2 / 16
善見城(ぜんけんじょう)
しおりを挟む
「兎。かぐや姫を探しておくれ。どうしていなくなってしまったんだろう。あの子に何があったんだろうか?」
天帝は悲痛な表情で、極彩色に彩られた広間の真ん中でひれ伏している、白い小さな兎に告げた。
天帝の前後左右には、赤や青の甲冑をつけた四天王が立っていた。
やや右前方には増長天・左側には広目天・後方左側には持国天・右側には多聞天が控えていた。
四天王は微動だにせず、天帝を取り囲んでいた。
永きに渡り、阿修羅との戦いを繰り返している天帝は、手には雷をつかさどる金剛杵を持ち、甲冑を着けたままの姿で、象を模した玉座に疲れた身体を預けていた。
戦況はけっして不利ではなかった。けれど、かぐや姫がいないとなると、話は変わってくるのだった。
かぐや姫の存在は、戦況を左右するほどのものだった。
「かしこまりました。天帝さま」
居住まいを正して兎が答えた。
「かぐや姫がいなくなったあの日、人間界と天界が重なった。姫はまた人間界へ行ったのかもしれない。私はあの子が天界を飛び出したことに気づくと、すぐさま二羽の兎を放った。兎は人間の中に入り込んでる。おまえが人間界へ行って兎を目覚めさせ、かぐや姫を探させるんだ。あれらは天人を見つける力を持ってる」
「はい。必ず兎を見つけ、かぐや姫さまを探させます」
兎は天帝を見上げた。
「頼む」
天帝はゆっくりと立ち上がると、四天王を引き連れて、再び阿修羅との戦いへと向かった。
天帝は悲痛な表情で、極彩色に彩られた広間の真ん中でひれ伏している、白い小さな兎に告げた。
天帝の前後左右には、赤や青の甲冑をつけた四天王が立っていた。
やや右前方には増長天・左側には広目天・後方左側には持国天・右側には多聞天が控えていた。
四天王は微動だにせず、天帝を取り囲んでいた。
永きに渡り、阿修羅との戦いを繰り返している天帝は、手には雷をつかさどる金剛杵を持ち、甲冑を着けたままの姿で、象を模した玉座に疲れた身体を預けていた。
戦況はけっして不利ではなかった。けれど、かぐや姫がいないとなると、話は変わってくるのだった。
かぐや姫の存在は、戦況を左右するほどのものだった。
「かしこまりました。天帝さま」
居住まいを正して兎が答えた。
「かぐや姫がいなくなったあの日、人間界と天界が重なった。姫はまた人間界へ行ったのかもしれない。私はあの子が天界を飛び出したことに気づくと、すぐさま二羽の兎を放った。兎は人間の中に入り込んでる。おまえが人間界へ行って兎を目覚めさせ、かぐや姫を探させるんだ。あれらは天人を見つける力を持ってる」
「はい。必ず兎を見つけ、かぐや姫さまを探させます」
兎は天帝を見上げた。
「頼む」
天帝はゆっくりと立ち上がると、四天王を引き連れて、再び阿修羅との戦いへと向かった。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる