アラフィフ暗殺者、世界の滅亡を防ぐために精霊との契約を目指して異世界転生を果たします

佐城竜信

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アラフィフ暗殺者、異世界転生を果たす

34,アンラッキーガール?

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「あ、あの……。ナナシさんのイカサマってどういう方法なんですか?」
ティファニアが恐る恐るという感じで質問する。すると、ナナシはしばらく考えてから口を開いた。
「そうだね。実際に見てもらったほうが早いかな」
ナナシはカードを手に取り、その並びをティファニアに見せる。
「さて、君にはこれがどう見える?」
「えっと、5・J・Q・K・Aです」
「正解。それじゃあ、このカードを一枚ずつ裏返しにしていこうか」
ナナシはそう言ってカードを裏返しにしていく。
「はい、これで全部です」
「それじゃあこれを表にしていこうか」
ナナシがカードを表にすると、ハートの10,J,Q,K,Aが並んでいる。つまりはロイヤルストレートフラッシュが完成しているのだ。
「すごい……。」
「これが私の得意なイカサマだよ。袖口にカードを隠しておくことによって、すり替えができるんだ」
ナナシが自分の袖をまくり上げると、そこからカードがパラパラと落ちてくる。
「それじゃあ私が負けたのも、あなたがイカサマを……」
「いや、そういうわけじゃないんだよ。確かに私はこのイカサマは得意だけどね、私がホールに立つときはカードチェンジをしていないことを示すためにも袖まくりをしているんだ。だから、この方法は使えないはずなんだよね」
「でも、それならどうして私には勝てたんですか?」
「それはね……」
ナナシが説明しようとしたところで、カロンが割り込んでくる。
「おい、いい加減にしろよ。こんな茶番で時間を食ってたら仕事が終わらねえぞ?」
「そうだね……。まあ、今回は単純に運が悪かったってことでいいんじゃないかな?」
「運?」
ティファニアが不思議そうに首を傾げると、ナナシは苦笑いをしながら答える。
「まあ、要するにカジノで勝つコツは場の雰囲気を読むことと、自分のツキを信じることだよ。君はこれからも頑張って稼いでくれればいいさ」
「う、うん。ありがとうございます!」
「さすがは最年長者だな」
スタッフルームに入ってきたゴルディがからかうようにそう言った。
「いや、最年長者って……」
「なあ、ティファニアちゃん。ナナシとゼノ、どっちが年上に見える?」
ゼノを連れて入ってきたゴルディは、ゼノとナナシを交互に指差しながらティファニアにそう尋ねた。
「えっと……。ナナシさん、でしょうか?」
「だそうだぜ、ナナシ」
「ぐぬぬ……」
ナナシは悔しそうな顔でゴルディのことを睨む。だがゴルディは気にせずにティファニアに向かって話しかけた。
「それでティファニアちゃん、どうしてそう思ったんだ?」
「えっ?ええと……」
ティファニアは少しだけ考え込む。それから彼女はゴルディの方に向き直った。
「白髪のお兄さんの方が大人っぽい雰囲気がありますし、それにカジノのことも詳しいみたいだから……」
「ふーん。まあ、その答えで十分だな」
ティファニアの言葉を聞いて、ゴルディは満足そうに笑みを浮かべた。
「いや、ちょっと待って!私のこれはシルバーアッシュだからね!白髪なんかじゃなくて銀髪だから!」
「うるせえぞ、ナナシ。さっさと働け!」
「くぅ~……。この職場環境、どうにかならないのかね……」
ナナシはぶつくさ言いながら、スタッフルームから出て行く。その後ろ姿を見送りながら、ティファニアは呟いた。
「やっぱり、カジノって楽しいところだなぁ」
「それで、ティファニア。君の処遇についてなんだけどな」
ゴルディがそう切り出すと、ティファニアの表情が曇る。しかしそれも当然だろう。彼女のせいで多くのスタッフが迷惑を被っているのだから。だが、彼女の予想に反してゴルディは笑顔でこう言った。
「とりあえず今日から1週間は雑用係として働いてもらうからな。もちろん給料も出す」
「……へ?」
ティファニアはポカンとした顔のまま固まってしまう。そんな彼女に構わず、ゴルディは話を続けた。
「さて、まずは店の掃除からだな。それから倉庫の整理をして、最後に客への接待の練習だ」
「ちょ、ちょっと待ってください!私、働いてもいいんですか!?」
ゴルディはティファニアのことを邪険にしていたはずだ。なのにいきなり仕事をさせてくれるなんて信じられなかった。そんな疑問を抱くティファニアに対して、ゴルディはニッコリと微笑む。
「当たり前じゃないか。君はゼノが連れてきた大切なお客様なんだから、丁重にもてなすのが俺達の役目さ」
「で、でも……。私のせいでお店の評判が悪くなったりしないんですか?」
不安そうに尋ねるティファニア。だが、それに対してカロンが首を横に振る。
「心配はいらねぇよ。評判が下がったとしても、あんたがここで働きたいっていうんなら歓迎してやるさ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。もともと俺たちだってそんなに真面目に働くつもりはなかったしな。適当にサボる口実ができたくらいにしか思ってないんだよ」
カロンがそう言うと、ティファニアの顔がパアッと明るくなる。
「それに君に一緒にいてもらえば護衛もできるからな。むしろこっちとしてはありがたいくらいだ」
ゼノの言葉に、ティファニアはゼノに自分が闇の精霊に狙われている、と嘘をついていたことを思い出す。
「あの……、そのことなんですけど……」
「ああ、分かってる。君の事情については誰にも話さないと約束しよう」
「……はい。ありがとうございます」
「それとティファニア。君が帰るまで、うちに泊まるといい」
ゼノがにこりと微笑んでティファニアに語りかける。
「いえ、そこまでしてもらうわけにはいきません!宿はその……。何とかなると思いますから。最悪野営をすればいいわけですし……」
「野営?」
ゴルディが首を傾げると、ティファニアは慌てて訂正する。
「ああっ!そ、その……。外で寝るって意味です!」
「おいおい、女の子を外に放り出して眠れるほど俺は鬼畜じゃないぞ?」
「あ、あの……。その、ごめんなさい……」
申し訳なさそうに俯くティファニア。すると、ゴルディがパンッと手を叩いた。
「よしっ、話はまとまったな。それじゃあ早速、今日の仕事に取り掛かるぞ」
「はい!」
元気よく返事をするティファニア。こうして、少女は新たな一歩を踏み出したのであった。
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