6 / 10
Scene 6
しおりを挟む
やがて10月になった。
体育祭が近づき、校内がにぎわっていた。
100メートル走や棒倒し・綱引き。そして〆は、恒例行事フォークダンス……。
時計と逆回りに、男子生徒と踊っていた真美は、時計回りにきている渡辺の姿を見つけた。
(とくん……)
渡辺が、近づいてきた真美を見つけた。
(とくん……。
わくっ!
わくっ!
あせっ!
どきっ!
やばっ!
は……恥ずっ!
心臓の音、聴こえちゃったりして…… 。
でも……。
……確実に……
一緒に踊れる……)
ふたりとも全く同じことを考えていた。
(手をつなぐ。
肩を抱く。
くるっとターンさせる。
氏家さんを僕の腕の中で……)
(手をつなぐ。
肩を抱かれる。
くるっとターンする。
渡辺君の腕の中で……)
(きっと……、
最初で最後だ……)
ふたりとも、これだけは確信していた。
(だって、絶対に話しかけられない……。
……勇気がない……。
『好きです』って言えない……)
あとふたりというところで、彼らの心臓は爆発寸前だった。
(ばっくん!
ばっくん!
ばっくん!)
(ああ、初めて握る手……。
柔らかいのかな?
温かいのかな?)
(抱いた肩は小さいのかな?)
(抱かれた胸は広いのかな?)
ふたりは、無表情のままお互いの手を取った。完全に、頭の中は真っ白気だった。
(えっ……と……。
えっ……と……)
気がついたら、手を離していた。
(有りかぁぁぁぁぁ――――!)
フォークダンスが終わった後、ふたりは別々の場所で、同じことを考えて頭を抱えていた。
(な~ぁんにも……。
覚えていない……。
えっと……。
えっと……。
どんな顔していたっけ?
どんな手のひらだったっけ?)
(肩……。抱かれたよね)
(肩……。抱いたよな)
(覚えていなぁぁぁぁ―――い!)
こうして、彼らふたりが接触する機会は、見事、無記憶の状態で失われた。
体育祭が近づき、校内がにぎわっていた。
100メートル走や棒倒し・綱引き。そして〆は、恒例行事フォークダンス……。
時計と逆回りに、男子生徒と踊っていた真美は、時計回りにきている渡辺の姿を見つけた。
(とくん……)
渡辺が、近づいてきた真美を見つけた。
(とくん……。
わくっ!
わくっ!
あせっ!
どきっ!
やばっ!
は……恥ずっ!
心臓の音、聴こえちゃったりして…… 。
でも……。
……確実に……
一緒に踊れる……)
ふたりとも全く同じことを考えていた。
(手をつなぐ。
肩を抱く。
くるっとターンさせる。
氏家さんを僕の腕の中で……)
(手をつなぐ。
肩を抱かれる。
くるっとターンする。
渡辺君の腕の中で……)
(きっと……、
最初で最後だ……)
ふたりとも、これだけは確信していた。
(だって、絶対に話しかけられない……。
……勇気がない……。
『好きです』って言えない……)
あとふたりというところで、彼らの心臓は爆発寸前だった。
(ばっくん!
ばっくん!
ばっくん!)
(ああ、初めて握る手……。
柔らかいのかな?
温かいのかな?)
(抱いた肩は小さいのかな?)
(抱かれた胸は広いのかな?)
ふたりは、無表情のままお互いの手を取った。完全に、頭の中は真っ白気だった。
(えっ……と……。
えっ……と……)
気がついたら、手を離していた。
(有りかぁぁぁぁぁ――――!)
フォークダンスが終わった後、ふたりは別々の場所で、同じことを考えて頭を抱えていた。
(な~ぁんにも……。
覚えていない……。
えっと……。
えっと……。
どんな顔していたっけ?
どんな手のひらだったっけ?)
(肩……。抱かれたよね)
(肩……。抱いたよな)
(覚えていなぁぁぁぁ―――い!)
こうして、彼らふたりが接触する機会は、見事、無記憶の状態で失われた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!
ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
私と彼の恋愛攻防戦
真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。
「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。
でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。
だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。
彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる