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6 魔龍王
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「どうして貴様がここにおるのじゃ……魔龍王!」
国王は突如として現れた謎の龍の事を知っているのかその名前を叫ぶ。
「なに、簡単なことだ。貴様の所の兵士をちょちょいと洗脳してやったら簡単に勇者召喚の情報を得られたわ」
「そんなはずは無い! 勇者召喚についてはごく一部の者しか知らんはずじゃ!」
「そのごく一部を洗脳しただけのこと。何も難しい話ではない」
「お、おのれ……!!」
「それよりも、そこにいるのが召喚された勇者とやらか」
魔龍王と呼ばれた龍は部屋の中にいる者を見比べながら勇者だと思われる者を瞬時に見分けて行く。
そして……。
「がはっ……」
その内の一人を巨大な爪で貫いた。
「くっくっく、やはり勇者と言えど召喚されたばかりであればこの程度か。やはりこのタイミングを狙ったのは正解であったな」
「ば、馬鹿な……彼は『中級防御』を持っていたはず! こんな呆気なくやられるはずが……」
「中級だと……? その程度のスキル等級でこの俺の攻撃を防げると思っていたのか」
「う、嘘……嘘嘘嘘! いやだ、こんなところで死にたくな」
また一人、生徒が魔龍王の手の平に潰された。爪で殺された者とは違い、潰されたために大量の血液が辺りに噴き出す。
それがさらにパニックを助長した。
そしてパニックになって声を上げた者程目立ってしまい、魔龍王に容赦なく殺されていった。
「ガハハッ!! よい、実によいぞ。恐怖に染まった者の声はやはり格別だ」
「あ、あぁ……勇者が、我らの希望が……」
「国王よ、我の知らぬところで勇者を召喚し育成することで、いつか我を打ち倒そうと言う魂胆だったのだろう。しかし残念ながらそれは叶わぬ。今ここで我が全員殺してしまうのだからな!」
「なんということじゃ……」
絶望に染まった顔のまま国王は玉座から滑り落ちた。
国王にとって……いや、この世界にとって勇者は魔龍王への唯一の希望だったのだ。それが今、目の前で一切の抵抗も出来ないまま惨殺されている。
国王を絶望の底へと突き落とすのには十分であった。
それでもなお魔龍王の攻撃は止まらず、次の標的は佐上となった。
「佐上、危ない!!」
「ぐぁっ!?」
だがギリギリのところで教師が佐上を突き飛ばし、身代わりになってしまう。
「なっ、なんで俺なんかを……」
「ゲホッ……た、例えお前が間違った道を進もうとしていたとしても……お前が俺の生徒であることに変わりは無いから……な」
そこで教師は息絶えてしまう。最後まで生徒を守ろうとしたが故の行動だった。
「は、はは……馬鹿がよ。これでもう俺の邪魔をする奴はいないって訳だ」
一方で佐上はこんな時だと言うのに先程の教師との一件をまだ根に持っていたようだ。
自分を助けるために死んだ人間に対しての言葉としてはあまりにも最悪過ぎるものを吐き、その後他の生徒の後ろに隠れた。
それからも何人もの生徒が死んでいき、気付けば残り数人と言った状態になってしまう。
そうなればもはや自分が殺されるのも時間の問題だと、そう認識してしまう者がほとんどだった。
召喚されたばかりの彼らに戦い方などわかるはずもなく、そもそも魔龍王に通用するかも怪しいものなのだ。
もはや、どうしようも無かった。
「おいお前ら、俺を助けろ! 俺はスキルも適性も恵まれた勇者だぞ! 今ここで死んでいい存在じゃないだろ……!!」
次々に死んでいくクラスメイトを見て恐怖に耐えられなくなった佐上は周りにいる兵士にそう叫ぶ。しかし兵士は国王を守るので手一杯であるようで、彼の言う事を聞く者は誰一人としていなかった。
もっとも兵士程度で魔龍王の攻撃を止められるはずも無いだろうが。
「このままだと桜が危ない……けど、今ここで変身する訳には」
咲もこの状況は良く思っていなかったが、他の生徒がいる前で変身する訳にもいかないとどうにも出来ずにいた。
そんな時、桜に向かって魔龍王の手が伸びる。
流石にそうなってしまってはもはや考えている余裕は無いと咲は動き出した。
「さ、咲ちゃん……!?」
「大丈夫だった?」
魔龍王が桜に手を叩きつけるよりも速く、咲は桜を抱えて部屋の隅へと移動する。
「む……? なんだ今のは」
その異常な速度に魔龍王も違和感を覚えたようだった。
「召喚されたばかりの勇者とは思えない速度……しかし魔力を感じない。であれば勇者としての適性が高い訳でも無い……か」
考え込む魔龍王。その隙に咲は部屋から外へ出て行く。
「咲ちゃん待って!」
「桜、大丈夫だから。ここでじっとしてて」
桜が呼び止めるも、咲はそれを振り切って部屋の外へと出る。
そして……。
「誰もいない……よし、いくよカルノン」
「任せろ!」
咲は少し離れた場所まで走った後、周りに誰もいないことを確認してからカルノンの名を呼んだ。
するとそれまでカバンの中にいたカルノンが勢いよく外に飛び出ると共に、その姿はマスコットのようなそれから剣へと変わったのだった。
『カルノセイバー!!』
……某変身ヒーローの変身アイテムのような音と共に。
国王は突如として現れた謎の龍の事を知っているのかその名前を叫ぶ。
「なに、簡単なことだ。貴様の所の兵士をちょちょいと洗脳してやったら簡単に勇者召喚の情報を得られたわ」
「そんなはずは無い! 勇者召喚についてはごく一部の者しか知らんはずじゃ!」
「そのごく一部を洗脳しただけのこと。何も難しい話ではない」
「お、おのれ……!!」
「それよりも、そこにいるのが召喚された勇者とやらか」
魔龍王と呼ばれた龍は部屋の中にいる者を見比べながら勇者だと思われる者を瞬時に見分けて行く。
そして……。
「がはっ……」
その内の一人を巨大な爪で貫いた。
「くっくっく、やはり勇者と言えど召喚されたばかりであればこの程度か。やはりこのタイミングを狙ったのは正解であったな」
「ば、馬鹿な……彼は『中級防御』を持っていたはず! こんな呆気なくやられるはずが……」
「中級だと……? その程度のスキル等級でこの俺の攻撃を防げると思っていたのか」
「う、嘘……嘘嘘嘘! いやだ、こんなところで死にたくな」
また一人、生徒が魔龍王の手の平に潰された。爪で殺された者とは違い、潰されたために大量の血液が辺りに噴き出す。
それがさらにパニックを助長した。
そしてパニックになって声を上げた者程目立ってしまい、魔龍王に容赦なく殺されていった。
「ガハハッ!! よい、実によいぞ。恐怖に染まった者の声はやはり格別だ」
「あ、あぁ……勇者が、我らの希望が……」
「国王よ、我の知らぬところで勇者を召喚し育成することで、いつか我を打ち倒そうと言う魂胆だったのだろう。しかし残念ながらそれは叶わぬ。今ここで我が全員殺してしまうのだからな!」
「なんということじゃ……」
絶望に染まった顔のまま国王は玉座から滑り落ちた。
国王にとって……いや、この世界にとって勇者は魔龍王への唯一の希望だったのだ。それが今、目の前で一切の抵抗も出来ないまま惨殺されている。
国王を絶望の底へと突き落とすのには十分であった。
それでもなお魔龍王の攻撃は止まらず、次の標的は佐上となった。
「佐上、危ない!!」
「ぐぁっ!?」
だがギリギリのところで教師が佐上を突き飛ばし、身代わりになってしまう。
「なっ、なんで俺なんかを……」
「ゲホッ……た、例えお前が間違った道を進もうとしていたとしても……お前が俺の生徒であることに変わりは無いから……な」
そこで教師は息絶えてしまう。最後まで生徒を守ろうとしたが故の行動だった。
「は、はは……馬鹿がよ。これでもう俺の邪魔をする奴はいないって訳だ」
一方で佐上はこんな時だと言うのに先程の教師との一件をまだ根に持っていたようだ。
自分を助けるために死んだ人間に対しての言葉としてはあまりにも最悪過ぎるものを吐き、その後他の生徒の後ろに隠れた。
それからも何人もの生徒が死んでいき、気付けば残り数人と言った状態になってしまう。
そうなればもはや自分が殺されるのも時間の問題だと、そう認識してしまう者がほとんどだった。
召喚されたばかりの彼らに戦い方などわかるはずもなく、そもそも魔龍王に通用するかも怪しいものなのだ。
もはや、どうしようも無かった。
「おいお前ら、俺を助けろ! 俺はスキルも適性も恵まれた勇者だぞ! 今ここで死んでいい存在じゃないだろ……!!」
次々に死んでいくクラスメイトを見て恐怖に耐えられなくなった佐上は周りにいる兵士にそう叫ぶ。しかし兵士は国王を守るので手一杯であるようで、彼の言う事を聞く者は誰一人としていなかった。
もっとも兵士程度で魔龍王の攻撃を止められるはずも無いだろうが。
「このままだと桜が危ない……けど、今ここで変身する訳には」
咲もこの状況は良く思っていなかったが、他の生徒がいる前で変身する訳にもいかないとどうにも出来ずにいた。
そんな時、桜に向かって魔龍王の手が伸びる。
流石にそうなってしまってはもはや考えている余裕は無いと咲は動き出した。
「さ、咲ちゃん……!?」
「大丈夫だった?」
魔龍王が桜に手を叩きつけるよりも速く、咲は桜を抱えて部屋の隅へと移動する。
「む……? なんだ今のは」
その異常な速度に魔龍王も違和感を覚えたようだった。
「召喚されたばかりの勇者とは思えない速度……しかし魔力を感じない。であれば勇者としての適性が高い訳でも無い……か」
考え込む魔龍王。その隙に咲は部屋から外へ出て行く。
「咲ちゃん待って!」
「桜、大丈夫だから。ここでじっとしてて」
桜が呼び止めるも、咲はそれを振り切って部屋の外へと出る。
そして……。
「誰もいない……よし、いくよカルノン」
「任せろ!」
咲は少し離れた場所まで走った後、周りに誰もいないことを確認してからカルノンの名を呼んだ。
するとそれまでカバンの中にいたカルノンが勢いよく外に飛び出ると共に、その姿はマスコットのようなそれから剣へと変わったのだった。
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……某変身ヒーローの変身アイテムのような音と共に。
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