18 / 93
17話「共闘」
しおりを挟む突然聞こえた、雄たけびの主は...
「あんた、もう動いても平気なのか!?」
「あんたって呼び方はよしてくれ」
「なら、兄ちゃんで」
「っふ。好きに呼べ」
先ほどまで座り込んでいた男は何もなかったかのように振舞っていた。
回復系統魔法は、傷が癒えても血液が補充されない。
そのことを知っているニケは、心配そうに男を見た。
「さぁ。敵討ちといこうかッ!」
「そうだな、敵討ちと洒落込もうぜ!」
男は斧を構え、銀髪の男と対峙した。
ニケはなにやら策があるのか、二刀を捨て練成の構えに入った。
「坊主。俺が切り込むからカバー頼むぜ」
「あいよ、兄ちゃん無茶だけはするなよ」
「お前に心配されるとはな」
先ほどまで敵同士だった者同士の、目的同じくする共闘が始まった。
ニケは、左手に魔力を送り込んだ。
左手が光りだすと同時に、右手を合わせる。
イメージの構築、硬く、鋭く、切れ味の良い...
手を離し始める。
そこに練成されていたのは、太刀。
刀身180cmはあろう長く、鋭く、綺麗な太刀が練成された。
それを握り締め、左手を棟に添え上段の構えをとる。
ニケの準備が終わったのを確認すると、男は走り始めた。
準備が終わった、と言っても実際にかかる時間は1秒~3秒なのだ。
「はははは、使い捨てられた男と。魔法使いの子供が俺を討つか。冗談もそこまでにしておけよ!」
銀髪の男は、サーベルを右手で構え左の腰に添わせるようにして男に切り込んできた。
「冗談以前に、約束を破られたのはこっちだ!ちゃんと落とし前付けさせてもらう!」
「たかが媒体となっただけだろッ!?」
斧とサーベルが交差する
火花を散り、互いに押し合って一旦離れた。
先手は銀髪の男だった、突きの構えをとり男に向かって走り出す。
だがあと数mのところでニケが、サーベルを弾く。
「邪魔だぁぁぁぁッ!!!!!」
弾かれたサーベルを握りなおし、ニケに向けて振り上げるサーベル。
ニケは、サーベルを受け流すと銀髪の男の反対側へと身を移す。
挟み撃ちの形になったところで、銀髪の男が叫んだ。
「おい、ノイシュ!術だ!術を使えッ!」
すぐに術が、死霊術だとわかったニケ
「媒体は...まさか、村長か!」
「あぁ。あいつには、寄付をしなかった責任を取ってもらう。まぁ、ここら辺に転がっている死体でもいいのだがなッ!」
銀髪の男が、ニケに切りかかる。
ニケは、太刀を振り上げサーベルを弾く。
「いい加減めんどくせぇんだよッ!!」
銀髪の男が、ニケの腹部に蹴りを入れる。
「ぐっふ...ッ!?」
突然の事に、反応できなかったニケ。
太刀を杖に何とか踏みとどまった。
「俺を忘れてないか?」
「っしま...!?」
銀髪の男の後ろには、斧を振りかざす男の姿があった。
銀髪の男が振り向くと同時に振り下ろされた斧は、銀髪の男の右肩から胸部へを深深く刺さった。
「っぐ...ぶっは...ッ!?」
血を噴出す銀髪の男。
「どうだ、痛いだろうッ!」
男は斧を勢いよく再度振り上げた。
深深く刺さっていた傷口からは血が噴出している。
「じょ...冗談じゃない...俺は、俺は...死なないッ!」
銀髪の男は、深手を負いながらも動こうとした。
だが、再度振り上げられた斧は、反対側の肩へと降り注いだ...
「あっがあああああああッ!!!!!」
銀髪の男は、最後に叫ぶとそのまま崩れ落ちた。
腹部の痛みが和らいだニケは、そのまま男に問いかけた。
「復讐は、終わりか?」
「いや、まだ俺の復讐は始まったばっかりだ」
「そっか」
ニケは、男に対して敵意などなかった。
本当はいい人なんだな、っとニケは思っていた。
「ニケ!呑気にしている場合ではないぞ!」
突然、ミーチェが叫んだ。
「そうだ、死霊術がどうとかって言ってなかったか!?」
「そういえば...」
二人は、フードの男を見た。
フードの男は、小さな手帳のようなものを手に、ブツブツなにか言っていた。
「まずい...っ!」
ニケは、太刀を構え、フードの男目掛けて走り始めた。
だが、間に合わなかった。
村長が悲鳴をあげ始め、フードの男はニィっと口を吊り上げた。
「ま、間に合わなかったッ!?」
「遅い...遅すぎるぞ少年」
カスカスの声で話し始めたフード男。
ニケには、どうでもよかった。
そのまま、太刀を振り上頭上へと切りかかる。
刀身が触れるだろうところで、ニケは弾き飛ばされた。
「っく...いったい何が!」
「坊主、こりゃやばいかもしれんぞ」
「やばい?なにがだよ」
「ニケ!早く退くんだ!」
ミーチェが叫ぶ。
「あ、あれ...は...?」
そこに居たのは宙を浮く不気味な『生命体』だった....
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
生前SEやってた俺は異世界で…
大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
旧タイトル 前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~
※書籍化に伴い、タイトル変更しました。
書籍化情報 イラストレーター SamuraiG さん
第一巻発売日 2017/02/21 ※場所によっては2、3日のずれがあるそうです。
職業・SE(システム・エンジニア)。年齢38歳。独身。
死因、過労と不摂生による急性心不全……
そうあの日、俺は確かに会社で倒れて死んだはずだった……
なのに、気が付けば何故か中世ヨーロッパ風の異世界で文字通り第二の人生を歩んでいた。
俺は一念発起し、あくせく働く事の無い今度こそゆったりした人生を生きるのだと決意した!!
忙しさのあまり過労死してしまったおっさんの、異世界まったりライフファンタジーです。
※2017/02/06
書籍化に伴い、該当部分(プロローグから17話まで)の掲載を取り下げました。
該当部分に関しましては、後日ダイジェストという形で再掲載を予定しています。
2017/02/07
書籍一巻該当部分のダイジェストを公開しました。
2017/03/18
「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」の原文を撤去。
新しく別ページにて管理しています。http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/258103414/
気になる方がいましたら、作者のwebコンテンツからどうぞ。
読んで下っている方々にはご迷惑を掛けると思いますが、ご了承下さい。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる