固有能力『変身』を使いヒーロー活動をしていた私はどうやらファンタジーな異世界でも最強のようです

遠野紫

文字の大きさ
上 下
1 / 101

1 カルノライザーと龍ヶ崎咲

しおりを挟む
 突如として現れた謎の地球外生命体『ドラゴラゴン』の侵略により、瞬く間に人類は滅亡への片道を全力疾走で突き進むこととなってしまった。
 
 そんな時、人類に希望の光が現れた。そう、それこそがかつて大陸を支配した恐竜の力をその身に宿し、ドラゴラゴンと戦う正義のヒーロー『カルノライザー』である。
 彼の……いや、彼女の活躍によってドラゴラゴンの親玉は討伐され、人類は再び平和を取り戻したのだった。
 
 ありがとうカルノライザー! その活躍を、死闘を、人類は未来永劫決して忘れはしないだろう!

――――――

 そんなカルノライザーとドラゴラゴンの大激突から気付けば数か月が経ち……今や残党を狩るだけの退屈な毎日を送っている少女がいた。
 彼女の名は龍ヶ崎咲(りゅうがさき さき)。言わずもがな、カルノライザーの正体である。

「はぁ~……最近出てくるのは弱いのばかり。なんかこう、もっと骨のあるやつはいないのかねー」

「仕方ないぞ。幹部級の強いやつは咲が全部倒し尽くしちゃったんだからな」

 出てくるのは雑魚ばかりで面白くないと愚痴をこぼす咲。そんな彼女をなだめるように、恐竜のような姿をしたマスコットのような何かは彼女の周りをふよふよと浮遊しながらそう言う。
 
 彼……いや彼女……いや、性別があるのかもわからないその謎の存在は自らをカルノンと呼称し、恐竜の魂の集合体のようなものである……と自称している。
 咲とはドラゴラゴンとの戦いの中で出会って以降行動を共にしているようだが、咲もカルノンが何者なのかは結局今の今までわからずにいた。

「そうは言っても……まあ、それはそれで私強すぎってことだしいっか」

 カルノンの言葉によって何かが吹っ切れたのか、咲はとりあえず納得はしたようだった。
 
「あっ、いけない! そろそろ集合時間だ!」

 思い出したかのようにそう叫ぶと、咲はとてつもない跳躍力でビルの屋上へと跳び上がった。
 今日は彼女の通う高校の修学旅行当日なのだ。そしてその集合時間まであと数分といった状況だった。
 そのため走っていったのでは間にあわないと判断した彼女は、ビルの上を跳躍しながら目的地である高校へと一直線に向かうのだった。

「ふー、セーフセーフ」

 時間ギリギリで高校へと着いた咲は生徒が集合している所に混ざりこむ。そこで彼女に話しかけたのは彼女の友人である桜だった。

「咲ちゃん、結構ギリギリだったね」

「いやーちょっとばかしゆっくりしてたらこんな時間になっちゃってさ」

 キーンコーンカーンコーン

 咲が到着して数秒後、チャイムが学校中に鳴り響く。まさしく時間ギリギリであったのだが、咲自身その高すぎる身体能力によってなんだかんだ間に合ってしまうため、時間にはかなりルーズになっているのだ。
 いつか治そうとは思っているようだが結局今こうしてギリギリになっている辺り、残念ながら改善する兆しは見えそうに無い。

 その後バスに乗車し高校を出発した咲たち。車内では誰もが楽しい修学旅行が始まると思っていたことだろう。
 ……しかし、そうはならなかった。

「うわっ、なんだ!?」
 
 運転手のその声をきっかけにバス車内が騒然とする。トンネルを抜けた瞬間、突如としてバス全体が眩い光に包まれたのだ。

「ただの明順応……じゃないよねこれは」

 そんな中、咲はただ一人冷静に状況を分析していた。
 死闘を繰り返してきた彼女にとってこの程度は騒ぐことでも無いのだ。

「まるで何かしらに包まれているみたいだぞ」

「うわ出て来ちゃ駄目だってカルノン」

 そんな咲も、いつの間にか彼女のカバンから飛び出していたカルノンが急に話しかけてきた時には焦りを見せていた。
 と言うのも、彼女は自身がカルノライザーであることを明かしてはいないのだ。そんな中でカルノライザーと共に居たはずのカルノンと一緒にいるなんて、自分がカルノライザーですと言っているに他ならない訳である。

「……ふー、セーフ」

 幸いにも他の搭乗者は眩い光によって視界を奪われており、カルノンの姿を見た者はいなかったようだ。

 それから数秒が経ち、気付けばバスは止まっていた。そして眩い光は収まり、代わりにそれまで走っていた道路とは全く違う光景が窓の外に広がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...