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リュカside
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僕は王城に来ている。
先程の視察の件を父に報告するためだ。
父は仕事を家に持ち込まない主義の為、屋敷では話を聞いてくれない。
面倒臭い。
父の執務室へ入ると、王太子のクインスも居て声を掛けられる。
「リュカお帰り。街の様子はどうだった?」
父とクインスに街の状況を説明する。
「ミーティア嬢の店を中心に人がかなり増えてるね。他にも人気のカフェや雑貨店もある。客層も良いから、それに合わせたレベルの店舗を増やして行けば、かなり人気のエリアになると思う。
ただ女性が多いから、巡回を増やした方がいい」
「そうか、学生とは思えない手腕だな。公爵と話をしたが、商品の開発から従業員への教育、全て令嬢に任せていると言っていた。素晴らしいな」
父が人を褒めるのは珍しい。
確かにあのレベルの店を女子学生が経営してるというのは衝撃だ。
「ミーティア嬢は凄いね。逃した魚は大きいなぁ」
クインスののんびりした態度が苛つく。
「呑気だね。はっきり言わせてもらうけど、ラルフの評判が良くない。王家が甘やかしてきた結果だよね?これからラルフをどうするつもり?」
クインスの顔が強張る。
「厳しいな。分かってる。だからリュカにも協力して欲しい」
無意識に眉間に皺が寄る。面倒はごめんだ。
「ラルフをドリーネ嬢から引き離したい。両親と私がいくら言っても聞く耳を持たない。リュカからも言って欲しい」
「断る」
「即答するなよ、長い付き合いだろ?ラルフはリュカを尊敬してるし、兄の私より懐いてるかもしれない。
ミーティア嬢と婚約破棄以降、ラルフの評判が下がっているのは知ってる。ミーティア嬢と比べて、ドリーネ嬢は評判が悪いから余計にね」
「城に閉じ込めて教育したら?それか騎士団と一緒に森へ害獣の討伐に行かせたらどう?北の森はここ数年、肉食系の猛獣の被害が多いよね。
ラルフは一度厳しい環境に身を置いて、自分の実力を自覚した方がいい。勘違いが酷い」
「害獣討伐…冗談言うな」
「本気だけど。どう思いますか?」
面白そうに静観してる父に振ってみる。
「息子の意見に同意だな」
「…お前達はそっくりな親子だった。
確かに私達はラルフに甘い。あいつは子供の頃体が弱かっただろ?青白い顔でベッドに寝てるラルフを思い出すと…どうも厳しく出来ないんだ。
両親は仕事、私は勉強があってラルフを構ってあげられなかった。だから少し負い目もあるかもしれない。
動けないラルフにリュカが読み聞かせしてくれたり、動けるようになったラルフに剣を教えてくれたり、リュカが一番一緒に居てくれたな」
確かにラルフは今でも子供の頃のように僕を兄と言って慕ってくれている。
僕にも弟に対するような情はある。
けれど甘やかすだけが優しさじゃない。
「今は元気だろ?王族として厳しく教育するのが愛情だと思うけどね。最近の行動は目に余る」
「そうなんだが…。学校での事だ、穏便に済ませたい」
溜め息が出る。
「甘いなぁ。それが自分の首を絞める事になってもいいの?穏便に済まないと思うよ」
「怖い事言わないでくれ」
情けない声を出すクインスに呆れる。ラルフの馬鹿さ加減を一番分かってないのが身内とか。
「それにラルフがミーティア嬢にして来た事を聞いた。はっきり言って、ラルフを軽蔑してる。
クインス、何故僕にこの事を黙ってたの?」
「……」
クインスは言葉に詰まってる。
多分僕が怒ると思ったんだろう。
ラルフの事を嫌うと。
はぁ。本当にこの兄弟には呆れる。
まぁ警告はしたからね。
⭐︎
ミーティア嬢は不思議な子だ。
ラルフがやらせていた事は最低だが、黙って聞くタイプには見えない。いや、ラルフと婚約していた頃は従順に見えた。
今と随分印象が違う。
しかしラルフの言った事を、とことん突き詰めて極めていく姿勢には驚く。彼女が始めた商売も、きっかけはラルフの言った言葉を追及していった結果身に付いたものだとか。
あと彼女がたまにクラブに差し入れてくれるお菓子。あまりの美味しさに、さすが公爵家は違うと皆が感動していたが、彼女の手作りだと言う。
これもラルフに命じられて作るようになったそうだ。これもお店を出せば人気になると思うが彼女は今の店で手一杯のようだ。
勿体無いが学生だからね。
あいつは公爵令嬢に何をさせているんだ。
怒鳴りたくなるが、彼女のプラスになっているのだから、結果的には良かったと言うべきなのか?
凄い才能だと思う。
そんな彼女を与えられておきながら、顔だけの女を選ぶなんて。ラルフは本当に馬鹿だ。
彼女は面白い。
最近はつい目で追ってしまう。
本人は貴族の令嬢らしくお淑やかに見せようとしてるけど、見え隠れする活発さや苛烈さが面白くて、でも危なっかしくて目が離せない。
助けてあげたくなる。
あと笑顔が可愛い。
先程の視察の件を父に報告するためだ。
父は仕事を家に持ち込まない主義の為、屋敷では話を聞いてくれない。
面倒臭い。
父の執務室へ入ると、王太子のクインスも居て声を掛けられる。
「リュカお帰り。街の様子はどうだった?」
父とクインスに街の状況を説明する。
「ミーティア嬢の店を中心に人がかなり増えてるね。他にも人気のカフェや雑貨店もある。客層も良いから、それに合わせたレベルの店舗を増やして行けば、かなり人気のエリアになると思う。
ただ女性が多いから、巡回を増やした方がいい」
「そうか、学生とは思えない手腕だな。公爵と話をしたが、商品の開発から従業員への教育、全て令嬢に任せていると言っていた。素晴らしいな」
父が人を褒めるのは珍しい。
確かにあのレベルの店を女子学生が経営してるというのは衝撃だ。
「ミーティア嬢は凄いね。逃した魚は大きいなぁ」
クインスののんびりした態度が苛つく。
「呑気だね。はっきり言わせてもらうけど、ラルフの評判が良くない。王家が甘やかしてきた結果だよね?これからラルフをどうするつもり?」
クインスの顔が強張る。
「厳しいな。分かってる。だからリュカにも協力して欲しい」
無意識に眉間に皺が寄る。面倒はごめんだ。
「ラルフをドリーネ嬢から引き離したい。両親と私がいくら言っても聞く耳を持たない。リュカからも言って欲しい」
「断る」
「即答するなよ、長い付き合いだろ?ラルフはリュカを尊敬してるし、兄の私より懐いてるかもしれない。
ミーティア嬢と婚約破棄以降、ラルフの評判が下がっているのは知ってる。ミーティア嬢と比べて、ドリーネ嬢は評判が悪いから余計にね」
「城に閉じ込めて教育したら?それか騎士団と一緒に森へ害獣の討伐に行かせたらどう?北の森はここ数年、肉食系の猛獣の被害が多いよね。
ラルフは一度厳しい環境に身を置いて、自分の実力を自覚した方がいい。勘違いが酷い」
「害獣討伐…冗談言うな」
「本気だけど。どう思いますか?」
面白そうに静観してる父に振ってみる。
「息子の意見に同意だな」
「…お前達はそっくりな親子だった。
確かに私達はラルフに甘い。あいつは子供の頃体が弱かっただろ?青白い顔でベッドに寝てるラルフを思い出すと…どうも厳しく出来ないんだ。
両親は仕事、私は勉強があってラルフを構ってあげられなかった。だから少し負い目もあるかもしれない。
動けないラルフにリュカが読み聞かせしてくれたり、動けるようになったラルフに剣を教えてくれたり、リュカが一番一緒に居てくれたな」
確かにラルフは今でも子供の頃のように僕を兄と言って慕ってくれている。
僕にも弟に対するような情はある。
けれど甘やかすだけが優しさじゃない。
「今は元気だろ?王族として厳しく教育するのが愛情だと思うけどね。最近の行動は目に余る」
「そうなんだが…。学校での事だ、穏便に済ませたい」
溜め息が出る。
「甘いなぁ。それが自分の首を絞める事になってもいいの?穏便に済まないと思うよ」
「怖い事言わないでくれ」
情けない声を出すクインスに呆れる。ラルフの馬鹿さ加減を一番分かってないのが身内とか。
「それにラルフがミーティア嬢にして来た事を聞いた。はっきり言って、ラルフを軽蔑してる。
クインス、何故僕にこの事を黙ってたの?」
「……」
クインスは言葉に詰まってる。
多分僕が怒ると思ったんだろう。
ラルフの事を嫌うと。
はぁ。本当にこの兄弟には呆れる。
まぁ警告はしたからね。
⭐︎
ミーティア嬢は不思議な子だ。
ラルフがやらせていた事は最低だが、黙って聞くタイプには見えない。いや、ラルフと婚約していた頃は従順に見えた。
今と随分印象が違う。
しかしラルフの言った事を、とことん突き詰めて極めていく姿勢には驚く。彼女が始めた商売も、きっかけはラルフの言った言葉を追及していった結果身に付いたものだとか。
あと彼女がたまにクラブに差し入れてくれるお菓子。あまりの美味しさに、さすが公爵家は違うと皆が感動していたが、彼女の手作りだと言う。
これもラルフに命じられて作るようになったそうだ。これもお店を出せば人気になると思うが彼女は今の店で手一杯のようだ。
勿体無いが学生だからね。
あいつは公爵令嬢に何をさせているんだ。
怒鳴りたくなるが、彼女のプラスになっているのだから、結果的には良かったと言うべきなのか?
凄い才能だと思う。
そんな彼女を与えられておきながら、顔だけの女を選ぶなんて。ラルフは本当に馬鹿だ。
彼女は面白い。
最近はつい目で追ってしまう。
本人は貴族の令嬢らしくお淑やかに見せようとしてるけど、見え隠れする活発さや苛烈さが面白くて、でも危なっかしくて目が離せない。
助けてあげたくなる。
あと笑顔が可愛い。
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