34 / 93
33話「晴天と休息」
しおりを挟む異世界に来て、旅に出たニケ。
相棒の召還獣、シロと魔法の師匠ミーチェ・クリスタと共に馬車で村を後にした。
「ニケ。まずは、王都目指して長旅だ」
「ここから王都まで、どれくらい掛かるんだ?」
シロを、撫でながらニケはミーチェに問いかけた。
「そうだな。途中資金調達や、宿泊などするから最低でも25日くらいだな」
「ここって、そんな辺境だったのか……」
「うむ。ビスク帝国の端の端だ」
そんなところに転生したのかっと、ニケはつぶやいた。
馬車は、布のようなもので屋根ができており。
内装は特に目立つような装飾などはなく。人が座るであろう、突起と広々とした板の床くらいだ。
そんな中、シロは馬車の後方の出入り口が気に入ったらしく、顔をだして間抜けな顔をしていた。
「シロは、呑気だな」
ミーチェが、横目にシロを見ながらつぶやいた。それに対し、いつものことだろっとつぶやくニケ。
村からでて、早1時間は経っただろうか。
周囲の景色は変わらず、草木、山などが見える。
「旅か……」
「なんだ。不服か?」
横目にニケを見ながら、ミーチェは問いかけた。
「いや、まさか異世界にきて旅をするとはなって」
「そういうことか、人間だれしも旅をする」
「そうだな、楽しい旅になるといいぜ」
そういいながらニケは、寝転がり頭の上で手を組みシロを枕にした。
シロは、何も反応することなく外を見ている。
「もうそろそろ川辺が見えるはずだ、そこで水を調達しておこう」
「何か入れ物あるの?」
「来るときに、調味料と別に空きビンを2、3個布袋に入れておいた」
「あ、調味料の布袋入れるの忘れた!」
「だろうな。そうだろうと思って先に、馬車に載せておいた」
「おぉ。流石師匠……」
「そこは謝るところだろう」
呆れながら前を見るミーチェ。
ニケは、笑いながらごめんとつぶやいた。
のんびりと動く雲、照りつける太陽。
旅をするには、心地よい天気だ。
「師匠。この世界に、季節とかってあるのか?」
「季節?あぁ、四季のことか。私たちの今いるダスク地方は、基本的に秋と、冬といったところか」
「春と、夏はないのか?」
「ダスク自体、涼しいからな。北に行けば雪国だが。こちらには、春と夏はない」
「そうなのか」
枕となっているシロを撫でながら、ニケは答えた。
馬車はのんびりと進んでいく。
しばらくして、水の音が聞こえ始めた。
「師匠。水の音がする」
「ふむ。川が近くなってきたのか」
ミーチェが座っているところに、ニケがやってきた。
前方は、相変わらず草木が生い茂る森だった。
いろんな種類の木々の間、草の生えていない道を進む馬車。
わくわくしながら外を見るニケを、横目で見るミーチェ。
「楽しいか?」
「あぁ。俺のいた世界じゃ、こんなことなかったからな」
「そうか」
前方に、石作りの端が見え始めた。
横幅は4mほどだろう、馬車が一方通行でなら渡れる広さだ。
「ニケ。ビンを持って水を汲んできてくれないか?」
「わかった。シロ、降りるよ」
ニケは布袋から、空きビンを取り出すと、気持ちよさそうに寝ているシロを起こした。
川辺につくと、ニケは空き瓶を片手に水を汲みに川へ入った。
シロは濡れるのがいやなのか、川岸でお座りしていた。
「シロもおいでよ、気持ちいいぞ?」
そう呼ぶが、シロは伏せて上目遣いでこちらを見てくる。
ビンいっぱいに水を入れると、ニケは川岸に上がった。
呑気にあくびをするシロを横目に、馬車へと戻っていく。それをみてシロは、ニケの後についていく。
馬車に近づくとミーチェが、馬を川に連れて行くところだった。
「こやつにも、水を飲ませてやらないとな。しばらくここで休憩するから、お主の休んでいるがよい」
ミーチェはそう言い残すと、川岸へと向かっていった。
「わかった。その辺ブラブラしてるよ」
ニケは、ミーチェに声をかけると馬車に水入りのビンを置きに行った。
馬車の中にある布袋にビンを戻すと、馬車からおりて森のほうを見た。
「すこしなら、入ってもいいよね」
ニケは、シロについてくるように言うと森へと入って行った。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約者に犯されて身籠り、妹に陥れられて婚約破棄後に国外追放されました。“神人”であるお腹の子が復讐しますが、いいですね?
サイコちゃん
ファンタジー
公爵令嬢アリアは不義の子を身籠った事を切欠に、ヴント国を追放される。しかも、それが冤罪だったと判明した後も、加害者である第一王子イェールと妹ウィリアは不誠実な謝罪を繰り返し、果てはアリアを罵倒する。その行為が、ヴント国を破滅に導くとも知らずに――
※昨年、別アカウントにて削除した『お腹の子「後になってから謝っても遅いよ?」』を手直しして再投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる