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病院生活・幸恵と沢渡の章
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廊下に出ると、車椅子に乗った野中幸恵に出会った。
彼女は「小児リウマチ疾患」が根治せず、現在も慢性関節リウマチで「寛解」と「再発」を繰り返していて「完治」には至っていなかった。
今回も再発をし、入院していた。
幸恵は葵より5歳年上で、悠真と同じ26歳だった。
「こんにちは」
葵のほうから挨拶すると、幸恵は人懐っこい笑顔で悠真を見上げた。
「こんにちは。この方がオートバイのエンジンで、カレーのレトルトパックを温めて食べた彼? 真冬にバイクでツーリングして、寒さにこごえて1時間も熱湯風呂に入ってた彼?」
軽くウェーブがかかったショートヘアの彼女は、小柄で幼い感じがした。その純粋さそのままで、一気に尋ねてきた。
「おまえ! そんなことしゃべってんのか!」
「あら?」
幸恵は悠真の口を見上げて小さく笑った。
「墓穴を掘ったね」
葵も彼を見上げて笑った。
「これはヘルメットが当たって、差し歯が......」
悠真はしどろもどろで弁解しながら、手を口に当てた。
「アイスホッケーでしょう? 私はあまり病院から出たことがないから、あなたのお話がとても楽しいの。全然知らない世界のことなんだもん」
幸恵は憧れるような眼差しで、悠真を見上げていた。
「あははは~」
悠真は照れて笑った。
「それじゃ、葵ちゃん。また病室に来てね。新しい本があるの」
幸恵と別れ、ゆっくりと玄関に向かいながら、葵は悠真を見上げた。
「本で思い出した。家の書庫から『赤毛のアン』のシリーズを持ってきてくれる? 親に頼んだらわからないって言うのよ。悠真なら見つけられるでしょう」
「そりゃ、わかるだろうけれど。まさか、今さら読みたくなったんか?」
「ううん。幸恵さんに貸すの。彼女、読んだことがないんだって」
「あれって、少女はたいがい読んでない?」
「読んだことがなくても、存在を知らない子はいないわね」
葵は悠真の黒い瞳の奥を、覗き込むようにじっと見つめた。
「え? 彼女は存在も知らなかったの?」
「うん。私も驚いた」
二人は待合室で、幸恵のことを話した。彼女が発病したのは9歳のときで、以来ほとんど病院で生活していた。
義務教育も院内学級だったらしい。
「情報が入り難いところだから、もし院内文庫に『赤毛のアン』がなくて、話題にも出なかったら、知らずに二十歳を過ぎても仕方がないと思うわ」
葵がこの事実を知ったとき、幸恵はいったいどれくらい膨大な量の、少女達が当たり前にしてきた事柄ができず、見てきたものを見られずに、今日に至っているのだろうかと思った。
「幸恵さんね。『寛解したかと思うとまた再発。ずっと、その繰り返しなの』そう言いながら、諦めにも似た微笑みを浮かべてたわ。それにね、『50歳、60歳で発病したんなら私も諦めるけど、どうして9歳だったんだろう』って呟いたの。ねぇ、どうしてなの? なぜ、そんなにも小さな子を選んで、リウマチは彼女の身体を蝕んだんだろう?」
「さぁな」
悠真は中空を見つめたままで、葵の問いには答えなかった。
「運命というには悲しすぎる。ただ、確かに言えることが一つだけある。間違いなく、今の彼女はリウマチだ」
悠真は呟くと、葵を見ることもせずに帰っていった。
葵も重い気持ちのまま病棟へ戻りかけた。
通りがかった病室の一室から、突然悲鳴にも似た泣き声が聞こえてきた。
「死んだか」
誰に言うでもなく、唇からその言葉が漏れた。
(人が死んでいく。人が病気に冒されていく)
葵は厭世主義者になりそうな気分だった。
(今生きてるからって、明日も生きてるとは限らない。もし今、私がこの廊下を曲がらずにまっすぐに進んだら、私の人生がまるっきり違ってくるかもしれない)
考えればいくらでも悪い方へと、思考は向いていった。
「部屋でじっとしてよう」
葵は追い立てられるように自分の部屋へ向かった。
「葵ちゃん。お茶しよう」
突然声がかかった。
「沢渡さん」
両手に杖を持ち、ゆっくりと沢渡が歩いてきた。
葵はいつも変な例えで恐縮だと思うのだが、彼の歩き方は操り人形を連想させた。
両足が突っ張った状態で、両膝が全く曲がらなかった。
その足を2本の杖で支えながら、身体を大きく左右に揺らして歩いていた。
沢渡は250ccのオートバイ・レーサーだった。
FIM世界ロードレース選手権を回っていたと聞いた。
けれど1年ほど前、練習中に事故に遭い、頚椎を損傷し、一時首から下は完全に麻痺していたそうだ。
「ごめんなさい。今日はちょっと調子が悪いから、次の機会に誘ってください」
葵は彼の姿を見て、また不安になった。
(打ち所が悪ければ、私もこうなってた)
「そう。残念だな。この間の外泊でGPの写真を持ってきたんだ。見せたかったな」
「近いうちに、お部屋に行きます」
「OK」
彼はにっと笑った。
ゴールデン・ウィークになると、患者の何割かが外泊許可を得て自宅へ帰っていった。
葵は居残り組に回った。
幸恵は家がバリアフリーになったと言って帰っていった。
外来診療も休診になり、病院自体が静まり返っていた。
それは夜になると、一層強く感じられた。
元々療養病棟は面会時間が近づくにつれ人の出入りもなくなり、沈黙の音のほうが大きくなっていった。
時間の流れ方が遅くなり、話し声も途切れ、消灯の21時を過ぎると、夜がものすごく深いところに沈み込んでしまうのだった。
普段でもそんな感じなのに、ゴールデン・ウィークで患者が少なくなっているから、物音がほとんどしなかった。
葵は廃墟に一人取り残されてしまったような不気味さを感じていた。
その夜は珍しく眼が冴えてしまい、なかなか寝つけなかった。
外来棟にある自動販売機まで行こうと、葵は部屋を出た。
もう午前零時近かった。
辺りは静まり返り、光源は非常灯とナースセンターだけだった。
葵は何気なく隣の棟を中庭越しに見た。
「え?」
葵は意外なものを見たときに発する声を上げると、慌てて壁の陰に入った。
非常灯だけが点った薄暗い階段で、沢渡が昇降の練習をしていた。
両腕の杖で身体を支え、ぎこちなく下半身を大きく左右に振り、棒のように突っ張った足を振り回して階段を昇っていた。
その姿は、鞍馬の上で開脚した足を左右に大きく振りまわす体操選手のようだった。
その彼が階段を中程まで昇ったところで、突然動かなくなった。
葵は眼を凝らして沢渡を見つめた。
足が痙攣を起こしていた。
それが治まるまで、自分の足を見つめてじっと待っている、彼のうつむき加減の背中を見ていた葵の心に、強烈な後ろめたさが沸き上がった。
(この姿は、見てはいけないものだったんじゃないか?)
葵は慌ててその場から逃げ出した。
翌日、葵は沢渡に声をかけられた。
彼の部屋で、ベルギーのレースで優勝したときの写真を見せてもらった。
表彰台の中央でトロフィーを両手で高く持ち上げて笑っている彼は、ヒーローそのものだった。
そのときのことを楽しそうに語る沢渡を見つめながらも、葵は前夜の彼の後ろ姿が、網膜にこびりついていた。
(これは過去のことだ。もうレーサーには戻れない。それは、沢渡さんが一番よくわかってるはずだ。だから、『もう、辞めよう』と言いそうになる。でも、それは絶対に言ってはいけない)
沢渡がまだ諦めていない事実は、階段を昇る背中が証明していた。
(きっと彼はすべてわかってる。それでも、諦められない自分がいるんだ)
葵は昨夜見た彼の姿は、忘れることにした。
あの頃の自分に戻りたいと願う気持ちで、今の自分を支えられるのなら、それでいいと思った。
そこから、這い上がろうとしているのだ。
「強い人だ」
部屋を出た葵は呟いた。
「ほれ。持って来たぜ」
ゴールデン・ウィークが終わると、悠真が訪ねてきた。
「おまえんちって、相変わらず空き家だな」
数冊の文庫本を入れた紙袋を床に置くと、大きな音を立てて椅子に座った。
「仕事に命をかけてる人達だからねぇ」
葵は諦めの笑い声を立てた。
「苦労したぜ。昼間は当然いないし、夜もいないときてる。仕方がないから、朝、行ったよ」
葵の両親はけっこうフランクだ。悠真のこともきっちりと受け入れている。
彼らも、昔はバイク乗りだったから、悠真と話も合うのだった。
「おまえの母親はさぁ、俺のことを息子と勘違いしてないか?」
「ああ、あの人は、眼に入った人間は誰でも使うのよ」
「訪ねたとたんに、なんて言ったと思う?」
