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21話 好き(※R15)
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「いや! ミリ、死なないで! いやっ、いやぁっ!」
そう叫んだ直後だった。――眩い光が部屋中を覆った。思わず目を閉じる。その光は長く続かず、すぐに消えた。
私は目を開いて、辺りを見渡す。
(今の光は一体……? いや、そんな場合じゃない! ミリが!)
私は慌ててミリを見下ろした。しかし、目に入った違和感に私は瞠目する。
「……え?」
(傷が、塞がってる?)
先ほどまで出血していたミリの腹は傷が塞がり、衣服に付着していた血痕もなくなっていた。それはまるでミリの使う治癒の妖術の様だ。
私はハッとしてミリの心臓に耳を当てる。ドクンドクンという鼓動が聞こえてきた。
「生きてる……何がどうなって……」
「……多分、マリの力だ」
その言葉に私は振り返った。私のすぐ後ろに、朱里が立っていた。私は慌てて話しかける。
「朱里! もう大丈夫なの!?」
「ああ、香の効果が切れたみたいだ。今は全然平気」
「なら良かった。……というか、私の力ってどういう事?」
朱里の言葉を思い出し、私は首を傾げた。朱里は私達の前に座って、ミリを見下ろした。
「そのまんまの意味だよ。多分、この子だけじゃなくてマリにも備わっていたんだよ、治癒の力が。土壇場でその力が発揮されて、この子の怪我が治ったんだよ」
「……信じられない。私にそんな力が……?」
「恒常的に使えるかは分からないけど、マリが使ったのは確かだね。なんなら俺の体調も治してるし、さっきの光」
「……そっか。朱里もミリも、助かったんだ……」
朱里の言葉に思わず呟けば、なぜか目頭が熱くなった。私はミリの頭をそっと畳に下すと、朱里に抱き着いた。
「朱里、私の妹が本当にごめんなさい。……私も、刃物を向けてごめんなさい。謝って済む話じゃないのは分かってる。けど……けど……!」
涙があふれ、言葉に詰まった。酷い事をしたのは私達だ。どう思われたって仕方がない。それなのに、私にあるのは自分勝手な思い。
(好き……朱里が好き……! 嫌われたくない!)
――なんて自分勝手な気持ちだろう。冷静な自分が囁く。それでも、私は思ってしまう。だって、好きだから。
「グスッ。あ、あのね、朱里。私、朱里と結婚したい。こんな事が起っちゃったけど、朱里が好きなの。離れたくない、側にいたい! ……お願い、私をそばに置いて……っ」
ぼろぼろと零れる涙を無視して、私は金色の瞳を見つめた。朱里は驚いた様に目を見開いていた。
……私達の間に沈黙が訪れる。私は彼から眼を逸らし、俯いた。
(やっぱり、嫌われちゃったかな)
当り前だ、自分を殺そうとした相手なんて好きになれるはずがない。私は口元に笑みを作った。
「……ごめん、今のウソ! やっぱりさ、花嫁は別の人にした方が良いよ! こんな事も起っちゃったし! だから――」
「――マリ、黙って」
「っ……!」
冷たい声が私の言葉を遮った。私はびくりと肩を揺らし、恐る恐る朱里を見る。――その顔は、怒りに満ちていた。
「しゅ、朱里……?」
「……さっきから黙って聞いてればさ。何? 別の花嫁を探せって。俺は絶対他の人なんて選ばない。マリが俺の花嫁なんだから」
「で、でも――」
「いいから黙って聞いて! ……マリ。俺の事、好きって言ってくれてありがとう。俺、恥ずかしいや。好きな子に先に告白させるなんて」
「……え?」
(今、何て言った?)
朱里の言葉に、私は目を見開いて彼を見つめる。彼の顔は徐々に赤らんでいき、恥ずかしいのか視線をゆらゆらと泳がせている。
彼が私の両腕を掴む。覚悟を決めたかのように潤んだ目で私を見つめ、朱里は言った。
「――好きだよ、マリ。俺の方がマリの何倍も、何千倍も好き。……分かってよ、あれだけ執着して、嫉妬してるんだから」
「……え、あ、いや。確かにそうかもしれないけど……好きになってくれてるとは思わないじゃん」
「思えよ、馬鹿」
そう言って朱里は拗ねたように眉間にしわを寄せ、私を抱きしめた。
「マリ、好きだよ」
「……私も、好き。朱里が好き」
私達は見つめあい、唇を重ねた。柔らかなそこはいつもと違う感覚がした。
唇を離した私達は見つめあった。しばらくして、朱里が口を開く。
「俺の事、いつから好きだった?」
「えっ。えっと……初夜の次の日」
「え、なにそのタイミング」
「仕方ないじゃん、泣いて謝る朱里が可愛かったんだから! ……というか! ミリ、どうする?」
私はなんだか恥ずかしくなって、ずっと放置していた我が妹へ視線を移した。助かっているとはいえ、死にかけていた人の隣でいちゃついていたなんて恥ずかしい限りである。
朱里はミリへ近づくと、彼女を横抱きにした。
「目が覚めるまで別室で寝かせておこう。幸い、この騒ぎも知られていないみたいだし」
「それは有難いけど……いいの? その、朱里の命を奪おうとしてたんだよ?」
「けど助かってるんだ、この子のお陰で。だから助けるのが道理だろ?」
そう返して朱里は笑った。
数時間後、目を覚ましたミリは私達へ平謝りした。頭を床に擦り付け、何度も謝罪の言葉を口にした。
「二人とも、ごめんなさい! 私、どうかしていました。本当に、本当に申し訳ありません!」
「いや、良い。大方、霊力を持った誰かに憎悪の気持ちを煽られていたんだろう、そういう妖術があると聞いた事がある」
朱里は笑ってミリを許した。
ミリは帰る時までずっと謝っていた。しかし、帰り際、こそこそと朱里になにかを渡していた。何かは見えなかったけど、お土産か何かだろうか?
ミリが城を去るのを見届けて、私達は向かい合った。
「……一件落着だね」
「ああ、そうだな。……だからさ、マリ」
私の言葉に同意した朱里が、私を横抱きにする。驚いて彼を見ると、彼の目は色欲に塗れていて……。
「しゅ、朱里?」
「俺、今すげームラムラしてる。――相手してくれるよね?」
「っ……うん」
甘い声で囁かれてしまえば、私は頷く事しかできない。
私の返答に満足げに笑って、私を横抱きにしたまま朱里は屋敷の中を進んだ。私のおまんこは少し濡れていた。
そう叫んだ直後だった。――眩い光が部屋中を覆った。思わず目を閉じる。その光は長く続かず、すぐに消えた。
私は目を開いて、辺りを見渡す。
(今の光は一体……? いや、そんな場合じゃない! ミリが!)
私は慌ててミリを見下ろした。しかし、目に入った違和感に私は瞠目する。
「……え?」
(傷が、塞がってる?)
先ほどまで出血していたミリの腹は傷が塞がり、衣服に付着していた血痕もなくなっていた。それはまるでミリの使う治癒の妖術の様だ。
私はハッとしてミリの心臓に耳を当てる。ドクンドクンという鼓動が聞こえてきた。
「生きてる……何がどうなって……」
「……多分、マリの力だ」
その言葉に私は振り返った。私のすぐ後ろに、朱里が立っていた。私は慌てて話しかける。
「朱里! もう大丈夫なの!?」
「ああ、香の効果が切れたみたいだ。今は全然平気」
「なら良かった。……というか、私の力ってどういう事?」
朱里の言葉を思い出し、私は首を傾げた。朱里は私達の前に座って、ミリを見下ろした。
「そのまんまの意味だよ。多分、この子だけじゃなくてマリにも備わっていたんだよ、治癒の力が。土壇場でその力が発揮されて、この子の怪我が治ったんだよ」
「……信じられない。私にそんな力が……?」
「恒常的に使えるかは分からないけど、マリが使ったのは確かだね。なんなら俺の体調も治してるし、さっきの光」
「……そっか。朱里もミリも、助かったんだ……」
朱里の言葉に思わず呟けば、なぜか目頭が熱くなった。私はミリの頭をそっと畳に下すと、朱里に抱き着いた。
「朱里、私の妹が本当にごめんなさい。……私も、刃物を向けてごめんなさい。謝って済む話じゃないのは分かってる。けど……けど……!」
涙があふれ、言葉に詰まった。酷い事をしたのは私達だ。どう思われたって仕方がない。それなのに、私にあるのは自分勝手な思い。
(好き……朱里が好き……! 嫌われたくない!)
――なんて自分勝手な気持ちだろう。冷静な自分が囁く。それでも、私は思ってしまう。だって、好きだから。
「グスッ。あ、あのね、朱里。私、朱里と結婚したい。こんな事が起っちゃったけど、朱里が好きなの。離れたくない、側にいたい! ……お願い、私をそばに置いて……っ」
ぼろぼろと零れる涙を無視して、私は金色の瞳を見つめた。朱里は驚いた様に目を見開いていた。
……私達の間に沈黙が訪れる。私は彼から眼を逸らし、俯いた。
(やっぱり、嫌われちゃったかな)
当り前だ、自分を殺そうとした相手なんて好きになれるはずがない。私は口元に笑みを作った。
「……ごめん、今のウソ! やっぱりさ、花嫁は別の人にした方が良いよ! こんな事も起っちゃったし! だから――」
「――マリ、黙って」
「っ……!」
冷たい声が私の言葉を遮った。私はびくりと肩を揺らし、恐る恐る朱里を見る。――その顔は、怒りに満ちていた。
「しゅ、朱里……?」
「……さっきから黙って聞いてればさ。何? 別の花嫁を探せって。俺は絶対他の人なんて選ばない。マリが俺の花嫁なんだから」
「で、でも――」
「いいから黙って聞いて! ……マリ。俺の事、好きって言ってくれてありがとう。俺、恥ずかしいや。好きな子に先に告白させるなんて」
「……え?」
(今、何て言った?)
朱里の言葉に、私は目を見開いて彼を見つめる。彼の顔は徐々に赤らんでいき、恥ずかしいのか視線をゆらゆらと泳がせている。
彼が私の両腕を掴む。覚悟を決めたかのように潤んだ目で私を見つめ、朱里は言った。
「――好きだよ、マリ。俺の方がマリの何倍も、何千倍も好き。……分かってよ、あれだけ執着して、嫉妬してるんだから」
「……え、あ、いや。確かにそうかもしれないけど……好きになってくれてるとは思わないじゃん」
「思えよ、馬鹿」
そう言って朱里は拗ねたように眉間にしわを寄せ、私を抱きしめた。
「マリ、好きだよ」
「……私も、好き。朱里が好き」
私達は見つめあい、唇を重ねた。柔らかなそこはいつもと違う感覚がした。
唇を離した私達は見つめあった。しばらくして、朱里が口を開く。
「俺の事、いつから好きだった?」
「えっ。えっと……初夜の次の日」
「え、なにそのタイミング」
「仕方ないじゃん、泣いて謝る朱里が可愛かったんだから! ……というか! ミリ、どうする?」
私はなんだか恥ずかしくなって、ずっと放置していた我が妹へ視線を移した。助かっているとはいえ、死にかけていた人の隣でいちゃついていたなんて恥ずかしい限りである。
朱里はミリへ近づくと、彼女を横抱きにした。
「目が覚めるまで別室で寝かせておこう。幸い、この騒ぎも知られていないみたいだし」
「それは有難いけど……いいの? その、朱里の命を奪おうとしてたんだよ?」
「けど助かってるんだ、この子のお陰で。だから助けるのが道理だろ?」
そう返して朱里は笑った。
数時間後、目を覚ましたミリは私達へ平謝りした。頭を床に擦り付け、何度も謝罪の言葉を口にした。
「二人とも、ごめんなさい! 私、どうかしていました。本当に、本当に申し訳ありません!」
「いや、良い。大方、霊力を持った誰かに憎悪の気持ちを煽られていたんだろう、そういう妖術があると聞いた事がある」
朱里は笑ってミリを許した。
ミリは帰る時までずっと謝っていた。しかし、帰り際、こそこそと朱里になにかを渡していた。何かは見えなかったけど、お土産か何かだろうか?
ミリが城を去るのを見届けて、私達は向かい合った。
「……一件落着だね」
「ああ、そうだな。……だからさ、マリ」
私の言葉に同意した朱里が、私を横抱きにする。驚いて彼を見ると、彼の目は色欲に塗れていて……。
「しゅ、朱里?」
「俺、今すげームラムラしてる。――相手してくれるよね?」
「っ……うん」
甘い声で囁かれてしまえば、私は頷く事しかできない。
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