[R18版]俺の相棒は女になった~世界でただ一人の背中を預けられる相棒が俺好みの女になってしまった。いやどうすれば良いってんだよ!?~

遠野紫

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「ソラ! ゴブリンがそっちに行ったぞ!」

 俺からターゲットを変えたゴブリンがソラの方へ向かって行く。
 それに対応できるように俺はソラへと叫んだ。

「わかった! せいやァァッ!!」

 俺の声に反応したのか、ソラは危なげなく自身に向かって来るゴブリンを切り捨てた。
 真っ二つになったゴブリンは血を吹き出しつつ、そのまま力なく崩れ落ちる。

「すまない。俺のヘイト管理が甘かった」
「いや、問題ないさ。アランがすぐに叫んでくれたおかげで対処出来た」

 俺が謝ると、ソラは全く問題は無いと言う風にサムズアップをしながらそう返した。
 これも彼と俺が作り上げて来た連携によるものだろう。
 何しろソラとは幼い時からの仲だ。長い時間を共に過ごし、一緒に冒険者となった。
 そして互いに背中を預けながらこれまで戦って来たんだ。
 俺とソラとの間には確かな絆がある。心からそう感じる。

「そう言ってくれると助かるぜ」
「ああ、俺とアランならどこまでも行けるさ」
 
 ソラはそう言って笑みを浮かべた。
 小さい頃から見慣れた顔だ。辛く苦しい時、この笑顔に何度救われただろう。
 
「その通りだな」

 俺とソラの二人ならどこまでも行ける。
 何度も死線をくぐり抜けて来た世界一の相棒となら、どんな困難だって乗り越えられるはずだ。

 ……そう考えていた。

「ソ、ソラ……なのか?」

 ある日、ソラは俺の知るソラでは無くなっていた。

「ああ、ソラだが。……まあ、ちょっと見た目は変わっちまったけどな」

 サラサラで長い髪。きめ細かい肌に整った顔。そして何より目立つのは柔らかい曲線に凹凸のある体だ。
 彼が着ている服はいつものものだが、彼の大きな胸が胸元を大きく引き伸ばしている。
 見ていて服が可哀そうになるレベルのそれに、ついつい視線が向いてしまう。男としての本能だろうか。
 また彼の履いているショートパンツからはハリのある太ももが見えている。
 太ももの太さに対してショートパンツが小さすぎるのか、今にもはち切れそうだ。

 ……そう、ソラは女になっていた。それも俺の好みにドストライクな美少女に……。
 もちろん最初は別人だと疑った。だがギルドの発行する冒険者登録証は偽造は出来ないし、何よりソラとは長い間一緒にいたのだ。
 雰囲気、仕草、言葉遣い。色々な要素から彼がソラであることは認識出来る。……出来てしまう。

「まあ何だ。いろいろと試してみたら筋力とかは変わって無いことがわかったからさ。冒険者としての能力に心配は無いよ」

 ソラはそう言って笑いながら俺に肩を組んできた。
 その瞬間、女の子特有の良い匂いが香って来る。肩を掴む手も温かく柔らかい。

 ……いや何を考えているんだ俺は。

 極力意識しないように、ソラの顔を見て微笑み返した。
 いつもならソラの笑顔を見れば気が緩むと言うか、ほんわかとした感覚があったが、今は違う。

 メッッッチャ美少女に笑顔を向けられているのだ。
 え、何だこれ?
 緊張感が凄い。汗が体中から噴き出ている感覚がする。
 俺の笑顔不自然になって無いよな……!?

「どうしたんだ?」
「ヒッ」

 俺が思わず顔を俯かせたからか、ソラは俺の顔を覗き込んできた。
 それがまた状況を悪化させた。
 美少女となったソラが俺を上目遣いで見つめている。

「フンッ!!」

 俺は思わず自らの拳を腹に叩き込んでいた。
 少しでもソラを変な目で見てしまったことを許せなかった。

「お、おいどうしたんだ!?」

 ソラは俺のいきなりの行動に驚いていた。当然か。でもそうしないといけないんだ。ソラとの友情を保つためには……!

