夢にまで見たあの世界へ ~女性にしか魔法が使えない世界で、女神の力を借りて使えるようになった少年の物語~

ゆめびと

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17話「共闘」

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突然聞こえた、雄たけびの主は...

「あんた、もう動いても平気なのか!?」

「あんたって呼び方はよしてくれ」

「なら、兄ちゃんで」

「っふ。好きに呼べ」

 先ほどまで座り込んでいた男は何もなかったかのように振舞っていた。
 回復系統魔法は、傷が癒えても血液が補充されない。
 そのことを知っているニケは、心配そうに男を見た。

「さぁ。敵討ちといこうかッ!」

「そうだな、敵討ちと洒落込もうぜ!」

 男は斧を構え、銀髪の男と対峙した。
 ニケはなにやら策があるのか、二刀を捨て練成の構えに入った。

「坊主。俺が切り込むからカバー頼むぜ」

「あいよ、兄ちゃん無茶だけはするなよ」

「お前に心配されるとはな」

 先ほどまで敵同士だった者同士の、目的同じくする共闘が始まった。
 ニケは、左手に魔力を送り込んだ。
 左手が光りだすと同時に、右手を合わせる。
 イメージの構築、硬く、鋭く、切れ味の良い...
 手を離し始める。
 そこに練成されていたのは、太刀。
 刀身180cmはあろう長く、鋭く、綺麗な太刀が練成された。
 それを握り締め、左手を棟に添え上段の構えをとる。
 ニケの準備が終わったのを確認すると、男は走り始めた。
 準備が終わった、と言っても実際にかかる時間は1秒~3秒なのだ。

「はははは、使い捨てられた男と。魔法使いの子供が俺を討つか。冗談もそこまでにしておけよ!」

 銀髪の男は、サーベルを右手で構え左の腰に添わせるようにして男に切り込んできた。

「冗談以前に、約束を破られたのはこっちだ!ちゃんと落とし前付けさせてもらう!」

「たかが媒体となっただけだろッ!?」

 斧とサーベルが交差する
 火花を散り、互いに押し合って一旦離れた。
 先手は銀髪の男だった、突きの構えをとり男に向かって走り出す。
 だがあと数mのところでニケが、サーベルを弾く。

「邪魔だぁぁぁぁッ!!!!!」

 弾かれたサーベルを握りなおし、ニケに向けて振り上げるサーベル。
 ニケは、サーベルを受け流すと銀髪の男の反対側へと身を移す。
 挟み撃ちの形になったところで、銀髪の男が叫んだ。

「おい、ノイシュ!術だ!術を使えッ!」

 すぐに術が、死霊術だとわかったニケ

「媒体は...まさか、村長か!」

「あぁ。あいつには、寄付をしなかった責任を取ってもらう。まぁ、ここら辺に転がっている死体でもいいのだがなッ!」

 銀髪の男が、ニケに切りかかる。
 ニケは、太刀を振り上げサーベルを弾く。

「いい加減めんどくせぇんだよッ!!」

 銀髪の男が、ニケの腹部に蹴りを入れる。

「ぐっふ...ッ!?」

 突然の事に、反応できなかったニケ。
 太刀を杖に何とか踏みとどまった。

「俺を忘れてないか?」

「っしま...!?」

 銀髪の男の後ろには、斧を振りかざす男の姿があった。
 銀髪の男が振り向くと同時に振り下ろされた斧は、銀髪の男の右肩から胸部へを深深く刺さった。

「っぐ...ぶっは...ッ!?」

 血を噴出す銀髪の男。

「どうだ、痛いだろうッ!」

 男は斧を勢いよく再度振り上げた。
 深深く刺さっていた傷口からは血が噴出している。

「じょ...冗談じゃない...俺は、俺は...死なないッ!」

 銀髪の男は、深手を負いながらも動こうとした。
 だが、再度振り上げられた斧は、反対側の肩へと降り注いだ...

「あっがあああああああッ!!!!!」

 銀髪の男は、最後に叫ぶとそのまま崩れ落ちた。
 腹部の痛みが和らいだニケは、そのまま男に問いかけた。

「復讐は、終わりか?」

「いや、まだ俺の復讐は始まったばっかりだ」

「そっか」

 ニケは、男に対して敵意などなかった。
 本当はいい人なんだな、っとニケは思っていた。

「ニケ!呑気にしている場合ではないぞ!」

 突然、ミーチェが叫んだ。

「そうだ、死霊術がどうとかって言ってなかったか!?」

「そういえば...」

 二人は、フードの男を見た。
 フードの男は、小さな手帳のようなものを手に、ブツブツなにか言っていた。

「まずい...っ!」

 ニケは、太刀を構え、フードの男目掛けて走り始めた。
 だが、間に合わなかった。
 村長が悲鳴をあげ始め、フードの男はニィっと口を吊り上げた。

「ま、間に合わなかったッ!?」

「遅い...遅すぎるぞ少年」

 カスカスの声で話し始めたフード男。
 ニケには、どうでもよかった。
 そのまま、太刀を振り上頭上へと切りかかる。
 刀身が触れるだろうところで、ニケは弾き飛ばされた。

「っく...いったい何が!」

「坊主、こりゃやばいかもしれんぞ」

「やばい?なにがだよ」

「ニケ!早く退くんだ!」

 ミーチェが叫ぶ。

「あ、あれ...は...?」

 そこに居たのは宙を浮く不気味な『生命体』だった....
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