悠真は長い足を振り回すと、左足の太股に右足を載せた。
「よいところに来たわ」
葵がくすくす笑いながら、母親の口調を真似た。
「そうだ。次に『そこのパンにバターを塗っておいて。あっ、電子レンジでミルクを温めて、カフェ・オレにしてちょうだい』って、言ったんだ」
「お疲れさま。父も『おっ! 悠真君、おはよう』とでも言いながら、悠真が入れたカフェ・オレを飲んで、飛び出していったでしょう?」
「よく知ってるじゃねぇか」
悠真は呆れ顔のまま、葵の眼の前に鍵を差し出した。
「これ、私のだわ」
「そう。『後片づけを済ませたら、書庫で本を探して鍵をかけて帰れ』って渡されたんだ」
悠真は朝食の後片づけまでさせられたのだった。
「悠真を信用してるのねぇ」
葵は鍵を受けとりながら笑った。
「だから、息子と間違えてないかって、言ったんだ!」
「悠真、次男だからねぇ。でも、後を継げとは言わないから大丈夫。自分の道は自分で進めってタイプよ」
葵はサイドテーブルの引き出しに鍵をしまいながら、可笑しそうに笑った。
「ふんっ! そりゃ、ありがてぇこった。俺んちなんか寺だからな。しがらみが百年単位だぞ? 産まれたときにはもう、将来は『坊主』って決められちまってるんだ」
悠真は自分の家の歴史に、大きなため息をついた。
「百年単位は、ちょっと長すぎるわね。でも、職業が僧侶でも、プライベートはただの悠真でしょう? それでいいじゃない。私の両親の口癖は『思いのまま生きるんだ』なんだよね。でも、一般的だとは、私は思ってないわ」
葵には自慢の両親だが、彼らは彼らなりに努力しただろうし、言い切れるだけのものを、自分の手で掴んでもいた。
「思いのまま生きることは、すべての人間に許された当然の権利だぞ。自由主義まんまじゃねぇか」
悠真は憮然と答えた。
「確かにね。身体や心が健康なら『思いのまま生きてやる!』って言えるかもしれない。でも、ここにいる人たちの何割かは、思いのまま生きられずに死んでいく。思いのまま生きるだけの、身体を持ってない人だっている。どうして志半ばで死ぬ人がいて、百歳まで生き存えることができる人もいるんだろう」
葵は悠真をじっと見つめた。その眼差しから眼を逸らした悠真は、窓から遠くを見つめて呟いた。
「それが人生ってもんだ。おんなじ道を通る奴なんかいねぇし、誰一人、同じ色をした奴もいねぇ。それが人間だ」
「割り切れないわよ」
葵は悠真の視線を追って空を見上げた。真っ青な空の中に、死体を乗せたストレッチャーや沢渡・幸恵の姿が次々浮かんだ。
「そうだな。俺だって、頭で分かってるだけだ。思いのまま生きられない『当事者』にはなりたくないし、なる気もない。だからそういうものから眼を逸らせてる。でも、おまえは毎日それを見てるから、眼を逸らせないんだ」
悠真が突然葵を抱き上げた。
「最上階にある喫茶店にいこう。気分転換だ」
悠真に抱き上げられた葵は、悠真の首に両腕を回した。
「うん」
二人は廊下に出た。ちょうどそこに幸恵が通りかかった。
葵には車椅子を扱う動作が、いつもより鈍いように見えた。
「こんにちは。おうちはどうだった?」
幸恵は少し暗い顔をした。
「ちょっと辛かったかな。疲れが溜まってて、思うように身体が動かないわ」
「大事にしてね」
「ええ。ありがとう」
幸恵は弱々しく笑った。
「ねぇ、喫茶店へいく元気もない?」
葵は誘ってみた。
「いいの?」
幸恵の顔が明るくなった。
「ええ。一緒にいきましょうよ」
悠真は先日、樹から聞いたという話をしてくれた。
「夜中の検問をさ、あいつ突破する気になったんだって」
「どうして?」
葵は運ばれてきたコーヒーに口をつけた。
「一度やってみたかった」
悠真はボソッと呟いた。
「それだけの理由でぇ? でも樹ならやりそう」
四月に来た樹の様子を思い浮かべながら、葵は納得して聞いていた。
幸恵は黙って眼を輝かせていた。
「あいつ、時速100キロで突破を試みて成功したんだけれど、警官もただでは通さなかった」
「へぇ? どうしたの?」
葵は身を乗り出した。
「警棒でヘルメットを一発叩かれたってさ」
「え――――!」
葵は人眼もはばからず、思わず叫んだ。幸恵も眼を丸くして驚いていた。
「すごいだろ? 突破する方もすごいけど、時速100キロで走り抜ける奴めがけて警棒を振り下ろして、一撃食らわせたんだぜ? お見事というしかないよ」
悠真は豪快に笑った。
「ヘルメットは?」
葵は、悠真の差し歯を吹っ飛ばしたヘルメットを想像しながら笑った。
「さすがに塗装が剥げてたね。けれどあのヘルメットは、呪われてるとしか思えない」
悠真は大きなため息をついた。
「まだ他にも、騒ぎを起こしてんの?」
「友達の原チャリに乗ってて、わき見運転しちゃったんだよ」
「それで?」
葵は再び身を乗り出した。
「はっと気がついて急ブレーキをかけたら、勢い余って、身体が原チャリを飛び越えちゃったそうだ。で、前の車に『ごっちん』と頭突きを食らわせちゃったんだよ」
「うそ......」
「......みたいな話だけれど、ホント......」
「何やってるんだろう?」
葵はソファに身を沈めて呟いた。
当然、追突した原チャリでバンパーは凹んだだろうし、ヘルメットでハッチバックドアも傷がついただろう。
「ハチャメチャな人がいるのね」
幸恵は呆れたように呟いた。
「そのヘルメットは、呪われてんのよ! 『般若心経!』。樹のヘルメットに書いてあげなさいよ! ありがたいお経なんでしょう? これ以上厄介ごとを起こさないように、お祓いすべきだわ」
葵の剣幕に悠真は驚いたような顔をしたが、やがてくすくす笑いだした。
「ああ、そうしよう」
「そろそろいいかな?」
幸恵がカップに視線を落として呟いた。
「え? なぁに?」
葵は先ほどの勢いを引きずったまま、彼女を覗き込んで大声で尋ねた。
「カップが持てるくらいにまで、コーヒーが冷めたかな? と思って」
幸恵は両手を前に差し出した。
「ちょっと手の調子が悪くて。把手に指を差し込んでも持てないの。悪いんだけれど、両手の間に載せてくれる?」
彼女はカップの大きさに合わせて、両手をすくうような形にした。
「これでいい?」
葵は一気に興奮状態から覚めて、神妙な表情で腕を伸ばし、カップを幸恵の手にそっと載せた。
彼女はぎこちない仕草で受け取り、口へ持っていった。
「ああ、おいしいわ。でも、もうすぐこのカップも、持てなくなるかもしれないわ」
幸恵は手の中のカップを見つめた。
「だるくて腕が上がらないの。でも、今日は誘ってもらってうれしかったし、こういう場所で飲んでみたかったの」
幸恵は満足そうに微笑んだ。
彼女の手の中で、カップがかすかに震えていた。
それを見た悠真は立ち上がり、幸恵の手からカップを持ち上げると、そのまま彼女の横に席を移した。
「ありがとう。肩関節がね、動きにくくなってるの」
「幸恵さんが嫌じゃなかったら、飲ませてあげるよ」
悠真は彼の胸辺りまでしかない、小さな彼女を見下ろした。
「あら! 嬉しいけど、葵ちゃんに怒られちゃうわ」
幸恵は少し頬を染めた。
「できる奴がするのは当然よ。辛いことを無理してすることないわ。苦労しなくても、できる奴がいるんだもん。使うのよ」
「ありがとう。本当はもう、ストローでしか飲めなかったの」
幸恵は悠真が持ったコーヒーを一口飲むと、言葉を続けた。
「甘えちゃった」
「こんなことでよければ、いつだって誘うわ」
「そうそう。無理をしなくちゃできないことは長続きしないから、俺もしないよ」
悠真も笑った。
長く起きていると辛いからと、幸恵は先に帰っていった。
葵達は、2杯目のコーヒーを注文した。
「以前に彼女がね、自分の指を見ながら呟いたの。関節が溶けて変形が始まると、ものすごく痛いの。その痛みが引くと、いつのまにか、こんなふうに指が曲がってるのよ」
葵達は先ほど見た、彼女の手を思い出していた。手の甲がホームベースの形ではなく、どちらかというと靴ベラの形に似ていた。
その先に、5本の指が好き勝手な方向に曲がってついていた。
人指し指は第2関節で親指に向かって65度ほど傾いていたし、中指は逆に薬指に向かって曲がっていた。
その薬指もなんとなく「ぐにゃり」と曲がった千歳あめを連想させたし、親指も少し短かった。
「それを聞いた日、自分の指が変形していく様子を想像しようとしてみたけど、できなかったわ。変な方向に曲がってる指は、どうしても認められなかった。でも彼女は9歳のときから、痛みに耐えながら、変形してく自分の指を、見つめてきてるのよ」
葵はやるせなかった。でも、何もできないこともわかっていた。
「彼女の苦しみは、けっして私にはわからない」
「ああ、幸恵さんの心の痛みには触れるな」
悠真は強い口調で言い切った。
彼女は「小児リウマチ疾患」が根治せず、現在も慢性関節リウマチで「寛解」と「再発」を繰り返していて「完治」には至っていなかった。
今回も再発をし、入院していた。
幸恵は葵より5歳年上で、悠真と同じ26歳だった。
「こんにちは」
葵のほうから挨拶すると、幸恵は人懐っこい笑顔で悠真を見上げた。
「こんにちは。この方がオートバイのエンジンで、カレーのレトルトパックを温めて食べた彼? 真冬にバイクでツーリングして、寒さにこごえて1時間も熱湯風呂に入ってた彼?」
軽くウェーブがかかったショートヘアの彼女は、小柄で幼い感じがした。その純粋さそのままで、一気に尋ねてきた。
「おまえ! そんなことしゃべってんのか!」
「あら?」
幸恵は悠真の口を見上げて小さく笑った。
「墓穴を掘ったね」
葵も彼を見上げて笑った。
「これはヘルメットが当たって、差し歯が......」
悠真はしどろもどろで弁解しながら、手を口に当てた。
「アイスホッケーでしょう? 私はあまり病院から出たことがないから、あなたのお話がとても楽しいの。全然知らない世界のことなんだもん」
幸恵は憧れるような眼差しで、悠真を見上げていた。
「あははは~」
悠真は照れて笑った。
「それじゃ、葵ちゃん。また病室に来てね。新しい本があるの」
幸恵と別れ、ゆっくりと玄関に向かいながら、葵は悠真を見上げた。
「本で思い出した。家の書庫から『赤毛のアン』のシリーズを持ってきてくれる? 親に頼んだらわからないって言うのよ。悠真なら見つけられるでしょう」
「そりゃ、わかるだろうけれど。まさか、今さら読みたくなったんか?」
「ううん。幸恵さんに貸すの。彼女、読んだことがないんだって」
「あれって、少女はたいがい読んでない?」
「読んだことがなくても、存在を知らない子はいないわね」
葵は悠真の黒い瞳の奥を、覗き込むようにじっと見つめた。
「え? 彼女は存在も知らなかったの?」
「うん。私も驚いた」
二人は待合室で、幸恵のことを話した。彼女が発病したのは9歳のときで、以来ほとんど病院で生活していた。
義務教育も院内学級だったらしい。
「情報が入り難いところだから、もし院内文庫に『赤毛のアン』がなくて、話題にも出なかったら、知らずに二十歳を過ぎても仕方がないと思うわ」
葵がこの事実を知ったとき、幸恵はいったいどれくらい膨大な量の、少女達が当たり前にしてきた事柄ができず、見てきたものを見られずに、今日に至っているのだろうかと思った。
「幸恵さんね。『寛解したかと思うとまた再発。ずっと、その繰り返しなの』そう言いながら、諦めにも似た微笑みを浮かべてたわ。それにね、『50歳、60歳で発病したんなら私も諦めるけど、どうして9歳だったんだろう』って呟いたの。ねぇ、どうしてなの? なぜ、そんなにも小さな子を選んで、リウマチは彼女の身体を蝕んだんだろう?」
「さぁな」
悠真は中空を見つめたままで、葵の問いには答えなかった。
「運命というには悲しすぎる。ただ、確かに言えることが一つだけある。間違いなく、今の彼女はリウマチだ」
悠真は呟くと、葵を見ることもせずに帰っていった。
葵も重い気持ちのまま病棟へ戻りかけた。
通りがかった病室の一室から、突然悲鳴にも似た泣き声が聞こえてきた。
「死んだか」
誰に言うでもなく、唇からその言葉が漏れた。
(人が死んでいく。人が病気に冒されていく)
葵は厭世主義者になりそうな気分だった。
(今生きてるからって、明日も生きてるとは限らない。もし今、私がこの廊下を曲がらずにまっすぐに進んだら、私の人生がまるっきり違ってくるかもしれない)
考えればいくらでも悪い方へと、思考は向いていった。
「部屋でじっとしてよう」
葵は追い立てられるように自分の部屋へ向かった。
「葵ちゃん。お茶しよう」
突然声がかかった。
「沢渡さん」
両手に杖を持ち、ゆっくりと沢渡が歩いてきた。
葵はいつも変な例えで恐縮だと思うのだが、彼の歩き方は操り人形を連想させた。
両足が突っ張った状態で、両膝が全く曲がらなかった。
その足を2本の杖で支えながら、身体を大きく左右に揺らして歩いていた。
沢渡は250ccのオートバイ・レーサーだった。
