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オートバイ人生始まりの章
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8月末、葵のもとに、「Ninja 400 KRT EDITION キャンディパーシモンレッド&メタリックマグネティックダーグレー」が届いた。
長ったらしい名前だったので、何度読んでも覚えられなかったから、葵は、自分のバイクを「キャンレッドダグちゃん」と命名していた。
整備工場の中で輝いているそいつを見た瞬間、葵は思いっきり叫んだ。
「きゃぁぁぁ―――! 私の『キャンレッドダグちゃん!』。マジに、カッコいい―――――! 惚れた! こんなにかわいくてかっこいい色のバイク、初めて見た!」
「これがおまえの身体の一部になるんだぞ。大事にしてやれ」
文一がニコニコ笑っていた。
「うん」
鍵を渡された葵は、そっと自分のNinjaに近づいた。
「エンジン、かけてもいい?」
「ああ、こいつの声を聞いてやれ」
文一に言われて、葵はNinjaにまたがると、キーを差し込んでクラッチを握った。スターターボタンを押してアクセルを手前に回すと、ものすごく澄んだ低音のエキゾーストノートが轟いた。
「いい音......」
葵は聞き惚れて呟いた。
9月の第3日曜日、葵のデビュー・ツーリングが計画された。
行き先は美ヶ原を走る「ビーナスライン」がメインだ。
上田市武石側から「美ヶ原野外彫刻美術館」方面へ登り、ビーナスラインを走破して白樺湖へ降りる。その後大門峠を下って蓼科山の麓を回ってくる。そこには、「トヨタ自動車会社開山」の交通安全のみ祈願する寺がある。
長野県らしい、ワインディングロードをふんだんに盛り込んだルートだった。
朝、メンバーが文一のオートバイ・ショップに集合した。まさにそうそうたる名車ばかりだった。
1番目を惹いたのは、巧の「ドゥカティ・スーパーバイクの最終兵器」と呼ばれる「パニガーレV4R」だった。朝日に照らされて輝く深紅の車体が眩しい。ドゥカティのレーシングDNAを最大限に表現したそいつは、どのモデルよりもレーシング・マシンに近かった。
「俺の背中を追う覚悟がある奴しか、『十王』として認めねぇ」
巧が最初に葵に放った言葉だが、これはマジだった。
まだ、葵には巧の背中を追うだけの技術はない。けれど、「目標にしてやろうじゃないか!」という思いを持った。
悠真が乗ってきた、モト・グッツィのアドベンチャーモデル「V85TT」は、まさに正統派バイクといった風体だった。1980年代に見られたクラシカルで、自然と顔がほころんでくるような穏やかさあふれるバイクだ。
(なんか......。悠真らしい)
悠真はその風体から見ても「懐が深い男」だと葵は直感していた。
突然、整備工場のシャッターが開く、大きな音がした。
暗闇から、文一がバイクを押しながら現れた。スズキの「KATANA」だった。
日本刀をイメージした前衛的なデザインは、発表された1980年当時から変わっていないという。
シャッターを閉めながら、文一が声を発した。
「おっ! みんな来たな。あとは小松だけか」
その声に重なるように、遠くから不規則ではあるが、「ドコッ! ドコ・ドコ! ドコッ!」という地鳴りのような音が近づいてきた。車道を見ると、小松がタンクに炎のグラフィックを施したハーレー・ローライダーをスローダウンさせ、右折体制に入っていた。
右折する瞬間、小松は思いっきり車体を右にぶっ倒した。
(すごいパワー! さすがザク!)
