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刀葉林(とうようりん)

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 結局みちるたちは兎に問い正すのは止めた。

 とにかくかぐや姫の欠片を、すべて捜しだせばいい。

 どうせ出る切符は、6道のうちのどこかだ。

「今度は、あたしが選ぶね」

 みちるは拓郎を見上げた。

 彼女は躊躇ためらうことなく、灰色の扉の前に立ちボタンを押した。

「時すでに遅し駅」と、切符に書いてあった。

「なに? これ」

 みちるは後ろで待っていた拓郎を振り返った。

「畜生道と餓鬼道でないことは確かだ」

 拓郎は切符を覗き込んで言った。

「当たり前のすっとぼけが! もう行ってきたじゃんか! ここはどこかな。人間界ならいいな。あたし、疲れちゃった。自分の部屋のベッドで、ゆっくりと眠りたい」

「そうだな。確かに疲れた。俺も眠りたいよ」

 二人は「時すでに遅し駅」行きの電車が発着するホームに向かった。

 ホームに立ってすぐに、今までと違っていることに気がついた。

「ねえ、やけに人間が多いと思わない?」

 みちるが拓郎の袖を引っ張った。

「うん。俺も気がついた。もしかして、人間界に行くんかな?」

「そうかもしれない。ああ、そうしたら、すぐに家に帰るわ。熱いシャワーを浴びて、ぐっすり眠るの」

 みちるはうっとりと言った。

「でも、俺たちが住んでる町に着くとは限らないよ」

「ああ、そうか。でもどこでもいい、その町のホテルでもいいから、柔らかいベッドの中で眠りたい」

 みちるは夢を見るようにうっとりと呟き、電車に乗り込んだ。

 電車は今までとは比べ物にならないくらい、長い時間走っていた。

 みちるは幾度いくどとなく欠伸あくびをした。

 拓郎はゆっくりとみちるの肩に手を回し、彼女を自分の胸に寄りかからせた。

「こうしてるほうがよく眠れるよ。どうせ目的地までノンストップの電車だ」

 言われるまま胸に頭を預けたみちるは、すっと睡魔の中へ入った。

 やがて、電車がブレーキをかけて、減速し始めた音で眼が覚めた。

「うーん。着いたの?」

 みちるは眼を擦った。

「そろそろみたいだ」

 拓郎は窓のほうを向いていた。

「あら? 夜なのね? よーし、ホテル捜しだ」

 みちるは伸びをした。

「ここは、人間界ではないようだ」

 窓の外を食い入るように見つめていた拓郎が、暗い声で呟いた。

 みちるも窓に張りついた。

 窓の外は、黄昏時たそがれどきよりもやや夜に近い色をしていた。

 風景は黒いシルエットのような状態だった。

 限りなく黒に近い紺色の空の至る所が、赤い炎で焼けていた。

 その反射で、奇怪な山が、火を吹いている姿が見て取れた。

 耳には 遠い雷鳴と、出所のわからない地鳴りが聞こえてきていた。

「不気味なところ」

 みちるは身震いした。

「地獄か、修羅だな」

 拓郎がぽつりと言った。

「覚悟しとけよ、うさぎ。この世界は、今までのようにはいかない気がする」

 拓郎が真顔で言った。

 みちるは窓の外を食い入るように見つめている、拓郎の横顔を眺めた。

「どうしたんだよ、うさぎ」

 拓郎が不思議そうに言った。

「いや、拓郎がさ、おおぼけをかまさなくなったなって、思ったの」

 みちるの言葉に、拓郎のほうが驚いたようだった。

「そうかな?」

「うん。今まで自分がどうなろうが、本当に興味なかったんじゃない?」

 みちるは言ってしまってから、「しまった」と思った。

 案の定、拓郎の眼が曇った。

「今でも思ってる」

 拓郎はみちるから眼をそむけた。

 ホームに降りると、例によって、つるっぱげの駅員が乗客に声をかけていた。

「あれが地蔵らしい」

 拓郎がみちるに耳打ちした。

「ほらほら、あんたたちも並んで。これから閻魔大王の審判を受けるんだ。その列の一番後ろにつくんだ」

 二人は地蔵に背中を押された。

「閻魔大王? うさぎ、ここは地獄だ」

 拓郎の顔が青ざめた。

 いくら仏教にうといみちるでも、閻魔さまくらい知っている。

「私たちも、地獄で罰を受けるの?」

「わからない。でも、今までちゃんと旅行者でいられたんだから、話せばわかるよ」

 みちるを安心させようと答えた拓郎の声も震えていた。

「この人たちはなんらかの罪を犯したから、ここに来たのよね?」

 みちるは大勢いる人間たちを眺めて言った。

「ああ、まさに『時すでに遅し』なんだ。『後の祭り』で、ここに来て罰を受けるってわけだ」

 拓郎はもっともだという顔で言った。

「私たちもその仲間だったりして」

 みちるは震える声だが、冗談めかして必死で言ってみた。

「旅行者として、認められなければ、そうだ」

(がっぴ――――――ん)

 みちるはまじで恐ろしくなった。

 そうこうしているうちに、ついにみちるの番になった。

「おまえの罪状は……」

 閻魔大王は自分の前にある書類をめくった。

「おや? ないではないか。おまえ、まさか旅行者か?」

「そうです」

 みちるはうなずいた。

「おかしいな。ここには、旅行者は来られないはずなのに」

 閻魔大王は、隣に控えている鬼に耳打ちした。

「切符を見せろ」

 鬼はみちるに近づくと、かぎのような鋭い爪のついた手をみちるの前に出した。

 みちるはポケットから切符を出すと鬼に差し出した。

「大王さま、確かにここの切符を持ってます」

 鬼は切符に眼を落としたまま言った。

「そうか。ならば仕方がない。この世界を見て行くがいい。おまえたち人間は、悪いことだと知っていながら悪いことをする。それが罪だ。だからここには人間ばかりが来る。困ったもんだ」

 閻魔大王は、みちるを睨みつけて言った。

「ところで、その真っ黒い眼鏡を取れ。おまえがやがて死んだとき、ここに再び来るような人間か、今のうちに見てやる。もしそうだったら、これからい改めることもできよう」

「これは……」

 みちるは一歩後退して、サングラスを押さえた。

「わしの命令が聞けないというのか!」

 閻魔大王の身体が、真っ赤な炎に包まれた。

「取れ!」

 みちるの隣にいた鬼が、サングラスをはたき落とした。

「あっ」

 小さく叫んだみちるは、慌てて両手で顔をおおった。

「その手を取れ!」

 鬼はみちるの手を顔から引きはがした。

 彼女はさらに抵抗して、今度は堅くまぶたを閉じた。

「眼を開けろ。さもなくば、えぐりだしてやるぞ!」

 鬼が烈火のごとく叫んだ。

 みちるは遂に諦め、ゆっくりと眼を開いていった。

 地獄の燃え盛る炎を映して、赤い光彩はより鮮やかな光を放っていた。

(てめ――――――! やりやがったなぁ――――――!)

 みちるは心の中で唸り声をあげた。

「なんと……」

 真っ赤に光る眼にすくめられた鬼は、驚きを隠し切れずに呟いた。

「ほらみろ! さすがの鬼だって驚くだろうがぁ――――――!」

 みちるは烈火のごとく怒鳴った。次に閻魔大王を見据えた。

「ほう、眼が赤い人間とは珍しい。それに、おまえ……」

 さすがに、閻魔大王は動じなかった。

「あたしの中には、天帝が放った兎がいる。そのためにこの眼は赤くなった」

 みちるは唸ように低い声で言った。

 彼女が屈辱の怒りと悔しさで「念動力」を発してしまうと感じた拓郎は、慌ててみちるを背後から抱きしめた。

「天帝の兎?」

 閻魔大王は今までの横柄な態度とは打って変わって、気さくな声で言った。

「そうです」

 拓郎は怒りのために、身体を小刻みに震わせているみちるをかばうように、彼女を振り向かせて抱きしめると答えた。

「おまえは?」

「私の中にも、天帝が放った兎が入ってます」

 拓郎の言葉に、閻魔大王は書類をめくった。

「ふむ、おまえの書類もない。旅行者だな」

「はい。私たちは、天界から消えてしまったかぐや姫を捜して、6道の中を旅してるんです」

 やっとみちるは落ち着いたようだった。

 拓郎から離れて閻魔大王を見つめた。

「ほう? あのかぐや姫がいないのか」

 大王は拓郎の話に興味を持ったようだった。

「そのようです」

「で、かぐや姫を捜しに、この地獄に来たというわけか」

「そうです」

「ふうん。かぐや姫がいないとなると、阿修羅が喜んでおろうな」

「そうなんですか?」

 二人はきょとんとした。

「なんだ、おまえたち、かぐや姫の役割も知らずに捜しておったのか?」

 閻魔大王は高らかに笑った。

「はあ、どこかの庭の主だとか」

 拓郎がすっとぼけた声で呟いた。

歓喜苑かんきおんだ。歓喜苑には天人の不死の薬、四種の甘露かんろや、衣服・装身具を作る劫波樹こうはじゅがあるんだ。それらを管理してるのが、かぐや姫だ」

 閻魔大王の言葉に、みちるは何か思い出しかけた。

「なんだか、知ってるような気がします~」

 みちるは閻魔大王を見上げた。

「あれ? 俺も。その女の人を知ってるかも?」

 拓郎も首をかしげていた。

「どうした?」

「いえ。なんか記憶の中にあるような……」

「当然だろう? 天帝が放った兎がおるのだから」

 閻魔大王が格好を崩して笑った。

「ああ、そうか」

「で、わしはかぐや姫がどこにいようが、天界が困ろうが、ついでに阿修羅がどう思おうが、興味はない」

「あなたに興味がなくても、あたしには重要な問題です。この眼が元の黒い瞳に戻るのなら、あたしは業火ごうかの中でも泥水の中でも、行かなくてはならないんです!」

 みちるは唇を尖らせて反論した。

 閻魔大王はみちるの言葉に、大きな口を開けて笑った。

「わかった。わかった」

 閻魔大王はゆっくりと立ち上がると、みちるたちに近づいた。

 巨大な身体を曲げ、みちるの額に指を当てた。

「わしの力を少し分けてやろう。この世界の罰を受けないようにな。鬼たちにも手を出さないように伝えておこう。だが、かぐや姫は自分たちで捜せ」

 閻魔大王は、拓郎の額にも同じように指を当てた。

「十分です。ありがとうございました」

 拓郎が大王を見上げて言った。

「ふむ、おまえは地獄を見なければならない男のようだ」

「はあ?」

 拓郎はきょとんとして言った。

「いや、なんでもない。それよりおまえだ。おまえは修羅に憑かれてる」

 大王はみちるを指差した。

「早く抜け出せ。この使命を果たして、修羅を過去のものとしろ。さもなくば人間の生を終えたあと、お前は修羅へ行くことになるだろう」

 閻魔大王は2人に背を向けた。

「さあ、行ってもいいぞ。地獄は広いからな。気をつけて行け」

 鬼が2人を列から押し出した。

 離れた場所に追いやられたみちるは、小刻みに震えていた。

「修羅に憑かれてる? あったりまえじゃない! こぉーんな眼をしたあたしが生きてくには、阿修羅になって戦わなければならなかったのよ! 地獄の鬼でさえびびってたじゃない。あたしだってこんな気持ちでいる自分を、情けなく思ってるわよ。だけど仕方がないじゃない。誰も助けてくれなかった。何ができたっていうのよ!」

