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漢たちの闘い(海水浴編)
車内にて
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季節は移り変わり、八月を迎えていた。
太陽がさんさんと照りつけ、アスファルトの地面を焦がすような暑さだ。そんな中を1台のバンが走る。6人の男たちを乗せて。
「光輝ちゃん、どんな水着を持って来たんだい?」
そんなことを聞きながら、雄三は光輝の太ももを撫でた。光輝はそんなことをまったく意にも介さないで。
「普通のやつだな」
と答えた。その答えに雄三は不満そうだったが、
「さすがに普通の海水浴場でビキニとかは着れないだろ。もし着てほしい、っていうならナイトプールで着てやろうか?」
そう光輝に耳元で囁かれると、雄三は顔を赤くした。その光輝の腕に男がまとわりついてくる。幸人だ。
「光輝さん!雄三さんばっかりずるいです!僕ともプールデートしてください!」
「わかったわかった。休みが取れたら今度一緒に行こうな?」
「はい!絶対ですよ!」
目を輝かせる幸人の頭を、光輝は優しく撫でる。すると後ろから声が聞こえてくる。
「俺たちもいくか?プール」
「うーん……。私は興味がないかな」
「なんでだよ。お前だったら絶対に行きたいって言うと思ったのに」
「私はね、大吾。お前と二人っきりで家でゆっくりしていた方が楽しいんだよ」
「……ったく。このエロ親父め……」
「あぁ!?何か言ったか!?」
「何も言ってないよ。はいはい。俺の負けです」
「わかればいいんだよ」
隼人と大吾はラブラブな雰囲気を出していた。
(……ラブラブな雰囲気だけど、全員男なんだよな……。しかも幸人さん以外は全員格闘技やってるからマッチョだし……)
このバンを運転する翔太は小さくため息を吐いた。だがすぐに気持ちを引き締めると、目的地へと向かってアクセルを踏み込んだ。
「先生疲れた?」
光輝がそう聞いてくる。
「ああ、疲れたよ。……いろんな意味でな」
胸やけをおこしそうなほどに甘い雰囲気を出す5人を背後に感じながら、翔太は再び大きくため息をつくのであった。
光輝を中心として集まった光輝、翔太、大吾、雄三、隼人、幸人の6人。光輝以外はつい最近挨拶を交わした程度の仲ではあるが、この6人で今海水浴に向かっているのだ。それも、一泊二日の日程で。
なぜこんなことになったのかというと、理由は単純。光輝が暇つぶしのために提案したことだ。
『せっかくみんなが集まったんだし、海にでも行かない?』
その提案に全員が賛成し、こうして車で移動しているというわけである。
「疲れているなら俺が運転を変わろうか?」
そう言いだしたのは大吾だ。そう言った瞬間に隼人の睨みつけるような視線が飛んでくる。なんといっても隼人は柔道の金メダリストだ。彼の放つ殺気じみたオーラを受けて大吾は一瞬怯んでしまう。
「い、いい!大丈夫だから!」
「そっか。じゃあ頑張れよ」
「おう……」
大吾は額に流れる冷や汗を拭いながら前を見据える。
(こいつはやっぱり怒らせないようにしないとな……。怖すぎるぜ……)
「それに、光輝との約束だもんな」
「約束?……光輝さんと?」
幸人の声には少し嫉妬の色が含まれていた。それを聞いて光輝は苦笑しながら説明する。
「違うぞ、幸人。翔太先生とはそういう関係じゃない。……まあ、ちょっとした約束でさ。なんでもしてくれるっていうから、今回の運転を頼んだってわけだ」
「なんだ、そうなんですか」
ほっとしたように肩を落とす幸人に、今度は雄三が問いかける。
「幸人はどうしてそんなに光輝ちゃんのことを慕っているんだい?」
「それはですね……」
「おい、やめろ。恥ずかしいだろうが」
「僕は別に構いませんけど」「俺が嫌なんだよ」
「そうですか。わかりました」
残念そうにする幸人と、それを愛おしそうに見つめる光輝。その二人の様子を見て、雄三はニヤリとする。
「なるほどねぇ。……これは面白くなってきた」
雄三が幸人を見つめる視線は若干剣呑な光を帯びていた。その様子に気付いた光輝が声をかける。
「あんまり幸人をいじめないでくれよ?」
「いじめる?とんでもない。ただ俺は可愛い俺の恋人がとられないかって心配なんだよ」
雄三は光輝の肩を抱き寄せて唇を近づける。だが光輝はそれを軽くあしらうだけだ。
「みんながいる前でそういうことはやめとこうぜ、雄三さん」