「……いや何でもない。それよりソラこそどうしちまったんだ?」
「この姿の事か? 詳しいことはわからないんだが……」

 俺は話をそらすためにソラの体の変化について聞く。
 すると彼は自らに起こったことを語り始めた。
 なんでも、安値で売られていた能力強化の魔法薬を飲んでから体がおかしいのだと。
 俺の部屋に来る前にその魔法薬を買ったところに行ったが既にもぬけの殻だったとのことだ。

「それ、完全に騙されていないか?」
「……やっぱりそう思うか?」

 どう考えても騙されている。何から何まで、あまりにも怪しすぎる。

「と言うか、なんでそんな怪しい薬なんか飲んだんだよ」

 至極当然の疑問をソラへとぶつける。
 普通に考えてそんな怪しい所で買った怪しい薬なんか飲むか?

「もっと強くなればアランの役に立てると……もっと先を目指せると思ってさ」
「お前……そんなことしなくたって良いのによ」

 俺のためとなるとこれ以上は言いにくいな。
 と言うより俺も同じ境遇だったら同じ行動をしていた可能性がある。
 あまり人のこと言えないかもしれないぜ……。

「それで、元の体に戻るにはどうしたら良いんだ?」
「それがわからなくてね。調べようにも前例が無いものだから」

 確かにそうだ。性転換の薬なんて聞いたことが無い。
 だが逆にそんな珍しい薬を何故こんな所で売っていたんだ?
 それも安値で買ったとソラは言っていた。
 クソッ不確定なことが多すぎて全くわからねえな。

「まあ情報はおいおい集めて行けばいいさ。確か今日は狩りに出る予定があっただろ? さっさと行こうぜ」
「おいおい、そのまま行く気か?」
「さっきも言ったけど能力的に変化は無いから問題は無いって」

 いや気にしているのはそこじゃないんだがな。
 まあ本人が良いって言っているんなら良いのか?

 そうして冒険者ギルドへ行った俺たちだったが、何か凄く視線を感じる。
 いや違う。正確には俺の隣のソラに対しての視線か。

「な、なあ……今まであんな可愛い冒険者いたか?」
「いや初めて見るな。確かにすっげえ美少女だぜアレはよぉ」

 ギルド内の冒険者たちは男も女も関係なくソラに夢中だった。
 それもそのはずか。それだけ美少女なんだもんな今のソラは。

「にしてもすっげえおっぱいだなアレは……」
「おい、あまりそういうことは言うなって」
「いやいや、お前だってわかっているはずだぜ? あれに挟まれでもしたらもう昇天ものだなおい」

 いやらしい視線も多いが、幸いと言うべきかソラは気付いていないようだ。

「ねえ、あの子の隣にいるのって……」
「え、アランじゃん。あんなに可愛い子と知り合いだったの知らなかった。というかあの子胸でっか……なんか凄い負けた気がするんだけど……」

 当然だがそんな美少女の隣に居れば目立ってしまう。
 そんな訳で俺たち二人は多くの視線にさらされながらギルドの受付へとたどり着いた。
 緊張感も体感時間も凄まじいことになっていたが、それも依頼を受けるまでの話だ。
 もう少しの辛抱……。
 
「あ、あの……ソラさん……なのですか?」

 が、問題はまだあった。
 受付嬢がソラの本人確認に手間取っている。
 そりゃそうだ。突然見た目が変わればそうなる。

「あーそうなんですよ。見た目が変わってしまっているんですけどね」

 ソラはそう言いながら冒険者登録証を取り出し受付嬢へと見せた。
 受付嬢は渡されたソラの登録証とソラ本人を何度か見比べる。その際に何度か自分の胸元を見てため息をついていたようだが、どうかしたのだろうか。

