黒井君

花枝のん菓子

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黒井君の告白

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 黒井君と付き合い始めてから、黒井君は私の家にくるようになった。私の家族は2人の姉と両親の5人家族。けれど、両親は出張の連続であまり家には帰ってこない。姉も仕事が忙しいからあまり気にしないようだった。黒井君は自分の家の居心地が悪いらしく、毎日私の家でごはんを食べて、お風呂に入り、空き部屋で寝ていく。家族のことや家のことを聞くと黒井君は苦い顔をする。だからあんまり聞けないでいた。

 黒井君はたまに学校に来なくなる。それでも私の家に帰ってくる。心配になって聞くとまた苦い顔をするから、また聞けなくなってしまう。

 ある日黒井君が私の家に友人を連れてきた。その友人も家に帰ることなく私の家に居座り始めた。その友人はあまり柄の良い人には見えず、私は少し不安になりはじめた。黒井君は今まで通り私にやさしいし、家事も手伝ってくれる。それなのに私の頭によぎるのは1年生の時に聞いた噂ばかりだった。


「黒井君。そろそろ家に帰った方がいいよ」


 不安にさいなまれた私の口から出た言葉。出てしまった言葉。この言葉を聞いた黒井君はとても驚いた顔をした。そしてすぐあとにとても恐ろしい顔をした。私は蛇ににらまれた蛙のような気分だった。変な汗が額を流れた。

「どうしてそんなことを言うの?俺と一緒にいるのはそんなに嫌?本城君が死んでやっと邪魔者のいない二人きりの世界になれたのに」

 本城君が死んだ?確かにあの親睦会の日から本城君の姿を見ていない。山の麓の集合場所にはいたはずの本城君はバーベキュー場には来なかった。少し遅れているのだろうとみんな思っていたようだ。しかし終わりになっても本城君は現れなかった。スマホに連絡を入れても返事はなかった。仕方なく私たちは警察に疾走届を出してその日は解散したのだ。警察からその後の連絡は来ていない。本城君は死んだかどうかまだわからないはず。
「本城君が死んだってどういうこと?」
 私は黒井君を問いただした。
「本城君は山の中にある滝の近くで脚を滑らせて落ちたのさ。そして溺れて死んだんだよ」
 黒井君はひょうひょうと語った。でまかせや推測を言っているようには見えなかった。確かにあの山には滝があった。それは知っている。だってその滝の近くを一人で歩いていた時に黒井君に声をかけられたのだから。
「なんで黒井君がそんなこと知っているの?」


「そんなの決まってるだろ?俺が本城君の最後を見ていたからさ」
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