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アラフィフ暗殺者、異世界転生を果たす

32,ラッキーガール

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「暇ならカジノの中を見てくるといい。そうだな、カロン。案内をお願いできるかな?」
「おう、まかせろ!嬢ちゃん、俺はカロンっていうんだ。よろしくな」
そう言って手を出してきたカロンの大きな手に、ティファニアは戸惑いながらも握手を返す。カロンは二メートル近い巨体を持つ熊みたいな男だった。
「よし、それじゃ早速行くぞ!」
「はい!よろしくおねがいします」
ティファニアは元気よく返事をすると、カロンの後ろをついていった。
まず最初に案内されたのはスロットマシンのコーナーだった。たくさんの台が並んでおり、大勢の人たちがコインを投入してレバーを引いている。
「これは……、どういうゲームなんですか?」
「こいつはただ機械に金を入れてボタンを押すだけだ。簡単だろ?ちなみにこのボタンを押せば絵柄が揃うぞ」
「へぇ……!」
ティファニアは興味深げに覗き込むと、カロンはその隣にある機械を指差す。
「次はこっちだ」
次に案内されたのがルーレットコーナーだった。ディーラーがボールを投げ入れて数字を当てていくゲームだ。
「ルールは分かるか?」
「いえ……」
「じゃあちょっとやってみるか?」
カロンはポケットからチップを取り出すとテーブルの上に置く。そしてそれを一枚だけ取ると、ティファニアに手渡した。「このチップを賭けてやるんだ」
「えっと、いくら賭ければいいんですか?」
「そうだな……。とりあえず十枚くらいでいいんじゃねぇか?」
「分かりました」
ティファニアは言われた通りにチップをテーブルの上に載せる。そしてそれから少し待っていると、やがてディーラーがボールを投げる。そしてそのボールが止まった数字は……。
「お、当たりだな」
「はい……」
ティファニアが当てたのは10と書かれたマスだった。
「ほら、次もやってみな」
「はい」
再びボールを放ると、今度は18の数字に止まる。
「お、これも当たったな」
「は、はいっ」
その後もティファニアは何度か挑戦し、合計で百ドル分のチップを手に入れた。
「さて、そろそろいいか。最後にここに行くぞ」
「ここは……?」
「ポーカーの席だ。やってみたらどうだ?」
「はい、行ってみます」
「それじゃ、何かあったら声をかけてくれ」
「はい」
ティファニアはそう言うとカロンと別れる。そしてポーカーの席につくと、目の前に立っているディーラーに話しかけた。
「あの、初めてなので教えてもらえませんか?」
「もちろんです。では、まずはこちらのカードを配らせていただきます」
そのディーラーとはもちろんナナシのことだ。最初に合った時とは違う丁寧な口調と、紳士的な笑顔にティファニアの胸はドキドキと高鳴る。
(やっぱりカッコイイなぁ……。)
「では、まずはベットをお願いいたします」
「ベッ……、何でしたっけ?」
「お客様は初めてのご利用ですね?では、簡単に説明させていただきましょう。まずは配らせていただいた五枚のカードを確認していただき、その中から好きな枚数を選んでください。選んだカードを机の中央に置いて、そのあとに山札から捨てたカードと同じ数だけ引かせせていただきます。もしそこで勝負に出るかどうかの判断が難しい場合はコールといって降りることができます。しかしその場合、そのプレイヤーのカードは場に出ることになりますがね。そのあと、一番強い役ができたプレイヤーの勝利となります」
ナナシの説明を聞き終えて、ティファニアは手元にあるカードを見る。そこにはハートの7と8と9と10があった。そしてナナシの言った通りにいらないカードを捨てて一枚のカードをもらう。
(もしこれが6かJだったらストレートになるんだよね?)
ティファニアがどきどきとしながらカードを見ると、それはハートの6だった。
「ふぅー……」
ティファニアはほっと息をつくとナナシの方を見た。
「さあ、どうされますか?」
「は、はい。えっと、私はこれでいきます」
「かしこまりました。それではオープンにしてください」
ティファニアはゆっくりとカードを開く。
「フォー・オブ・ア・カインドです」
ナナシの提示した役に遠巻きに見ていた観客たちはどよめく。なぜなら、この役は四枚の同じ数字のカードを集めなくては成立しないからだ。
「わ、私のやくはストレートフラッシュです!」
ティファニアの出したカードにさらにどよめきが起こる。それも当然だ。なぜなら、その役は最も確率が低いと言われているロイヤルストレートフラッシュの次に強い役だからだ。
「すごいですよ、お客様!まさか一発で成功するとは思いませんでした」
「あ、ありがとうございます」
「それではチップを受け取ってください」
ナナシはそう言ってチップを渡す。そしてそれがティファニアの手に渡ると、ナナシは彼女の耳元に顔を近づけて囁くように呟いた。
「……ティファニア様」
「ひゃ、はい!?」
突然名前を呼ばれて驚いてしまう。だがナナシはそれには構わずに続ける。
「おめでとうございます。どうやらあなたは私よりも運がよろしいようですね」
「あ、はい。そうみたいです」
「その幸運を大事にしてください。そして、これからも頑張って勝利を重ねていってくださいね」
「は、はい!頑張ります!」
ナナシに応援されてティファニアは嬉しくなってしまう。だから彼女はナナシに言われるがまま、その後のゲームでも大勝を続けてしまう。そして最終的に、ティファニアは千ドルもの大金を稼いでしまったのだった……。
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