葵は呆気にとられて見ていた。小松が到着すると、それぞれが自分のオートバイに火を入れた。葵も慌ててスターターボタンを押した。
「それじゃ、行きますかね。巧。今日から葵が一緒だ。忘れんなよ」
悠真の注意に巧は無言で頷くと、最初に動き出した。
「葵は俺の後ろをついて来い」
悠真がシールドを降ろして動き出した。
葵は頷き、悠真の後に続いた。葵が道路へ出たら、続いて文一・最後尾にハーレーの小松が続いた。
上田市武石口から登り始めると、カーブごとにNO.60とか数字が書かれていた。
つまり、ビーナスラインへ入るまでのカーブすべてに、ナンバーが打たれているのだった。
葵はその数字が減っていくのを数え、ドキドキしながらも巧みに「キャンレッドダグちゃん」を操り、急カーブを登っていった。
標高2000メートルの山肌を這うように造られたビーナスラインの連続したカーブは、オートバイにはとても曲がりやすかった。
悠真の背中を見ながら、彼を真似て体重移動させると、葵も軽々と曲がれるのだった。
葵は悠真の背中を手本として走り続けた。その様子を後ろの文一や小松が見つめながら、後続の自動車から葵を守っていることに気がついた。
(ああ、ベテランと一緒に走るって、こういうことだったのか)
葵は文一の言葉を実感していた。
ビーナスラインの途中にある「霧の駅」が近づくと、悠真が先頭を走る巧を追い越した。リーダーとして「霧の駅」で休憩する先導役をしたのだった。全員が悠真に続いた。
駐車場はかなり混んでいた。
全員が駐車できるスペースへ悠真が先導し、そこへ次々とバイクを横並びに駐車した。
「十王輪友会」は、葵以外は大型オートバイだ。かなりの威圧感がある。しかも巧のドゥカと小松のハーレーの爆音は、生半可なものではない。
駐車場にいた、ほぼ全員の視線が集中した。しかし、仲間は慣れているのか、全く気にしていないようだった。
ただ、葵がヘルメットを取ると、その視線に「驚きの音」が加わった。
(う......っ! 私だよね? ぜぇ―――ったいに、私が目立ってるよね)
葵は「オートバイに乗る女」として注目を浴びていた。その視線を、仲間も気がついた。これは彼らにとっても初体験だった。
自分たちのオートバイに注がれる視線には慣れていたが、「女連れ」に対するある種「羨望」の眼差しは、一瞬どうしたものかと、持て余した。
それは葵の容姿が大きなウエイトを占めていた。体格的に250ccがしっくりと身体に馴染む女性が多く、400ccに乗る女性ライダーは少なかった。
しかし葵は、身長が168センチメートルあったので、Ninjaに乗っても足がペタンと地についた。オートバイを垂直に保てるだけの身長があれば、重さに苦労することはない。大地に垂直に立てたオートバイの重量は「ゼロ」だ。ゼロのものならば、女でも扱える。
しかし、生身の身体を晒す危険まで冒して、オートバイに乗る女性は少ない。
加えて男は理由もなく、「女は化粧をする生き物」とインプットされている。しかし、化粧をしてヘルメットを被る女性はいない。
きれいにファンデーションを塗り込んで顔を作っても、オートバイに乗れば、ヘルメットの中の顔は、汗でどろどろに溶けてしまう。当の本人だって、フルフェイスのあごの部分に、ファンデーションをべったりとこすりつける趣味は持ち合わせていない。
そうなると男という奴は「化粧をしなくても、鑑賞に堪えうるほどの美人」という限定品に絞ってくる。
赤いフルフェイスのヘルメットを取ったら、濡れ羽色のロングヘアが流れ落ち、モデル並みの超美形が出現すると信じて疑っていなかった。それはまさに「ルパン三世の峰不二子」の世界だった。
滅多にお眼にかかれない、世界最高レベルの大型オートバイのみのライダーズ・クラブの中に、「峰不二子」級の女まで混じっているのだ。中型二輪で、しかも男だけのライダーズ・クラブから、羨望の眼差しで見られてもおかしくはなかった。
(これからは、これが当たり前になるのか)
おそらくメンバー全員が抱いた感情だ。
葵を「十王」に加えたのは自分たちだ。しかし同時に、葵をただの「美人女性ライダー」のままにしておくつもりは全くなかった。
「十王」の名に相応しいライダーに育てることが、自分たちの使命だとも考えていた。
「行くぞ」
葵に集中している視線を、あえて断ち切るように悠真が声をかけた。
他の奴らはもう、オートバイから離れ始めていた。
葵も無視して、仲間の後について歩き出した。駐車場には、マツダの「ロードスター」が十数台、連なって停車していた。ロードスターのコンセプトは「人馬一体」だ。オートバイに近い自動車ともいえる。
「ねぇねぇ、あれは何ですか?」
悠真の後を小走りでついていきながら、葵は大きな声で尋ねた。
「ミーティングだよ。あれは『ロド』ファンたちが集まってきたんだな。彼らが並んで走ってると、オートバイでもさすがに追い越しはできない。少し時間をずらしたほうがいいな。『ジャガバタ』を食おうぜ」
「じゃがばた? って、ふかしたジャガイモにバターをトッピングしたやつですか?」
葵が尋ねるより前に、仲間はもう、ほったて小屋に到着していた。
「なに? 葵はこの道の駅の名物を知らなかったんか? 地元じゃ有名だぞ?」
悠真は支払いを済ませると、葵にも同じように促した。
五百円を支払うと、おじちゃんがトレイにふかしたジャガイモを載せて切り分け、渡してくれた。
「好みで塩を振りかけろ。んで、『これでもか―――!』ってくらいバターを載せれば旨いぞ」
仲間たちを見ると、ドカッと置いてある、大きな缶に詰め込まれたバターをすくい、ジャガイモの姿が見えなくなるほど大量に載せていた。
(ジャガバタじゃなくて、バタジャガじゃない?)
葵も塩を振りかけると、彼らに倣って山盛りのバターをジャガイモの上に載せた。
ベンチの空いたところに座ると、隣りの小松が割りばしを口にくわえて割っていた。葵もバターがたっぷりとかかっているというよりも、バターに浮いているジャガイモを口に入れた。
「旨っ! なにこれ? マジに美味すぎるんだけど」
葵はバターの中で浮いているジャガイモを頬張り始めた。
「ビーナスラインに来たら、こいつを食わないと始まらねぇんだよ」
無口のはずの小松が、葵を見てにやりと笑った。
食べている最中に、「ロド」たちは隊列を組んで車山方面へと走り出していた。
「ロドたちが出たばかりだ。グライダーでも見にいくか」
トレイをごみ箱に捨てながら、悠真が空を見上げた。
雲一つない真っ青な空に溶けるように、白いグライダーが音もなく、ゆうるりと飛行していた。
「飛んでる......」
葵は驚いてグライダーを見上げた。
数百メートル先にグライダーが静かに着陸した。
高原の涼しい風に吹かれながら、グライダーの発着場を目指して全員が歩き出した。けれど、誰もしゃべらない。
(男だけって、会話がないんかな? 共通の話題って、う―――ん。オートバイだけだ。これは、今出す話題じゃないよね)
葵も沈黙の中でただ歩いていた。そこにいるだけで十分だった。
葵は初めて仲間がいる、ロング・ツーリングを心置きなく堪能した。
オートバイ・ショップに戻ると、全員がヘルメットをとった。
「葵。初めてのツーリングの感想はどうだ?」
悠真が葵に尋ねた。
「すっごく気持ちよかったです。風がもろに私に当たってくる感触は、想像した以上でした。なんか、自然の一部になってた気がします。五官すべてで、自然を感じました。空の青は、どこまでも『蒼』だったし、肌を撫でていく風は、優しかった。カーブを曲がるとき、車体とともに身体を倒すとぞくぞくしました」
葵は興奮して叫んだ。
「そうだな。初ツーリングにしては、よく俺についてきたな。まぁ、悠真の背中を見て走ればいい。こいつは『バイク乗り』の背中をしてる。悠真から、ライディングスタイルは盗め」
「骨川筋子」から「十王」に格上げを認めた巧が笑った。
「後ろは任せろ。俺と小松が守ってやる。おまえは自分が走りたいように走れ。Ninjaは、ちゃんとおまえの身体の一部になってたぞ。大事にしてやれ」
「うん!」
文一の言葉に、葵はタンクを優しく撫でた。
「十王輪友会」としてのツーリングは月に1度しかなかったが、葵は休日、車庫から「キャンレッドダグちゃん」を出してきて、スターターボタンを押す。
それから、空を見上げる。
「へそ」にいる葵は、頭の中に地図を思い浮かべる。
長野県はバイク乗りにとっては、「峠の聖地」だ。志賀高原もいい。白馬もちょっとおしゃれな北アルプスを楽しめる。南下すれば八ケ岳や清里方面を走れる。
「よし。今日は碓氷峠を降りて、高崎にでも行くか。『アレキサンドライト』で、おいしいコーヒーを飲む。目的はそれだけ」
葵は旧国道18号を南下した。
風が直接葵の身体に当たり、後方へとすり抜けていく。
それは、生身を晒しているからこそ感じられるものだ。
走る。
風になって走る。
大きな熱いエンジンを両足の間に抱え、そいつが放つ咆哮と会話する。
峠では、カーブの一番深いところにあるクリッピングポイントに視線を固定する。それだけで「キャンレッドダグちゃん」は葵の身体を傾斜させ、インにあるクリッピングポイントへと突き刺さる。
刺さった瞬間にアクセルをふかすと、葵たちはきれいにアウトへと抜けて身体が真っ直ぐになる。
これがコーナリングの楽しさだ。
けれどその行為には、自身の限界がある。
力量を超えたスピードで曲がろうとしたら、曲がり切れずにセンターラインを越えて対向車と激突するか、強引にインへ突っ込むとクラッシュする。
つまり「死」が待っている。
バイク乗りは、そこを見極める冷静さを忘れてはいけない。
「アレキサンドライト」の店内には所狭しと、マスターが撮った、日本中の街に沈む「夕焼け」の写真が飾られていた。
(いつか私も この夕焼けを見にいこう)
葵は、彼女のために丁寧にドリップされたコーヒーを飲むと、マスターに別れを言い、帰路に就いた。
12月になると、会としてのツーリングは終わったが、月1の集会はあった。
葵にとって「2月」は鬼門だった。必ずと言っていいくらいに、インフルエンザに罹るのだった。
「か......身体中が......痛い。今年もインフルエンザに罹っちゃったよ!」
こうなったらもう、甘んじてインフルエンザの洗礼を受けるしかなかった。
「毎年毎年! なんで、こうなるんかな?」
葵はベッドに体を横たえ、ため息をつくしかできなかった。
今年の2月も中旬頃やっとインフルエンザが治ったが、ズドーンと堕ちていた。
集会へのそのそといくと、悠真だけが来ていた。
「ちわぁ―――っす」
葵は、気の無い声で悠真に挨拶をした。
「よう。どうしたんだ? 顔が能面みたいだぞ?」
悠真が不思議そうな表情で声をかけた。
「私、2月って駄目なんです。『鬼門』って言うんですか? いいことがないんです。インフルエンザに必ず罹って、ごそっと体力削られるんですよ。気も滅入るし。もう立ち上がれないんじゃないかってくらい、堕っこちるんです」
葵はソファに座ると、クッションを抱き締めて顔を埋めた。
「ふ―――ん」
しばらく考えていた悠真が、ポンっと手を叩いた。
「おおっ! だから2月は短いんだ」
「え?」
悠真の言葉に、葵は顔をあげると彼を見つめた。
(2月は短い?)
葵の脳裏に7×4のマス目にきっちりと数字が入っている、2月のカレンダーが浮かんだ。
2月は大嫌いだ。できれば消滅して欲しいくらいだ。
でも、待てよ? 葵は悠真を見つめながら、「2月は他の月より短い」という事実に、初めて気がついた。
(なるほど、わずか2日か3日でも、2月は他の月より短い。だったら、その3日分、辛い時間を得しているってことだよね? この人は1年分のカレンダーが頭の中にあって、その中から2月だけが特別短いことに気がついたんだ。んで、それは『辛い月』だから短いんだって、考えたのよ)
葵は、悠真の思考のおおらかさに驚き、自分とは全く別な価値観を持っていることに、急速に魅入られた。
(おそらくこの人は、私とは『落ち込む場所』が違う)
葵は悠真が見ている世界にあこがれを抱いた。
きっとこの人は、これからも全く違う世界を見せてくれるとも思った。
「あのね、あのね。私、ジンクスがあるんです! 2月の最後の日は絶対に晴れるって信じてるんです。特にマスからはみ出した閏日の29日は、ぜ――――ったいに晴れる! 青空を見上げて、奈落の底から復活するんだ! って、決めてるんです」
葵のはしゃいだ声に、悠真はちょっとびっくりした顔をしたが、うつむくと、くすっと笑った。やがて、葵を見つめると口を開いた。
「おまえ、スキーできる? もし28日が快晴だったら、スキーに誘ってやろう」
「本当ですか? 私、これでも2級を持ってるんです」
「へぇ、すごいじゃないか。俺は1級。バイク乗りのカーブでの体重移動と、スキーのパラレルの体重移動が同じってことは、当然おまえも感覚で知ってるよな。雪国のバイク乗りって、スキーもうまい奴が多いんだ。巧なんか、トライアスロンの国体強化選手だぜ。あいつの身体に無駄な贅肉がないのは、そのせいだ。あいつはいつも限界ぎりぎりで自分を鍛えてる」
