上 下
7 / 38

第7話 クリティカル・コンボ

しおりを挟む
 親ベヒーモスが山頂に近づくと、クリア報酬の子ベヒーモスは山を下って逃げていった。

 そして親ベヒーモスは巨体をらしながら岩山の山頂にやってくると、それを見た虎一郎はニヤリと笑ってつぶやいた。

「ほう、熊のばいはあろうか。見上げる大きさよ」

 ベヒーモスは虎一郎と少し距離を取って立ち止まると、カイトたちは後ろに下がっていった。

「や、やばいデカい」
「ほんとだね」
「強そうだ……」

 愛芽めめは虎一郎の後ろに立つと、防御魔法陣の準備をした。

 ブモォォオオオオオオ!!!

 ベヒーモスは虎一郎をにらみつけながら咆哮ほうこうをすると、突然虎一郎めがけて爪で襲いかかってきた。

 ブンッ ブンッ!

 スッ……

 しかし虎一郎は攻撃を流れるようにかわすと、体勢低くベヒーモスのふところへ大きくんだ。

 ザッ バンッ!

 そして地をうような下段の構えから、美しい姿勢で刀を振り上げた。

「ぃやぁああ!!」

 ズバンッ!
『クリティカル! +20%』

 虎一郎はそのまま体を横に回転させながらベヒーモスの横へと抜け出し、構えを変えた。

 ザッ ザザッ!

 そして素早く後ろに下がりながら突きで追い打ちを食らわせた。

 ドスッ!
『クリティカル! 2コンボ +40%』

 ブモォォオオオオ!!!

 虎一郎の攻撃を受けたベヒーモスは2本足で立ち上がると、なんと虎一郎を押しつぶそうとプレス攻撃を仕掛けてきた。

 ドスゥゥゥン!!

 しかし虎一郎はベヒーモスのプレス攻撃を大きく円を描くように美しくけると、ベヒーモスの腕に二連撃にれんげきを食らわせた。

「ぃやぁああ!」

 ズバ ズバッ!
『クリティカル! 3コンボ +80%』
『クリティカル! 4コンボ +160%』

 ズザザザッ

「やばっ! コイちゃん、すごい!!」

 愛芽めめは虎一郎の戦いぶりを見て声をあげると、カイトたちも思わず声をあげた。

「クリティカル4コンボで攻撃力160%増し!?」

「虎一郎さん、すごい!」

「ご、誤差3%で全てクリティカルなんて……、凄すぎる!」

 虎一郎は刀を構え直して静かに息を吐くと、ゆっくりとベヒーモスに近づいていった。

「コイちゃん、ベヒーモスまだ全然体力あるから油断ゆだんしないで!」

「そうであったか。では次は本気でいかせてもらおう」

 虎一郎がそう言った瞬間、なんとベヒーモスの体が青く光りだした。

 バリバリバリバリバリ

「あっ! コイちゃん、危ない! ベヒーモスの雷攻撃かみなりこうげきが来るよ!」

かみなり!?」

 ベヒーモスは再び二本足で立ち上がると、空に雷雲かみなりぐもを呼び寄せた。

 ブモォォオオオオ

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ブゥーン

「コイちゃん、わたしの魔法陣の下に来て! これで防ぐから!」

 愛芽めめは慌てて虎一郎の頭上に防御魔法陣を展開すると、カイトたちも下に入るように言った。

「みんなも防御魔法陣の下に!!」

「「はい!」」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 しかし愛芽めめはどんどん広がってゆく雷雲を見ながら呟いた。

「え……、雷雲が大きすぎる……。やばい、防ぎきれないかも……」

 ダダッ!

 それを聞いた虎一郎は防御魔法陣の下から走り出ると、猛然もうぜんとベヒーモスへ向かっていった。

愛芽めめ殿、みなを頼む! 先手必勝せんてひっしょう!」

「え、あ、コイちゃん!!」

 愛芽めめが声をあげた瞬間、雷雲から沢山たくさん稲妻いなずまが襲いかかってきた。

 パァーン! パァーン! パァーン! パァーン! パァーン!

