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ポーションの飲んだくれ。1
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~冒険者ギルドの寮~
朝日が上り始め、目を覚ましたシヴィー。
寮の部屋ごとに内装は整っており、テーブルにイス、仕舞にはダブルベットよりもちょっと小さいくらいの寝床まで用意されていた。まるでホテルのような内装に、リリーは大はしゃぎしていたくらいだ。
夢のような一日であり、悪夢のような一日であったが故に、シヴィーは夢であってくれと言わんがばかりの顔つきで眠りへと落ちたのだ。そして、目が覚めてから現実であったことを受け止める気力も湧くわけではなく、だるそうに頭をかきながら階段を下りて行った。
リビングについてから、キッチンでアルティミスとリリーがなにやらごそごそやっているのが目についた。が、しかし、仲がいいふたりを邪魔すると悪いので、シヴィーは遠目で見ていることにようだ。
「えー、まず。こちらが今日使う材料でございます」
薬草、一束。
青汁、一本。
すでに嫌な予感しかしない。
「それで、リリー先生は何をクゥッキング! する、おつもりなのでしょうか?」
「は、はい! 今日は、昨晩にあまり説明ができなかった『初めての料理』にリベンジをしたいと思います!」
初めてにリベンジしたところで、それはもうリベンジではないのでは。
内心、鍋を使ってなにかしら調合すると思っていたシヴィーであったが、どうやら料理をする様子なので、暖かい目で見守ることにした。そこへ、
「なにつったんてのよ……ふぁぁあ。邪魔よ、邪魔」
「静かにしろ、レイラ。今、リリーとアルがなにかやってんだ」
「なにかってなによ。朝っぱらから調合じゃないでしょうね」
「どうやら料理みたいだぞ?」
「う、うぇ。思い出しちゃったじゃない……」
昨晩の薬草料理。
流石に昨晩の薬草料理には堪えたのか、口元を押さえるレイラの顔色がどんどん悪くなっていく。
「えっと。まず、薬草を一口サイズに切ります」
「食べやすいようにってことですね! いやぁ、リリー先生は思いやりがあってグゥット! ですね」
「そ、そうでしょうかっ!? 料理する人の気持ちって考えたことなくって」
なんだろう、この歯がゆい会話は。
「き、切り終えたら水に浸して食感を出します! しばらく浸して置いてから、お皿に盛り付けましょう。そして、こちらが盛り付けたものになります」
「おぉ、すでに出来上がっていたんですか!」
昨日の余り物だった。
薬草をサラダのように盛り付け、青汁をドレッシングのようにぶっかけた謎料理だった。そして、青汁のにおいに吐き気を覚えたふたりが口元を押さえ、その料理を封印したのは言うまでもない。それを誰に食べさせるのかと疑問を抱いたシヴィーとレイラは、互いに目を合わせると頷き、音をたてないように外への脱出を謀ったのだった。
~街の大通り~
冒険者ギルドに向かうには、この大通りを進めばいいだけなのだが、朝ということで、朝食は済ませてしまおうと話し合い、ギルドとは反対方向へと足を向けた。
「確か、あっちに美味しいパン屋があったはずよ!」
彼女の確かは当てにならない。
シヴィーの中で、何かがそう告げていた。実際、前回も喫茶店へと案内されるときに迷子になり、事実を認めずに迷い彷徨い続けたのだ。
「はぁ、わかったよ。ただし、一回道に迷ったら引き返すからな」
「な、なによそれ! まるで私が方向音痴みたいに聞こえるんだけど!」
「みたい、じゃなくてまんまだ! そのまんま!」
「はぁ!? 根拠のないこと言ってんじゃないわよ! いいから、私についてきなさい!」
結果、
「迷ったわ……」
「だから、なんで迷ったときにズカズカ進んでいくんだ! すれ違う人に聞くとかいろいろあるだろ!?」
「信じるべきは自分よ! 私は、それで何度も助けられたのよ!」
正規のルートから外れるなんて、追いかける側からしたらあまり想像しないことだろう。そして、そんなことで威張られても迷っているのは事実なのだから説得力がない。
「とりあえず、来た道戻るぞ……」
「あ、ちょっと待ちなさいよ! あと少しで着くかもしれないじゃないの! ねぇシヴィーってば!」