「確かにソラさんの物ですね……魔力認証も問題はありません。あの、少々お待ちください」

 そう言って受付嬢は受付の奥へと入って行った。
 少しして彼女が戻って来たと思ったら、後ろからギルドマスターも来ていた。

「ほう、君があのソラ君か。まさかこれほどまでの美少女になっているとはね」
「実は色々とありまして……」

 ソラはギルドマスターに魔法薬のことを話した。
 ギルドマスターも最初は半信半疑で話を聞いていたが、だんだんとその表情は真面目なものになっていった。
 
「それについては少し心当たりがあるな。こちらで調べている錬金術師と情報が一致する。奴は異質な薬を作り出しては安値で売りさばいていてな。危険な存在として指名手配されているのだが、すぐに姿をくらませてしまう。そのせいで君のような被害者が増える一方だ」
「俺以外にも女になってしまった方がいるのですか?」

 ギルドマスターの他にも被害者がいるという発言にソラは反応した。
 自分のような境遇の者がいれば何か手掛かりになるのでは無いかと思うのは無理も無い。
 実際、俺もそれについては気になるところだ。

「いや、性転換の薬を飲まされたのは現状君だけだな。……下手に情報を漏らしてパニックになるのは避けたいから詳しいことは言えない。だが一応これだけは言っておく。現状解除方法は無いと思った方が良い。他の薬の被害者も元に戻る見込みが無いのだ」
「そんな……」

 ギルドマスターの口から語られたのは絶望的な言葉だった。

「それじゃあ俺はずっとこのままなのか……?」
「お、おいソラ……あんま深く気にすんなって。いや気にすんなってのも難しいだろうけど……」

 ソラがこのまま女のままだってのは俺だって困る。
 割と裸の付き合いもする仲なんだ。このままのソラにそれをされたら俺が死ぬ。精神的に死んでしまう。
 だが本当に困っているのはソラ自身のはずだ。
 なら少しでもソラを元気づけてやるのが友人であり相棒の役目のはずだ……!

「アラン……? そうだよな。性別が変わったって俺たちの絆は変わらねえよな。それにもしかしたら元に戻れるかもしれないんだ。諦めるのはまだ速い!」
「お、おう……!」 

 思ったより立ち直りが早いのか、ただ単にそこまで気にしていなかったのか。
 ソラはすぐにいつも通りの様子に戻った。

「そういうことですのでギルドマスター、俺たちは俺たちで情報を探します。何か新しい情報が入ったらその時はよろしくお願いしますね」
「ああわかった。こちらでも引き続き錬金術師について調べよう。まあ、戻らなかったとしてもアンタら二人ならうまくやって行けるだろうさ。私から見ても中々お似合いだぞ?」
「みょ、妙な事言わないでくださいよ……」

 そうして俺たちはギルドマスターと分かれ、今日の分の依頼を受けてからギルドを出た。
 結局目立った進展こそ無かったものの、ギルド側で動いてくれると言うのであれば少しは安心できるか。

 それからそのままの足でダンジョンへと向かうことにした俺たちだったが、そこでまたとんでもない問題にぶち当たった。
 というか最初からこれを想定しておくべきだったのかもしれない。

「……」
「アラン、どうした?」

 どうしたもこうしたもあるか。
 ソラの装備はやや露出多めの軽戦士用の装備なんだ。
 男の状態なら何にも気にならないが今は違う。女の体でその装備はあまりにも刺激が強すぎる。
 ショートパンツを始め下半身の装備はそこまで大きくは変わらないが、上半身装備はかなり露出が高い。
 当然彼の大きな胸も強調される。急ごしらえの鎧はサイズが合っていないのか彼の胸が少しはみ出ている。

「……いや何でもない」

 とにかく目線を反らす。少しでも見ないようにする。
 つい昨日までは世界でただ一人の心の通じた相棒だった。それが今では直視出来無い。
 変に意識してしまうのだ。男だった時のソラと今こうして美少女になってしまったソラが頭の中で合致する度に妙な気まずさと背徳感が俺の中に溢れ出てしまうんだ。

「なら良いか。さっさと行こうぜ」

 ソラは何も気にしていないのか先を急ぐ。
 少しは気にしてほしい。……いや、気にしないでいてくれるだけまだマシなのか……?
 両者共に気まずくなったらそれこそ大問題だ。

 ……結局ソラのペースに乗せられ俺たちはそのままダンジョンへと潜り始めた。

「せぇいッッ!!」

 相変わらずソラの短剣の切れは良い。こういう所を見る限りやはりソラはソラだ。
 たとえ姿が変わっていても中身は慣れ親しんだ彼なのだ。
 そう考えると少し安心した。

 と、そんな安心しきっていた時だった。ソラの死角からゴブリンが飛び掛かるのが見えた。 

「危ない!」
「うぉっ!?」

 頭で考えるより早くソラの体を引っ張る。だがそのせいで向かい合う形で密着してしまった。
 彼の可愛らしい顔がすぐそこにある。長いまつ毛にぱっちりとした目……って違う、戦闘中に何を考えているんだ俺は!
 
 ってこれは……。ぽよんとした何か柔らかいものが体に触れている……。
 紛れも無くこれは彼のおっぱ……。

「……」

 俺は極力何も考えないようにした。
 ……だがそれが不味かった。
 何も考えないようにしたせいで、触れている感触がより鮮明に伝わってきてしまった。
 はみ出た部分から彼の体温が伝わって来る。女の子は体温が高いと聞くが、実際温かった。
 と言うか不味い、戦闘中だと言うのに……勃ってきてしまった。
 無になれ。何も考えるな。

「助かったぜアラン……アラン?」
「あっああ、すまないなんだったっけ!?」

 無を取得しようとしていた俺を現実に呼び戻したのはソラの声だった。
 どうやら勃起しかけてしまったのも気付かれてはいないようだ。

「おいおい、まだ魔物は殲滅しきっていないんだからしっかりしてくれよ?」
「すまない……本当にすまない」

 何が不味いかって、ソラ本人が気付いていない上に気にしていないことなんだよな。
 これではただただ俺は友人に興奮し欲情するだけの男になってしまう。
 いや間違ってはいないのだが……。

 そんな訳でなんやかんやあってゴブリンを殲滅したのだが、まだまだ俺たちに降りかかる災難は終わらなかった……いや実質俺に降りかかる災難か。

「おっと、こいつは思ったよりも狭いな」
「そうだな。這って進めばギリギリ通れるってところか?」

 ダンジョンを進んで行くと、その先に進むにはかなり狭い道を通らないといけないようになっていた。

「なら俺が先に行く」
「いや俺が……」
「待ってくれ、軽戦士である俺の方が狭い所で何かあった時に対応しやすい。俺が先に行った方が安全だろう」

 ソラはそう言って先に道を進み始めた。
 戦術を絡めてそこまで言われてしまっては流石に受け入れるしかない。
 出来れば俺が先に進みたかった。何しろソラの後を進むという事は、露出の多い装備の彼が四つん這いで這っている姿をすぐ後ろから見ることになるのだ。

「アラン、そっちはどうだ?」
「……」
「アラン?」
「あ、ああ何ともない。危険は無いぞ」

 前へ進もうとすると嫌でも見てしまう。
 ソラの尻と太ももを。
 ショートパンツから伸びる太ももはムチムチで肉付きが良い。
 ハリもあって程よく筋肉質なのがかなりこう……そそる。そそってしまう。
 
 それに目の前に付き出される尻にも自然に目が向いてしまう。
 弾き飛ばしてしまうんじゃないかと言う程にショートパンツをピッチピチに引き延ばしてる大きな尻が、前に進むたびにフリフリと揺れる。
 どうしても目が離せない。目を奪われてしまって仕方が無い。

 ……ほんとソラの尻デッッカいな。それに太もももフッッット……じゃねえ!
 何を考えているんだ俺は!?
 友人だぞ!?
 というか元男だぞ!? 

「ふぅ、ようやく抜けたか。アラン、大丈夫か?」

 ソラは道から抜け出たようだ。
 このままソラを見ていたかったのと、ようやく見ずに済むという安堵がぐちゃぐちゃに入り混じって俺の感情は文字通りぐちゃぐちゃになっていた。

 先に抜け出たソラは俺に手を差し伸べて来る。
 小さく奇麗な手だ。長いこと短剣を握って出来上がった彼の無骨な手はもうそこには無かった。

「……ありがとう」

 俺がソラのことをとんでもない目で見ていたことも、恐らく彼は知らないんだろう。

 ……もし知られたらどうなる?
 ソラだって男にそんな目で見られることは嫌なはずだ。それが今まで共に戦って来た親友だったら?
 考えると恐ろしくなった。しかしそれがわかっていてなお俺は止められなかった……。
 最低だ、俺って……。

「お、依頼対象のオークだな」
「……ああ」

 ソラがオークを発見したようでそう声をかけてきた。
 そうだ、今は戦いに専念しなければ。少しの気の緩みが重大な事故を招く可能性がある。
 今は何よりも安全を重視するのが先決だ。

「行くぞ……!」

 まだ気付かれていないため俺とソラはゆっくりと足音を消しながら近づいて行く。
 そしてハンドサインで意思疎通を取り、同時に不意打ちを決めた。

「グギャァァッッ!?」
「ウゴゴオォォッ!?」

 完全に意識外からの一撃を受け二体のオークはその場に倒れた。

「よし、後は向こうの一体だけか……!」
「ブモォォォォッッ!」

 オークの断末魔に気付いたのか最後の一体は完全にこちらを把握しているようだった。
 だが一体なら二人でかかれば難しい相手では無い。

「行くぞソラ!」
「ああ!」

 俺とソラは最後のオークに向かって駆け出した。しかしその瞬間、壁を破壊して別のオークが姿を現したのだった。

「何!?」

 突然の事に動揺した俺とソラは動きを止めてしまう。
 その隙をオークは見逃さなかった。

「グモォォ!」
「ぐあっ!?」

 壁から現れたオークは俺を吹き飛ばし、ソラを掴んだ。

「な、放しやがれ……!」

 オークの大きな手がソラのか細くなってしまった両腕を纏めて拘束する。
 軽戦士であるソラ一人では武器無しで拘束から逃れることは出来ない。
 早く助け出さなければ……!

「ソラ! チッ……!」

 ソラの元へ向かおうとするも元々いたオークが俺の前に立ちはだかる。

「グモモ、グモォ」
「お、おい何をして……」

 ソラを掴んでいるオークは彼の装備を次々と外していく。
 掴まれる際に剣を落としてしまっていた彼は一切の抵抗が出来ずにいた。
 
「まさか……」

 ……以前聞いたことがある。オークに敗北した女冒険者が装備を剥がされ、そのままオークの孕み袋にされたという話を。

 ソラは次々と装備を剥がされ、ついには胸を守っていた鎧とインナーも剥ぎ取られてしまった。
 押さえつける物の無くなった彼の胸が「だぷん」と聞こえそうなくらいに大きく跳ねながらその姿を現す。

「なんで装備を剥がして……ッッ!?」

 ソラは装備を剥がされ露出させられた自らの体を見て、顔を恐怖一色に染めあげた。
 まるで自らに襲い来る未来を想像したかのように。
 そうだ。今の彼は女なのだ。それにオークが意味も無く装備を外していくとは思えない。つまり今この状況において導き出される答えは一つ。

 オークはソラを慰み者にしようとしている。

「……させねえ! 絶対にそんなことさせるかァァッ!!」

 気付けば俺は走り出していた。

「ブモッ!」 
「邪魔だァァ!!」

 俺の前に立ちはだかるオークを無理やり斬り伏せ、ソラの元へと向かう。
 あぁ、強引に突っ込んだせいで腕が千切れそうだ。人体から聞こえてはいけない音が聞こえてくる。
 でもそれでもまだ止まれない。ここで止まれば俺は一生後悔することになる。

 例えここで全てを使い果たしても良い。冒険者として再起できなくなろうがどうだっていい。
 目の前で犯されそうになっている友人を……相棒を放って置いたら死んでも死にきれねえ!

