13 / 50
獅子王隼人
柔道の特訓
しおりを挟む
「うおりゃああああっ!」
光輝が隼人につかみかかる。だが。
「ふんっ!」
隼人に投げられて光輝は畳の上に転がった。
「勢いがあるのはいいんだけどね。もっと的確に相手の対応を出来るようにしなければいけないよ?」
「はい!獅子王さんっ!」
約束をしていた柔道の修行。その第1回に光輝は来ていた。試合の内容が『あれ』だったからちゃんと教えてもらえるのかという不安は正直なところあったが、以外(といっては失礼だが)にもまじめに教えてもらえることに光輝は嬉しさを感じていた。
「獅子王さん?」
「あっ……すみません、師匠!」
「隼人さん、だ」
「はい?」
「私はね、人と違う人間。特別な人間として扱われることが嫌いなんだよ。だから君には私のことは『隼人さん』と呼んでもらいたいんだが。どうかな?」
「……!わかりました、隼人さん!」
「ありがとう。君のそういう素直で実直なところは非常に好ましく思うよ。さて、特訓を続けようか」
「はい!」
こうして二人の特訓は続いた。
「はぁ……はぁ……もうだめだ」
道場に寝転がりながら息を整える光輝。高校柔道で世界三位という偉業を達成した光輝でさえも本気の隼人の相手をするのは厳しかった。
(さすが世界一位……格が段違いだ!)
それはある意味においてどこまで高みに昇っているのかわからない、比類すべき対象がいない、という話でもある。
格闘技において体重や体格というものは重要なファクターである。だからこそ細かく体重による階級差が儲けられているのだ。隼人は光輝よりも1階級上ということもあり、それだけでも大きな差があると言えるだろう。さらに言えば隼人はその巨体に見合った体力も持ち合わせている。しかしそれでもなお、隼人の強さは他の追随を許さないほど圧倒的であった。
「疲れたかな?ふぅ……少し休憩にするか」
「ありがとうございます……」
「ねえ、光輝君」「はい、なんですか?」
「君はどうして私に柔道を習いたいと思ったのかな?」
「それは……。あなたが非常に強い人だからです」「強い?」
「俺は将来プロレスラーになりたいんです。その場にいるだけで存在感があるような。人を幸せにできるような、そんな偉大なプロレスラーに。……俺が子供の頃に勇気を与えてくれたあの人みたいになりたい。そう、願ったんです」
「ならば部活とかに入ればよかったんじゃないかな?少しづつではあるが強くなることはできるだろう?」
隼人の言葉に、光輝は小さく笑う。
「俺、レスリング部で問題起こしちゃって。追い出されちゃったんですよね」
「そうなのか。ならば柔道部は?」
「うちの学校の柔道部って、ちょっと問題があって……。今はまともに活動してないっていうか、出来てないっていうか。発展場みたいになっちゃってるっていうか……。とにかく、柔道部もむりなんですよね」
「なるほどねぇ」
隼人は大きくため息をつく。
「なら私が鍛えてあげるしかないっていうことだね」
「はい!よろしくお願いします!……正直、隼人さんがちゃんと教えてくれるのは意外でした。だって、試合内容が『あれ』だったから」
「光輝君……。私を玉を攻めるしか能がない男だと思っていたのかい?」
「そんなことは……」
不意に。隼人が覆いかぶさってくる。
「光輝君……」
甘く囁くように名前を呼ばれ、光輝は顔を赤くする。
「あ、えっとその……」
戸惑う光輝を見て隼人が小さく笑ったその時。
「痛っ……!痛たたたたたたっ!」
急に股間に激烈な痛みを感じて悲鳴を上げる光輝。隼人が押しつぶしてきていたのだ。
「ちょ!?隼人さん!何やってんすか!!」
「いやーすまないね。つい癖でね」
「どんな癖だよ!!あんたがやると洒落にならないんだよ!」
涙目で叫ぶ光輝。隼人はそれを無視して話を続ける。
「私に玉を攻められたいんだったらいつでも言ってくれたまえよ。私はいついかなる時であろうと君の期待に応えようじゃないか!」
「いや結構です!てかほんといい加減にしてくださいよ!」
「ああ、ごめんね。じゃあやめようか」
あっさり離れていく隼人。
「まったく……冗談じゃないよホントに」
「ははは。まぁそういうわけで私は君を強くすることはやぶさかではないんだよ」
「はぁ……そうなんですか」
「さて、そろそろいいかげん再開しようか」
「はい」
二人は再び特訓を始めた。