やれやれと気まずそうな顔をしながら来た道も戻るシヴィーと、それを必死に追いかけるレイラ。そして、ふたりが来た道を戻り、見覚えのある角を曲がった時、
「ねぇ、あれってこの間の」
「ん? あぁ、調合師のおっさんの店だったところか。って、もう店を開けてるんだな」
「仕事だけは早いのね。ある意味尊敬するわ」
「なんで俺を見ながら言うんだよ……」
切羽詰まってから行動したのが悪いと自覚していないシヴィーである。
開店している店は、どうやら道具屋のようだ。窓際に並べられているテントやら木箱の数々から察するに、道具屋は道具屋でも、冒険者や旅人といった街の外で活動する人向けのお店のようだった。
と、なにやら店内で揉め事でもあったのか、店員が慌てた様子でフードを被った少女を引きずり出し始めた。だが、よくよく見ると少女と言うには身長が低く、まるで子供のようにも見受けられるのだが。
「お、お客様! 店内のポーションをご購入なされる前に飲まれるのは、犯罪ですよ!」
「や、やめてくれ! 私は、ただポーションが飲みたいだけなんだ!」
「だから、それが犯罪だって言ってるんですよ!」
どうやら売り物に手を出したようだ。
店員は出す所に出そうと必死なのだが、当の本人はそんなこと知ったこっちゃないと店内のポーションに腕を伸ばし、抵抗していた。
「どうかしたのか?」
「ちょ、ちょっとシヴィー!?」
離れてみているつもりが、いつの間にかシヴィーは店員と捕まっている少女の元へと足を向けていた。
「は、はい。この子がですねってあれ!?」
シヴィーに気を取られていた店員の腕の中に、少女の姿はなかった。
「んぐ、んぐ……あぁ、美味すぎるゥ!」
「あー、困りますお客様! お客様、あーお客様!?」
余計なお節介をしてしまったようだ。
呆然と立ち尽くすシヴィーの傍で、真顔のまま店内を眺めるレイラ。そして、ポーションの棚から剥がされまいと必死にしがみつく少女。
「い、いい加減に……っしてくださぁぁぁい!」
ぐいっと力任せに引っ張る店員であったが、いざ棚から引きはがしてしまうと勢いを殺すことができず、窓ガラス目掛けて少女を投げていた。
そして、
──パリィンッ!!!
ガラス片をまき散らしながら、少女はシヴィーとレイラの足元へと転がってきた。
朝日が上り始め、目を覚ましたシヴィー。
寮の部屋ごとに内装は整っており、テーブルにイス、仕舞にはダブルベットよりもちょっと小さいくらいの寝床まで用意されていた。まるでホテルのような内装に、リリーは大はしゃぎしていたくらいだ。
夢のような一日であり、悪夢のような一日であったが故に、シヴィーは夢であってくれと言わんがばかりの顔つきで眠りへと落ちたのだ。そして、目が覚めてから現実であったことを受け止める気力も湧くわけではなく、だるそうに頭をかきながら階段を下りて行った。
リビングについてから、キッチンでアルティミスとリリーがなにやらごそごそやっているのが目についた。が、しかし、仲がいいふたりを邪魔すると悪いので、シヴィーは遠目で見ていることにようだ。
「えー、まず。こちらが今日使う材料でございます」
薬草、一束。
青汁、一本。
すでに嫌な予感しかしない。
「それで、リリー先生は何をクゥッキング! する、おつもりなのでしょうか?」
「は、はい! 今日は、昨晩にあまり説明ができなかった『初めての料理』にリベンジをしたいと思います!」
初めてにリベンジしたところで、それはもうリベンジではないのでは。
内心、鍋を使ってなにかしら調合すると思っていたシヴィーであったが、どうやら料理をする様子なので、暖かい目で見守ることにした。そこへ、
「なにつったんてのよ……ふぁぁあ。邪魔よ、邪魔」
「静かにしろ、レイラ。今、リリーとアルがなにかやってんだ」
「なにかってなによ。朝っぱらから調合じゃないでしょうね」
「どうやら料理みたいだぞ?」
「う、うぇ。思い出しちゃったじゃない……」
昨晩の薬草料理。
流石に昨晩の薬草料理には堪えたのか、口元を押さえるレイラの顔色がどんどん悪くなっていく。
「えっと。まず、薬草を一口サイズに切ります」
「食べやすいようにってことですね! いやぁ、リリー先生は思いやりがあってグゥット! ですね」
「そ、そうでしょうかっ!? 料理する人の気持ちって考えたことなくって」
なんだろう、この歯がゆい会話は。
「き、切り終えたら水に浸して食感を出します! しばらく浸して置いてから、お皿に盛り付けましょう。そして、こちらが盛り付けたものになります」
「おぉ、すでに出来上がっていたんですか!」
昨日の余り物だった。
薬草をサラダのように盛り付け、青汁をドレッシングのようにぶっかけた謎料理だった。そして、青汁のにおいに吐き気を覚えたふたりが口元を押さえ、その料理を封印したのは言うまでもない。それを誰に食べさせるのかと疑問を抱いたシヴィーとレイラは、互いに目を合わせると頷き、音をたてないように外への脱出を謀ったのだった。
~街の大通り~
冒険者ギルドに向かうには、この大通りを進めばいいだけなのだが、朝ということで、朝食は済ませてしまおうと話し合い、ギルドとは反対方向へと足を向けた。
「確か、あっちに美味しいパン屋があったはずよ!」
彼女の確かは当てにならない。
シヴィーの中で、何かがそう告げていた。実際、前回も喫茶店へと案内されるときに迷子になり、事実を認めずに迷い彷徨い続けたのだ。
「はぁ、わかったよ。ただし、一回道に迷ったら引き返すからな」
「な、なによそれ! まるで私が方向音痴みたいに聞こえるんだけど!」
「みたい、じゃなくてまんまだ! そのまんま!」
「はぁ!? 根拠のないこと言ってんじゃないわよ! いいから、私についてきなさい!」
結果、
「迷ったわ……」
「だから、なんで迷ったときにズカズカ進んでいくんだ! すれ違う人に聞くとかいろいろあるだろ!?」
「信じるべきは自分よ! 私は、それで何度も助けられたのよ!」
正規のルートから外れるなんて、追いかける側からしたらあまり想像しないことだろう。そして、そんなことで威張られても迷っているのは事実なのだから説得力がない。
「とりあえず、来た道戻るぞ……」
「あ、ちょっと待ちなさいよ! あと少しで着くかもしれないじゃないの! ねぇシヴィーってば!」
やれやれと気まずそうな顔をしながら来た道も戻るシヴィーと、それを必死に追いかけるレイラ。そして、ふたりが来た道を戻り、見覚えのある角を曲がった時、
「ねぇ、あれってこの間の」
「ん? あぁ、調合師のおっさんの店だったところか。って、もう店を開けてるんだな」
「仕事だけは早いのね。ある意味尊敬するわ」
「なんで俺を見ながら言うんだよ……」
切羽詰まってから行動したのが悪いと自覚していないシヴィーである。
開店している店は、どうやら道具屋のようだ。窓際に並べられているテントやら木箱の数々から察するに、道具屋は道具屋でも、冒険者や旅人といった街の外で活動する人向けのお店のようだった。
と、なにやら店内で揉め事でもあったのか、店員が慌てた様子でフードを被った少女を引きずり出し始めた。だが、よくよく見ると少女と言うには身長が低く、まるで子供のようにも見受けられるのだが。
「お、お客様! 店内のポーションをご購入なされる前に飲まれるのは、犯罪ですよ!」
「や、やめてくれ! 私は、ただポーションが飲みたいだけなんだ!」
「だから、それが犯罪だって言ってるんですよ!」
どうやら売り物に手を出したようだ。
店員は出す所に出そうと必死なのだが、当の本人はそんなこと知ったこっちゃないと店内のポーションに腕を伸ばし、抵抗していた。
「どうかしたのか?」
「ちょ、ちょっとシヴィー!?」
離れてみているつもりが、いつの間にかシヴィーは店員と捕まっている少女の元へと足を向けていた。
「は、はい。この子がですねってあれ!?」
シヴィーに気を取られていた店員の腕の中に、少女の姿はなかった。
「んぐ、んぐ……あぁ、美味すぎるゥ!」
「あー、困りますお客様! お客様、あーお客様!?」
余計なお節介をしてしまったようだ。
呆然と立ち尽くすシヴィーの傍で、真顔のまま店内を眺めるレイラ。そして、ポーションの棚から剥がされまいと必死にしがみつく少女。
「い、いい加減に……っしてくださぁぁぁい!」
ぐいっと力任せに引っ張る店員であったが、いざ棚から引きはがしてしまうと勢いを殺すことができず、窓ガラス目掛けて少女を投げていた。
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──パリィンッ!!!
ガラス片をまき散らしながら、少女はシヴィーとレイラの足元へと転がってきた。
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