「アラン……!」

 オークは未だソラの装備を引き剥がし続けている。
 気付けばショートパンツも剥かれ、彼の大事な部分が露わになっていた。
 だが今の俺はそんなことを気にしていられる状態では無かった。

「ソラ、今助けるからな!」

 全力でオークに向かって剣を振り下ろす。
 しかし致命傷にはならなかったようで、オークは俺の方を向き持っていたこん棒を握り直した。
 
「あぐぁっ……」

 一撃で仕留めきれなかったせいで反撃を横腹に食らってしまった。確実に骨が何本か持っていかれただろう。痛い。苦しい。
 ……だが、その程度で止まりはしない。いや止まれない……!

「もう一発だ!!」

 ソラが落としていた短剣を拾い、オークの脳天に突き刺した。
 その瞬間、オークはソラを放し、脳天から大量の血を吹き出しながら力なく崩れ落ちた。

「ハァ……ハァ……」

 全身が痛い。オークから受けた反撃は打撃だったから目立った出血は無いはずだ。
 今すぐ出血多量でどうこうという話では無いはず……。
 だが体は限界を超えてしまっているようだ。体中の筋肉が悲鳴を上げている。きっといくつかは千切れているのだろう。
 骨も折れているはずだ。呼吸する度に異音がする……。

「アラン……アラン!」
「うぉぉっ!?」

 ソラが叫びながら抱き着いてきた。何も纏っていない彼の体が密着しているものの、痛みが酷すぎてもう感覚が無い。
 まあ変に気にするよりかはその方が助かるけどな……。

「俺、俺は……女になっちまったんだな……」
「ソラ……」

 ソラの顔は酷く怯えたものになっていた。涙こそ流れていないがすぐにでも決壊しそうな状態だ。

「怖かった……凄く怖かったんだ。もちろん死ぬのは冒険者になった時に覚悟はしていた。けど、女として蹂躙されるなんて考えたことも無かったんだ。装備を剥がされて自分の体を見た時、女になったんだって嫌でも意識させられた。その瞬間、どうしようもなく怖かったんだ……」
「……大丈夫だ。俺がいるから」

 動かない体に鞭を打ち、少しでも安心させるためにソラの体を優しく抱き返した。

 それから数日間、療養を余儀なくされた俺は部屋で寝たきり生活となった訳だが……。

「ほら、あーん」

 ソラにそう言われ仕方なく口を開ける。
 極力体を動かさない方が良いと言うことで身の回りの事はほぼソラがやってくれているのだ。
 今もこうして食べさせてもらっている。

 正直クソ恥ずかしい。
 男同士の時だったらそこまで気にすることなく割り切れただろう。
 だが今のソラは美少女だ。そんな彼にアーんしてもらうとか、なんか良くないことをしている気分になる。
 いや実際良くないのでは……?

 ……いや食事なんてまだ良い方だ。
 体を拭くときや包帯を巻き替える時は体の隅々を見られてしまう。もちろん大事な部分もだ。
 男同士でもちょっと気になる部分ではあるのに、今のソラに見られるとなんかもう恥ずかしさを通り越してすっげえ申し訳なくなってくる。
 ソラだって男のイチモツなんて見たくねえだろうに……本当にすまない……。

「……美味い。……その、色々とすまないな」
「気にしないでくれ。俺とお前の仲だろ?」
「それはそうなんだが……」

 ソラの手を見ると火傷の跡がいくつかある。
 俺のために慣れない料理をしてくれた時に出来た物だろう。
 彼は完全に俺のために動いてくれているんだ。
 なのに俺は……。

「なあ、アラン」
「……? どうした、ソラ?」

 ソラはそれまでとは打って変わって神妙な面持ちで話しかけて来た。

「俺、なんか変なんだ。あの時オークに襲われてから心がおかしくなっちまってるんだよ」
「おかしくなったって……どういう意味だよ」

 ソラの表情は徐々に不安や恐怖と言ったものが色濃くなっていく。

「なんて言うか、心まで女になっていると言うか……あの時に意識しちまってから、その、アランの視線が凄く気になるんだ」
「ッッ!?」

 なんてことだ、気付かれていたのか……!?
 確かに思い返せば事あるごとにソラの胸や尻を見ていたかもしれない。
 というかもはや無意識的に見ていたかもしれない……。

