20 / 43
アラフィフ暗殺者、異世界転生を果たす
19,VSゼノ〈前編〉
しおりを挟む
カジノ『ハウンドドッグ』の経営が開始されてから一週間が経った。オープニングイベントを盛大にやったからだろうか、客の入りも上々で順調に経営できている。だが、一番の要因はやはりナナシがポーカーのディーラーを務めているということだろう。
なにしろナナシは美形であり、老齢の色気があり。さらにはどこか謎めいた雰囲気もある。そんな彼がトランプを操る姿はとても様になっていた。その姿に魅せられ、彼は連日連夜たくさんの人が訪れていた。中には女性の姿も多く見られたという。
そして、今日もまた――。
「お兄さん!もう一回勝負しようぜ!」
「いやいや、俺が先だ!」
「いいや、俺が先にやる!」
「いやいや、私が――」
ナナシの周りを大勢の男たちが取り囲んでいた。
「はいはーい。順番を守ってくださいね」
ナナシは笑顔で対応していた。
「まったく、あいつは人気者だな」
その様子を見ていたゼノは呆れたようにため息をつく。
「ほんとにね」
隣にいたハクタケは同意する。
「そりゃあナナシは潜入のために色気を振りまくことも仕事だもの。あの程度はできてあたり前よ」
ナナシは暗殺者としてターゲットの懐に潜入することもある。そのため、いかに相手に警戒されずに近づくかということを熟知している。それはつまり、いかに相手を誘惑するかということである。ナナシはそういった技術に長けており、男女問わず多くの人間を虜にしてきた。
「でも、あんなに露骨にやるのはどうかと思うけどな」
ゴルディは不満そうな顔で呟く。
「まあ、確かにあれはちょっとやりすぎよね」
「だろう?もっとこう、自然体でやってもいいんじゃないか?」
「確かにねぇ。僕もそう思うよ」
ゴルディとハクタケはナナシの行動に不満があるようだ。
「まあ別にいいんじゃねえか?ショービジネスなんだしよ。むしろあのくらいやったほうが箔がつくってもんだろ!」
カロンは豪快に笑い飛ばす。
「カロンはナナシの肩を持つんだな」
「あいつだっておまえが商戦で勝てるように協力してくれてるんだ。多少のことは目をつぶってやれよ」
「まあ、それもそうか」
カロンに諭され、ゴルディは納得した。
「ところで、あなたたちは何しに来たの?」
クロエは三人に声をかける。
「ああ、そういえばとうとうコロシアムが完成したんたよ!」
「へぇー、完成したんだ!」
クロエは興味深げに言った。
「おう、すっごく広いんだぜ!そうだ、よかったら一緒に行かないか!?」
カロンが提案すると、クロエは大きくうなずいた。
「行くわ!それじゃあ、早速行きましょう!」
「よっしゃあ!行こうぜ!」
四人は部屋から出ていった。
「あ、ちょ、待ってくれよ!」
一人残されたハクタケは慌てて後を追いかけた。
五人がカジノの地下に造られたコロシアムに到着すると、そこには広大な空間が広がっていた。ぐるりと周囲を囲う客席が見つめる先には、闘技場の舞台がある。
「うひょー!すげえな、これ!マジで完成してるじゃねえか!」
「ああ、本当にすごいな」
ゴルディは興奮した様子で叫び、ハクタケも感心したような声を上げる。
「ははは!そうだろう!なんせうちの部隊の奴らに作らせたんだ、凄いに決まってるだろ!」
カロンは得意気に笑った。
「カロン、ありがとな!」
「いやいや、礼を言うのはこっちの方だ。おまえのおかげでこんなに立派な施設ができたんだ。感謝してもしきれないよ」
子供のようにはしゃぐゴルディとカロンを見て、ハクタケは微笑ましそうに眺めていた。
「でさ、最初はここで何をするの?」
「ん?そうだな……」
カロンは顎に手を当て考える。
「やっぱりオープニングイベントは盛大にやらないとな!ゴルディ!」
「ん?なんだ?」
「俺たちで試合をするぞ!」
「はぁ!?」
「ほら、前に言ってただろ?俺たちが戦えば盛り上がるってよ!」
「いや、まあ、確かに言ったけどよぉ」
「それに、これは宣伝にもなるんだ!ハウンドがいかに優れた部隊なのかを知らしめるためにな!」
「なるほど、そういうことか。わかったよ」
ゴルディはやる気に満ちた表情で答えた。
「よし!決まりだな!それじゃあ、まずは対戦相手を決めるぞ!」
「そうだね!誰が出る?」
「うーむ、そうだな……。ゴルディ、誰がいい?」
「俺か?そうだな……。ナナシとかどうだ?ディーラーの人気も高いみたいだしよ」
「……ふむ。悪くはないな。ちょうどあいつの腕前にも興味があったところだ」
ゼノはニヤリと笑う。
「それじゃあその相手はゼノがやればいいんじゃない?」
クロエの突然の提案にゼノは驚く。
「おいおい、いきなり何を言い出すんだよ」
「だってさ、ナナシはあなたの手下なんでしょう?なら、部下の強さを知っておくのもボスの務めじゃない?」
「いや、そうかもしれないが……。おまえが戦うわけじゃないだろ?」
「もちろん私は出ないわ。でも、見てみたいのよ。あなたとナナシの戦いをね」
クロエはいたずらっぽい目つきで言う。
「……はあ、わかったよ。やればいいんだろう?」
「ありがとう!楽しみにしてるわね!」
クロエは嬉しそうに言う。
(まったく、しょうがないやつだ)
ゼノは苦笑いを浮かべた。
なにしろナナシは美形であり、老齢の色気があり。さらにはどこか謎めいた雰囲気もある。そんな彼がトランプを操る姿はとても様になっていた。その姿に魅せられ、彼は連日連夜たくさんの人が訪れていた。中には女性の姿も多く見られたという。
そして、今日もまた――。
「お兄さん!もう一回勝負しようぜ!」
「いやいや、俺が先だ!」
「いいや、俺が先にやる!」
「いやいや、私が――」
ナナシの周りを大勢の男たちが取り囲んでいた。
「はいはーい。順番を守ってくださいね」
ナナシは笑顔で対応していた。
「まったく、あいつは人気者だな」
その様子を見ていたゼノは呆れたようにため息をつく。
「ほんとにね」
隣にいたハクタケは同意する。
「そりゃあナナシは潜入のために色気を振りまくことも仕事だもの。あの程度はできてあたり前よ」
ナナシは暗殺者としてターゲットの懐に潜入することもある。そのため、いかに相手に警戒されずに近づくかということを熟知している。それはつまり、いかに相手を誘惑するかということである。ナナシはそういった技術に長けており、男女問わず多くの人間を虜にしてきた。
「でも、あんなに露骨にやるのはどうかと思うけどな」
ゴルディは不満そうな顔で呟く。
「まあ、確かにあれはちょっとやりすぎよね」
「だろう?もっとこう、自然体でやってもいいんじゃないか?」
「確かにねぇ。僕もそう思うよ」
ゴルディとハクタケはナナシの行動に不満があるようだ。
「まあ別にいいんじゃねえか?ショービジネスなんだしよ。むしろあのくらいやったほうが箔がつくってもんだろ!」
カロンは豪快に笑い飛ばす。
「カロンはナナシの肩を持つんだな」
「あいつだっておまえが商戦で勝てるように協力してくれてるんだ。多少のことは目をつぶってやれよ」
「まあ、それもそうか」
カロンに諭され、ゴルディは納得した。
「ところで、あなたたちは何しに来たの?」
クロエは三人に声をかける。
「ああ、そういえばとうとうコロシアムが完成したんたよ!」
「へぇー、完成したんだ!」
クロエは興味深げに言った。
「おう、すっごく広いんだぜ!そうだ、よかったら一緒に行かないか!?」
カロンが提案すると、クロエは大きくうなずいた。
