最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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秩序の牢獄編

サンドラ・ガンドッド

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コーブライド


ガイたちがギルドを出る頃には夕刻近くになっていた。
次の日に護衛対象を紹介するということは、今日その人物はギルドにはいないのだろう。

このまま3人は宿を目指すことにした。
ただ、この町にいるとされる秩序造物主オーダー・クリエイターなる者が気になる。
進むにしても慎重に歩かねばならない。

「それにしても秩序造物主オーダー・クリエイターとは一体誰なのかしら?なぜ、こんな依頼を?」

メイアが困惑しつつ口を開く。
依頼内容を聞くに、やっていることは確かに町のためではあるのはわかる。
しかし人間を消してしまう……というところまでいってしまえば、それもまた犯罪だろう。

「どこの町にも変な奴はいただろ。平和な町って言っても結局は問題を抱えてるんだよ。それに今回の俺たちの仕事は護衛だし。オーダーなんとかってやつは関係ないだろ。まぁ明日会う女性次第なんだけどさ」

「ガイの言う通りではあるが、秩序造物主オーダー・クリエイターが最後まで無関係とも限らない。もしかすれば一悶着あるかもね」

「それって、もしかして戦うってことか?」

「可能性はあるだろうね」

クロードの言葉にガイの緊張感は増した。
相手は目的が不明なだけでなく、どこの誰だかもわからない謎の人物だ。
現在、見ている町の状況や姿を消してしまった者たちのことを考えると気味が悪い。
ゾルア・ガウス以上の波動の使い手とはいかないにしても、何かしらの力を持っている可能性はあった。


そんな会話をして歩いていると、通りに数人の女性が輪を作って何かを取り囲んでいた。
住宅地を挟んだ道の真ん中でガヤガヤと黄色い声が聞こえる。

「なんの騒ぎでしょうか?」

「なんだよあれ、迷惑だな」

3人は少し離れて足を止めると輪の中心を覗き込んだ。
そこにいたのは車椅子に乗った男性と、それを後ろから押していた女性の2人だった。

男性は整った顔立ちで長めのブラウンの髪をオールバックにして固めてある青年だ。
女性の方はショートの黒髪に白いカチューシャ、短いスカートのメイド服を着用していた。

取り囲んでいた女性たちの顔はニコニコとした笑顔で、さらに赤らんでいるようにも見える。

「これ、私が作ったクッキーです!よかったら食べて下さい!」

「私もチョコレートを作って来たんです!よかったらどうぞ!」

「私も!サンドラ様のために足かけの毛布を編んできました!よかったら使って下さい!」

それぞれの女性がひっきりなしに男性に言い寄っている。
"サンドラ"と呼ばれた男性も笑みをこぼして口を開いた。

「みんな、ありがとう。ぜひ頂くよ」

また女性たちによって周囲が黄色い声に包まれる。
するとすぐにその声をかき消すが如く、ゴーンという鐘の音が町全体に響き渡った。

「ああ、そろそろ帰らないと」

サンドラと呼ばれた男性が言うと女性たちはみな行儀良くお辞儀して、その場を去って行った。

妙な光景だと思って見ていたガイたち。
そんな3人に気づいたサンドラがにこやかに微笑むと声をかけてきた。

「やぁ君たち!見ない顔だね。最近、この町に来たのかな?」

突然のことで声が出ないガイとメイア。
一瞬だけ間をおいてからクロードが返答する。

「ええ。ついさっき到着したんですよ」

「へー。冒険者かな?」

「そうですよ」

「いいなぁ。私も旅なんてしてみたかったが生まれた時からこの足だから自由に動けなくてね。ああ申し遅れた。私の名は"サンドラ・ガンドッド"。この町の領主を勤めている」

サンドラは笑顔で言った。
ガイとメイアは無言で驚くが、クロードは違った。

「僕はクロード。彼らはガイとメイアだ」

「へー。六大英雄の名とは光栄だね。そうだ、"パメラ"、君も挨拶を」

サンドラは回らぬ首で背後に立つ女性に促した。
すると女性は無表情で淡々と言う。

「パメラと申します。ガンドッド家に支えております。"執事兼"、"メイド長兼"、"料理長兼"、"御者兼"、"庭師"です。以後お見知り置きを」

ガイとメイアは唖然とした。
ここまで職の肩書きが長い人間は聞いたことがない。
そんな2人に構うことなく笑顔のサンドラは続けて、

「この美しい町を楽しんでくれ。私のおすすめは町の中央の時計塔だ。先代が建てたものでね。真下から見ると圧巻さ」

「日が暮れる前に見に行ってみるよ」

「是非そうしてくれ。私はこれで失礼する。君たちとはまた会えそうだね」

「いや、僕たちは明日この町を出るんだ」

「そうなの?それは残念。気をつけて旅をすることだ」

「ええ。お気遣いありがとう」

サンドラとパメラは通り過ぎるようにして、その場を後にする。
クロードは去り際まで2人を鋭い眼差しで見ていた。

そしてナイト・ガイのメンバーは宿へ向かう前に、サンドラが言っていた町の中央にあるという時計塔に歩みを進めた。
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