「いやすまん! その、つい見てしまうと言うか……申し訳ない!!」
「……謝らないでくれ。それについては別に良いんだ」
「……え?」

 全力で出来る限りの謝罪をしたが、ソラから返って来たのは想像もしていない言葉だった。

「もちろん男にそう言った目で見られるのは嫌だ。今まではそんなこと無かったのに、今の俺はそう言う風になっちまった。でも、その……アランはなんか違うんだ」
「違う……?」

 ソラの表情が不安そうなものから徐々に照れに似たようなものに緩んで行く。
 頬も赤く染まっていて正直とても可愛い。って、今はそういうタイミングでは無いんだ自重しろ俺。

「なんかアランのことを考えるとさ。胸の奥がドキドキすると言うか……ああ駄目だ、なんか顔がクソ熱い!」
「お、おい大丈夫か……?」

 ソラは赤くなった顔を左右に振りながら何やらボソボソと呟き始めた。

「なあアラン!」
「うわ急にどうした!?」

 何かふんぎりが付いたのか、ソラはずいと顔を近づけてきた。

「……」

 すぐそばにソラの顔がある。もう少し近づけば色々と触れあってしまいそうなほどだ。
 ぷるぷるで柔らかそうな唇が……すぐそこにある……。
 滅茶苦茶に気まずいし滅茶苦茶に緊張する。
 しかしこんな状態だと言うのに俺のアソコは元気な様だった。頼むから鎮まってくれ。そしてどうか気付かれないでいてくれ。

「俺は多分……アランのことが好きなんだと思う」
「……はぁっ!?」
 
 急にそんなことを言われたものだからつい叫んでしまった。

「お、俺の事がすっ好きってお前……!」
「わかってる。俺だって変だとは思ったさ。でもそうとしか思えないと言うか……。友情とは違うような気がするんだ。この感情は」 

 ソラは真剣な顔でそう言う。
 正直なところ俺もソラに対して、男の時の友情とは違うものを感じ始めていた。
 明らかに性別を意識したそれになりつつあった。
 見た目だけの話じゃない。ソラが俺のために色々としてくれているのを見ていると、なんか心の奥がむず痒くなる。

 だがそれをソラには言わなかった……いや、言えなかった。
 意識的にソラにはそう言った感情を抱かないようにしようとしていた。
 女としてソラを見てしまっていることを悟られないようにしていたんだ。
 彼との友情を……今まで築き上げて来た絆を……壊したくは無かったんだ。

 友情が恋心になってしまうことを、酷く恐れていたんだ。
 彼へと抱いていた感情がおかしくなってしまうことを、俺はとても怖がっていたんだ。

 きっとソラだって同じように考えていたはず。
 変に告白したところで、俺に拒絶されて最悪の結末になるかもしれない。
 ソラの男の時を誰より知っているのは俺だ。だからこそ男との恋愛は出来ないと突っぱねてもおかしくは無い。
 彼がそう考えたっておかしくは無いはずだ。
 だが、ソラはそれでも勇気を出して俺に気持ちを伝えて来たんだ。

 なら俺もそれに応えるべきじゃ無いのか……!

「……本当に、俺で良いんだな?」
「俺で、何て言わないでくれ。アランが良いんだ」
「……そうか。なら、改めてこれからもよろしくな、ソラ」
「……! ありがとう、アラン……!」

