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紀ノ國光輝
最強の生徒
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『あなたのために闘ってくれる代理人を見つけてきてください』
秀樹の言っていた言葉は、結局のところそこに集約される。
「代理人、か……」
自分よりもはるかに強くて、自分のために闘ってくれる人物。それも『エロレス』なんていう恥辱にまみれたリングで24人もの人間を倒せるだけの強い人間。
それも、ただそのへんにいるような相手を、ではない。あのリングは金儲けができるということもあって、その恥辱をいとわずに活動資金を得るために闘っている一流のアスリートたちがひしめき合っているのだ。それこそ竜也を筆頭として。
(そんな都合のいいやついないよな……)
「……んせい!先生ってば!」
そんなことを考えていた翔太の耳元で声がする。ふと我に返るとそこには、いつの間にか近づいてきていたらしい、生徒の姿があった。
「あぁごめんごめん、どうした?」
慌ててそう返すと、彼は少し怒った様子で言った。
「さっきから呼んでだんですけど!?」
「あーすまんすまん、ちょっと考え事しててね。それで?何の話だったかな?」
苦笑いを浮かべながらそう言うと、彼はあきれたようにため息をつく。
「だから、レフェリーをやってほしいっていう話です!」
レフェリー。そう言われて思い出す。自分がレスリング部の顧問であり、今がレスリング部の練習中であることに。
「あ、ああ。わかった」
とにかく今は自分の仕事をこなすしかない。翔太はリングへと移動する。そこにいる選手は久我山大樹(くがやまたいき)だ。彼は翔太が教師として勤めているO大学の体育学科の3年生の生徒であり、全国でも有名な選手でもある。
身長186センチ、体重115キロ。全身を覆う筋肉はまるで鎧のように硬く、パワーも申し分ない。そして何より特筆すべきはそのスピードである。
(ひょっとしたらこいつならいけるかもしれないぞ!)
翔太は内心ほくそ笑む。だが、まだ早い。あくまで可能性を探るだけだ。
その対戦相手は今年の春に入部したばかりの生徒、紀ノ國光輝(きのくにこうき)だ。経済学部の生徒であり、高校までは柔道をやっていたらしい。178センチの恵体に加え、がっしりとした肩幅もある。
しかしそれでもやはり大樹にははるかに劣る。今回の試合もどうせ先輩としての凄さを見せつけたい、とかいっちょもんでやるか!ってな具合だろう。
(これじゃあ久我山の強さを測る物差しにすらならないか)
そう考えると途端に審判をやる気すらなくなってくるがそれでも仕事は仕事。顧問としての役目を果たすだけだ。
レスリングのリングの上で両者が向かい合う。
「はじめ!」
審判を務める翔太の声と同時に、二人は構える。
先に動いたのは光輝のほうだった。まずは様子を見るというところだろうか。低い姿勢のまま大樹に向かってタックルを仕掛けてくる。
(……速いっ!?)
その速さに思わず驚きを覚える。
彼の持ち味はその体格を生かしたスピードにある。それはわかっていたがまさかここまでとは思わなかった。
あっという間に大樹は倒され、ポイントを先取されてしまう。
「俺の方が先にポイントを取られただと……!?」
大樹にとっては屈辱的な出来事であったようだ。
「大丈夫ですか?」
心配そうな表情をして駆け寄ってくる光輝に対し、大樹は怒鳴るように言い放つ。
「ふざけんなよお前!何やってんだ!!」
「いや。格下だと思って先輩が油断しただけでしょ?別に俺の方が強いとかじゃないんですから、そう怒らないでくださいよ」
その言葉に大樹はカッとなったのか、再び光輝に対して掴みかかる。それを軽くかわすと今度は逆に彼が大樹の腕を掴んだ。
「……ッ!?」
腕をつかまれた瞬間、大樹の顔色が変わる。
(なんだこいつ……?)
一瞬にして大樹の背筋に寒気が走る。この男、ただものじゃない……。
次の瞬間、大樹の目が大きく見開かれる。なんと、そのまま大樹の身体を持ち上げたのだ。
「うおおおっ!?」
驚愕の叫びを上げる大樹。必死になって手足を振り回して抵抗するが、一向に振りほどけない。
「先輩。試合なんですからまじめにやりましょう。俺が憎いならレスリングで倒せばいいじゃないですか」
涼しい顔をしながら光輝がそう言うと、大樹は大きく舌打ちをした。
「くそったれが……」
悔しげな顔をして大樹はリングの上に横になる。そしてすぐに立ち上がってファイティングポーズをとった。
仕切りなおして、もう一度試合開始だ。
「はじめ!」
合図とともに、大樹は再びタックルを仕掛ける。先ほどの反省を生かして、今度は最初から全力で行くつもりらしい。
だが結果は同じだった。大樹が再び倒されたのだ。しかも今度はカウント2で。
「えっ!?」
これにはさすがの翔太も驚く。スピードのある相手だからといって、いくらなんでも早すぎる。まるで大樹の動きを読んでいるかのように的確に対処しているように見えるのだが……。
「どういうことだ?」
その後も大樹と光輝の試合は何度となく続いたが、結局すべて大樹の敗北に終わった。
「おい、てめぇ!」
最後の試合が終わると、大樹はすぐさま光輝の元に詰め寄る。
「なんすか?負け犬」
「てめぇ何者だ!あんな動き人間にできるわけねぇだろ!」
「はぁ?」
大樹の言葉に、光輝が呆れたようにため息をつく。
「あの程度の相手に勝てないあんたが悪いんじゃないっすかね?」
「ぐぬぅ……」
何も言えずに押し黙る大樹。そんな彼に光輝は言う。
「ま、とにかくそういうことで。俺はもう帰るんで、あとよろしくお願いしますね~」
「ちょっと待て!」
大樹が呼び止めるも、彼は気にせずリングを降りていく。その背中を見ながら大樹は歯ぎしりをする。
「くそがっ!!」
怒りのあまりリングのマットを殴りつける大樹。
「あーあ、あいつ怒らせちゃいましたね」
その様子を見ていた翔太が苦笑いを浮かべながら大樹に声をかけると、彼は鋭い目つきでこちらを見てきた。
「ああ!?何か文句でもあんのか!?」
まるでチンピラのような口調でそう言ってすごむ大樹に、翔太はやれやれといった様子で首を振って答える。
「いや、別に」
「……ちっ、なんかムカつく野郎だぜ」
忌々しげに吐き捨てると大樹は部室へと戻っていくのだった。
「いやー、それにしても今日は疲れましたよ」
帰り道、翔太は隣を歩く光輝に話しかける。
「あれだけ動いてまだ元気なのか、すごいな君は」
「まあ、鍛えてるんで。それより先生こそお疲れみたいですね?」
「ああ、うん。まあ、ね」
光輝の言葉に翔太は曖昧に返す。確かに肉体的には疲労しているが、それ以上に精神的にきつかった。
「いや、まさか君が強いとは思ってなくてさ」
「ん?そりゃどうも」
「いやいや、褒めてはいないんだけど……」
「いやいや、褒めてくださいって!」
「あ、はい。そうっすよね」
翔太の返事に、光輝は嬉しそうな笑顔を見せる。
「いやー、やっぱり俺強いんっすねえ」
その反応に、思わず苦笑するしかない。
(本当に調子のいい奴だな)
「そうだな。さっきの試合は正直驚いたぞ」
「そうでしょうそうでしょう」
翔太の言葉に光輝は満足げな表情を浮かべる。
「しかし、いったいどうやってあんなに早く動けるようになったんだ?」
「いや、普通ですよ」
「……?」
光輝の反応の意味が分からず、思わず眉をひそめる。
「えっと、どういうこと?」
「いや、だって俺柔道やってたじゃないですか。だから相手の動きをよく見て、次に何をしてくるか予想すればいいだけでしょ?それだけです」
「は?」
光輝の言葉に、思わず目が点になる。
(こいつはまたとんでもないこと言い出しやがったな)
おそらく光輝にとってはそれが当たり前のことなのだろう。しかし、それは普通の人間にとっては不可能に近い。
光輝はスピードだけでなく、反射神経も並外れている。つまり、相手が動く前に相手の動きを予測できなければ話にならないということだ。
(これはもしかすると……)
「光輝。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ん?なんですか?」
「お前、強い相手と戦うことに興味ないか?」
「なんですか?それ。まあ、興味ないこともないですけど。それがどうかしましたか?」
「地下闘技場……なんていうのがもしあったとしたら、挑戦してみたいと思わないか?」
「はい?」
翔太の言葉に、光輝は困惑したような顔になる。
「なんだかよくわからないんですが、なんでいきなりそんな話を?」
「いや。実は俺は……。俺には借金がるんだ。それで、金持ちが主催している地下闘技場に参加しないといけなくなったんだ。……でも、俺の強さじゃ太刀打ちできない。そこは勝てなければ賞金がもらえないっていう厳しいルールなんだよ。だから俺のために君が闘ってくれれば……」
「嫌っす」
翔太の言葉を遮るように光輝は即答する。
「え?」
「いや、だからやりませんって。そもそもそんな危ないことをやる理由がありませんから」
光輝は心底あきれた様子で言う。
「いや、でもほら。君なら勝利できるかもしれないじゃないか!」
「いや、無理っすよ」
必死になって食い下がる翔太に対し、光輝はばっさりと切り捨てる。
「いや、でもやってみたら意外と何とかなるかも……」
「なりませんって」
なおもあきらめずに説得しようとする翔太だったが、光輝はそれを無視して歩き続ける。
「そもそも、俺が先生の借金返すのに協力する必要ってあります?ないですよね?ていうか、何回断ってもしつこく誘ってくるってことは、先生って絶対何か悪いこと企んでますよね?」
「い、いや。そんなことはないって!」
図星を突かれて慌てて否定するが、もう遅い。光輝の目は完全に疑いの眼差しになっている。
「うわぁ。先生がそんな人だとは思いませんでしたよ。失望しました。もう二度と近づかないでください」
冷たい目をしながらそう言うと、光輝は足早にその場を去っていった。
「はぁ。……どうしよう」
今日の光輝の強さを見れば手放すのが惜しい人材であることに間違いはない。
今日の光輝……か。
(……ん?)
そこでふと思いついた。
あるじゃないか!うってつけの方法が!
翔太はにんまりと笑った。
秀樹の言っていた言葉は、結局のところそこに集約される。
「代理人、か……」
自分よりもはるかに強くて、自分のために闘ってくれる人物。それも『エロレス』なんていう恥辱にまみれたリングで24人もの人間を倒せるだけの強い人間。
それも、ただそのへんにいるような相手を、ではない。あのリングは金儲けができるということもあって、その恥辱をいとわずに活動資金を得るために闘っている一流のアスリートたちがひしめき合っているのだ。それこそ竜也を筆頭として。
(そんな都合のいいやついないよな……)
「……んせい!先生ってば!」
そんなことを考えていた翔太の耳元で声がする。ふと我に返るとそこには、いつの間にか近づいてきていたらしい、生徒の姿があった。
「あぁごめんごめん、どうした?」
慌ててそう返すと、彼は少し怒った様子で言った。
「さっきから呼んでだんですけど!?」
「あーすまんすまん、ちょっと考え事しててね。それで?何の話だったかな?」
苦笑いを浮かべながらそう言うと、彼はあきれたようにため息をつく。
「だから、レフェリーをやってほしいっていう話です!」
レフェリー。そう言われて思い出す。自分がレスリング部の顧問であり、今がレスリング部の練習中であることに。
「あ、ああ。わかった」
とにかく今は自分の仕事をこなすしかない。翔太はリングへと移動する。そこにいる選手は久我山大樹(くがやまたいき)だ。彼は翔太が教師として勤めているO大学の体育学科の3年生の生徒であり、全国でも有名な選手でもある。
身長186センチ、体重115キロ。全身を覆う筋肉はまるで鎧のように硬く、パワーも申し分ない。そして何より特筆すべきはそのスピードである。
(ひょっとしたらこいつならいけるかもしれないぞ!)
翔太は内心ほくそ笑む。だが、まだ早い。あくまで可能性を探るだけだ。
その対戦相手は今年の春に入部したばかりの生徒、紀ノ國光輝(きのくにこうき)だ。経済学部の生徒であり、高校までは柔道をやっていたらしい。178センチの恵体に加え、がっしりとした肩幅もある。
しかしそれでもやはり大樹にははるかに劣る。今回の試合もどうせ先輩としての凄さを見せつけたい、とかいっちょもんでやるか!ってな具合だろう。
(これじゃあ久我山の強さを測る物差しにすらならないか)
そう考えると途端に審判をやる気すらなくなってくるがそれでも仕事は仕事。顧問としての役目を果たすだけだ。
レスリングのリングの上で両者が向かい合う。
「はじめ!」
審判を務める翔太の声と同時に、二人は構える。
先に動いたのは光輝のほうだった。まずは様子を見るというところだろうか。低い姿勢のまま大樹に向かってタックルを仕掛けてくる。
(……速いっ!?)
その速さに思わず驚きを覚える。
彼の持ち味はその体格を生かしたスピードにある。それはわかっていたがまさかここまでとは思わなかった。
あっという間に大樹は倒され、ポイントを先取されてしまう。
「俺の方が先にポイントを取られただと……!?」
大樹にとっては屈辱的な出来事であったようだ。
「大丈夫ですか?」
心配そうな表情をして駆け寄ってくる光輝に対し、大樹は怒鳴るように言い放つ。
「ふざけんなよお前!何やってんだ!!」
「いや。格下だと思って先輩が油断しただけでしょ?別に俺の方が強いとかじゃないんですから、そう怒らないでくださいよ」
その言葉に大樹はカッとなったのか、再び光輝に対して掴みかかる。それを軽くかわすと今度は逆に彼が大樹の腕を掴んだ。
「……ッ!?」
腕をつかまれた瞬間、大樹の顔色が変わる。
(なんだこいつ……?)
一瞬にして大樹の背筋に寒気が走る。この男、ただものじゃない……。
次の瞬間、大樹の目が大きく見開かれる。なんと、そのまま大樹の身体を持ち上げたのだ。
「うおおおっ!?」
驚愕の叫びを上げる大樹。必死になって手足を振り回して抵抗するが、一向に振りほどけない。
「先輩。試合なんですからまじめにやりましょう。俺が憎いならレスリングで倒せばいいじゃないですか」
涼しい顔をしながら光輝がそう言うと、大樹は大きく舌打ちをした。
「くそったれが……」
悔しげな顔をして大樹はリングの上に横になる。そしてすぐに立ち上がってファイティングポーズをとった。
仕切りなおして、もう一度試合開始だ。
「はじめ!」
合図とともに、大樹は再びタックルを仕掛ける。先ほどの反省を生かして、今度は最初から全力で行くつもりらしい。
だが結果は同じだった。大樹が再び倒されたのだ。しかも今度はカウント2で。
「えっ!?」
これにはさすがの翔太も驚く。スピードのある相手だからといって、いくらなんでも早すぎる。まるで大樹の動きを読んでいるかのように的確に対処しているように見えるのだが……。
「どういうことだ?」
その後も大樹と光輝の試合は何度となく続いたが、結局すべて大樹の敗北に終わった。
「おい、てめぇ!」
最後の試合が終わると、大樹はすぐさま光輝の元に詰め寄る。
「なんすか?負け犬」
「てめぇ何者だ!あんな動き人間にできるわけねぇだろ!」
「はぁ?」
大樹の言葉に、光輝が呆れたようにため息をつく。
「あの程度の相手に勝てないあんたが悪いんじゃないっすかね?」
「ぐぬぅ……」
何も言えずに押し黙る大樹。そんな彼に光輝は言う。
「ま、とにかくそういうことで。俺はもう帰るんで、あとよろしくお願いしますね~」
「ちょっと待て!」
大樹が呼び止めるも、彼は気にせずリングを降りていく。その背中を見ながら大樹は歯ぎしりをする。
「くそがっ!!」
怒りのあまりリングのマットを殴りつける大樹。
「あーあ、あいつ怒らせちゃいましたね」
その様子を見ていた翔太が苦笑いを浮かべながら大樹に声をかけると、彼は鋭い目つきでこちらを見てきた。
「ああ!?何か文句でもあんのか!?」
まるでチンピラのような口調でそう言ってすごむ大樹に、翔太はやれやれといった様子で首を振って答える。
「いや、別に」
「……ちっ、なんかムカつく野郎だぜ」
忌々しげに吐き捨てると大樹は部室へと戻っていくのだった。
「いやー、それにしても今日は疲れましたよ」
帰り道、翔太は隣を歩く光輝に話しかける。
「あれだけ動いてまだ元気なのか、すごいな君は」
「まあ、鍛えてるんで。それより先生こそお疲れみたいですね?」
「ああ、うん。まあ、ね」
光輝の言葉に翔太は曖昧に返す。確かに肉体的には疲労しているが、それ以上に精神的にきつかった。
「いや、まさか君が強いとは思ってなくてさ」
「ん?そりゃどうも」
「いやいや、褒めてはいないんだけど……」
「いやいや、褒めてくださいって!」
「あ、はい。そうっすよね」
翔太の返事に、光輝は嬉しそうな笑顔を見せる。
「いやー、やっぱり俺強いんっすねえ」
その反応に、思わず苦笑するしかない。
(本当に調子のいい奴だな)
「そうだな。さっきの試合は正直驚いたぞ」
「そうでしょうそうでしょう」
翔太の言葉に光輝は満足げな表情を浮かべる。
「しかし、いったいどうやってあんなに早く動けるようになったんだ?」
「いや、普通ですよ」
「……?」
光輝の反応の意味が分からず、思わず眉をひそめる。
「えっと、どういうこと?」
「いや、だって俺柔道やってたじゃないですか。だから相手の動きをよく見て、次に何をしてくるか予想すればいいだけでしょ?それだけです」
「は?」
光輝の言葉に、思わず目が点になる。
(こいつはまたとんでもないこと言い出しやがったな)
おそらく光輝にとってはそれが当たり前のことなのだろう。しかし、それは普通の人間にとっては不可能に近い。
光輝はスピードだけでなく、反射神経も並外れている。つまり、相手が動く前に相手の動きを予測できなければ話にならないということだ。
(これはもしかすると……)
「光輝。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「ん?なんですか?」
「お前、強い相手と戦うことに興味ないか?」
「なんですか?それ。まあ、興味ないこともないですけど。それがどうかしましたか?」
「地下闘技場……なんていうのがもしあったとしたら、挑戦してみたいと思わないか?」
「はい?」
翔太の言葉に、光輝は困惑したような顔になる。
「なんだかよくわからないんですが、なんでいきなりそんな話を?」
「いや。実は俺は……。俺には借金がるんだ。それで、金持ちが主催している地下闘技場に参加しないといけなくなったんだ。……でも、俺の強さじゃ太刀打ちできない。そこは勝てなければ賞金がもらえないっていう厳しいルールなんだよ。だから俺のために君が闘ってくれれば……」
「嫌っす」
翔太の言葉を遮るように光輝は即答する。
「え?」
「いや、だからやりませんって。そもそもそんな危ないことをやる理由がありませんから」
光輝は心底あきれた様子で言う。
「いや、でもほら。君なら勝利できるかもしれないじゃないか!」
「いや、無理っすよ」
必死になって食い下がる翔太に対し、光輝はばっさりと切り捨てる。
「いや、でもやってみたら意外と何とかなるかも……」
「なりませんって」
なおもあきらめずに説得しようとする翔太だったが、光輝はそれを無視して歩き続ける。
「そもそも、俺が先生の借金返すのに協力する必要ってあります?ないですよね?ていうか、何回断ってもしつこく誘ってくるってことは、先生って絶対何か悪いこと企んでますよね?」
「い、いや。そんなことはないって!」
図星を突かれて慌てて否定するが、もう遅い。光輝の目は完全に疑いの眼差しになっている。
「うわぁ。先生がそんな人だとは思いませんでしたよ。失望しました。もう二度と近づかないでください」
冷たい目をしながらそう言うと、光輝は足早にその場を去っていった。
「はぁ。……どうしよう」
今日の光輝の強さを見れば手放すのが惜しい人材であることに間違いはない。
今日の光輝……か。
(……ん?)
そこでふと思いついた。
あるじゃないか!うってつけの方法が!
翔太はにんまりと笑った。
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