「ああ、それであんなに、精神が研ぎ澄まされてるんだぁ~」
葵が眼をぱちくりしていると、悠真は何か言いたそうな顔をしたが、言葉にはせず、28日が快晴だったらスキーに行く約束をした。
葵と悠真が付き合うきっかけは、「2月は短い」という言葉だった。
長ったらしい名前だったので、何度読んでも覚えられなかったから、葵は、自分のバイクを「キャンレッドダグちゃん」と命名していた。
整備工場の中で輝いているそいつを見た瞬間、葵は思いっきり叫んだ。
「きゃぁぁぁ―――! 私の『キャンレッドダグちゃん!』。マジに、カッコいい―――――! 惚れた! こんなにかわいくてかっこいい色のバイク、初めて見た!」
「これがおまえの身体の一部になるんだぞ。大事にしてやれ」
文一がニコニコ笑っていた。
「うん」
鍵を渡された葵は、そっと自分のNinjaに近づいた。
「エンジン、かけてもいい?」
「ああ、こいつの声を聞いてやれ」
文一に言われて、葵はNinjaにまたがると、キーを差し込んでクラッチを握った。スターターボタンを押してアクセルを手前に回すと、ものすごく澄んだ低音のエキゾーストノートが轟いた。
「いい音......」
葵は聞き惚れて呟いた。
9月の第3日曜日、葵のデビュー・ツーリングが計画された。
行き先は美ヶ原を走る「ビーナスライン」がメインだ。
上田市武石側から「美ヶ原野外彫刻美術館」方面へ登り、ビーナスラインを走破して白樺湖へ降りる。その後大門峠を下って蓼科山の麓を回ってくる。そこには、「トヨタ自動車会社開山」の交通安全のみ祈願する寺がある。
長野県らしい、ワインディングロードをふんだんに盛り込んだルートだった。
朝、メンバーが文一のオートバイ・ショップに集合した。まさにそうそうたる名車ばかりだった。
1番目を惹いたのは、巧の「ドゥカティ・スーパーバイクの最終兵器」と呼ばれる「パニガーレV4R」だった。朝日に照らされて輝く深紅の車体が眩しい。ドゥカティのレーシングDNAを最大限に表現したそいつは、どのモデルよりもレーシング・マシンに近かった。
「俺の背中を追う覚悟がある奴しか、『十王』として認めねぇ」
巧が最初に葵に放った言葉だが、これはマジだった。
まだ、葵には巧の背中を追うだけの技術はない。けれど、「目標にしてやろうじゃないか!」という思いを持った。
悠真が乗ってきた、モト・グッツィのアドベンチャーモデル「V85TT」は、まさに正統派バイクといった風体だった。1980年代に見られたクラシカルで、自然と顔がほころんでくるような穏やかさあふれるバイクだ。
(なんか......。悠真らしい)
悠真はその風体から見ても「懐が深い男」だと葵は直感していた。
突然、整備工場のシャッターが開く、大きな音がした。
暗闇から、文一がバイクを押しながら現れた。スズキの「KATANA」だった。
日本刀をイメージした前衛的なデザインは、発表された1980年当時から変わっていないという。
シャッターを閉めながら、文一が声を発した。
「おっ! みんな来たな。あとは小松だけか」
その声に重なるように、遠くから不規則ではあるが、「ドコッ! ドコ・ドコ! ドコッ!」という地鳴りのような音が近づいてきた。車道を見ると、小松がタンクに炎のグラフィックを施したハーレー・ローライダーをスローダウンさせ、右折体制に入っていた。
右折する瞬間、小松は思いっきり車体を右にぶっ倒した。
(すごいパワー! さすがザク!)
葵は呆気にとられて見ていた。小松が到着すると、それぞれが自分のオートバイに火を入れた。葵も慌ててスターターボタンを押した。
「それじゃ、行きますかね。巧。今日から葵が一緒だ。忘れんなよ」
悠真の注意に巧は無言で頷くと、最初に動き出した。
「葵は俺の後ろをついて来い」
悠真がシールドを降ろして動き出した。
葵は頷き、悠真の後に続いた。葵が道路へ出たら、続いて文一・最後尾にハーレーの小松が続いた。
上田市武石口から登り始めると、カーブごとにNO.60とか数字が書かれていた。
つまり、ビーナスラインへ入るまでのカーブすべてに、ナンバーが打たれているのだった。
葵はその数字が減っていくのを数え、ドキドキしながらも巧みに「キャンレッドダグちゃん」を操り、急カーブを登っていった。
標高2000メートルの山肌を這うように造られたビーナスラインの連続したカーブは、オートバイにはとても曲がりやすかった。
悠真の背中を見ながら、彼を真似て体重移動させると、葵も軽々と曲がれるのだった。
葵は悠真の背中を手本として走り続けた。その様子を後ろの文一や小松が見つめながら、後続の自動車から葵を守っていることに気がついた。
(ああ、ベテランと一緒に走るって、こういうことだったのか)
葵は文一の言葉を実感していた。
ビーナスラインの途中にある「霧の駅」が近づくと、悠真が先頭を走る巧を追い越した。リーダーとして「霧の駅」で休憩する先導役をしたのだった。全員が悠真に続いた。
駐車場はかなり混んでいた。
全員が駐車できるスペースへ悠真が先導し、そこへ次々とバイクを横並びに駐車した。
「十王輪友会」は、葵以外は大型オートバイだ。かなりの威圧感がある。しかも巧のドゥカと小松のハーレーの爆音は、生半可なものではない。
駐車場にいた、ほぼ全員の視線が集中した。しかし、仲間は慣れているのか、全く気にしていないようだった。
ただ、葵がヘルメットを取ると、その視線に「驚きの音」が加わった。
(う......っ! 私だよね? ぜぇ―――ったいに、私が目立ってるよね)
葵は「オートバイに乗る女」として注目を浴びていた。その視線を、仲間も気がついた。これは彼らにとっても初体験だった。
自分たちのオートバイに注がれる視線には慣れていたが、「女連れ」に対するある種「羨望」の眼差しは、一瞬どうしたものかと、持て余した。
それは葵の容姿が大きなウエイトを占めていた。体格的に250ccがしっくりと身体に馴染む女性が多く、400ccに乗る女性ライダーは少なかった。
しかし葵は、身長が168センチメートルあったので、Ninjaに乗っても足がペタンと地についた。オートバイを垂直に保てるだけの身長があれば、重さに苦労することはない。大地に垂直に立てたオートバイの重量は「ゼロ」だ。ゼロのものならば、女でも扱える。
しかし、生身の身体を晒す危険まで冒して、オートバイに乗る女性は少ない。
加えて男は理由もなく、「女は化粧をする生き物」とインプットされている。しかし、化粧をしてヘルメットを被る女性はいない。
きれいにファンデーションを塗り込んで顔を作っても、オートバイに乗れば、ヘルメットの中の顔は、汗でどろどろに溶けてしまう。当の本人だって、フルフェイスのあごの部分に、ファンデーションをべったりとこすりつける趣味は持ち合わせていない。
そうなると男という奴は「化粧をしなくても、鑑賞に堪えうるほどの美人」という限定品に絞ってくる。
赤いフルフェイスのヘルメットを取ったら、濡れ羽色のロングヘアが流れ落ち、モデル並みの超美形が出現すると信じて疑っていなかった。それはまさに「ルパン三世の峰不二子」の世界だった。
滅多にお眼にかかれない、世界最高レベルの大型オートバイのみのライダーズ・クラブの中に、「峰不二子」級の女まで混じっているのだ。中型二輪で、しかも男だけのライダーズ・クラブから、羨望の眼差しで見られてもおかしくはなかった。
(これからは、これが当たり前になるのか)
おそらくメンバー全員が抱いた感情だ。
葵を「十王」に加えたのは自分たちだ。しかし同時に、葵をただの「美人女性ライダー」のままにしておくつもりは全くなかった。
「十王」の名に相応しいライダーに育てることが、自分たちの使命だとも考えていた。
「行くぞ」
葵に集中している視線を、あえて断ち切るように悠真が声をかけた。
他の奴らはもう、オートバイから離れ始めていた。
葵も無視して、仲間の後について歩き出した。駐車場には、マツダの「ロードスター」が十数台、連なって停車していた。ロードスターのコンセプトは「人馬一体」だ。オートバイに近い自動車ともいえる。
「ねぇねぇ、あれは何ですか?」
悠真の後を小走りでついていきながら、葵は大きな声で尋ねた。
「ミーティングだよ。あれは『ロド』ファンたちが集まってきたんだな。彼らが並んで走ってると、オートバイでもさすがに追い越しはできない。少し時間をずらしたほうがいいな。『ジャガバタ』を食おうぜ」
「じゃがばた? って、ふかしたジャガイモにバターをトッピングしたやつですか?」
葵が尋ねるより前に、仲間はもう、ほったて小屋に到着していた。
「なに? 葵はこの道の駅の名物を知らなかったんか? 地元じゃ有名だぞ?」
悠真は支払いを済ませると、葵にも同じように促した。
五百円を支払うと、おじちゃんがトレイにふかしたジャガイモを載せて切り分け、渡してくれた。
「好みで塩を振りかけろ。んで、『これでもか―――!』ってくらいバターを載せれば旨いぞ」
仲間たちを見ると、ドカッと置いてある、大きな缶に詰め込まれたバターをすくい、ジャガイモの姿が見えなくなるほど大量に載せていた。
(ジャガバタじゃなくて、バタジャガじゃない?)
葵も塩を振りかけると、彼らに倣って山盛りのバターをジャガイモの上に載せた。
ベンチの空いたところに座ると、隣りの小松が割りばしを口にくわえて割っていた。葵もバターがたっぷりとかかっているというよりも、バターに浮いているジャガイモを口に入れた。
「旨っ! なにこれ? マジに美味すぎるんだけど」
葵はバターの中で浮いているジャガイモを頬張り始めた。
「ビーナスラインに来たら、こいつを食わないと始まらねぇんだよ」
無口のはずの小松が、葵を見てにやりと笑った。
食べている最中に、「ロド」たちは隊列を組んで車山方面へと走り出していた。
「ロドたちが出たばかりだ。グライダーでも見にいくか」
トレイをごみ箱に捨てながら、悠真が空を見上げた。
雲一つない真っ青な空に溶けるように、白いグライダーが音もなく、ゆうるりと飛行していた。
「飛んでる......」
葵は驚いてグライダーを見上げた。
数百メートル先にグライダーが静かに着陸した。
高原の涼しい風に吹かれながら、グライダーの発着場を目指して全員が歩き出した。けれど、誰もしゃべらない。
(男だけって、会話がないんかな? 共通の話題って、う―――ん。オートバイだけだ。これは、今出す話題じゃないよね)
葵も沈黙の中でただ歩いていた。そこにいるだけで十分だった。
葵は初めて仲間がいる、ロング・ツーリングを心置きなく堪能した。
オートバイ・ショップに戻ると、全員がヘルメットをとった。
「葵。初めてのツーリングの感想はどうだ?」
悠真が葵に尋ねた。
「すっごく気持ちよかったです。風がもろに私に当たってくる感触は、想像した以上でした。なんか、自然の一部になってた気がします。五官すべてで、自然を感じました。空の青は、どこまでも『蒼』だったし、肌を撫でていく風は、優しかった。カーブを曲がるとき、車体とともに身体を倒すとぞくぞくしました」
葵は興奮して叫んだ。
「そうだな。初ツーリングにしては、よく俺についてきたな。まぁ、悠真の背中を見て走ればいい。こいつは『バイク乗り』の背中をしてる。悠真から、ライディングスタイルは盗め」
「骨川筋子」から「十王」に格上げを認めた巧が笑った。
「後ろは任せろ。俺と小松が守ってやる。おまえは自分が走りたいように走れ。Ninjaは、ちゃんとおまえの身体の一部になってたぞ。大事にしてやれ」
「うん!」
文一の言葉に、葵はタンクを優しく撫でた。
「十王輪友会」としてのツーリングは月に1度しかなかったが、葵は休日、車庫から「キャンレッドダグちゃん」を出してきて、スターターボタンを押す。
それから、空を見上げる。
「へそ」にいる葵は、頭の中に地図を思い浮かべる。
長野県はバイク乗りにとっては、「峠の聖地」だ。志賀高原もいい。白馬もちょっとおしゃれな北アルプスを楽しめる。南下すれば八ケ岳や清里方面を走れる。
「よし。今日は碓氷峠を降りて、高崎にでも行くか。『アレキサンドライト』で、おいしいコーヒーを飲む。目的はそれだけ」
葵は旧国道18号を南下した。
風が直接葵の身体に当たり、後方へとすり抜けていく。
それは、生身を晒しているからこそ感じられるものだ。
走る。
風になって走る。
大きな熱いエンジンを両足の間に抱え、そいつが放つ咆哮と会話する。
峠では、カーブの一番深いところにあるクリッピングポイントに視線を固定する。それだけで「キャンレッドダグちゃん」は葵の身体を傾斜させ、インにあるクリッピングポイントへと突き刺さる。
刺さった瞬間にアクセルをふかすと、葵たちはきれいにアウトへと抜けて身体が真っ直ぐになる。
これがコーナリングの楽しさだ。
けれどその行為には、自身の限界がある。
力量を超えたスピードで曲がろうとしたら、曲がり切れずにセンターラインを越えて対向車と激突するか、強引にインへ突っ込むとクラッシュする。
つまり「死」が待っている。
バイク乗りは、そこを見極める冷静さを忘れてはいけない。
「アレキサンドライト」の店内には所狭しと、マスターが撮った、日本中の街に沈む「夕焼け」の写真が飾られていた。
(いつか私も この夕焼けを見にいこう)
葵は、彼女のために丁寧にドリップされたコーヒーを飲むと、マスターに別れを言い、帰路に就いた。
12月になると、会としてのツーリングは終わったが、月1の集会はあった。
葵にとって「2月」は鬼門だった。必ずと言っていいくらいに、インフルエンザに罹るのだった。
「か......身体中が......痛い。今年もインフルエンザに罹っちゃったよ!」
こうなったらもう、甘んじてインフルエンザの洗礼を受けるしかなかった。
「毎年毎年! なんで、こうなるんかな?」
葵はベッドに体を横たえ、ため息をつくしかできなかった。
今年の2月も中旬頃やっとインフルエンザが治ったが、ズドーンと堕ちていた。
集会へのそのそといくと、悠真だけが来ていた。
「ちわぁ―――っす」
葵は、気の無い声で悠真に挨拶をした。
「よう。どうしたんだ? 顔が能面みたいだぞ?」
悠真が不思議そうな表情で声をかけた。
「私、2月って駄目なんです。『鬼門』って言うんですか? いいことがないんです。インフルエンザに必ず罹って、ごそっと体力削られるんですよ。気も滅入るし。もう立ち上がれないんじゃないかってくらい、堕っこちるんです」
葵はソファに座ると、クッションを抱き締めて顔を埋めた。
「ふ―――ん」
しばらく考えていた悠真が、ポンっと手を叩いた。
「おおっ! だから2月は短いんだ」
「え?」
悠真の言葉に、葵は顔をあげると彼を見つめた。
(2月は短い?)
葵の脳裏に7×4のマス目にきっちりと数字が入っている、2月のカレンダーが浮かんだ。
2月は大嫌いだ。できれば消滅して欲しいくらいだ。
でも、待てよ? 葵は悠真を見つめながら、「2月は他の月より短い」という事実に、初めて気がついた。
(なるほど、わずか2日か3日でも、2月は他の月より短い。だったら、その3日分、辛い時間を得しているってことだよね? この人は1年分のカレンダーが頭の中にあって、その中から2月だけが特別短いことに気がついたんだ。んで、それは『辛い月』だから短いんだって、考えたのよ)
葵は、悠真の思考のおおらかさに驚き、自分とは全く別な価値観を持っていることに、急速に魅入られた。
(おそらくこの人は、私とは『落ち込む場所』が違う)
葵は悠真が見ている世界にあこがれを抱いた。
きっとこの人は、これからも全く違う世界を見せてくれるとも思った。
「あのね、あのね。私、ジンクスがあるんです! 2月の最後の日は絶対に晴れるって信じてるんです。特にマスからはみ出した閏日の29日は、ぜ――――ったいに晴れる! 青空を見上げて、奈落の底から復活するんだ! って、決めてるんです」
葵のはしゃいだ声に、悠真はちょっとびっくりした顔をしたが、うつむくと、くすっと笑った。やがて、葵を見つめると口を開いた。
「おまえ、スキーできる? もし28日が快晴だったら、スキーに誘ってやろう」
「本当ですか? 私、これでも2級を持ってるんです」
「へぇ、すごいじゃないか。俺は1級。バイク乗りのカーブでの体重移動と、スキーのパラレルの体重移動が同じってことは、当然おまえも感覚で知ってるよな。雪国のバイク乗りって、スキーもうまい奴が多いんだ。巧なんか、トライアスロンの国体強化選手だぜ。あいつの身体に無駄な贅肉がないのは、そのせいだ。あいつはいつも限界ぎりぎりで自分を鍛えてる」
「ああ、それであんなに、精神が研ぎ澄まされてるんだぁ~」
葵が眼をぱちくりしていると、悠真は何か言いたそうな顔をしたが、言葉にはせず、28日が快晴だったらスキーに行く約束をした。
葵と悠真が付き合うきっかけは、「2月は短い」という言葉だった。
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