 俺とソラはそのまま互いに深く抱きしめ合った。
 なお、まだ回復しきっていない俺の体は悲鳴を上げた。

「あ、すまん……」

 ソラは俺の呻き声に気付いたのかすぐに俺の体から離れた。

「悪いなこんな状態で」
「いや、気にしないでくれ。俺のために、こんなになってまで助けようとしてくれたんだからさ。でもそうだな……」

 ソラは少し考え込んだ後、俺の下半身の包帯を外し始めた。

「ソラ……?」
「しばらくこんな状態だったんだ。アランも溜まっているだろう?」
「いや……えっ……?」

 ソラの言っていることが一瞬よくわからなかった。
 いや、わからないでいたかったのだろう。

「ほら、こんなに大きくなってる」
「……ッッ」

 恋人同士になることを選んだからと言って、すぐに全てが吹っ切れる訳では無いのだ。
 ソラに大きくなった男性器を見られるのは凄く恥ずかしい。
 今までのように仕方なく見られているのでは無く、そういった行為を目的としているから余計に恥ずかしさを感じる。

「いきなりこんなこと、大丈夫なのか……? 無理してない……よな?」
「心配しないで。大丈夫だからさ。……俺も最初はびっくりしたんだ。男性器が凄く魅力的に見え始めた時はいよいよどうかしちまったのかと思った。同じように最初は俺の体の変化にも興味があった。胸も揉んじまったよ。でも……いつしかそう言ったものが無くなって行ったんだよ」

 ソラはどこか遠い目をしながら話し続ける。

「完全に心も女になって行っているんだと思う。だからアランのことも凄く魅力的に見えた。友人としてではなく、相棒としてではなく、一人の男として……何て言うのかな、惚れてしまったって言えば良いのかな」
「ソラ……」
「だから、こういった行為ももう抵抗は無いんだ」
「んっ……」

 ソラは柔らかい手で俺の男性器を包み込み、上下に動かし始めた。

「気持ちいいか? 自分じゃ出来ないからずっとため込んでたんだろ? たくさん出して良いからな」
「はぁ……はぁ……凄いな、ソラ……」

 元男だからかソラはどう動かせば気持ち良くなるのかがわかっているようで、俺の男性器に的確に刺激を与えてくる。
 ねっとりとした動きでしごいてくることもあれば、早く素早く動かしてくることもある。
 緩急のある動きが快楽を生み出し続けている。
 
 ……駄目だこれ、癖になりそうだ。自分でやるのとは訳が違う。

「ふふっ、そろそろ出そうだな」
「あ、ああ……出る……出ちまう……! ぅっ……好きだ、ソラ!」

 凄く恥ずかしいことを口走っているような気もするが、あまりの気持ち良さに頭が上手く回らない。

「ふふっ、俺も好きだぜアラン。出そうならそのまま出しちゃって良いからな。……んちゅっ」
「むぅっ!?」

 ソラは突然キスをして来た。舌をねじ込まれ、俺とソラの唾液が入り混じって行く。
 そしてついに俺は限界を迎えた。

「んぅぅうっぅぅっ……!」

 好きな人にキスされながら射精をするのは頭が蕩けるような気持ち良さだった。

「はぁ……はぁ……」
「どうだ? 気持ち良かっただろ?」
「あ、あぁ……凄く……良かった」
「なら良かったぜ。それなら……」

 ソラは俺の耳元に顔を近づけて囁いた。

「体が完全に治ったらもっと凄いことしてあげっから……期待してろよ♡」
「もっと凄いこと……」

 もっと凄いこと。
 ぼーっとする頭の中でソラのその言葉を何度も繰り返す。

「ああ、このままだと俺も満足できねえからな。その時は寝かせないから、覚悟しておけよ?」

 ソラは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
 ……もしかしたら俺はとんでもない相手と関係を持ってしまったのかもしれないな。
 けどソラなら信用できる。
 ソラになら、どんなことをされても良いとすら思える。

「その時は……よろしくな」

 何とか頭を働かせ、そう答える。
 その瞬間に見えたソラの表情はとても嬉しそうだった。
 気のせいか見慣れたいつものソラの笑顔に見えた。

 そうだ。例え性別が変わってしまっても、ソラはソラなんだ。
 見た目は変わってしまったし関係も変わってしまった。けど、それでも俺たち二人が築き上げてきた物は無駄じゃ無かった。
 これからも困難はあるだろう。それでも俺とソラの二人なら、きっと乗り越えていけるはずだ。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

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