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紀ノ國光輝
闘う理由
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翔太に連れられてやってきたのは新宿の巨大なビルだった。
「ここの地下に闘技場があるんだ」
「へぇ」
エレベーターに乗って地下へと向かう。
そして、到着した先に待っていた光景を見て光輝は思わず感嘆の声を上げた。
そこはまるでドーム球場のような空間が広がっていた。壁は全面ガラス張りになっており、そこから観客が試合を観戦できるようになっている。さらには天井高くからスクリーンがつるされており、そこに試合の様子が映し出されている。
「すごいだろ?」
「ええ。こんな場所があったなんて知りませんでしたよ」
「僕も初めて見たときは驚いたよ。ここはとある企業が所有している施設で、このためだけに作られたらしいんだ。いやあ、金がある所にはあるもんだよな!」
「ははは……」
テンションの上がる翔太とは対照的に、光輝は苦笑いを浮かべる。
(金の使い方を間違ってる気がするが……まあいいか)
リングの方を見るとすでに試合は始まっている。というよりは、今やっている試合は終わりに近づいている。……のだが。
「おい、兄ちゃん。いいケツしてるじゃねえか!こいつが俺のもんになるなんてたまらねえな!」
「やめろ!離せ!」
筋肉隆々な男に、筋肉質な男がパンツを脱がされて尻に指を入れられている。
「いいじゃねえかよ!減るもんじゃないしよ!むしろ気持ちよくなるぜ?」
「やめて……。やめてくれええええっ!」
「おいおい、そんな嫌がんなって!すぐに良くしてやるからよ!」
リングの上で男が男に組み伏せられてセックスをされている。
「……先生」
「ん?」
「なんですかあれ」
「ああ。言ってなかったっけ?ここでやってるのはエロレスなんだよ」「エロレス?」
聞き慣れない言葉に、光輝は首を傾げる。
「知らないか?まあそうか。簡単に言えばフェラとかオナニーとかセックスとか、プロレスしながらそういうエロい糊塗しようっていう見世物だよ」
「あんた生徒を何てところに連れてきてるんだよ!?」
「大丈夫大丈夫。みんなこういうの好きだから」
「そうなのかもしれねえけどさ……。まさか俺にここで闘え、っていうんじゃねえだろうな!?」
「ははは。そのまさかだよ」
「ふざけるな!俺は帰るぞ!」
「待ってくれよ!頼むからさ!」
翔太が慌てて光輝の腕を掴む。
「先生、放して下さい」
「お願いします!」
必死の形相で頼み込む翔太。
「なにがお願いしますだ!ちょっと頭下げてわかりました、なんて言ってもらえる話じゃ……」
光輝がそう言いかけた時だった。
「そちらのかたがあなたの代わりに闘っていただける方ですか?」
いかにも高級そうなスーツに身をまとい。高級そうなネクタイをして、高級そうな革靴をはいた。いかにもセレブです、と主張しまくっている老紳士が近づいてくる。
「町澤さんっ!そうそう、そうなんです!」
「こちら方は?」
「彼は光輝といって、僕が顧問を務めるレスリング部の生徒なんですよ!」
「ほほう。そうなのですか」
「ええ!だから安心して任せられますよ!」
「わかりました。では、こちらにサインをしていただけませんか?」
そう言うと、老紳士は光輝の前に書類を差し出す。そこには『誓約書』の文字が書かれていた。
「これは?」
「はい。選手の契約書と、当施設での興行において、万が一事故などが起きてしまった場合の責任はすべて自己責任であることを認める旨の同意書をかねておりまして」
「……」
「どうされましたか?もしご納得していただけないのであれば、今回のお話はなかったことに……」
「い、いえ。結構です」
光輝は仕方なくペンを手に取る。
(ったく、どうしてこうなったんだか……)
光輝は内心ため息をつく。
「それじゃあ光輝くん。よろしく頼むよ」
「はぁ……」
こうして、光輝は半ば強制的にエロレスに出場させられることとなった。
「ルールは簡単。相手をKOするかギブアップさせれば君の勝ちです。ただし、相手を射精させない限りはそのどちらも認められませんのであしからず」
「……わかりました」
光輝は小さく息をつく。
「ところで、俺の相手は誰なんですか?」
「今日のあなたの相手は黒鉄竜也という方です」
「黒鉄竜也!?」
その名前に翔太は思わず声を上げる。
「知ってるやつか?」
「知ってるも何も、俺がここのリングで初めて闘った相手だよ!……そして、あいつに負けて心が折れて。それで、リングで闘いたくないって思ってさ。……そしたらたまたま、お前がいたんだよ!すっごく強いお前が!いやー、これはもう運命だと思わないか!?」
「……」
光輝は呆れたように翔太を見る。
「あのな、俺は別に……」
「それでは控室へご案内します」
光輝の言葉は遮られ、そのまま控え室に連れて行かれてしまった。
♦
「うわっ!こんなのはくのかよっ!!」
コスチュームとして渡されたのは黒いブーメランパンツだった。
「仕方ないだろ。我慢してくれ」