 みちるは投げやりな口調で、吐き出すように言った。

「みちる」

 拓郎はもう「うさぎ」とは呼ばなかった。

 言葉とは裏腹に小刻みに震えている彼女を、強く抱きしめた。

「誰がこのんで、阿修羅になんかなるか!」

「わかったから。だから、もう自分を追い詰めるな。あと、少しじゃないか。かぐや姫さえ見つかれば、おまえの眼は元に戻る。そうしたら、必ず心も以前のおまえを思い出す」

 拓郎は落ちていたサングラスを拾い、力一杯遠くへ投げてしまった。

「あっ、なにするの」

 みちるは慌てて、サングラスを拾いに行こうとした。

「行くな。もう必要ない。あんなもので本当の自分を隠すな。おまえならきっと本当の自分で、どんなやつとでも立ち向かえる」

 拓郎はみちるの手首をつかんで言った。

「拓郎……」

 みちるの中から、急速に怒りの感情が引いていった。

「だって、気持悪くない?」

 みちるはか細い声で尋ねながら、拓郎を見上げた。

「うん。おまえの光彩に炎が映ってて、澄んだ赤だよ。それよりさ、笑ってみろよ」

 拓郎はみちるの両方の頬を引っ張った。

「痛たっ、やめてよぉ」

 みちるは笑おうとしたが、じわっと涙が溢れてきた。

「可愛くて美人だぞ」

「この3年、笑った記憶ってないわ」

 みちるは恥ずかしそうにうつむいた。

「わかった! 顔の筋肉が堅くなってて、笑おうとすると引きるだろう?」

 拓郎は上体を少しかがめて、うつむいているみちるの顔を覗き込んだ。

「そ、そういえば、筋肉をどう動かせばいいのか、わからないような気がしてきた」

 みちるは自分の顔を両手でさすった。

「ばぁか、ちゃんと笑ってる」

 拓郎はみちるの手に自分の手を重ねて、筋肉を揉みほぐす真似をした。

「さぁて、閻魔さまのお許しも出たことだし、行きますか」

 一歩地獄道の中に入ってしまうと、そこは眼を背ける光景ばかりだった。

 罪人たちが鉄の爪をつけてうろうろとしていた。

 一人の時はいいのだけれど、同じ罰を下された者同士が出会ってしまうと、突然殺戮さつりくが始まるのだった。

 肉を引き裂き、骨だけになるまでそれは続いた。

 けれど、涼風りょうふうが吹いてくると、彼らは再びよみがえり、また骨になるまで戦うのだった。

 その光景はとても直視できるものではなかった。

 飛び散る血や肉、内臓を目の当たりにして、2人は嘔吐を繰り返した。

「どうしよう、拓郎。あたし、とても先へは進めない。こんな光景の中でかぐや姫を捜すなんてできない」

 みちるは地べたに座り込んで泣き叫んだ。

「うん。俺も耐え切れそうもない。いつ返り血を浴びるかと思うと、気絶したいくらいだよ。それに地獄は広すぎる。歩いて捜してたら、いくら時間があっても足りない」

 拓郎はみちるの横にぺたんと座った。

「ならば、飛べばいいだろう?」

 突然、背後で声がした。

「うぇっ!」

 驚いたみちるは、奇天烈な声を発した。

「おまえたち、閻魔さまの力を少しいただいた旅行者だろう? なんだ。その変な声は?」

 そこには鬼が立っていた。

「まだ、正常な感覚が残ってる旅行者には、耐えられない光景だろう。閻魔さまにいただいた千里目せんりがんの力を使えばいい。この場に居ながら、ここ、等活地獄とうかつじごくはもちろん、この下にある黒繩こくじょう衆合しゅうごう叫喚きょうかん大叫喚だいきょうかん焦熱しょうねつ大焦熱だいしょうねつ阿鼻あびのすべての地獄を見渡せるぞ」

 鬼は当然のように言った。

「私たちは、そんなことができるんですか?」

 みちるは、唖然として言った。

「閻魔さまができるんだから、おまえたちにもできる。かぐや姫を見つけたら念じればいい。瞬時にそこへ行ける。考えてもみろ。ただの人間がすべての地獄を歩いてたら、たった百年の寿命なんか、すぐに尽きてしまうわ」

 鬼は、耳まで裂けた赤い口を開けて笑った。

「じゃあな」

 鬼は、そこいらを歩いている罪人を掴むと口へ持っていき、おいしそうに彼らを食べながら、歩いていってしまった。

「私たち、旅行者で良かったね」

 みちるは声を震わせて言った。

「ああ、寿命が尽きても、ここには絶対に来たくないよ」

 二人は近くの木陰に座り込み、お互いの手をしっかりと握り、瞑想めいそうするかのように瞼を閉じた。

「行くぞ」

「うん」

 二人は脳裏に浮かぶ景色の中をどんどんと飛んで行った。

 地獄の最上階、等活地獄からかぐや姫を捜し始めた。

 閻魔大王に貰った力は、地獄のすべてを2人に理解させていた。

「ここにもいない」

 やがて二人は、衆合地獄へと降りていった。

 かたなのように鋭く尖った葉の生えた樹が、林になっているところがあった。

「居た!」

 二人は同時に叫んだ。

 瞬時に等活地獄の樹の下にいた肉体が、衆合地獄へ降りてきて、意識と融合した。

「やっと、かぐや姫の気配があったね」

 二人はほっとしたように林の入り口に立ち、お互いを見つめた。

「でかい樹だなぁ」

 拓郎は天に届きそうな木々が作る林を見上げた。葉っぱはやいばのように鋭く尖り、火を噴いていた。

「ここは、刀葉林とうようりんだね」

 拓郎が、ちょっと驚いたような表情で言った。

「そうね」

 確かに意外なところでかぐや姫の気配を感じると、みちるも思った。

「近づいてみよう」

 みちるたちは、ゆっくりと林の中に入っていった。

 どの樹のてっぺんにも、十二単で奇麗に着飾った女が1人いた。

「あの女の人たちは、男の人を待ってるのよね?」

「そうだ」

 みちるの問いに答えたのは、拓郎ではなかった。

 振り返ると、そこには何人かの男を両手に持った鬼が立っていた。

「おわっ!」

 二人は驚きの余り、訳のわからない叫び声を上げた。

「おまえたちが例の旅行者か。かぐや姫はここにいるんか?」

 彼らの驚きなんか気にも止めず、鬼は1本の樹に1人の男をそれぞれ置いていった。

 男は女を見つけると、懸命に樹を登り始めた。

 樹の葉はすべて刃になっていて、男に向かって下向きに葉先を向けていた。

 男の肉体を容赦なく裂いて全身血だるまにしていた。

 それでも男は、女を抱きたい一心で、樹を登り終えた。

 しかし女はいつの間にか地上にいて、男に抱かれたいと身もだえし、「あなたを一途いちずに慕って地獄に来たの。早く来て」と懇願しているのだ。

 その声を聞くと、男は再び欲情を激しく燃やし、無我夢中で樹を降り始めた。

 すると刃の葉は先を上に向け火を噴きながら、またもや男の肉体をずたずたに切り裂いた。

 やっとの思いで地上に降りると、女はまた樹の上にいて、同じ言葉を甘い吐息とともに漏らして誘い、男も同じことを繰り返しているのだ。

「たまんねぇ光景だなぁ」

 拓郎は恥ずかしそうにうつむいて、頭を掻いた。

「女の人だって、恥ずかしいわよ!」

 みちるは顔を真っ赤にして、頬に両手を当てた。

「ここには、邪淫じゃいんを犯した者がやってきて、この罰を無量むりょう百千億歳受け続けるのだ」

 鬼は笑いながら説明し、林の中へ、どんどんと男を置いていった。

 2人は顔を赤らめながら、林の中を歩きだした。

 拓郎はなりふり構わず、性欲をむき出しにして、せっせせっせと全身血だるまにしても、女を求めて木を登ったり下りたりしている『男が持つ本能』がこっぱずしかった。

 みちるも似たようなことを考えていた。

 しかし、2人はすでにかぐや姫の気配を捕えていた。

 その方角に、躊躇することなく歩いて行った。

 やがて1本の樹に眼が止った。

「あの樹だわ」

 みちるは走っていった。

「どこかしら?」

 みちるは樹を上から下へ、下から上へと眺めた。

 その樹にも、てっぺんに十二単を着た女がいて、男がちょうど血だらけになりながら登り始めたところだった。

 この頃になると、この程度の血を見ても、余り動じなくなっていた。

 ただ、欲情した男と女の姿は、眼をそむけたいものだった。

 しかし今は、そんなことに羞恥している余裕はなかった。

 とにかくかぐや姫を探そうと、2人の男女に眼を移した。

「あった、あった、拓郎。女の人が胸に抱いてる」

 かぐや姫の欠片は、欲情してとろんとした眼差しと淫らな「ぽかん口」女の、はだけた胸の中で光っていた

 みちるは拓郎を振り返りながら、樹のてっぺんにいる女を指差した。が、後方に立ちすくんでいる拓郎の形相ぎょうそうに驚愕した。

 拓郎が肩にかけていた、かぐや姫たちが入っている大事なバッグを地面に落とし、真青な顔をして彼らを凝視していたからだ。

 異様に大きく見開かれて、恐怖に小さく揺れ動いていた。

「拓郎? どうしたの?」

 みちるは死後硬直を始めた死体のようになっている拓郎を見て、背筋に冷たいものが走った。

「拓郎? どうしたの? 拓郎!」

 尋常じんじょうでない拓郎の様子にみちるは驚いて叫び、拓郎の腕を強く掴み激しく揺らした。

 けれど拓郎はみちるを全く見ていなかった。

 彼は必死で樹に登っている男と、樹の上で男が来るのを、狂おしく待っている女を凝視していた。

「うそだ!」

 拓郎は震える声でそう呟くと、地面にがくっと両膝をついて座り込んでしまった。

「うそだ、うそだ。こんなはずはない!」

 拓郎は激しく首を振って叫んだ。

「どうしたのよ、拓郎!」

 みちるも座り込み、拓郎の肩に両手をかけて、身体を激しく揺らした。

「まさか、地獄に堕ちてたなんて、思いもしなかった……」

 拓郎は二人の罪人を見つめて、涙をこぼした。

「え? も、もしかして知ってる人なの?」

 みちるは驚いて拓郎の顔を覗き込んだ。

「異母兄……の、いさむ。それに父の愛人だった俺たちの母の娘、つまり俺の双子の姉、冴子さえこだ。二人ともここに来てしまってたのか。なんでここだったんだ! なぜ俺は、それを知らなくてはならないんだ!」

