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4. お嬢の死に様は
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奥原と石森の二人に行ってもらった最初の成敗は、小宮 愛莉(こみや あいり)を都内の雑居ビルの中にある閉店したバーで作品に仕立て上げる、ということだった。 小宮は、世間から言わせてみれば、所謂お嬢様というレッテルを貼られるような人だった。身につけているものは全てブランド品、関東にある有名な私立高校に通いながら、十七歳の若さで某ファッションブランドの息子との結婚が決まっていた。確かに、この生い立ちを見ただけで私は顔をしかめてしまうが、そのような理由で私は人を殺さない。やはり理由は、小宮 愛莉が父の小宮 正雄(こみや まさお)と共にLIEU DU CRIME で雇い主をしていたことであった。
雇い主というのは基本、裏社会に手を染めているが故、警戒心が強い。身元を割り出すのが非常に困難であり、ハッキングに対抗する”ホワイトハッカー”が24時間体制でLIEU DU CRIME を見張っているようなアカウントも中には存在する。
しかし、二ヶ月程前に新しく出来た小宮 愛莉のアカウントは、セキュリティーがガバガバだった。娘に殺人の闇サイトでのアカウントづくりを許可した正雄も父としてどうかしているが、流石に愛莉の方は裏社会を舐めすぎていた。アカウント名がK_AIRI.。.:*♡な時点で怪しいと思っていたが、「今日はパパと一緒にDiscissio(ラテン語で、バラバラを意味する)に参加してきました~!!流石に楽しすぎたwwwディナーのコースになぞらえたあの殺人ちょー気に入った♡」と、可哀想な誰かさんの引きちぎられた指と血でLOVEと作った写真と共に、LIEU DU CRIME のブログページに投稿していたのを見たときは、気づいたらLYCORISの二人に殺人の依頼をしていた。
それにしても、この投稿はツッコミどころが多すぎる。(流石にLYCORISの二人に以下の話は出来なかった、悪いがちょっとだけここで吐かせてほしい。)まず、LIEU DU CRIME のブログページはインスタグラムじゃない。もう根本的な存在意義から違う。インスタグラムは日常生活を他人に報告する場として設けられている。ブログページの方がもはや日常化している時点で感覚が終わっていると言えるだろう。
次は、アカウント名についてだ。匿名性が最も重要なこの業界において、ここまで軽々と名前をアカウント名で利用するのもどうかしている。このサイト自体を過信しすぎで、万が一警察にバレたらどうするつもりだったのかは知らないが、身分特定の手間が省けたのでまあ良い。
そして、投稿内容についてだ。Discisso は正雄が主催する所謂”解体パーティー”のようなもので、キャビアやらフォアグラやらなんかを食べながら裏社会の部下たちと殺人を観る催しだ。人肉を食べる趣味が無いだけまだマシだが。パーティーの名前とかも何でもかんでも外国語にすれば良いと思っている正雄もセンスが大いに欠落してると思う。最後に一言、写真に映っていた誰かさんの指、骨が所々長めに皮膚より飛び出していて、どれだけ強引にひっぱり抜いたんだよ、と心の汚れきったツッコミを入れてこの話は終わりとする。
とにかく、以上のような理由で、二人には小宮 愛莉を地獄へ落としてもらうことが決定した。前の溶接事件の彼は張り切りすぎて見た目が凄いことになっていたから、今回はどうか、投稿していた写真と同じような完成度でありますように、と願った。
依頼をした数日後、二人から一本の動画と共に、「任務、完了しました。」との連絡が入っていた。
動画は四十分に及んでいた。一時間以内に収められたというのは、まずまずである。短ければ短いほど、誰かに見られる可能性が減って良い。
動画を再生すると、お世辞でも綺麗とは言えない状態の愛莉が画面に映し出されていた。相当抵抗したのだろう、青いあざや引っかき傷が所々見えた。口には雑にガムテープが貼られており、手足も同様に固定されていた。濡れた瞳からは底知れぬ恐怖が読み取れ、震えた声がカメラの反対側に居る奥原と石森に何かを訴えかけていた。いい気味だ。そう思いながら私は片手に持ったバーボンのグラスを一気に飲み干した。
準備を終えたのか、LYCORISの二人は画面内に映り込んできた。奥原は大きめの三徳包丁、石森はペティナイフを手にしており、一瞬愛莉の前に立ち止まったかと思うと、何の躊躇もなく奥原は愛莉の首を切り裂いた。
どうだったか?奥原に首を切り裂かれた痛みは、しっかりお前に届いているか?誰かさんの指でLOVEなんて作ってるんじゃないよ。と、私はおそらく地獄で今頃指を引き抜かれているであろう愛莉に向かって念を送った。
そこから、二人はまだ意識が朦朧としている愛莉になりふり構わずナイフで装飾を行った。具体的に説明しても良いが、私が楽しくなって長々と書いてしまうので割愛させて頂く。
今回二人が使用した花は、デージーだった。花言葉は、純真・有徳な者の死。実に皮肉的で面白い。私は、二人のことがより気に入った。阿吽の呼吸で成り立っているものなのだろう、二人は特に会話をすること無く、傷を作っては、デージーを埋め込んでいった。作品を作っていくにあたって、二人の眼差しは真剣そのものであり、表情だけを見ると、殺しなんて犯してなさそうなのに、その手はしっかりと赤黒く染まっていた。ものの三十分で、デージーを指し終えた二人は画面外に退くと、作品の全体像が見えた。
