンジョンなのだ。
 油断や慢心、そういった物に殺された者たちが大勢いた。それを知っているからこそ、ガルドは佐上にそう返すのだった。

 結局佐上も納得……と言うより、どれだけ言っても無駄だと思ったのかそれ以上は何も言わなかった。

 そうしてひと悶着あった後、ダンジョンの入り口前へとやってきた咲たちはそこで説明を受けるのだった。

「このダンジョンには危険なトラップも無いし、現れる魔物も今の君たちには大した脅威にならんだろう。だが危険であることに変わりは無い。しっかりと注意しながら進むように」

 ガルドはそう言うと、次に数人のパーティを作るように言ったのだった。

「パーティ……」

 咲は辺りを見回す。
 気付けば他の生徒は咲から距離を置いていた。
 それどころか視線を向けると目をそらされ、露骨に無視されているのが見て取れる状況であった。

 それも仕方がないだろう。
 咲に対して表面上は今まで通り接している生徒たちだったが、やはり心のどこかでは外れ勇者であることを気にしているのだ。
 それがダンジョンと言う危険地帯で命を預けるのであればなおさらだろう。

「咲ちゃん……」

 そんな咲の元に桜が駆け寄ってくる。

「誰もいないなら私と組もう?」

「ありがとう桜。でもそれだと桜が……」

「いいの。咲が一人でダンジョンに挑むことになるくらいならその方がずっと良い」

 桜の持つ超級治癒スキルはこの世界においてとても貴重な高位の回復魔法を使えるようにするスキルである。
 どんな大怪我を負っても瞬時に回復できる……それがどれだけありがたいことかは語るまでも無いだろう。
 だからこそ彼女は引く手あまたであり、外れ勇者なんかと共に居る必要は無いのだ。
 
 それでもなお、彼女は友人である咲を選んだ。ただそれだけの事である。

「やあ、桜ちゃん。……それに外れ勇者の咲」

 と、そんな二人の元に佐上がやってきたのだった。

「何か用?」

「おいおい、そう睨むなよ。桜ちゃんは俺にとっても重要な存在なんだ。だから二人を俺のパーティに入れてやるって話。桜ちゃんにもしもの事があったら将来的に俺の活躍に支障が出るからな」

 佐上はそう言うものの、今の彼は一人である。つまり本来はパーティに入れるも何も無かった。
 結局のところ彼もまた腫物扱いだったのだ。他の生徒とパーティを組めず、最後まで余っていた。
 そのため自分がリーダーであるというプライドを維持するために、咲と桜をメンバーとして迎え入れる形でパーティを作ろうとしたのだ。

「……はぁ、他に組めそうな人もいないし、仕方ないか。桜はそれで良い?」

「うん……そうするしかないんだもんね」

 咲と桜は再び辺りを見回した後、他に選択肢は無いことを察して不本意ながらも佐上のパーティに入ることを承諾したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...