夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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69話「交わる剣と刀と同じ考えを持つ者たちと」

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 ニケが刀を振るうと、デオドラは慌てた様子で避けた。
 ニケは、避けられてもその手を止めなかった。振るった刀を持ち直し、正面で構えなおすと右足を前に出し、左足で身体を押しながら刀を振るう。
 デオドラは、避けると同時に体当たりを繰り出した。
 だが、ニケはデオドラの体当たりを避けると振り向き様に刀を振るう。
 刀身が肉を切る感触と共に、デオドラの背中に切り傷ができた。
 傷は浅く、軽く切れた程度だった。痛みに顔を歪めながらも、デオドラは振り向くと剣を構えた。

「なかなかやるじゃねぇかッ!!!」

 突きの構えからの突進。 
 ニケは刀を両手で握り、左手を上に上げ刀身を右下にして受け流す。
 鉄のぶつかり合う甲高い金属音と、刀身が擦れ合う音が聞こえた。
 デオドラの身体がニケの真横をすり抜けると同時に、ニケは刀を振り上げ左手を離し柄でデオドラの腹部を殴った。
 
「っぐ!」

 殴られた箇所を押さえながら、デオドラが距離を置く。
 再度向かい合う形になり、両者ともにらみ合っていた。
 
「そこまでだ」

 ふと、二人の間に人影が入り込んだ。
 二人は入り込んだ人物を睨んだ。

「二人して私を睨むな……」
 
 やれやれとミーチェは両手を上げた。ニケは、ミーチェとわかると刀を捨てた。
 捨てられた刀は光と共に、宙へと消えていった。
 デオドラは戦意を失ったのか萎えたのか、つばを吐き捨てるとその場を立ち去った。
 その背中をニケは睨みながらの、ミーチェに申し訳なさそうな顔をしながら振り返った。
 
「ごめんなさい……」

 ニケにしては珍しく、頭を下げながら謝罪した。それだけ悪いことをしたと、思っているのだろう。
 そんなニケを見ながら、ミーチェは腰に手を当てはぁっとため息をしていた。
 
「別に良い、向こうから吹っ掛けてきたのだろう?」

 ミーチェは、ニケの肩に手を置くと冒険者ギルドの中へと入って行った。
 冒険者ギルドの扉から、アシュリーが顔をだした。
 ミーチェを呼んでくれたのがアシュリーだと気づくと、ニケは苦笑いをしながらアシュリーに小さく手を上げた。
 どこか安心した様子でアシュリーが扉から出てきた。

「大丈夫でしたか?」

 怪我をしていないかニケの周りを一周すると、ニケの顔を覗き込むアシュリー。
 いきなり顔を覗き込まれ、ニケは驚いた様子で首を傾げた。

「な、なに?」

「いえ、怪我してないか心配で……」

 そういうと、アシュリーはうつむいてしまった。
 手をもじもじさせながら落ち着きのないアシュリーに、ニケは笑い出してしまった。
 
「あはははは。そんな心配しなくても大丈夫だって」

 ニケが笑うと、アシュリーもそうですねと微笑んだ。
 
「中に戻ろうか」

 冒険者ギルドの扉を開けながら、ニケがアシュリーに声をかけた。
 
「そうですね、ギルド長さんに手紙渡さないとですからね」

 冒険者ギルドの中に入ると、冒険者達が心配そうな目でニケを見た。
 デオドラと一戦を交えたことに、興味があるようだ。
 さきほどの二人組みが、ニケの両手を掴み冒険者の集まる中に連れて行ってしまった。
 突然の事に、アシュリーは棒立ちをしたままニケを見送った。
 冒険者達が群がる中、ニケはいろんな質問を受けていた。
 デオドラとなぜたたかったのか、デオドラは強かったかなどなど。
 全部の質問に答えると、ニケは強いという謎の解釈が生まれていた。
 なぜか冒険者たちが浮かれ始めるなか、ニケはわけもわからずただ突っ立っていた。

「ここだけの話、俺達はガオックは悪いやつではないと思うんだ」

 手を口に添えながら、冒険者達が話を始めた。
 彼らは、デオドラがガオックを貶めたと考えているようだ。
 証拠はなく憶測での話だったが、デオドラが来た時期とガオックの討伐依頼が張られた時期が近いのと、デオドラが大の魔物嫌いと言う情報が信憑性を高めていた。
 その情報をニケに託した理由が、彼らには二つあった。
 一つ、ガオックの事を信じているため。
 二つ、デオドラとたたかっても勝つ可能性が高いということ。
 この二つの理由をもとに、ニケにある作戦の話をする冒険者たち。その内容とは至って簡単なものだった。冒険者達がガオック討伐依頼をした老人会への情報収集をする一方、ニケがデオドラのガオック討伐に出発するのを阻止するという作戦だった。
 その作戦を聞き、ガオックを助けれるとニケは思ったがミーチェに後先考えないで行動すると怒られると思い、ニケはその作戦を断った。
 冒険者達は残念そうに肩を落とした。
 そんな話をしているなか、ギルド長とミーチェが階段を下りてきた。
 ギルド長を見るや冒険者達は自分の机に戻った。
 階段を下りると、ミーチェがギルド長に手紙を渡していた。
 その後ギルド長と握手をすると、ミーチェはギルドの扉へと向かい扉に手を添えながらニケに声を掛けた。

「宿へいくぞ」

 ミーチェはそう言うとアシュリーと共に、外へと出て行ったしまった。
 ニケは冒険者達にごめんなと言い残すと、扉へと走っていった。
 外に出るとミーチェが、疲れた顔つきでうなだれていた。
 アシュリーが声を掛けているようだが、疲れたとしか言わないミーチェ。

「んで、どういう話をしてたんだ?」

 気だるそうに歩き出したミーチェに、ニケがギルド長と何を話したのかと聞いた。
 ギルド長との話の内容は、ユッケル村が協会に滅ぼされたこととコルック村での一件についてだった。
 そこで弟子が手紙を受け取ったと、先ほど手紙を渡したそうだ。
 
「私はもう疲れた。ベットで寝たい……宿はどこだ」

 広場の方を見ながら、ミーチェが目を細めた。
 ニケは周りを見渡し、宿屋の看板を見つけた。

「師匠、あっちに宿みたいのあるよ」
 
 ニケはミーチェの見ている方向とは、真逆の方向を指差した。

「そっちにあったのか」

 ミーチェはアシュリーと共に宿へと歩いていった。

「私は少し休む。ニケ、村を歩いていていいぞ」

 ミーチェはそういうと、宿の中へと消えていった。
 一人残されたニケは、広場を眺めながら何をするか考えていた。

「歩いていいって言われてもなぁ」

 頭の上で腕を組みながら、ニケは広場へと歩き出した。
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