「「わーーー!!!」」

 愛芽めめたちは必死に防御魔法陣の下で身をかがめたが、虎一郎は軽やかに稲妻をかわしながらベヒーモスにせまっていった。

 ザッ ザザッ ザザッ

「このような子供だまし、私には通用つうようせぬぞ!」

 虎一郎はベヒーモスにそう叫ぶと、力強く地面を蹴って飛び上がり、体ごと斜めに回転させて刀を振り下ろした。

「ぃやぁあ!!」
 ズバンッ!!

『クリティカル! 5コンボ +320%』
『部位破壊 +25%』

 ザザッ ザッ!

 虎一郎は着地すると、電光石火でんこうせっかのごとき速さでベヒーモスの右腕に突きを放った。

「ふんっ!」

 ズドッ!
『クリティカル! 6コンボ +640%』

 そして体をひるがえすと、地を這うような刃筋でベヒーモスの左腕を斬りつけた。

「ぃやぁぁあああ!」

 ズバッ!
『クリティカル! 7コンボ +1280%』
『部位破壊 +50%』

 ザッ ザザッ!

 そして虎一郎は跳ねるように後ろへ下がると、ベヒーモスは静かに地面に伏せた。

『Lv9になりました』
『ベヒーモスは仲間になりたそうにこちらを見ている。(仲間にする・逃がす)』

「おお、これが言っておったやつか。ふむ、『仲間にする』で良いのだな」

 虎一郎は「仲間にする」を選択すると、ベヒーモスは大人しく立ち上がった。

愛芽めめ殿、あばれうし手懐てなずもうしたぞ!」

 シーン……

愛芽めめ……、殿……?」

 虎一郎が振り返ると山頂には誰も居なかった。


 その頃、愛芽めめは自分のプライベード・エリアの家にリスポーン(復活)していた。

「いたたたた……。やられちゃった……」

 愛芽めめとカイトたちはベヒーモスとの戦いで、稲妻に倒されてしまっていたのだった。

 愛芽めめはベッドから起き上がると、ため息を付いてつぶいた。

「はぁ……。きっと、コイちゃんも倒されちゃったよね……。コイちゃんのプライベード・エリアに行かなくちゃ」

 愛芽めめは家から出てパブリックエリアへ行くと、転移魔法を使ってピンデチの街の近くへと転移していった。

 ◆

 ブゥゥン

 愛芽めめは、虎一郎のプライベートエリアの近くに転移してきて中へ入ったが、虎一郎は見当たらなかった。

「山には誰も居ないなぁ……。コイちゃん、家で落ち込んでたりしてないよね……」

 愛芽めめは心配そうな表情を浮かべながら、ゆっくりと山を登って虎一郎の家へと向かった。

 ◆

 その頃、虎一郎はベヒーモスの頭に牛のように縄をかけ、ベヒーモスを引きながら岩山を下っていた。

「ははは、手懐てなずけてしまえば体格に似合わず大人しくて良い子だな」

「ブモッ」

「ん? そういえば……」

 虎一郎は何かを思いつくと、足を止めてベヒーモスの腹を下からのぞき込んだ。

「おお、おぬしはメスであったか。ちちが出るな。これはいい」

「モォォ?」

 虎一郎はベヒーモスの頭を撫でると、再び山道を歩き始めた。

「これは素晴らしい牛を手に入れた。……それにしても愛芽めめ殿はどこへ行ってしまったのだろうか。先に帰っていれば良いのだが」

 虎一郎はしばらく歩いて平地に戻ってくると、モービルの窓から見ていた景色けしきを思い出しながらピンデチの街へと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が存在しない世界でパリィ無双~付属の音ゲーを全クリした僕は気づけばパリィを極めていた~

虎柄トラ
SF
音ゲーが大好きな高校生の紫乃月拓斗はある日親友の山河聖陽からクローズドベータテストに当選したアーティファクト・オンラインを一緒にプレイしないかと誘われる。 始めはあまり乗り気じゃなかった拓斗だったがこのゲームに特典として音ゲーが付いてくると言われた拓斗はその音ゲーに釣られゲームを開始する。 思いのほかアーティファクト・オンラインに熱中した拓斗はその熱を持ったまま元々の目的であった音ゲーをプレイし始める。 それから三か月後が経過した頃、音ゲーを全クリした拓斗はアーティファクト・オンラインの正式サービスが開始した事を知る。 久々にアーティファクト・オンラインの世界に入った拓斗は自分自身が今まで何度も試しても出来なかった事がいとも簡単に出来る事に気づく、それは相手の攻撃をパリィする事。 拓斗は音ゲーを全クリした事で知らないうちにノーツを斬るようにパリィが出来るようになっていた。

VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン
SF
とある社会人の男性、児玉 光太郎。 彼は「Fantasy World Online」というVRMMOのゲームを他のプレイヤーの様々な嫌がらせをきっかけに引退。 新しくオフラインのゲーム「のんびり牧場ファンタジー」をはじめる。 「のんびり牧場ファンタジー」のコンセプトは、魔法やモンスターがいるがファンタジー世界で スローライフをおくる。魔王や勇者、戦争など物騒なことは無縁な世界で自由気ままに生活しよう! 「次こそはのんびり自由にゲームをするぞ!」 そうしてゲームを始めた主人公は畑作業、釣り、もふもふとの交流など自由気ままに好きなことをして過ごす。 一方、とあるVRMMOでは様々な事件が発生するようになっていた。 主人公と関わりのあったNPCの暗躍によって。 ※ゲームの世界よりスローライフが主軸となっています。 ※是非感想いただけると幸いです。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~

オイシイオコメ
SF
 75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。  この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。  前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。  (小説中のダッシュ表記につきまして)  作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。

言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空
SF
社畜?社会人4年目に突入する紗蘭は、合計10連勤達成中のある日、VRMMOの世界にダイブする。 ゲームの世界でくらいは、ほのぼのライフをエンジョイしたいと願った彼女。 女神様の前でステータス決定している最中に 「言霊の力が活かせるジョブがいい」 とお願いした。すると彼女には「言霊エンチャンター」という謎のジョブが!? 彼女の行く末は、夢見たほのぼのライフか、それとも……。 これは、現代とVRMMOの世界を行き来するとある社畜?の物語。 (当分、毎日21時10分更新予定。基本ほのぼの日常しかありません。ダラダラ日常が過ぎていく、そんな感じの小説がお好きな方にぜひ。戦闘その他血沸き肉躍るファンタジーお求めの方にはおそらく合わないかも)

採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥
SF
スキル制VRMMORPG<Life Game> それは自らの行動が、スキルとして反映されるゲーム。 そこに初めてログインした少年アキは……、少女になっていた!? 路地裏で精霊シルフと出会い、とある事から生産職への道を歩き始める。 ゲームで出会った仲間たちと冒険に出たり、お家でアイテムをグツグツ煮込んだり。 そんなアキのプレイは、ちょっと人と違うみたいで……? ------------------------------------- ※当作品は小説家になろう・カクヨムで先行掲載しております。

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ

雪月 夜狐
SF
「強くなくても楽しめる、のんびりスローライフ!」 フリーターの陽平が、VRMMO『エターナルガーデンオンライン』で目指すのは、テイマーとしてモンスターと共にスローライフを満喫すること。戦闘や冒険は他のプレイヤーにお任せ!彼がこだわるのは、癒し系モンスターのテイムと、美味しい料理を作ること。 ゲームを始めてすぐに出会った相棒は、かわいい青いスライム「ぷに」。畑仕事に付き合ったり、料理を手伝ったり、のんびりとした毎日が続く……はずだったけれど、テイムしたモンスターが思わぬ成長を見せたり、謎の大型イベントに巻き込まれたりと、少しずつ非日常もやってくる? モンスター牧場でスローライフ!料理とテイムを楽しみながら、異世界VRMMOでのんびり過ごすほのぼのストーリー。 スライムの「ぷに」と一緒に、あなただけのゆったり冒険、始めませんか? 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】 『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

処理中です...