バーのカウンター席で足を組んで”座っている”ように見える愛莉に挿してある純白のデージーに散る血は、やはり綺麗だった。白と赤はなぜここまで映えるのだろうか。ボロボロになってしまった髪の毛は可愛いキャペリンハットで覆い隠し、親切なことにリップまで塗り直されていた。作品の完成度、芸術性は異常に高い。高ければ高いほど注目も浴びやすいし、きっと親族も悲しむ。これで正雄も動揺し、少しはダサい名前の解体パーティーも控えることだろう。しっかり君も殺してあげるからね。満足し、動画を閉じた。
雇い主というのは基本、裏社会に手を染めているが故、警戒心が強い。身元を割り出すのが非常に困難であり、ハッキングに対抗する”ホワイトハッカー”が24時間体制でLIEU DU CRIME を見張っているようなアカウントも中には存在する。
しかし、二ヶ月程前に新しく出来た小宮 愛莉のアカウントは、セキュリティーがガバガバだった。娘に殺人の闇サイトでのアカウントづくりを許可した正雄も父としてどうかしているが、流石に愛莉の方は裏社会を舐めすぎていた。アカウント名がK_AIRI.。.:*♡な時点で怪しいと思っていたが、「今日はパパと一緒にDiscissio(ラテン語で、バラバラを意味する)に参加してきました~!!流石に楽しすぎたwwwディナーのコースになぞらえたあの殺人ちょー気に入った♡」と、可哀想な誰かさんの引きちぎられた指と血でLOVEと作った写真と共に、LIEU DU CRIME のブログページに投稿していたのを見たときは、気づいたらLYCORISの二人に殺人の依頼をしていた。
それにしても、この投稿はツッコミどころが多すぎる。(流石にLYCORISの二人に以下の話は出来なかった、悪いがちょっとだけここで吐かせてほしい。)まず、LIEU DU CRIME のブログページはインスタグラムじゃない。もう根本的な存在意義から違う。インスタグラムは日常生活を他人に報告する場として設けられている。ブログページの方がもはや日常化している時点で感覚が終わっていると言えるだろう。
次は、アカウント名についてだ。匿名性が最も重要なこの業界において、ここまで軽々と名前をアカウント名で利用するのもどうかしている。このサイト自体を過信しすぎで、万が一警察にバレたらどうするつもりだったのかは知らないが、身分特定の手間が省けたのでまあ良い。
そして、投稿内容についてだ。Discisso は正雄が主催する所謂”解体パーティー”のようなもので、キャビアやらフォアグラやらなんかを食べながら裏社会の部下たちと殺人を観る催しだ。人肉を食べる趣味が無いだけまだマシだが。パーティーの名前とかも何でもかんでも外国語にすれば良いと思っている正雄もセンスが大いに欠落してると思う。最後に一言、写真に映っていた誰かさんの指、骨が所々長めに皮膚より飛び出していて、どれだけ強引にひっぱり抜いたんだよ、と心の汚れきったツッコミを入れてこの話は終わりとする。
とにかく、以上のような理由で、二人には小宮 愛莉を地獄へ落としてもらうことが決定した。前の溶接事件の彼は張り切りすぎて見た目が凄いことになっていたから、今回はどうか、投稿していた写真と同じような完成度でありますように、と願った。
依頼をした数日後、二人から一本の動画と共に、「任務、完了しました。」との連絡が入っていた。
動画は四十分に及んでいた。一時間以内に収められたというのは、まずまずである。短ければ短いほど、誰かに見られる可能性が減って良い。
動画を再生すると、お世辞でも綺麗とは言えない状態の愛莉が画面に映し出されていた。相当抵抗したのだろう、青いあざや引っかき傷が所々見えた。口には雑にガムテープが貼られており、手足も同様に固定されていた。濡れた瞳からは底知れぬ恐怖が読み取れ、震えた声がカメラの反対側に居る奥原と石森に何かを訴えかけていた。いい気味だ。そう思いながら私は片手に持ったバーボンのグラスを一気に飲み干した。
準備を終えたのか、LYCORISの二人は画面内に映り込んできた。奥原は大きめの三徳包丁、石森はペティナイフを手にしており、一瞬愛莉の前に立ち止まったかと思うと、何の躊躇もなく奥原は愛莉の首を切り裂いた。
どうだったか?奥原に首を切り裂かれた痛みは、しっかりお前に届いているか?誰かさんの指でLOVEなんて作ってるんじゃないよ。と、私はおそらく地獄で今頃指を引き抜かれているであろう愛莉に向かって念を送った。
そこから、二人はまだ意識が朦朧としている愛莉になりふり構わずナイフで装飾を行った。具体的に説明しても良いが、私が楽しくなって長々と書いてしまうので割愛させて頂く。
今回二人が使用した花は、デージーだった。花言葉は、純真・有徳な者の死。実に皮肉的で面白い。私は、二人のことがより気に入った。阿吽の呼吸で成り立っているものなのだろう、二人は特に会話をすること無く、傷を作っては、デージーを埋め込んでいった。作品を作っていくにあたって、二人の眼差しは真剣そのものであり、表情だけを見ると、殺しなんて犯してなさそうなのに、その手はしっかりと赤黒く染まっていた。ものの三十分で、デージーを指し終えた二人は画面外に退くと、作品の全体像が見えた。
バーのカウンター席で足を組んで”座っている”ように見える愛莉に挿してある純白のデージーに散る血は、やはり綺麗だった。白と赤はなぜここまで映えるのだろうか。ボロボロになってしまった髪の毛は可愛いキャペリンハットで覆い隠し、親切なことにリップまで塗り直されていた。作品の完成度、芸術性は異常に高い。高ければ高いほど注目も浴びやすいし、きっと親族も悲しむ。これで正雄も動揺し、少しはダサい名前の解体パーティーも控えることだろう。しっかり君も殺してあげるからね。満足し、動画を閉じた。
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