 拓郎は茫然とした表情で、誰に言うでもなく呟いた。 

 みちるは拓郎の顔を覗いてぎょっとした。

 彼の眼が真っ黒な底なし沼のようだったからだ。

「かぐや姫、あなたはなぜここにいるんだ? 俺のせいで、2人は地獄に堕ちてしまったんか? それを教えるためにここへ呼んだんか?」

 拓郎は、かぐや姫の欠片を抱いている女を見上げて叫んだ。

 みちるは成す術もなく、拓郎を見つめていた。

「誰でもいい、2人を救ってくれ。こんなものは見たくない!」

 拓郎はぬかるんだ地面に突っ伏して、懇願するように叫んだ。

 みちるは拓郎の真正面で膝をついた。

「拓郎。あたしを見て。現実はあたしだけだよ」

 みちるは拓郎の頬を両手ではさんで、自分だけが見える角度で固定した。

「ここはあなたの世界じゃない。人間界で何があって、彼らがここに来たのかは知らないけど、彼らはすでに地獄に転生してるの。あなたの知ってる、お異母兄おにいさんでもお姉さんでもないの」

 みちるの声と、拓郎の視線を捕えて外そうとしない赤く燃える瞳に、拓郎は自分を取り戻し始めた。

「あ……あ、そうだ。これは、転生した姿だ。けれど俺が彼らをここに堕としたんだ」

 拓郎は、再び大粒の涙をこぼした。

「なにを馬鹿なことを言ってんのよ。彼らは彼らが犯した罪で、ここに堕ちたのよ。もし彼らに非がなかったら、ここにいるわけがない」

「でも、俺が父親の援助を拒否して働いてたら、2人は出会ってなかったかもしれない」

 拓郎は再び両手で顔を覆った。

「今さらそんなこと言ったって、この2人がここから出られるわけないでしょ? もう、人間じゃないのよ!」

 みちるは、ついに腹を立てて叫んだ。

「だからだ。だから俺は、どうでもいい存在でいたいんだ。冴子が死んで、生きる意味もなくなったんだ」

 自分の「生」を完全に放棄した眼を見て、みちるはかっときてしまった。

(こいつ! 何度あたしを『プッツン』させんのよ!)

 みちるは思いっきり右手を振り上げると、拓郎の頬を張り飛ばした。

「いい加減にしなさい! どうでもいい人間なんかいないわよ」

 みちるは涙をこぼした。

 叩かれた拓郎は、悲しそうな眼でみちるを見つめた。

「俺たちは望まれて産まれてきたんじゃない。俺たちだって産まれたくて産まれてきたんじゃない」

 拓郎はちょっと言葉を切ると続けた。

「母が死んだとき、俺たちは中学2年生だった。父親と名乗る男に引き取られて、言われるまま脅えた鼠のように生きてた」

 拓郎は樹の上で勇を待ち続ける冴子に眼をやった。

「冴子。最初はレイプされたんだ。たぶん俺をネタに脅迫されたんだ」

 拓郎は顔を上げてみちるを見つめると、悲しそうに微笑んだ。

「俺さ、部屋にいたら、急に両親に呼ばれたんだ。『弁護士の指示通りにしてこい』って言われて、弁護士に病院へ連れてかれた」

  拓郎は座り直すと、ゆっくりと話し始めた。

「行った先は霊安室だった。そこに勇と冴子がいた。2人の遺体を火葬場へ運ぶ途中に、何があったのか弁護士から聞いたんだ」

 みちるは拓郎に、喋りたいだけ喋らせようと思い、黙っていた。

「交通事故死だった。あいつら、ホテルから出てきたところで、トラックと猛スピードで衝突したそうだ。2人を火葬したあと、百貨店へ連れて行かれた。『ジーンズやら洋服やらを数点買い、1番でかい袋を2枚もえらえ』と言われた」

「どうして?」

 みちるはそっと尋ねた。

「2人の骨箱を入れるためだ。骨箱の上にさ、買ったジーンズを1枚載せて、『いかにも大量に買ってきました』。というふうに、近所の人に見られてもいいようによそおったんだよ。現に、タクシーを降りたところで、近所の人に声をかけられた」

「『まぁ、拓ちゃん。たくさん買ったのねぇ?』って言われたんでしょう?」

 みちるはあまりのひどいやり口に腹を立てながら、嫌みっぽい口調で言った。

「俺は笑って答えたよ。『成長期なんで、袖やらすねやらが出てきちゃったんですよぉ』ってね」

 拓郎の眼から、大粒の涙がこぼれ落ちた。

「次は北海道へ行かされた。骨箱と袋を段ボール箱に詰めて、ホテル宛に送った」

 みちるは、訳がわからなくなってきていた。

「どういうこと?」

「親父たち、北海道にある寺の納骨堂に『霊がん』と呼ばれる骨箱を入れる小さな部屋を2つ買っておいたんだよ。そこへ置いてきたんだ。1度に葬式を出すと怪しまれるし、なんとか死んだ理由を見つけてから、葬式も順番に出す気なんだ」

「うそ……」

「信じられないだろう? でも、事実だ。そして、俺も家から追い出された」

「は?」

 みちるは呆然ぼうぜんと聞いていた。

「子供が1人だけ家にいると怪しまれるから、『子供3人はそれぞれ留学したり、遠くの大学の付属高校へ編入した』という筋書きができてたんだ」

「そんな……」

「北海道から今の町へ直接きた。マンションには、冴子との思い出の品1つすらなかった。あれから4年が経ったが、帰ってこいという連絡もないから、こいつらも、まだ死んでないことになってるんだろう」

「信じらんない……」

 みちるは呆然と呟いた。

「でも、真実さ。死んだのに死んでない勇と冴子。死んでないのに、死んだ奴のために、死んだように姿を消した俺」

 みちるは言葉を失った。

「俺さ、1度だけ冴子に問い詰めた。『もう、こんなことはやめてくれ』って。でも冴子なんて言ったと思う? 『肉体が離れられないの。勇が与えてくれるエクスタシーの虜になっちゃったの』って。ぞっとしたよ。なんで踏みとどまれなかったんだって」

 拓郎は再び膝の中へ顔を埋めた。

 みちるは、身もだえている冴子を見上げた。

「俺、何がどうなったんか、全くわからないくらい絶望した。そしたら、もうどうでもよくなっちゃったんだ。息をして、無駄に歳取って、何となく忘れられたように死ねれば、それでいいって思った」

 拓郎は大きく息をつくと、しばらく沈黙した。

「俺さえいなかったら、彼らは邪淫の罪なんか犯さなかったかもしれない」

 拓郎はまた大粒の涙を流した。

「拓郎がいようがいまいが、こうなってたわよ」

 みちるははっきりと言いきった。

「え?」

 拓郎は信じられないという顔をした。

「罪の意識が快感を生んだのよ。万引きなんか、いい例じゃない。いい? ここは邪淫の罪を犯した者が来るところなのよ。ということは、閻魔さまは、2人が邪淫の罪を犯したと判断したの。しっかりと眼をあけて、真実の姿を見てごらんなさい。サドとマゾなんじゃない? この人たち」

 みちるは冷ややかな眼で彼らを見た。拓郎は欲情しきっている2人を見つめた。

「どうしてかぐや姫はここにいるんだろう? 他の樹だって良かっただろうに」

 拓郎はぽつりと呟いた。

「過去の拓郎に、決別するためじゃない?」

「え?」

「ただ息をして、無駄に歳を取って、何となく忘れ去られたように死にたがってる拓郎にさ。『それは違う』って、誰かが言いたかったんじゃない?」

 みちるの言葉に、拓郎は大きく眼を見開いた。

「彼らは死んで、罪の審判が下されてここへ転生した。彼らは来るべくしてここに来たのよ」

 みちるはきっぱり言いきると、すっと立ち上がった。

「問題は、どうやって冴子さんから、かぐや姫の欠片を貰うかよ」

 みちるは腰に手を当てて言った。

「そろそろ勇が樹の1番上まで行く。そうしたら、冴子は地上に降りてくる。その時、俺が話してみる」

 拓郎も立ち上がった。

「平気? あたしが行ってもいいわよ」

 みちるは心配そうに拓郎を見た。

「いや、いい。もしかすると、人間だったときの記憶があるかもしれない。その時は、俺のほうが話しやすいだろう」

 拓郎は樹に近づいた。

 みちるも拓郎から少し離れてついていった。

 冴子が地上に降りた。

「勇、あなたをしたって、私も地獄に来たのよ。早く来てちょうだい、勇。私を抱いて」

 開き過ぎたチューリップのようにだらしない唇から、甘い吐息となまめかしい声が漏れた。

 手に持つかぐや姫の欠片を胸に押しつけて、悶えるような仕草をしていた。

 拓郎はその姿をじっと見ていたが、やがて血が出るほどきつく唇を噛むと、冴子に近づいた。

「冴子」

 拓郎は彼女に声をかけた。

 その声に冴子は、一瞬嬉々とした表情をした。

「嬉しいわ、あなた。来てくださったのね。私を抱いて……」

 とろんとした仕草が、淫乱以外の何物でもなかった。

「俺はここだぁ!」

 眼を血走らせた勇が、頭上で叫んだ。

 その声で、冴子の眼に正気の色が現われた。

「え? あ……、拓郎? どうして、あなたがここにいるの?」

「冴子。今、降りてくぞ!」 

 勇の声が重なった。

「ああ、勇、早く来て」

 勇の声に反応して、冴子が再び狂おしく叫んだ。

「一瞬、正気に戻る」

 拓郎はみちるを振り返った。みちるはうなずくしかできなかった。

「冴子。頼むから正気に戻ってくれ」

 拓郎は再び声をかけた。

「拓郎?」

 冴子は正気に戻った。

 けれど、勇の声を聞けば、すぐさま元に戻ってしまうだろう。

 拓郎は肝心の話を、早くしてしまおうとした。

「冴子。その欠片を、俺にくれ」

 拓郎は冴子に向かって手を差し出した。

「ええ。あなたにもう一度会えるなんて、かぐや姫さまの、おぼしだったのね」

 冴子は拓郎にかぐや姫を差し出した。

「これがかぐや姫だと、なぜ知ってる?」

「彼女がそう言ったからよ。ここで地獄を見たかったそうよ。でも、今は泣いてる。かぐや姫さまを、ここから連れ出してあげて。そして、あなたも帰りなさい。あなたに、最期に1つだけ伝えたかった。あなたは自由よ。でも私は勇に捕われてしまったの」

 冴子はかぐや姫の欠片を拓郎に渡すと、再び樹の上に移動してしまった。

 冴子の言葉を頭の中で繰り返していた拓郎は、眼の前に血だらけの勇が来ていることには、気がつかなかった。

「あいつは俺のものだ」

 拓郎を弟と認識していない眼は狂気の光を発し、顔面血だらけだった。

 勇は再び刃の葉に、肉体を裂かれながら登っていった。

 その姿をのあたりにした拓郎はよろけて数歩下がり、その場に座り込んでしまった。

「もう嫌だ! 何もかも、もう嫌だ!」

 拓郎は大地に両手を力一杯叩きつけ、顔をこすりつけながら泣き出した。

「死にたい。死にたい。死にたい。もう、生きてくのは嫌だ!」

 みちるは、急いで拓郎の鞄に手をかけた。

 かぐや姫の欠片を押し込むと、代わりに兎を取りだした。

「兎、非常事態よ。兎!」

 みちるはぬいぐるみの兎を、ぶんぶんと振りまわした。

「はぁ、よく寝た。あれ? ここはどこですか」

 両手をあげて、大欠伸をしてから兎が言った。

「地獄よ。それよりお願いだから、私たちを1度、人間界に帰して」

「ど、どうしたのですか? かぐや姫さまは?」

「欠片は3つ見つけたわ。それより、このままでいたら、今度は拓郎が壊れてしまうわ。お願い、私たちを人間界へ帰してちょうだい」

 みちるは兎に懇願した。

 その姿を見て、兎は少々驚きながらもうなずいた。

「わかりました。少々天界は遠いですが、何とかやってみましょう」

 兎の眼が光った。

 彼は上方を仰いだ姿で動かなくなった。

「天帝さま、天帝さま、兎です。私の声が聞こえますか?」

「どうした、兎」

 遠くから、こだまのような声が響いてきた。

「順調にかぐや姫さまをお捜ししておりますが、人間の1人が非常に傷つき疲れております。どうか彼らをいったん人間界に戻すために、お力をお貸しください」

「わかった。そこは地獄か。ずいぶん遠いところから、私を呼んでるのだな。これでは、おまえの身も長くは持つまい。急ぎ2人を人間界に戻そう。おまえは天界に戻れ」

 兎はぺたんと地面に座った。

「すぐに天帝さまが、人間界へ戻してくださいます。それから、ここで私は失礼いたします」

「どうしたの?」

 みちるは兎を見下ろした。

「力を使い過ぎたので、回復のために天界へ帰らなければなりません。でも、必ず戻ります。では」

 兎の姿が薄くなった。

 けれど、消えるまで、見ていることはできなかった。

 みちると拓郎も消え始めていた。

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