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漢たちの闘い(文化祭)

豪鬼との再戦

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学園祭二日目。光輝はその日は忙しいスケジュールを組んでいた。まずは学生プロレスの最終戦、特別試合に出場することになっている。そしてその後ですぐに着替えてアリーナにかけつけ、幸人の試合を見ることになっているのだ。
「翔太先生、俺の相手って誰なんだ?」
光輝は特別試合。超日本プロレスの選手と試合をすることになっている。
「そいつは試合までのお楽しみだ。ま、強いことは確かだよ」
翔太は楽しそうだ。
そして次々とレスリング部の面々が試合を終わらせていき、最終試合が行われることになる。
白と黒のボーダーの服を着た、レフェリーの翔太が高らかに宣言する。
「それでは、これより最終試合。O大学の学生対超日本プロレスの選手のセメントマッチを開催します!」
その宣言を聞いた観客から、ざわざわと声が上がる。
「セメント……?プロレスの試合なのにか?」
「なんか変じゃねえか?」
「あっと。プロレスのことを知らない人もいるのか。いいか、セメントマッチって言うのは、やらせなし、打ち合わせなしのガチンコの真剣勝負のことだ。決して負けた方がセメントに入れられて東京湾に沈められる、とかじゃないぞ。安心してくれ」
「なんだよー。びっくりしたじゃんか」
「俺、この試合見に来たけど、すげえワクワクしてきた!」
「私も!」
観客たちはホッとしていた。
「それでは両者リングインだ!まずは赤コーナー、O大学の誇る学生レスラー!紀ノ國光輝!!」光輝の名前が呼ばれた瞬間、会場からは割れんばかりの歓声が上がった。
「キャアアーッ!光輝くぅ~ん!」
「可愛いわぁ!私の王子様!結婚してぇ~!抱いてぇ~!子種ちょうだいぃ~!」
女子たちからの黄色い声援もすごい。
光輝は花道を走り、トップロープを乗り越えてリングインする。そのあまりの格好良さに再び歓声が上がる。
「続いては、青コーナー。超日本プロレス所属!本人曰く紀ノ國光輝と因縁があり、今日この場でお前を倒す!とコメントしてくださった郷田豪鬼選手!!」
翔太に呼ばれ、豪鬼が堂々と花道を歩いてくる。
豪鬼は翔太からマイクを奪い取ると。
「よう、光輝。来てやったぞ!」
「おいおい、俺の相手ってお前なのかよ」
「ああそうだ!今日こそお前に勝って、俺が……俺こそが権田原さんの弟子として相応しい男だって証明してやる!!」
「ふふ。そんなことにはならないさ」
「うるせえ!この野郎!!絶対にぶっ殺してやるから覚悟しろ!」
「はいはい。わかったわかった」
「てめえ!余裕ぶりやがって!今度という今度は許さねぇ!俺の筋肉でひねり潰してやるぜ!!」
「はいはい。早く始めろ」
「くっそぉ!覚えてやがれ!」
「お二人とも、準備はよろしいですか?」
「おう!」
「大丈夫です」
「わかりました。それでは試合開始!!」
カーン! ゴングが鳴り響いた。それと同時に、二人は一気に距離を詰めて組み合う。
「うおりゃあ!」
「ふんぬ!」
二人の力は互角だった。そして、両者は一度離れると、お互いに構える。
「おい、光輝。お前がどれほどのもんか、腕試しと行こうぜ?」
しかし豪鬼は構えを解くと、自分の胸をとんとん、とたたいて見せる。
『おーっと!豪鬼選手、挑発している!!これはプロレス名物『チョップ合戦』が出るかー!?』
実況の声が響く。「へっ。仕方ないな。受けて立つよ」
光輝はニヤリ、と笑うと。腰を入れた逆水平チョップを豪鬼の胸にお見舞いする。「うおっ!?」
「来いよ。今度はお前の番だ!」
「ああ、いくぜっ!」
光輝が両手を広げると、豪鬼は光輝の胸板に強烈なチョップを放つ。
バシィィイインッ!!
「ぐああっ!」
その後も、何度もお互いにチョップを打ち合う。二人の胸が赤く染まっていく。
「どうした?もう終わりか?」
光輝はわざとらしく笑ってみせる。
「なめんな!」
豪鬼はそう叫ぶと、光輝の顔面に頭突きを食らわせる。
ドガッ!
「ごはあっ!」
「まだまだ!」
さらに続けて、光輝の顔に膝蹴りをお見舞いする。
ガスッ!
「うがあっ!」
「まだだ!」
そして最後に、光輝の顎にアッパーカットを叩き込む。
「うおおっ!」
光輝は吹き飛ばされるが、なんとか踏み止まる。
「はぁ……、はぁ……」
「けっ!口ほどにもねえな」
「ちっ。なら次はこっちのターンだ!」
光輝は体勢を立て直すと、豪鬼に飛びかかる。
「オラァ!」
流れるような三連撃の回し蹴りを繰り出し、豪鬼を追い詰めていく。
「くそっ!ちょこまか動き回りやがって!」
「ははは!俺は素早いんだよ!」
光輝はバックステップで距離を取ると、再び飛びかかってきた。豪鬼の首に足から飛びつき、ウラカン・ラナを極めようとするが。
「その技はもう見切ってんだよ!」
豪鬼に耐えられてしまう。
「ああ、そうかよ。ならこれはどうだ!?」
体を回転させ遠心力で投げると、さすがに豪鬼も耐えられずに回転しながら投げ飛ばされる。ウラカン・ラナの進化系、ハリケーン・ラナだ。「うおっ!?」
「まだまだ見切れてないようだな!」
光輝はトップロープに飛び乗ると、そのまま豪鬼の上に回転しながら落ちてくる。ローリング・セントーンをきめた光輝は豪鬼の髪を引いて立ち上がらせ、高く担ぎ上げてプレーン・バスターを繰り出す。
「ぐほあああっ!」
「まだまだ!」
光輝は倒れた豪鬼にストンピングを浴びせる。
「うぎゃああ!!」
「俺の勝ちだな」
「くっ……!」
豪鬼は悔しげに顔を歪める。
「それじゃ、そろそろ終わりにするかな」
光輝はそういうと、トドメの一撃を加えようと、豪鬼に近づく。
その時。
「くそっ!負けるかぁぁぁぁ!!」
豪鬼は叫びながら立ち上がる。
「往生際が悪いぞ!」
光輝は構わずに近づき、豪鬼の頭を掴んで持ち上げると、ブレーンバスターを放とうとする。
「させるかよ!」
だが、豪鬼はなんと、光輝の腕に噛みついたのだ。
「くそっ!離せ!」
「このままくたばれぇ!!」
豪鬼は必死に抵抗する。
「いい加減にしろ!」
光輝は豪鬼の体を突き放すと、豪鬼の腹に強烈なパンチを見舞う。
「げぼおぉっ!」
豪鬼の口から胃液が吐き出される。
「この野郎!汚いぞ!」
「うるせえ!勝てばいいんだ!どんな手を使ってでもなぁ!」
豪鬼はなおも食い下がる。そして今度は、光輝を羽交い締めにして捕まえた。
『おおっと!これはまずいぞ!紀ノ國選手ピンチだ!!』
「これでもう動けないだろ!くらえぇ!!」
豪鬼は光輝をジャーマンスープレックスで叩きつける。
ズドーン!
「ぐああっ!」
光輝の体がリングに打ち付けられる。
「どうだ!俺の必殺技、ジャーマンスープレックスは!」
「くっ……。なかなかやるじゃないか……」
「はは!お前こそな!だけど、ここまでだ!」「何?」
「お前はここで終わらせてやる!!」
そう言うと豪鬼は光輝の両足を取り、逆エビ固めを極めた。
ギチィッ……!
「ぐああああっ!」
光輝の悲鳴が上がる。
「ははは!痛いか?苦しいか?俺の筋肉で、お前をひねり潰してやるぜ!」
豪鬼はさらに力を込めていく。ミシミシ……!
「うぐああっ!」
『これはすごい!紀ノ國選手の背中の骨が軋んでいるー!』
実況の声が響く。
「へへ。どうした?降参するか?」
「誰が……!」
光輝は苦痛に表情を歪めながらも、強気な態度を見せる。
「そうか。ならもっとやってやろう!」
豪鬼はさらに力を入れていく。
「うぐああっ!」
光輝の悲鳴が大きくなる。
「へへ。そろそろいいだろ」
豪鬼はようやく力を緩めると、光輝の足を開放する。そして今度は、光輝の首に手を回すと、スリーパーホールドを仕掛けてきた。
「うがああっ!」
「どうだ!苦しいだろう?」
さらに腕に力が込められていく。
「どうだ?降参するなら今のうちだぞ?」
しかし光輝は、ニヤリと笑うと。
「断る」
そう言って、豪鬼の足を思い切り踏んづけた。
「うがあああああああああっ!!!」
あまりの激痛に、豪鬼は絶叫する。
「くそっ!てめえ!ふざけんじゃねえ!」
豪鬼は再び光輝の首に手をかける。だが光輝は、その腕を掻い潜ると豪鬼を湧き固めの姿勢にとらえる。「うわっ!こいつ!」
「どうだ!苦しいだろ!」
光輝は豪鬼をさらに締め上げる。
「ぐううううっ!」
「あのまま逆エビにされてたら、お前の勝ちだったかもな」
「くそっ!てめえ!絶対許さねえからな!」
「それはこっちのセリフだよ」
「くそっ!くそっ!離しやがれ!」
「お前みたいな奴は、絶対に許さない」
光輝はそう言うと、豪鬼の腕を股で固定して首に両腕をかける。そのまま上体を反らしていく。
「くそっ!こんな技、すぐに抜け出してやらぁ!」
豪鬼は抵抗するが、身動きが取れずに苦しそうな声を上げる。
「くっ、くそっ!」
「どうだ?苦しいだろ?」
「う、うるせえ!こんくらいどうってことねぇよ!」
「そうか。なら、もっときつく絞めてやらないとな」
光輝はさらに上体を起こし、豪鬼の首を圧迫する。
「ぐああっ!く、くそぉっ!」
「さあ、とっととギブアップしろ」
「嫌だっつってんだろ!」
「なら仕方ないな」光輝はそういうと、今度は豪鬼の脇の下に自分の肘を入れると、そのまま一気に上体を起こした。
「ぐがあああっ!」
「どうだ?苦しいだろ?」
「くそっ!調子に乗るなよ!」
豪鬼はなんとか光輝の肩を押し返そうとする。
「無駄だ。お前の力じゃ、俺には勝てない」
光輝はさらに上体を起こす。
「ぐああああ!」
「さあ、早くギブアップするんだ」
「ち、ちくしょう……!」
豪鬼は悔しげに歯ぎしりする。
「くそっ!俺は負けるわけにはいかないんだよ!」
「往生際が悪いぞ!」
光輝はさらに強く豪鬼の体を持ち上げようとする。
「くそっ!くそっ!くそぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
豪鬼は必死に抵抗する。
(このままやってたら折れかねねえな。……しかたねえ)
豪鬼がギブアップする気がないことを察した光輝は、仕方なく技を解いた。「はぁ……、はぁ……」
豪鬼は荒い息をつく。
「どうだ?降参するか?」
「はぁ……、はぁ……。ま、まだまだだ!」
豪鬼は叫ぶように言う。
「そうか。なら次はこうだ!」
光輝は片膝をついて立ち上がろうとする豪鬼の膝に乗り、回し蹴りで豪鬼の横顔を蹴り飛ばす。シャイニング・ウィザードをくらって倒れた豪鬼の髪を引いて立ち上がらせ、再び跳びあがり両足で豪鬼の首を掴み。
瞬間。豪鬼の体が反転する。頭からリングにたたきつけられ、豪鬼は目を白黒させる。
「レフェリー、カウント!」
「あ、ああ!ワン、ツー、スリー……!」
ゴングの音が鳴り響く。
『試合終了!!決め技はなんとフランケン・シュタイナーからのフォールだ!!紀ノ國選手、プロ顔負けのルチャリブレで試合を締めました!!』
「くそっ……。くそっ……!」
リングに倒れていた豪鬼が立ち上がる。
『いやー、素晴らしい試合でしたね!』
『ええ。紀ノ國選手は、なかなかいいプロレスをしますね』
『そうですね。学生ながらにプロと対等に渡り合って、その上勝っていますからね!』
『紀ノ國選手の今後の活躍にも期待したいところです!』
実況の声とともに、会場中に歓声が上がる。
「ほら、立てるか?」
光輝は豪鬼に手を差し伸べる。「……チッ!」
豪鬼はその手を振り払うと、一人で立ち上がった。
『紀ノ國選手、本日はありがとうございました!』
「こちらこそ、楽しかったです」
光輝は笑顔で答える。
『それでは最後に、もう一度盛大な拍手をお願い致します!紀ノ國選手に、大きな拍手を!』
「「「ワァ―――ッ!!」」」
観客たちの惜しみない拍手が、光輝に送られた。
こうして、光輝の学生プロレスは終わりを告げたのだった。
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