FIM世界ロードレース選手権を回っていたと聞いた。
けれど1年ほど前、練習中に事故に遭い、頚椎を損傷し、一時首から下は完全に麻痺していたそうだ。
「ごめんなさい。今日はちょっと調子が悪いから、次の機会に誘ってください」
葵は彼の姿を見て、また不安になった。
(打ち所が悪ければ、私もこうなってた)
「そう。残念だな。この間の外泊でGPの写真を持ってきたんだ。見せたかったな」
「近いうちに、お部屋に行きます」
「OK」
彼はにっと笑った。
ゴールデン・ウィークになると、患者の何割かが外泊許可を得て自宅へ帰っていった。
葵は居残り組に回った。
幸恵は家がバリアフリーになったと言って帰っていった。
外来診療も休診になり、病院自体が静まり返っていた。
それは夜になると、一層強く感じられた。
元々療養病棟は面会時間が近づくにつれ人の出入りもなくなり、沈黙の音のほうが大きくなっていった。
時間の流れ方が遅くなり、話し声も途切れ、消灯の21時を過ぎると、夜がものすごく深いところに沈み込んでしまうのだった。
普段でもそんな感じなのに、ゴールデン・ウィークで患者が少なくなっているから、物音がほとんどしなかった。
葵は廃墟に一人取り残されてしまったような不気味さを感じていた。
その夜は珍しく眼が冴えてしまい、なかなか寝つけなかった。
外来棟にある自動販売機まで行こうと、葵は部屋を出た。
もう午前零時近かった。
辺りは静まり返り、光源は非常灯とナースセンターだけだった。
葵は何気なく隣の棟を中庭越しに見た。
「え?」
葵は意外なものを見たときに発する声を上げると、慌てて壁の陰に入った。
非常灯だけが点った薄暗い階段で、沢渡が昇降の練習をしていた。
両腕の杖で身体を支え、ぎこちなく下半身を大きく左右に振り、棒のように突っ張った足を振り回して階段を昇っていた。
その姿は、鞍馬の上で開脚した足を左右に大きく振りまわす体操選手のようだった。
その彼が階段を中程まで昇ったところで、突然動かなくなった。
葵は眼を凝らして沢渡を見つめた。
足が痙攣を起こしていた。
それが治まるまで、自分の足を見つめてじっと待っている、彼のうつむき加減の背中を見ていた葵の心に、強烈な後ろめたさが沸き上がった。
(この姿は、見てはいけないものだったんじゃないか?)
葵は慌ててその場から逃げ出した。
翌日、葵は沢渡に声をかけられた。
彼の部屋で、ベルギーのレースで優勝したときの写真を見せてもらった。
表彰台の中央でトロフィーを両手で高く持ち上げて笑っている彼は、ヒーローそのものだった。
そのときのことを楽しそうに語る沢渡を見つめながらも、葵は前夜の彼の後ろ姿が、網膜にこびりついていた。
(これは過去のことだ。もうレーサーには戻れない。それは、沢渡さんが一番よくわかってるはずだ。だから、『もう、辞めよう』と言いそうになる。でも、それは絶対に言ってはいけない)
沢渡がまだ諦めていない事実は、階段を昇る背中が証明していた。
(きっと彼はすべてわかってる。それでも、諦められない自分がいるんだ)
葵は昨夜見た彼の姿は、忘れることにした。
あの頃の自分に戻りたいと願う気持ちで、今の自分を支えられるのなら、それでいいと思った。
そこから、這い上がろうとしているのだ。
「強い人だ」
部屋を出た葵は呟いた。
「ほれ。持って来たぜ」
ゴールデン・ウィークが終わると、悠真が訪ねてきた。
「おまえんちって、相変わらず空き家だな」
数冊の文庫本を入れた紙袋を床に置くと、大きな音を立てて椅子に座った。
「仕事に命をかけてる人達だからねぇ」
葵は諦めの笑い声を立てた。
「苦労したぜ。昼間は当然いないし、夜もいないときてる。仕方がないから、朝、行ったよ」
葵の両親はけっこうフランクだ。悠真のこともきっちりと受け入れている。
彼らも、昔はバイク乗りだったから、悠真と話も合うのだった。
「おまえの母親はさぁ、俺のことを息子と勘違いしてないか?」
「ああ、あの人は、眼に入った人間は誰でも使うのよ」
「訪ねたとたんに、なんて言ったと思う?」
悠真は長い足を振り回すと、左足の太股に右足を載せた。
「よいところに来たわ」
葵がくすくす笑いながら、母親の口調を真似た。
「そうだ。次に『そこのパンにバターを塗っておいて。あっ、電子レンジでミルクを温めて、カフェ・オレにしてちょうだい』って、言ったんだ」