「わかったよ、ったく」
その衣装を身に着けるために光輝は服を脱ぎ捨てるが。
「…………」
翔太の視線が光輝の股間に集中していることに気づく。
「おい、どこ見てんだよ」
「あ、ああ。悪い。つい見入っちまったよ。だって、あんなにでかいもの見たことなかったしな!」
光輝のペニスは18センチほどある。しかもカリ高だ。成人男性どころかAV男優が勃起した時の長さの平均すら超えている。
「なんだ?あんたこんなリングで闘ってたっていうくらいだしホモなのか?」
「違う。俺はホモじゃない!……だいたい、闘ったのだって竜也との1戦だけだし」
「仮にも大学柔道で全国大会に出たんだろ?あんた。情けなくないのか?」
「うるさいな!俺だって好きで闘ったわけじゃねえよ!それに、負けたからこそここにいるんじゃねえか!」
「まあまあ、落ち着けっつうの」
光輝はため息をつく。
「……とにかく、さっさと着替えちまわないとな。あ、んでさ。先生の借金の理由って何?あといくらあるんだよ」
「……借金の総額は1200万円……いや、1500万円だ」
「マジかよ!?そんなにか!」
「ああ。だけど、僕は絶対に諦めない!いつか必ず返してみせる!そのために、君にも協力してもらうぞ!」
「それはいいけど……。どうやって返すつもりなんだよ」
「とりあえず今は、ここで勝って賞金をもらうしかないんだよ。なんていったって、ここで1回勝てば50万円ももらえるんだぜ?借金返済なんてすぐだよ、すぐ!」
「簡単に言ってくれるねえ。闘うのは俺だっていうのによ。んで、その理由は?」
「……俺には妹がいるんだけどさ。その妹が病気で入院してるんだよ」
「えっ!?あんたの妹が!?なんの病気だよ!?」
「ガンだ……」
「ええええええええええええ!?!?!?」
光輝は驚きの声を上げる。まさか自分の顧問の妹が末期がん患者だったとは思いもしなかったからだ。
「医者からは余命半年と言われている。だから、どうしても妹を助けたいんだよ!頼む、協力してくれ!!」
そう言って翔太は土下座をする。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そこまでするなら普通、金貸してくれる人とかいないのか?」
「親は俺が小さい頃に離婚していてな。母さんはずっと仕事ばかりで家に帰らないんだ。だから、俺が稼ぐしかなくてな」
「……」
光輝は頭を抱える。
「と、いうことで。まずは勝とうじゃないか!そして、妹の手術代のためにも、君の力を貸してくれ!」
「……わかったよ。勝ってきてやるよ!」
光輝はため息をつきながらそう言った。
「ここの地下に闘技場があるんだ」
「へぇ」
エレベーターに乗って地下へと向かう。
そして、到着した先に待っていた光景を見て光輝は思わず感嘆の声を上げた。
そこはまるでドーム球場のような空間が広がっていた。壁は全面ガラス張りになっており、そこから観客が試合を観戦できるようになっている。さらには天井高くからスクリーンがつるされており、そこに試合の様子が映し出されている。
「すごいだろ?」
「ええ。こんな場所があったなんて知りませんでしたよ」
「僕も初めて見たときは驚いたよ。ここはとある企業が所有している施設で、このためだけに作られたらしいんだ。いやあ、金がある所にはあるもんだよな!」
「ははは……」
テンションの上がる翔太とは対照的に、光輝は苦笑いを浮かべる。
(金の使い方を間違ってる気がするが……まあいいか)
リングの方を見るとすでに試合は始まっている。というよりは、今やっている試合は終わりに近づいている。……のだが。
「おい、兄ちゃん。いいケツしてるじゃねえか!こいつが俺のもんになるなんてたまらねえな!」
「やめろ!離せ!」
筋肉隆々な男に、筋肉質な男がパンツを脱がされて尻に指を入れられている。
「いいじゃねえかよ!減るもんじゃないしよ!むしろ気持ちよくなるぜ?」
「やめて……。やめてくれええええっ!」
「おいおい、そんな嫌がんなって!すぐに良くしてやるからよ!」
リングの上で男が男に組み伏せられてセックスをされている。
「……先生」
「ん?」
「なんですかあれ」
「ああ。言ってなかったっけ?ここでやってるのはエロレスなんだよ」「エロレス?」
聞き慣れない言葉に、光輝は首を傾げる。
「知らないか?まあそうか。簡単に言えばフェラとかオナニーとかセックスとか、プロレスしながらそういうエロい糊塗しようっていう見世物だよ」
「あんた生徒を何てところに連れてきてるんだよ!?」
「大丈夫大丈夫。みんなこういうの好きだから」
「そうなのかもしれねえけどさ……。まさか俺にここで闘え、っていうんじゃねえだろうな!?」
「ははは。そのまさかだよ」
「ふざけるな!俺は帰るぞ!」
「待ってくれよ!頼むからさ!」
翔太が慌てて光輝の腕を掴む。
「先生、放して下さい」
「お願いします!」
必死の形相で頼み込む翔太。
「なにがお願いしますだ!ちょっと頭下げてわかりました、なんて言ってもらえる話じゃ……」
光輝がそう言いかけた時だった。
「そちらのかたがあなたの代わりに闘っていただける方ですか?」