「行くわ!それじゃあ、早速行きましょう!」
「よっしゃあ!行こうぜ!」
四人は部屋から出ていった。
「あ、ちょ、待ってくれよ!」
一人残されたハクタケは慌てて後を追いかけた。
五人がカジノの地下に造られたコロシアムに到着すると、そこには広大な空間が広がっていた。ぐるりと周囲を囲う客席が見つめる先には、闘技場の舞台がある。
「うひょー!すげえな、これ!マジで完成してるじゃねえか!」
「ああ、本当にすごいな」
ゴルディは興奮した様子で叫び、ハクタケも感心したような声を上げる。
「ははは!そうだろう!なんせうちの部隊の奴らに作らせたんだ、凄いに決まってるだろ!」
カロンは得意気に笑った。
「カロン、ありがとな!」
「いやいや、礼を言うのはこっちの方だ。おまえのおかげでこんなに立派な施設ができたんだ。感謝してもしきれないよ」
子供のようにはしゃぐゴルディとカロンを見て、ハクタケは微笑ましそうに眺めていた。
「でさ、最初はここで何をするの?」
「ん?そうだな……」
カロンは顎に手を当て考える。
「やっぱりオープニングイベントは盛大にやらないとな!ゴルディ!」
「ん?なんだ?」
「俺たちで試合をするぞ!」
「はぁ!?」
「ほら、前に言ってただろ?俺たちが戦えば盛り上がるってよ!」
「いや、まあ、確かに言ったけどよぉ」
「それに、これは宣伝にもなるんだ!ハウンドがいかに優れた部隊なのかを知らしめるためにな!」
「なるほど、そういうことか。わかったよ」
ゴルディはやる気に満ちた表情で答えた。
「よし!決まりだな!それじゃあ、まずは対戦相手を決めるぞ!」
「そうだね!誰が出る?」
「うーむ、そうだな……。ゴルディ、誰がいい?」
「俺か?そうだな……。ナナシとかどうだ?ディーラーの人気も高いみたいだしよ」
「……ふむ。悪くはないな。ちょうどあいつの腕前にも興味があったところだ」
ゼノはニヤリと笑う。
「それじゃあその相手はゼノがやればいいんじゃない?」
クロエの突然の提案にゼノは驚く。
「おいおい、いきなり何を言い出すんだよ」
「だってさ、ナナシはあなたの手下なんでしょう?なら、部下の強さを知っておくのもボスの務めじゃない?」
「いや、そうかもしれないが……。おまえが戦うわけじゃないだろ?」
「もちろん私は出ないわ。でも、見てみたいのよ。あなたとナナシの戦いをね」
クロエはいたずらっぽい目つきで言う。
「……はあ、わかったよ。やればいいんだろう?」
「ありがとう!楽しみにしてるわね!」
クロエは嬉しそうに言う。
(まったく、しょうがないやつだ)
ゼノは苦笑いを浮かべた。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
烙印騎士と四十四番目の神
赤星 治
ファンタジー
生前、神官の策に嵌り王命で処刑された第三騎士団長・ジェイク=シュバルトは、意図せず転生してしまう。
ジェイクを転生させた女神・ベルメアから、神昇格試練の話を聞かされるのだが、理解の追いつかない状況でベルメアが絶望してしまう蛮行を繰り広げる。
神官への恨みを晴らす事を目的とするジェイクと、試練達成を決意するベルメア。
一人と一柱の前途多難、堅忍不抜の物語。
【【低閲覧数覚悟の報告!!!】】
本作は、異世界転生ものではありますが、
・転生先で順風満帆ライフ
・楽々難所攻略
・主人公ハーレム展開
・序盤から最強設定
・RPGで登場する定番モンスターはいない
といった上記の異世界転生モノ設定はございませんのでご了承ください。
※【訂正】二週間に数話投稿に変更致しましたm(_ _)m
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる