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16話 お披露目パーティ
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「本当に?本当に、変じゃない?」
「もう、リリアったらさっきからそればっかり!本当に似合ってるわよ」
セルフィアのその賛辞に、私は鏡の中の自分を見た。
鏡の中の私は、白い露出の少ないドレスを着ている。
肩の出た長袖の白いドレスは、上半身だけタイトで、下半身はふわりと広がっているデザインだ。
首には目の色と同じ赤い宝石が付いた、金色のチェーンのチョーカー。
いつもおろしている髪はサイドだけ垂らして一つにまとめている。
いつもはしない化粧もしている私は、普段の三割増しでかわいい。
それは私でも思う。今日の私はかわいい。そこは間違いなくテンション上がっている。
しかし、ここまで着飾ってもらっても私の表情は晴れない。
――貴族のパーティなんて出席したことがないし、しかも、そこで魔法を披露するなんて。
「うまくいくのかなぁ……貴族の人、スキルなしって嫌いなんでしょ?」
「大半はそうだけど、リリアの魔法の腕を実際に見てしまえば、そんな事も言ってられなくなるわよ。私が保障するわ」
胸を張って明るく言い放つセルフィアに、私は不安ながらに微笑んだ。
この一カ月、彼女には本当に良くしてもらった。
まず、私が杖を使わずに魔法を使える事と、詠唱なしで魔法を使える事は前もってセルフィアには伝えてある。
初めてそれを伝えた時のセルフィアの顔は、今でも思い出すと笑ってしまうくらい目を見開いていた。
そしてこのパーティに出席するにあたって、まずはマナーを習うところから始まった。
もちろん私には貴族のマナーというのはさっぱりだったので、セルフィアに付きっ切りで教えてもらった。
その間、フォルティアとは全然遊んだりはできなかったが、事情を知った彼女は「リリアちゃん、がんばって!」と応援してくれた。ちょっと泣いた。
そして、マナーやダンスをみっちり習い、今日に至っている。
しかし、だ。不安なものは不安なのである。
「不安だ……」
「リリア。今日は私に任せて、貴女は楽しむ事だけを考えていればいいの。分かった?」
「……うん、そうだね。セルフィアがついてるし、なんとかなるよね。色々と任せた」
「そう、それでいいのよ」
――セルフィアを信じよう。
セルフィアの力強い励ましに、うじうじするのはよくないと、私は深呼吸をして「よし」と呟く。
その時、コンコンと部屋にノックの音が響いた。
「どうぞ」
「失礼いたします」
セルフィアの促しで、一人の少年が入ってきた。
私達よりも数個は年上だろう、美しい少年。
この人はセルフィアの執事――トリードさんだ。
髪色と目の色は平凡な茶色だが、優し気な甘い顔つきをしている彼は、女性からモテそうだ。
彼は部屋に入るなり美しい動作で一礼して、微笑みを浮かべた。
「お嬢様、もうそろそろお時間です」
「もうそんな時間?……そろそろ行きましょうか、リリア」
「あ、うん。トリードさん、ありがとうございます」
「とんでもございません。リリア様、今日はお嬢様とともにお楽しみくださいませ」
にこり、微笑んだ彼は「失礼いたします」と一礼して部屋から出て行った。
それを見届けた私達は、顔を見合わせた。
「案内するわ」
「うん、お願い」
私はセルフィアに続いて部屋を後にした。
*
「モンテスマ伯爵令嬢!この度は、おめでとうございます」
「……あら、トラヴィス男爵。いらっしゃっていたのですね」
セルフィアと共にパーティ会場へ向かう途中だった。
廊下で、セルフィアは男性に声を掛けられた。
――なんていうか、いかにもって感じだなぁ。
私はその男性を見ながら、そんな事を思った。
男性は小太りで、顔は脂っぽかった。
服や装飾はぎらついていて、お金持ちアピールをしているような嫌味さを感じる。
元々そういう顔だったら申し訳ないのだが、顔もにやついていて、どうにも信用できなさそうな印象を受ける。
だからだろうか。セルフィアの対応も、いくらか冷たい印象を受ける。
しかし、男爵、と呼ばれた目の前の男は、その顔に笑顔を張り付けたままセルフィアに話しかけ続ける。
「もちろん!モンテスマ伯爵令嬢の十歳の誕生日パーティ、来ないという選択肢はございませんとも!」
「それはそれは、ありがとうございます」
「……え?誕生日パーティ?」
彼の発言に、私は思わず口にした。
――私の魔法の才を見せつける、みたいな話だったはずじゃ。
私の言葉を聞いて、男爵は訝し気な目線をこちらに向けた。
「伯爵令嬢、そちらのご令嬢は?」
「私の大切なお友達です」
「ほう、そうでしたか!ご令嬢、お名前を伺っても?」
「え?えっと」
「リリア、行きましょう。……それでは男爵、失礼いたしますわね」
「あ、お待ちを……」
男爵の標的がこちらに向いた途端、セルフィアは私の手を引いて歩き出した。
困っていたので助かったが、まさかセルフィアがあのような態度を取るとは。
「……もしかして、あんまり好きじゃないの?あの人の事」
「好きになれると思う?」
「いや、全く」
即答すると、セルフィアは「でしょ?」と笑った。
どうやら、男爵は私の印象通りの人らしい。
貴族というのはそういうのを隠して腹の探り合いをしているイメージだったが、違うのだろうか。
「あ、そういえば。セルフィア、さっきの男爵さんが言ってた事だけど――」
「リリア、あそこよ」
話を遮って、セルフィアが指を差した。
私は釣られて、彼女の指の先へと視線を移した。
着飾った人々が、セルフィアの指の先――扉の中へと、吸い込まれる様に入ってく。
……どうやら、あそこが会場らしい。
「あそこよ。リリア、心の準備は良い?」
「う、うん」
セルフィアの言葉に、私は頷いた。
そして、二人並んで会場への扉をくぐった。
――その扉の向こうは、別世界の様だった。
「わぁ……!」
「ようこそ、モンテスマ家主催のパーティへ」
誇らしげに言うセルフィアの言葉を聞きながら、私はその光景を目に焼き付けていく。
――その大きな空間は、天井に飾られたシャンデリアでキラキラと輝いていた。
それに負けす劣らず、人々もドレスや装飾で輝いている。
テーブルには私の日常では見かけないような豪華な食事が並んでいた。
しかし人々は食事に手を付ける事はなく、グラスを片手にお喋りに花を咲かせている。
「これが、貴族のパーティ……!」
「ふふっ、なぁにその感想」
「だって、貴族のパーティって初めて参加するんだもん。というか、パーティ自体行った事ないし」
「あら、そうなの?……でもまぁ、パーティなんてあんまりない方が良いわよ。疲れちゃうし」
「でも、美味しいご飯とか出るでしょ?」
「リリア。パーティの事、美味しいご飯を食べる会みたいに思ってない?」
ジト目で問いかけるセルフィアに「ソンナコトナイヨ」と返し、私は目を逸らした。
――仕方ないじゃないか。平民のパーティなんて、騒ぎながら美味しいご飯を食べる会なのだから。
私の態度に、セルフィアは呆れたように溜息を吐いた。心が痛い。
そうしていると、セルフィアは「あ」と声を漏らして一点を見つめた。
なんだろう、と私もそこを見て、「げ」と声を漏らす。
「――なんでお前がいるんだよ!」
「レオ、言い方悪い。……でも、本当なんでリリアさんが?」
「……やぁ、レベリオ君にヴィンヘルム君」
私達の目の前に早足でやってきた人物――レオとベリタスに、私は顔を引きつらせながらも挨拶をした。
――ヴィンヘルム君は良いけど、コイツはちょっとなぁ。
そう思いながら、私は二人を見る。
レオもベリタスも、パーティのため正装だ。
レオはオフホワイトのタキシードに、胸元に青いブローチを着けている。
ベリタスはいつものように前髪で顔は見えないが、黒いタキシードをビシッと着こなし、格好よく見える。
――なんというか、こうして見ると、二人って……。
「本当に貴族だったんだね」
「オイ、どういう意味だそれは」
「いや、いつも口悪いから」
「お前なァ……!」
「いつもリリアにさんに嫌な態度とってるレオが悪い」
ベリタスの正論に、レオは顔を背けた。どうやら自覚はあるらしい。
正論を突かれた彼はこの空気に耐え切れなかったのだろう、「おい、セルフィア」とセルフィアに話しかけた。
「友達だからって、なんで平民のコイツを連れてきたんだよ」
「あら、いいじゃない。今日はリリアに魔法を披露してもらいたくて呼んだんだから」
「……まぁ、確かに良い余興にはなるか」
「セルフィアの誕生日パーティだもんね。リリアさん、楽しみにしてるよ」
「……えーっと、セルフィア?」
どんどんと進んでいく話に、私の頭にはまた同じ疑問が浮かんだ。
私の問いかけに「なぁに?」とセルフィアが微笑む。
「今日って、セルフィアの誕生日パーティなの?」
「表向きはそうね」
「表向きは、って……!」
――そんな大事な日を、私の汚名を払拭する機会に使っていいの!?