いかにも高級そうなスーツに身をまとい。高級そうなネクタイをして、高級そうな革靴をはいた。いかにもセレブです、と主張しまくっている老紳士が近づいてくる。
「町澤さんっ!そうそう、そうなんです!」
「こちら方は?」
「彼は光輝といって、僕が顧問を務めるレスリング部の生徒なんですよ!」
「ほほう。そうなのですか」
「ええ!だから安心して任せられますよ!」
「わかりました。では、こちらにサインをしていただけませんか?」
そう言うと、老紳士は光輝の前に書類を差し出す。そこには『誓約書』の文字が書かれていた。
「これは?」
「はい。選手の契約書と、当施設での興行において、万が一事故などが起きてしまった場合の責任はすべて自己責任であることを認める旨の同意書をかねておりまして」
「……」
「どうされましたか?もしご納得していただけないのであれば、今回のお話はなかったことに……」
「い、いえ。結構です」
光輝は仕方なくペンを手に取る。
(ったく、どうしてこうなったんだか……)
光輝は内心ため息をつく。
「それじゃあ光輝くん。よろしく頼むよ」
「はぁ……」
こうして、光輝は半ば強制的にエロレスに出場させられることとなった。
「ルールは簡単。相手をKOするかギブアップさせれば君の勝ちです。ただし、相手を射精させない限りはそのどちらも認められませんのであしからず」
「……わかりました」
光輝は小さく息をつく。
「ところで、俺の相手は誰なんですか?」
「今日のあなたの相手は黒鉄竜也という方です」
「黒鉄竜也!?」
その名前に翔太は思わず声を上げる。
「知ってるやつか?」
「知ってるも何も、俺がここのリングで初めて闘った相手だよ!……そして、あいつに負けて心が折れて。それで、リングで闘いたくないって思ってさ。……そしたらたまたま、お前がいたんだよ!すっごく強いお前が!いやー、これはもう運命だと思わないか!?」
「……」
光輝は呆れたように翔太を見る。
「あのな、俺は別に……」
「それでは控室へご案内します」
光輝の言葉は遮られ、そのまま控え室に連れて行かれてしまった。
♦
「うわっ!こんなのはくのかよっ!!」
コスチュームとして渡されたのは黒いブーメランパンツだった。
「仕方ないだろ。我慢してくれ」
「わかったよ、ったく」
その衣装を身に着けるために光輝は服を脱ぎ捨てるが。
「…………」
翔太の視線が光輝の股間に集中していることに気づく。
「おい、どこ見てんだよ」
「あ、ああ。悪い。つい見入っちまったよ。だって、あんなにでかいもの見たことなかったしな!」
光輝のペニスは18センチほどある。しかもカリ高だ。成人男性どころかAV男優が勃起した時の長さの平均すら超えている。
「なんだ?あんたこんなリングで闘ってたっていうくらいだしホモなのか?」
「違う。俺はホモじゃない!……だいたい、闘ったのだって竜也との1戦だけだし」
「仮にも大学柔道で全国大会に出たんだろ?あんた。情けなくないのか?」
「うるさいな!俺だって好きで闘ったわけじゃねえよ!それに、負けたからこそここにいるんじゃねえか!」
「まあまあ、落ち着けっつうの」
光輝はため息をつく。
「……とにかく、さっさと着替えちまわないとな。あ、んでさ。先生の借金の理由って何?あといくらあるんだよ」
「……借金の総額は1200万円……いや、1500万円だ」
「マジかよ!?そんなにか!」
「ああ。だけど、僕は絶対に諦めない!いつか必ず返してみせる!そのために、君にも協力してもらうぞ!」
「それはいいけど……。どうやって返すつもりなんだよ」
「とりあえず今は、ここで勝って賞金をもらうしかないんだよ。なんていったって、ここで1回勝てば50万円ももらえるんだぜ?借金返済なんてすぐだよ、すぐ!」
「簡単に言ってくれるねえ。闘うのは俺だっていうのによ。んで、その理由は?」
「……俺には妹がいるんだけどさ。その妹が病気で入院してるんだよ」
「えっ!?あんたの妹が!?なんの病気だよ!?」
「ガンだ……」
「ええええええええええええ!?!?!?」
光輝は驚きの声を上げる。まさか自分の顧問の妹が末期がん患者だったとは思いもしなかったからだ。
「医者からは余命半年と言われている。だから、どうしても妹を助けたいんだよ!頼む、協力してくれ!!」
そう言って翔太は土下座をする。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そこまでするなら普通、金貸してくれる人とかいないのか?」
「親は俺が小さい頃に離婚していてな。母さんはずっと仕事ばかりで家に帰らないんだ。だから、俺が稼ぐしかなくてな」
「……」
光輝は頭を抱える。
「と、いうことで。まずは勝とうじゃないか!そして、妹の手術代のためにも、君の力を貸してくれ!」
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光輝はため息をつきながらそう言った。
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