「つれないなぁ」
「この面子だと歯止めが利かなくなるだろ。な?」
「……わかった。我慢しよう」
雄三は渋々といった表情で引き下がった。そして再び幸人を見る。その目は獲物を狙う猛禽類のようだった。
「幸人も、あまり光輝ちゃんに迷惑をかけちゃいけないよ?光輝ちゃんは俺のものなんだからね?」
「誰がそう決めたんですか!?」
「もちろん俺だよ」
「……もういいです」
幸人が呆れた顔をすると、雄三は声を上げて笑う。一番後ろの席では大吾と隼人がひそひそ話をしていた。
「しかし、まさか光輝が雄三さんと付き合いだすとはねえ」
「だな。だが光輝君は昔から雄三さんにあこがれていたんだろう?だったら普通のことじゃないか?」
「まあそうなんだけどな。でもなあ……」
真ん中のシートには光輝を真ん中に左に幸人、右に雄三が座っている。そして運転席には翔太が一人で。まさに今のこの関係を表しているかのような座り方だ。
「なあ、光輝。雄三さんと付き合いながら幸人君にも手を出すってどうなんだ?普通に考えて無理があるんじゃないか?」
「いや、まだ雄三さんとも付き合ってるってわけじゃないぞ?」
「そうなのか?」
「まあ、そうだな。光輝ちゃんはまだ若い。これからだって色々な出会いがあるだろうし、体を重ねていくこともあるだろう。だが!それでも俺は送り出した光輝ちゃんを俺の元に引き戻して、他の男の記憶を上書きしていくつもりだからな。なあ、光輝ちゃん!」
そう言って雄三は光輝の太もものあたりを撫でまわす。
「おい、雄三さん……」
「ああ、ごめんよ。つい興奮しちゃって」
雄三の鼻息が荒くなっていくのを見て、大吾は心の中でため息をつく。
(光輝と雄三さんの仲を応援したい気持ちもあるんだが、やっぱり雄三さんは怖いんだよなあ……。あの殺気じみた目を見ると、どうしても……)
大吾がそんなことを考えていると、ふと雄三と目が合う。
「ん?どうかしたかい?大吾くん」
「いえ、何でもありません」
大吾は慌てて目をそらすと、バックミラー越しに翔太と目が合った。
(大吾も大変だな)
翔太が同情するような視線を送ってくる。大吾はその視線にため息をついた。
「みんな、そろそろ着くぞ。降りる準備をしてくれ」
翔太の声が聞こえてくる。大吾たちは荷物を持って車から降りた。そこには青く輝く海が広がっている。
これから彼らの海水浴が始まるのだ!!
太陽がさんさんと照りつけ、アスファルトの地面を焦がすような暑さだ。そんな中を1台のバンが走る。6人の男たちを乗せて。
「光輝ちゃん、どんな水着を持って来たんだい?」
そんなことを聞きながら、雄三は光輝の太ももを撫でた。光輝はそんなことをまったく意にも介さないで。
「普通のやつだな」
と答えた。その答えに雄三は不満そうだったが、
「さすがに普通の海水浴場でビキニとかは着れないだろ。もし着てほしい、っていうならナイトプールで着てやろうか?」
そう光輝に耳元で囁かれると、雄三は顔を赤くした。その光輝の腕に男がまとわりついてくる。幸人だ。
「光輝さん!雄三さんばっかりずるいです!僕ともプールデートしてください!」
「わかったわかった。休みが取れたら今度一緒に行こうな?」
「はい!絶対ですよ!」
目を輝かせる幸人の頭を、光輝は優しく撫でる。すると後ろから声が聞こえてくる。
「俺たちもいくか?プール」
「うーん……。私は興味がないかな」
「なんでだよ。お前だったら絶対に行きたいって言うと思ったのに」
「私はね、大吾。お前と二人っきりで家でゆっくりしていた方が楽しいんだよ」
「……ったく。このエロ親父め……」
「あぁ!?何か言ったか!?」
「何も言ってないよ。はいはい。俺の負けです」
「わかればいいんだよ」
隼人と大吾はラブラブな雰囲気を出していた。
(……ラブラブな雰囲気だけど、全員男なんだよな……。しかも幸人さん以外は全員格闘技やってるからマッチョだし……)
このバンを運転する翔太は小さくため息を吐いた。だがすぐに気持ちを引き締めると、目的地へと向かってアクセルを踏み込んだ。
「先生疲れた?」
光輝がそう聞いてくる。
「ああ、疲れたよ。……いろんな意味でな」
胸やけをおこしそうなほどに甘い雰囲気を出す5人を背後に感じながら、翔太は再び大きくため息をつくのであった。
光輝を中心として集まった光輝、翔太、大吾、雄三、隼人、幸人の6人。光輝以外はつい最近挨拶を交わした程度の仲ではあるが、この6人で今海水浴に向かっているのだ。それも、一泊二日の日程で。