光輝が隼人につかみかかる。だが。
「ふんっ!」
隼人に投げられて光輝は畳の上に転がった。
「勢いがあるのはいいんだけどね。もっと的確に相手の対応を出来るようにしなければいけないよ?」
「はい!獅子王さんっ!」
約束をしていた柔道の修行。その第1回に光輝は来ていた。試合の内容が『あれ』だったからちゃんと教えてもらえるのかという不安は正直なところあったが、以外(といっては失礼だが)にもまじめに教えてもらえることに光輝は嬉しさを感じていた。
「獅子王さん?」
「あっ……すみません、師匠!」
「隼人さん、だ」
「はい?」
「私はね、人と違う人間。特別な人間として扱われることが嫌いなんだよ。だから君には私のことは『隼人さん』と呼んでもらいたいんだが。どうかな?」
「……!わかりました、隼人さん!」
「ありがとう。君のそういう素直で実直なところは非常に好ましく思うよ。さて、特訓を続けようか」
「はい!」
こうして二人の特訓は続いた。
「はぁ……はぁ……もうだめだ」
道場に寝転がりながら息を整える光輝。高校柔道で世界三位という偉業を達成した光輝でさえも本気の隼人の相手をするのは厳しかった。
(さすが世界一位……格が段違いだ!)
それはある意味においてどこまで高みに昇っているのかわからない、比類すべき対象がいない、という話でもある。
格闘技において体重や体格というものは重要なファクターである。だからこそ細かく体重による階級差が儲けられているのだ。隼人は光輝よりも1階級上ということもあり、それだけでも大きな差があると言えるだろう。さらに言えば隼人はその巨体に見合った体力も持ち合わせている。しかしそれでもなお、隼人の強さは他の追随を許さないほど圧倒的であった。
「疲れたかな?ふぅ……少し休憩にするか」
「ありがとうございます……」
「ねえ、光輝君」「はい、なんですか?」
「君はどうして私に柔道を習いたいと思ったのかな?」
「それは……。あなたが非常に強い人だからです」「強い?」
「俺は将来プロレスラーになりたいんです。その場にいるだけで存在感があるような。人を幸せにできるような、そんな偉大なプロレスラーに。……俺が子供の頃に勇気を与えてくれたあの人みたいになりたい。そう、願ったんです」
「ならば部活とかに入ればよかったんじゃないかな?少しづつではあるが強くなることはできるだろう?」
隼人の言葉に、光輝は小さく笑う。
「俺、レスリング部で問題起こしちゃって。追い出されちゃったんですよね」
「そうなのか。ならば柔道部は?」
「うちの学校の柔道部って、ちょっと問題があって……。今はまともに活動してないっていうか、出来てないっていうか。発展場みたいになっちゃってるっていうか……。とにかく、柔道部もむりなんですよね」
「なるほどねぇ」
隼人は大きくため息をつく。
「なら私が鍛えてあげるしかないっていうことだね」
「はい!よろしくお願いします!……正直、隼人さんがちゃんと教えてくれるのは意外でした。だって、試合内容が『あれ』だったから」
「光輝君……。私を玉を攻めるしか能がない男だと思っていたのかい?」
「そんなことは……」
不意に。隼人が覆いかぶさってくる。
「光輝君……」
甘く囁くように名前を呼ばれ、光輝は顔を赤くする。
「あ、えっとその……」
戸惑う光輝を見て隼人が小さく笑ったその時。
「痛っ……!痛たたたたたたっ!」
急に股間に激烈な痛みを感じて悲鳴を上げる光輝。隼人が押しつぶしてきていたのだ。
「ちょ!?隼人さん!何やってんすか!!」
「いやーすまないね。つい癖でね」
「どんな癖だよ!!あんたがやると洒落にならないんだよ!」
涙目で叫ぶ光輝。隼人はそれを無視して話を続ける。
「私に玉を攻められたいんだったらいつでも言ってくれたまえよ。私はいついかなる時であろうと君の期待に応えようじゃないか!」
「いや結構です!てかほんといい加減にしてくださいよ!」
「ああ、ごめんね。じゃあやめようか」
あっさり離れていく隼人。
「まったく……冗談じゃないよホントに」
「ははは。まぁそういうわけで私は君を強くすることはやぶさかではないんだよ」
「はぁ……そうなんですか」
「さて、そろそろいいかげん再開しようか」
「はい」
二人は再び特訓を始めた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる