最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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最終章 死の王 編

死の王

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北の魔城


漆黒の謁見室。
部屋の奥に向かって一直線に伸びる赤い絨毯。
玉座の前に立ったのはジェノサス・カオスオーダーと名乗った男だ。

黒い長い髪、白ワイシャツ、黒いマントと黒いレザーパンツ。
顔の半分焼け爛れていた。

そこから20メートルほど離れた場所でガイは短剣スターブレイカーを前に構えて立つ。
両隣にいるのはローラとヴァン。
どちらも武具を引き抜くと、それぞれ構えて臨戦体勢だ。
背後にはミラが気を失ったメイアのそばにいた。

ナイト・ガイのメンバーはみな緊張の面持ちだが、ジェノサスは違った。

彼は笑みを浮かべて、

「君たちがやろうとしていることはわかるよ。だが果たして上手くいくかな?」

そう呟くように言った。

構わずガイはジェノサスから視線を逸らすことなく一歩前に踏み出して上半身を少しだけ前へと傾ける。
ガイは旅の中で"クロード"の波動を見たことがなかった。
最初に会った時は遠距離型と言っていたが、それは定かでなはない。

そうガイが思考していると、先にジェノサスが動いた。
右手のひらをこちらに見えるように翳すかざす。

「そういえばこれは返しておかなければな。"反射リフレクト"」

ジェノサスの目の前に闇が広がった。
そこから飛び出した小さな物体は高速でガイ目掛けて飛んだ。

到達まで1秒にも満たない。
だが目を見開いて反応したガイは飛行体を持っていたスターブレイカーで切り裂く。
その感覚は石を切ったようなものだった。

瞬間、ガイの目の前で大爆発が起こり全員が爆炎に包み込まれた。

「ヴァンの波動石さ。だが、これで終わりだとは言わないだろ?」

ジェノサスは不適な笑みを浮かべた。
しかし、それはすぐに真剣な表情へと一転することになる。

爆炎を全て喰らい尽くすように巨大な水の龍が渦を巻く。
それは防御フィールドのようにナイト・ガイのメンバーを守っていた。

「ローラの波動か」

"関心"それが一番の感情だろう。
やはり親が子の成長を見ているような感覚だ。

「"蒼龍極海せいりゅうきょっかい"!!」

青髪が発光したローラは月の剣を振るう。
すると渦巻いた水の龍は咆哮をあげながら直線にジェノサスの方へと向かった。

「"無限収納インフィニティ・ストレージ"、同時に"反射リフレクト"だ」

水龍はジェノサスに到達すると同時に闇に消えていく。
さらにその隣に人間サイズの闇ができ、そこからローラの水龍が飛び出してきた。
向かう先はナイト・ガイの方だ。

「ちょっと、そんなの卑怯でしょ!!」

「ローラ下がれ!」

叫んでガイが前に出る。
その髪の色は燃えるように赤く発光し、さらに瞳の色も赤く染まった。
それだけでない、持っていたスターブレイカーも真紅になるとガイを中心として熱波が広がった。

「"六翼鳳凰ろくよくほうおう炎羽無限弾えんばむげんだん"」

ガイの正面で天井を破壊するほどの炎の竜巻が起こる。
竜巻の中にいた巨大な"炎の鳥"は六つの翼を大きく広げた。
すると翼から無数の細かい羽が射出されて放物線を描くようにして水龍へと向かう。

一つの羽が数十万単位の波動数値の弾と化し、水龍にぶつかると大爆発を起こしていく。
熱と衝撃によって水龍は瞬く間に水蒸気となった。

「凄まじい波動だ……ガイ……やはり君は……」

ジェノサスは言いかけると、すぐに目を見開く。
赤い絨毯に一線の炎が走り、一瞬にしてガイが目の前まで到達していた。
振り上げスターブレイカーには炎が纏い、重厚なソードのようだ。

「クロードォォォォォォォ!!」

「まだこれからだよガイ」

ニヤリと笑ったジェノサスの足元が黒くドロドロとした沼のようになる。
そしてガイの振り下ろしと同時に沼から漆黒の大剣が飛び出してガイの攻撃を弾いた。

「なんだと!?」

「そう簡単には僕には触れられないよ」

空中で仰け反ったガイ。
さらに黒い沼から巨体の黒騎士が姿を現し、大剣を振るってガイを後方へと吹き飛ばす。

数十メートル吹き飛ばされたガイを巨体の黒騎士はすぐさま床を蹴って追いかけた。
大剣を下に構え、絨毯を切り裂くように引きずる。

ガイはクロスガード体勢で浮いたままだ。

巨体の黒騎士はそんなガイに追いつくと、大剣を振り上げての斬撃を放とうとした。

その瞬間、カツン!という音が響き、"何か"が高速で巨体の黒騎士へと飛んだ。
"何か"は巨体の黒騎士に着弾すると大爆発を起こす。

後方へと空中を飛んでいたガイの下を潜るようにして人影が前に出た。

人影……いや、ヴァン・ガラードは爆炎の中に入った。

「邪魔なんだよ、てめぇは!!」

言って、熱波を放ち爆炎を勢いよく吹き飛ばす。
あらわになった3メートルはあろうかというほどの巨体の黒騎士。
近距離、ヴァンは右親指に置いた"波動石"をコインのように弾く。
一気にナックルガード付きの杖を振り、波動石を殴って相手の右脇腹へと叩き込む。
ズドン!という轟音は謁見室に響き渡り、巨体の黒騎士とヴァンは再び爆炎に包まれた。

さらに爆炎の中で数発の重い爆発音がする。
ヴァンの拳の連打だ。
衝撃によって巨体の黒騎士は吹き飛び、凄まじいスピードでジェノサスへ向かって飛んだ。

「ヴァン・ガラード、それは僕の武具だぞ、もっと慎重に使ってほしいものだな」

「てめぇの武具だからやるんじゃねぇか」

ジェノサスの前に闇が広がり巨体の黒騎士はその中に消えていった。


吹き飛ばされていたガイは、ちょうどミラとメイアの前に着地した。
見るとメイアの姿が少し若返っているように見える。

「無事なのか?」

「はい、終わりました。彼女は無事ですよ」

ミラは笑みをこぼして言った。
この言葉に安堵したガイはメイアの眠る顔見て笑みを浮かべた。

「よかった……」

「これで、あの男を倒せば全て終わります」

「ああ。"最大"でいくしかないだろうな」

言ってガイは玉座の前に立った男に鋭い視線を向けた。
反応するようにジェノサスは細目でメイアに視線をやる。
何かに気づいたのか頭上付近に闇が広がり、そこから光り輝く水晶が落ちてきた。
それはジェノサスの広げた手に落ちる。

「やはり"時"を戻したな。だとすると……」

水晶の中には"9"と表示されていた。

「全て戻ってきたか。どうやらここまでのようだ」

ジェノサスはため息をつく。
そして深呼吸すると同時に水晶を手を傾けて床に落とした。
水晶はドロドロとした沼のような闇に落ちて消えた。

「そろそろお別れといこうか。僕の持ってる"最強の手札"を見せるよ」

ジェノサスの頭上の闇は消えていなかった。
そこから次に落ちてきたのは"白銀の大剣"だった。
"白銀の大剣"は床に突き刺さって立つ。
その剣には龍のような模様が刻まれていた。

ガイ、ヴァン、ローラは息を呑んだ。
今までにないおぞましい気配がジェノサスから放たれている。

「何かヤバい!」

そう叫んだのはヴァンだ。
今、あの男を仕留めなければ恐らくこちらがやられる。
思考する間もなく、すぐにヴァンは行動した。
波動石を空中へと弾き、それを杖のナックルガードで殴って打ち出す。

高速で飛ぶ波動石だが、それ以上のスピードでジェノサスは全ての事を終えていた。

「闇に染まれ……"太陽の剣・フューチャーストラクション"」

床に突き刺さった白銀の大剣は漆黒に変化する。
そして一瞬にして謁見室は闇に包まれた。
壁、天井がどこにあるのかはわからない。
この場所が四角いのか、球体なのかも全くわからなかった。

ヴァンが打ち出した波動石は玉座だった場所の背後から現れた巨大な手に掴まれ、爆発すら起こさなかった。

腕の色は"銀色"……いや"黒色"……相対する色だが見分けがつかない。
それは黒銀の鱗と鋭い爪を持った腕だった。

「な、なんだ、あれは……」

「まさか……本物の竜なの?」

ガイとローラは唖然としていた。
ジェノサスの背後から闇を切り裂くようにして生まれ出たのは神話の中の存在だ。

「"魔竜王・インフィニット"……と言っても亡骸だけどね」

長い首と両腕だけ闇から出た"黒銀の竜王"は耳をつんざくほどの咆哮を放つ。

「残念だが遊びは終わりだ。この剣の名の如く、君たちの"未来"はここで破壊する」

そこに小細工などは何もない。
ジェノサスが言ったように、これが"最強の手札"で間違いないだろう。

恐らく、これが最後の攻防になる。
ナイト・ガイのメンバーはそれぞれ覚悟を固め、"魔竜・インフィニット"に向かい合った。
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