なぜこんなことになったのかというと、理由は単純。光輝が暇つぶしのために提案したことだ。
『せっかくみんなが集まったんだし、海にでも行かない?』
その提案に全員が賛成し、こうして車で移動しているというわけである。
「疲れているなら俺が運転を変わろうか?」
そう言いだしたのは大吾だ。そう言った瞬間に隼人の睨みつけるような視線が飛んでくる。なんといっても隼人は柔道の金メダリストだ。彼の放つ殺気じみたオーラを受けて大吾は一瞬怯んでしまう。
「い、いい!大丈夫だから!」
「そっか。じゃあ頑張れよ」
「おう……」
大吾は額に流れる冷や汗を拭いながら前を見据える。
(こいつはやっぱり怒らせないようにしないとな……。怖すぎるぜ……)
「それに、光輝との約束だもんな」
「約束?……光輝さんと?」
幸人の声には少し嫉妬の色が含まれていた。それを聞いて光輝は苦笑しながら説明する。
「違うぞ、幸人。翔太先生とはそういう関係じゃない。……まあ、ちょっとした約束でさ。なんでもしてくれるっていうから、今回の運転を頼んだってわけだ」
「なんだ、そうなんですか」
ほっとしたように肩を落とす幸人に、今度は雄三が問いかける。
「幸人はどうしてそんなに光輝ちゃんのことを慕っているんだい?」
「それはですね……」
「おい、やめろ。恥ずかしいだろうが」
「僕は別に構いませんけど」「俺が嫌なんだよ」
「そうですか。わかりました」
残念そうにする幸人と、それを愛おしそうに見つめる光輝。その二人の様子を見て、雄三はニヤリとする。
「なるほどねぇ。……これは面白くなってきた」
雄三が幸人を見つめる視線は若干剣呑な光を帯びていた。その様子に気付いた光輝が声をかける。
「あんまり幸人をいじめないでくれよ?」
「いじめる?とんでもない。ただ俺は可愛い俺の恋人がとられないかって心配なんだよ」
雄三は光輝の肩を抱き寄せて唇を近づける。だが光輝はそれを軽くあしらうだけだ。
「みんながいる前でそういうことはやめとこうぜ、雄三さん」
「つれないなぁ」
「この面子だと歯止めが利かなくなるだろ。な?」
「……わかった。我慢しよう」
雄三は渋々といった表情で引き下がった。そして再び幸人を見る。その目は獲物を狙う猛禽類のようだった。
「幸人も、あまり光輝ちゃんに迷惑をかけちゃいけないよ?光輝ちゃんは俺のものなんだからね?」
「誰がそう決めたんですか!?」
「もちろん俺だよ」
「……もういいです」
幸人が呆れた顔をすると、雄三は声を上げて笑う。一番後ろの席では大吾と隼人がひそひそ話をしていた。
「しかし、まさか光輝が雄三さんと付き合いだすとはねえ」
「だな。だが光輝君は昔から雄三さんにあこがれていたんだろう?だったら普通のことじゃないか?」
「まあそうなんだけどな。でもなあ……」
真ん中のシートには光輝を真ん中に左に幸人、右に雄三が座っている。そして運転席には翔太が一人で。まさに今のこの関係を表しているかのような座り方だ。
「なあ、光輝。雄三さんと付き合いながら幸人君にも手を出すってどうなんだ?普通に考えて無理があるんじゃないか?」
「いや、まだ雄三さんとも付き合ってるってわけじゃないぞ?」
「そうなのか?」
「まあ、そうだな。光輝ちゃんはまだ若い。これからだって色々な出会いがあるだろうし、体を重ねていくこともあるだろう。だが!それでも俺は送り出した光輝ちゃんを俺の元に引き戻して、他の男の記憶を上書きしていくつもりだからな。なあ、光輝ちゃん!」
そう言って雄三は光輝の太もものあたりを撫でまわす。
「おい、雄三さん……」
「ああ、ごめんよ。つい興奮しちゃって」
雄三の鼻息が荒くなっていくのを見て、大吾は心の中でため息をつく。
(光輝と雄三さんの仲を応援したい気持ちもあるんだが、やっぱり雄三さんは怖いんだよなあ……。あの殺気じみた目を見ると、どうしても……)
大吾がそんなことを考えていると、ふと雄三と目が合う。
「ん?どうかしたかい?大吾くん」
「いえ、何でもありません」
大吾は慌てて目をそらすと、バックミラー越しに翔太と目が合った。
(大吾も大変だな)
翔太が同情するような視線を送ってくる。大吾はその視線にため息をついた。
「みんな、そろそろ着くぞ。降りる準備をしてくれ」
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