そう思いながら、私はセルフィアを見つめる。
「リリア。貴女、こんな日を私の汚名を払拭する事に使って良いの?とか考えてるでしょ」
「ウッ」
ものの見事に言い当てられ、私は言葉に詰まった。
――セルフィアってもしかしてエスパーなの?と思いながら、幼くも美しい彼女の顔を伺った。
そんな私を、セルフィアは呆れたように見て溜息を吐く。
「はぁ……。あのね、確かにお誕生日っていうのはちゃんと祝って欲しいものよ。でもね、リリア。お友達が侮辱されながら迎える誕生日なんて、私にはなんの価値もないのよ?」
「セ、セルフィア……」
「私の誕生日の席を使うんだもの。リリアの事、他の貴族達に知らしめてやりましょう」
にやり、不敵に笑うセルフィア。
――何この子、超かっこいいんだけど。惚れそう。
私は彼女の手を握って、その顔を見つめた。
「セルフィア、大好きだよ……!」
「ふふ。私もよ、リリア」
手を取り合って見つめ合う私達を、レオ達は「何やってんだ」みたいな目で見てきたのを感じた。
「もう、リリアったらさっきからそればっかり!本当に似合ってるわよ」
セルフィアのその賛辞に、私は鏡の中の自分を見た。
鏡の中の私は、白い露出の少ないドレスを着ている。
肩の出た長袖の白いドレスは、上半身だけタイトで、下半身はふわりと広がっているデザインだ。
首には目の色と同じ赤い宝石が付いた、金色のチェーンのチョーカー。
いつもおろしている髪はサイドだけ垂らして一つにまとめている。
いつもはしない化粧もしている私は、普段の三割増しでかわいい。
それは私でも思う。今日の私はかわいい。そこは間違いなくテンション上がっている。
しかし、ここまで着飾ってもらっても私の表情は晴れない。
――貴族のパーティなんて出席したことがないし、しかも、そこで魔法を披露するなんて。
「うまくいくのかなぁ……貴族の人、スキルなしって嫌いなんでしょ?」
「大半はそうだけど、リリアの魔法の腕を実際に見てしまえば、そんな事も言ってられなくなるわよ。私が保障するわ」
胸を張って明るく言い放つセルフィアに、私は不安ながらに微笑んだ。
この一カ月、彼女には本当に良くしてもらった。
まず、私が杖を使わずに魔法を使える事と、詠唱なしで魔法を使える事は前もってセルフィアには伝えてある。
初めてそれを伝えた時のセルフィアの顔は、今でも思い出すと笑ってしまうくらい目を見開いていた。
そしてこのパーティに出席するにあたって、まずはマナーを習うところから始まった。
もちろん私には貴族のマナーというのはさっぱりだったので、セルフィアに付きっ切りで教えてもらった。
その間、フォルティアとは全然遊んだりはできなかったが、事情を知った彼女は「リリアちゃん、がんばって!」と応援してくれた。ちょっと泣いた。
そして、マナーやダンスをみっちり習い、今日に至っている。
しかし、だ。不安なものは不安なのである。
「不安だ……」
「リリア。今日は私に任せて、貴女は楽しむ事だけを考えていればいいの。分かった?」
「……うん、そうだね。セルフィアがついてるし、なんとかなるよね。色々と任せた」
「そう、それでいいのよ」
――セルフィアを信じよう。
セルフィアの力強い励ましに、うじうじするのはよくないと、私は深呼吸をして「よし」と呟く。
その時、コンコンと部屋にノックの音が響いた。
「どうぞ」
「失礼いたします」
セルフィアの促しで、一人の少年が入ってきた。
私達よりも数個は年上だろう、美しい少年。
この人はセルフィアの執事――トリードさんだ。
髪色と目の色は平凡な茶色だが、優し気な甘い顔つきをしている彼は、女性からモテそうだ。
