プロレス物語 ― 体育教師に騙されてエロレスの舞台で戦います ―

佐城竜信

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過去からの追走

解放

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男に犯されては疲れ果てて眠る。そんな生活がどれくらい続いただろう。もう時間の感覚すら失われてしまった。
「ふぅ……」
光輝は一息つく。全身には無数の傷跡があり、体中から血を流していた。
「あ……」
その時、部屋の扉が開かれて清がはいってきた。光輝は悲鳴をあげそうになって、慌てて口を閉ざす。清の機嫌を損ねたらまた痛めつけられるかもしれない。
「おい、飯の時間だ」
「はい……」
光輝はゆっくりと立ち上がる。
「早くしろ」
「わかりました……」
清の後についていく。
(今日は何をされるんだろう……)
光輝は怯えながら歩いていた。そして、連れて来られたのは食堂のような場所だ。そこには大勢の男たちが食事をとっていた。
「よし、ここに座れ」
清が椅子を引いて光輝をそこに座らせる。
「今日のメニューはこれだ」
目の前に置かれたのは肉料理だ。
(こんなもの食べられるはずがない……)
しかし、食べなければ殴られる。光輝は意を決して口に運んだ。
「うっ……」
吐きそうになるのを必死で堪えながら、なんとか飲み込んだ。
「残さず食えよ?」
「はい……」
その後、光輝は食事を完食した。
「ごちそうさまでした……」
「じゃあ部屋に戻れ」
「はい……」
部屋に戻ったところで、ベッドの上に寝転がる。
「はぁ……」
ここに閉じ込められてからずっと監禁され続けている。一体いつになったら解放してくれるのだろうか。いや、わかっている。自分が解放されることなんて永遠にないことくらいは。
「助けてくれよ……」
誰もいない部屋の中で呟く。当然返事はない。
「誰か……」
涙が流れる。自分はこのまま一生ここで暮らすことになるのだろうか。
「嫌だ……」
光輝は泣き続けた。
翔太先生とたわいもない雑談がしたい。大吾先生とプロレス談議で花を咲かせたい。隼人さんから柔道を習ってもっと強くなりたい。幸人さんに抱き着かれて甘えられて、頭をよしよし、って撫でてあげたい。雄三さんに抱き着いて甘えさせてほしい。
誰か……。誰でもいいからたすけて……。
その時、突然扉が開かれた。清がいきおいこんでかけこんでくる。
「ひっ!!」
光輝は恐怖に震えた。
「おい、逃げるぞっ!早く服を着……てください!」
清に無理やり服を着せられ、なにがなんだかわからないままに、光輝は外に連れて行かれた。
「こっちだ!」
光輝は手を引かれるがままに走った。
「はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫だろう」
二人は建物の裏手に来ていた。
「あの……なんで俺を助けてくれたんですか?」
光輝が尋ねる。そのとたん清は土下座をして。
「本当に申し訳ありませんでした!!」
謝罪の言葉を口にした。

***
「ねえ、清っちー。やっぱりあの光輝って人のこと気になってるんじゃないの?」
「別に気になってなんかいない」
「でも引っ掛かってるところあるのは事実だよね?だったらさ、お母さんに聞いてみればいいんじゃない?」
「そうか!その手が……」
清は母親に連絡をとった。
「母さん、久しぶり。清だけど」『あら、清ちゃんじゃない。どうしたの?』
「実はちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
『もちろん』
「実は最近、光輝って奴のこと調べてるんだよ」
『光輝?ああ、あの子ね。それがどうかしたの?』
「父さんは光輝のせいで逮捕されちゃったんだよね?」
『そうね。でも、今はもう釈放されているわよ?だから心配はいらないって言ったでしょう?それともまだ何かあったの?』
「実はさ、その光輝って奴を捕まえてるんだよ。これから父さんが酷い目にあわされた復讐をしないといけないからね」
『……!!あんた、なんてことしてるの!!』
突然母が怒鳴り声をあげた。
「え?」
清は戸惑う。なぜ怒られているのか理解できなかった。
『どうしてそんなことをしたの!?そんなことしたら光輝くんが可哀想だと思わないの!?』
「いや、だって……」
『いい!?お父さんはね……。まだ9歳だった光輝君を、その……。お金で買って、無理やりいやらしいことをしていたから捕まったのよ!!』「……え?」
母は続けて言う。
『そんなひどいことする人が釈放されて、それで復讐だなんて、ふざけないで!』
「あ……」
清は言葉を失った。まさか自分の父親が幼児売春で捕まっただなんて。そして光輝はその完全なる被害者だったなんて思っていなかったのだ。「ごめんなさい……」
清は謝ることしかできない。
『とにかく、今すぐ光輝くんを解放してあげて。わかったわね?』
「はい……」

***
「ご迷惑をお掛けしました……」
清が頭を下げる。
「…………」
光輝は何も言えなかった。怒りも憎しみもわいてこない。ただぼろぼろと涙だけが流れてきた。
「俺はとんでもない馬鹿野郎です……」
清は自分の愚かさを呪っていた。
「もう二度とこんなことはしないと誓います。許してくれとは言いません……ただせめて償わせて下さい……」
清は涙を流しながら言う。それは誠心誠意の謝罪であった。「……お願いします」
光輝は深々と頭を下げた。
「わかりました。必ず償います」
清が答える。
こうして、紀ノ國光輝は自由の身となった。
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