「お疲れさま。父も『おっ! 悠真君、おはよう』とでも言いながら、悠真が入れたカフェ・オレを飲んで、飛び出していったでしょう?」
「よく知ってるじゃねぇか」
悠真は呆れ顔のまま、葵の眼の前に鍵を差し出した。
「これ、私のだわ」
「そう。『後片づけを済ませたら、書庫で本を探して鍵をかけて帰れ』って渡されたんだ」
悠真は朝食の後片づけまでさせられたのだった。
「悠真を信用してるのねぇ」
葵は鍵を受けとりながら笑った。
「だから、息子と間違えてないかって、言ったんだ!」
「悠真、次男だからねぇ。でも、後を継げとは言わないから大丈夫。自分の道は自分で進めってタイプよ」
葵はサイドテーブルの引き出しに鍵をしまいながら、可笑しそうに笑った。
「ふんっ! そりゃ、ありがてぇこった。俺んちなんか寺だからな。しがらみが百年単位だぞ? 産まれたときにはもう、将来は『坊主』って決められちまってるんだ」
悠真は自分の家の歴史に、大きなため息をついた。
「百年単位は、ちょっと長すぎるわね。でも、職業が僧侶でも、プライベートはただの悠真でしょう? それでいいじゃない。私の両親の口癖は『思いのまま生きるんだ』なんだよね。でも、一般的だとは、私は思ってないわ」
葵には自慢の両親だが、彼らは彼らなりに努力しただろうし、言い切れるだけのものを、自分の手で掴んでもいた。
「思いのまま生きることは、すべての人間に許された当然の権利だぞ。自由主義まんまじゃねぇか」
悠真は憮然と答えた。
「確かにね。身体や心が健康なら『思いのまま生きてやる!』って言えるかもしれない。でも、ここにいる人たちの何割かは、思いのまま生きられずに死んでいく。思いのまま生きるだけの、身体を持ってない人だっている。どうして志半ばで死ぬ人がいて、百歳まで生き存えることができる人もいるんだろう」
葵は悠真をじっと見つめた。その眼差しから眼を逸らした悠真は、窓から遠くを見つめて呟いた。
「それが人生ってもんだ。おんなじ道を通る奴なんかいねぇし、誰一人、同じ色をした奴もいねぇ。それが人間だ」
「割り切れないわよ」
葵は悠真の視線を追って空を見上げた。真っ青な空の中に、死体を乗せたストレッチャーや沢渡・幸恵の姿が次々浮かんだ。
「そうだな。俺だって、頭で分かってるだけだ。思いのまま生きられない『当事者』にはなりたくないし、なる気もない。だからそういうものから眼を逸らせてる。でも、おまえは毎日それを見てるから、眼を逸らせないんだ」
悠真が突然葵を抱き上げた。
「最上階にある喫茶店にいこう。気分転換だ」
悠真に抱き上げられた葵は、悠真の首に両腕を回した。
「うん」
二人は廊下に出た。ちょうどそこに幸恵が通りかかった。
葵には車椅子を扱う動作が、いつもより鈍いように見えた。
「こんにちは。おうちはどうだった?」
幸恵は少し暗い顔をした。
「ちょっと辛かったかな。疲れが溜まってて、思うように身体が動かないわ」
「大事にしてね」
「ええ。ありがとう」
幸恵は弱々しく笑った。
「ねぇ、喫茶店へいく元気もない?」
葵は誘ってみた。
「いいの?」
幸恵の顔が明るくなった。
「ええ。一緒にいきましょうよ」
悠真は先日、樹から聞いたという話をしてくれた。
「夜中の検問をさ、あいつ突破する気になったんだって」
「どうして?」
葵は運ばれてきたコーヒーに口をつけた。
「一度やってみたかった」
悠真はボソッと呟いた。
「それだけの理由でぇ? でも樹ならやりそう」
四月に来た樹の様子を思い浮かべながら、葵は納得して聞いていた。
幸恵は黙って眼を輝かせていた。
「あいつ、時速100キロで突破を試みて成功したんだけれど、警官もただでは通さなかった」
「へぇ? どうしたの?」
葵は身を乗り出した。
「警棒でヘルメットを一発叩かれたってさ」
「え――――!」
葵は人眼もはばからず、思わず叫んだ。幸恵も眼を丸くして驚いていた。
「すごいだろ? 突破する方もすごいけど、時速100キロで走り抜ける奴めがけて警棒を振り下ろして、一撃食らわせたんだぜ? お見事というしかないよ」
悠真は豪快に笑った。
「ヘルメットは?」
葵は、悠真の差し歯を吹っ飛ばしたヘルメットを想像しながら笑った。
「さすがに塗装が剥げてたね。けれどあのヘルメットは、呪われてるとしか思えない」
悠真は大きなため息をついた。
「まだ他にも、騒ぎを起こしてんの?」
「友達の原チャリに乗ってて、わき見運転しちゃったんだよ」
「それで?」
葵は再び身を乗り出した。
「はっと気がついて急ブレーキをかけたら、勢い余って、身体が原チャリを飛び越えちゃったそうだ。で、前の車に『ごっちん』と頭突きを食らわせちゃったんだよ」
「うそ......」
「......みたいな話だけれど、ホント......」
「何やってるんだろう?」
葵はソファに身を沈めて呟いた。
当然、追突した原チャリでバンパーは凹んだだろうし、ヘルメットでハッチバックドアも傷がついただろう。
「ハチャメチャな人がいるのね」
幸恵は呆れたように呟いた。
「そのヘルメットは、呪われてんのよ! 『般若心経!』。樹のヘルメットに書いてあげなさいよ! ありがたいお経なんでしょう? これ以上厄介ごとを起こさないように、お祓いすべきだわ」
葵の剣幕に悠真は驚いたような顔をしたが、やがてくすくす笑いだした。
「ああ、そうしよう」
「そろそろいいかな?」
幸恵がカップに視線を落として呟いた。
「え? なぁに?」
葵は先ほどの勢いを引きずったまま、彼女を覗き込んで大声で尋ねた。
「カップが持てるくらいにまで、コーヒーが冷めたかな? と思って」
幸恵は両手を前に差し出した。
「ちょっと手の調子が悪くて。把手に指を差し込んでも持てないの。悪いんだけれど、両手の間に載せてくれる?」
彼女はカップの大きさに合わせて、両手をすくうような形にした。
「これでいい?」
葵は一気に興奮状態から覚めて、神妙な表情で腕を伸ばし、カップを幸恵の手にそっと載せた。
彼女はぎこちない仕草で受け取り、口へ持っていった。
「ああ、おいしいわ。でも、もうすぐこのカップも、持てなくなるかもしれないわ」
幸恵は手の中のカップを見つめた。
「だるくて腕が上がらないの。でも、今日は誘ってもらってうれしかったし、こういう場所で飲んでみたかったの」
幸恵は満足そうに微笑んだ。
彼女の手の中で、カップがかすかに震えていた。
それを見た悠真は立ち上がり、幸恵の手からカップを持ち上げると、そのまま彼女の横に席を移した。
「ありがとう。肩関節がね、動きにくくなってるの」
「幸恵さんが嫌じゃなかったら、飲ませてあげるよ」
悠真は彼の胸辺りまでしかない、小さな彼女を見下ろした。
「あら! 嬉しいけど、葵ちゃんに怒られちゃうわ」
幸恵は少し頬を染めた。
「できる奴がするのは当然よ。辛いことを無理してすることないわ。苦労しなくても、できる奴がいるんだもん。使うのよ」
「ありがとう。本当はもう、ストローでしか飲めなかったの」
幸恵は悠真が持ったコーヒーを一口飲むと、言葉を続けた。
「甘えちゃった」
「こんなことでよければ、いつだって誘うわ」
「そうそう。無理をしなくちゃできないことは長続きしないから、俺もしないよ」
悠真も笑った。
長く起きていると辛いからと、幸恵は先に帰っていった。
葵達は、2杯目のコーヒーを注文した。
「以前に彼女がね、自分の指を見ながら呟いたの。関節が溶けて変形が始まると、ものすごく痛いの。その痛みが引くと、いつのまにか、こんなふうに指が曲がってるのよ」
葵達は先ほど見た、彼女の手を思い出していた。手の甲がホームベースの形ではなく、どちらかというと靴ベラの形に似ていた。
その先に、5本の指が好き勝手な方向に曲がってついていた。
人指し指は第2関節で親指に向かって65度ほど傾いていたし、中指は逆に薬指に向かって曲がっていた。
その薬指もなんとなく「ぐにゃり」と曲がった千歳あめを連想させたし、親指も少し短かった。
「それを聞いた日、自分の指が変形していく様子を想像しようとしてみたけど、できなかったわ。変な方向に曲がってる指は、どうしても認められなかった。でも彼女は9歳のときから、痛みに耐えながら、変形してく自分の指を、見つめてきてるのよ」
葵はやるせなかった。でも、何もできないこともわかっていた。
「彼女の苦しみは、けっして私にはわからない」
「ああ、幸恵さんの心の痛みには触れるな」
悠真は強い口調で言い切った。
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