彼は部屋に入るなり美しい動作で一礼して、微笑みを浮かべた。
「お嬢様、もうそろそろお時間です」
「もうそんな時間?……そろそろ行きましょうか、リリア」
「あ、うん。トリードさん、ありがとうございます」
「とんでもございません。リリア様、今日はお嬢様とともにお楽しみくださいませ」
にこり、微笑んだ彼は「失礼いたします」と一礼して部屋から出て行った。
それを見届けた私達は、顔を見合わせた。
「案内するわ」
「うん、お願い」
私はセルフィアに続いて部屋を後にした。
*
「モンテスマ伯爵令嬢!この度は、おめでとうございます」
「……あら、トラヴィス男爵。いらっしゃっていたのですね」
セルフィアと共にパーティ会場へ向かう途中だった。
廊下で、セルフィアは男性に声を掛けられた。
――なんていうか、いかにもって感じだなぁ。
私はその男性を見ながら、そんな事を思った。
男性は小太りで、顔は脂っぽかった。
服や装飾はぎらついていて、お金持ちアピールをしているような嫌味さを感じる。
元々そういう顔だったら申し訳ないのだが、顔もにやついていて、どうにも信用できなさそうな印象を受ける。
だからだろうか。セルフィアの対応も、いくらか冷たい印象を受ける。
しかし、男爵、と呼ばれた目の前の男は、その顔に笑顔を張り付けたままセルフィアに話しかけ続ける。
「もちろん!モンテスマ伯爵令嬢の十歳の誕生日パーティ、来ないという選択肢はございませんとも!」
「それはそれは、ありがとうございます」
「……え?誕生日パーティ?」
彼の発言に、私は思わず口にした。
――私の魔法の才を見せつける、みたいな話だったはずじゃ。
私の言葉を聞いて、男爵は訝し気な目線をこちらに向けた。
「伯爵令嬢、そちらのご令嬢は?」
「私の大切なお友達です」
「ほう、そうでしたか!ご令嬢、お名前を伺っても?」
「え?えっと」
「リリア、行きましょう。……それでは男爵、失礼いたしますわね」
「あ、お待ちを……」
男爵の標的がこちらに向いた途端、セルフィアは私の手を引いて歩き出した。
困っていたので助かったが、まさかセルフィアがあのような態度を取るとは。
「……もしかして、あんまり好きじゃないの?あの人の事」
「好きになれると思う?」
「いや、全く」
即答すると、セルフィアは「でしょ?」と笑った。
どうやら、男爵は私の印象通りの人らしい。
貴族というのはそういうのを隠して腹の探り合いをしているイメージだったが、違うのだろうか。
「あ、そういえば。セルフィア、さっきの男爵さんが言ってた事だけど――」
「リリア、あそこよ」
話を遮って、セルフィアが指を差した。
私は釣られて、彼女の指の先へと視線を移した。
着飾った人々が、セルフィアの指の先――扉の中へと、吸い込まれる様に入ってく。
……どうやら、あそこが会場らしい。
「あそこよ。リリア、心の準備は良い?」
「う、うん」
セルフィアの言葉に、私は頷いた。
そして、二人並んで会場への扉をくぐった。
――その扉の向こうは、別世界の様だった。
「わぁ……!」
「ようこそ、モンテスマ家主催のパーティへ」
誇らしげに言うセルフィアの言葉を聞きながら、私はその光景を目に焼き付けていく。
――その大きな空間は、天井に飾られたシャンデリアでキラキラと輝いていた。
それに負けす劣らず、人々もドレスや装飾で輝いている。
テーブルには私の日常では見かけないような豪華な食事が並んでいた。
しかし人々は食事に手を付ける事はなく、グラスを片手にお喋りに花を咲かせている。
「これが、貴族のパーティ……!」
「ふふっ、なぁにその感想」
「だって、貴族のパーティって初めて参加するんだもん。というか、パーティ自体行った事ないし」
「あら、そうなの?……でもまぁ、パーティなんてあんまりない方が良いわよ。疲れちゃうし」
「でも、美味しいご飯とか出るでしょ?」
「リリア。パーティの事、美味しいご飯を食べる会みたいに思ってない?」
ジト目で問いかけるセルフィアに「ソンナコトナイヨ」と返し、私は目を逸らした。
――仕方ないじゃないか。平民のパーティなんて、騒ぎながら美味しいご飯を食べる会なのだから。
私の態度に、セルフィアは呆れたように溜息を吐いた。心が痛い。
そうしていると、セルフィアは「あ」と声を漏らして一点を見つめた。
なんだろう、と私もそこを見て、「げ」と声を漏らす。
「――なんでお前がいるんだよ!」
「レオ、言い方悪い。……でも、本当なんでリリアさんが?」
「……やぁ、レベリオ君にヴィンヘルム君」
私達の目の前に早足でやってきた人物――レオとベリタスに、私は顔を引きつらせながらも挨拶をした。
――ヴィンヘルム君は良いけど、コイツはちょっとなぁ。
そう思いながら、私は二人を見る。
レオもベリタスも、パーティのため正装だ。
レオはオフホワイトのタキシードに、胸元に青いブローチを着けている。
ベリタスはいつものように前髪で顔は見えないが、黒いタキシードをビシッと着こなし、格好よく見える。
――なんというか、こうして見ると、二人って……。
「本当に貴族だったんだね」
「オイ、どういう意味だそれは」
「いや、いつも口悪いから」
「お前なァ……!」
「いつもリリアにさんに嫌な態度とってるレオが悪い」
ベリタスの正論に、レオは顔を背けた。どうやら自覚はあるらしい。
正論を突かれた彼はこの空気に耐え切れなかったのだろう、「おい、セルフィア」とセルフィアに話しかけた。
「友達だからって、なんで平民のコイツを連れてきたんだよ」
「あら、いいじゃない。今日はリリアに魔法を披露してもらいたくて呼んだんだから」
「……まぁ、確かに良い余興にはなるか」
「セルフィアの誕生日パーティだもんね。リリアさん、楽しみにしてるよ」
「……えーっと、セルフィア?」
どんどんと進んでいく話に、私の頭にはまた同じ疑問が浮かんだ。
私の問いかけに「なぁに?」とセルフィアが微笑む。
「今日って、セルフィアの誕生日パーティなの?」
「表向きはそうね」
「表向きは、って……!」
――そんな大事な日を、私の汚名を払拭する機会に使っていいの!?
そう思いながら、私はセルフィアを見つめる。
「リリア。貴女、こんな日を私の汚名を払拭する事に使って良いの?とか考えてるでしょ」
「ウッ」
ものの見事に言い当てられ、私は言葉に詰まった。
――セルフィアってもしかしてエスパーなの?と思いながら、幼くも美しい彼女の顔を伺った。
そんな私を、セルフィアは呆れたように見て溜息を吐く。
「はぁ……。あのね、確かにお誕生日っていうのはちゃんと祝って欲しいものよ。でもね、リリア。お友達が侮辱されながら迎える誕生日なんて、私にはなんの価値もないのよ?」
「セ、セルフィア……」
「私の誕生日の席を使うんだもの。リリアの事、他の貴族達に知らしめてやりましょう」
にやり、不敵に笑うセルフィア。
――何この子、超かっこいいんだけど。惚れそう。
私は彼女の手を握って、その顔を見つめた。
「セルフィア、大好きだよ……!」
「ふふ。私もよ、リリア」
手を取り合って見つめ合う私達を、レオ達は「何やってんだ」みたいな目で見てきたのを感じた。
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