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エターナル・マザー編
ダーク・ナイツ戦(4)
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上空、日が中央にあった。
額から汗が自然と滴るような暑さの中、石造りのステージの上に立つ2人。
間は距離は数百メートルといったところ。
そんな2人に送られる観客からの声援が最高潮に達する。
お互い動かずにいた。
黒い鎧の男、ルガーラから告げられた"闘気"の真実に息を呑む少年ガイ。
"未来を予測できる能力"
波動とはまた違った力がこの世界には存在していた。
そしてガイは無意識のうちに"それ"を使っていたのだ。
確かにスペルシオ家でゼニアと戦った時もそうだった。
ゼニアの渾身の拳が直撃しても多少の傷で済んだ。
旅を始めて、どの時点から自分はそんなことができるようになっていたのかはわからないが、確実に"闘気"と呼ばれる存在は自分を守ってくれていると実感できた。
だが、ガイの闘気は防御へと向けられるもの。
闘気の存在がわかったところでルガーラの"未来予測"の能力に立ち向かえるものではない。
ガイはただ背中にクロスで差したダガーを両手を引き抜き前に構えるだけだ。
そして、第三回目の攻防が幕を開ける。
「……!!」
ガイは走り出した。
その凄まじいスピードは一気にルガーラとの距離を縮める。
ルガーラは左拳を前へ、右拳を腰に構えた姿勢を崩すことはない。
「何の考えも無しに突っ込んでくるとはね。同じことの繰り返してだと思うが」
「あいにく考えてもわからないことは、考えないようにしてる。俺は"感覚"でしか判断できない!」
「なるほど。それが、この闘気操作に繋がってるのか」
ルガーラの目の前に到達したガイ。
放たれたのは両手に持ったダガーによる連続の斬撃だ。
闘気で相手の動きがわかったとしても、回避できないほどの連続攻撃であれば……ガイは即座にそう思考していたのだ。
ルガーラは少し後ろへと引き、ガイが前へ踏み込むたびにそれを繰り返した。
「考えてないようで、考えてるじゃないか」
ルガーラは笑みを溢して感心する。
ガイが放つ連斬は回避が困難なほどのスピードだ。
それが確実にルガーラの体へと近づく。
「これでどうだぁぁぁぁ!!」
「面白い少年だ……若い頃を思い出す」
ルガーラはそう言うと、後ろに飛び引いていた行動をやめた。
そしてガイの連撃に合わせて、左拳の高速二連ジャブ。
闘技場に高い金属音が二度響き渡った。
ガイは何故かバンザイする形で仰け反っていた。
「な、なんだと!?」
「ルザール拳法、"スーパー・ダイナミック・ショット"。……そして、これで終わりだ」
ルガーラは背負った大剣のグリップを握る。
そして一気に引き抜くと両手持ちで下に構え、地面に擦り付けるように大剣の刃をガイへ向かわせる。
「ルザール剣術……"烈剣・地爪斬"!!」
高速の斬り上げ攻撃だった。
拳の連撃から斬り上げ攻撃前までの時間はわずか数秒。
常人であれば対応など不可能なレベルだ。
だが、ガイは即座にダガーで十字を作って斬り上げ攻撃に対処した。
あまりの衝撃にダガーにヒビが入る。
ガイはそのまま空中に打ち上げられた。
「凄い反応だな。もしかしたら無意識ではあるが他人の闘気を認識できているのかもしれんな」
ルガーラは必要であれば追撃を……と思考して上空を見た。
強い日差しで目を細める。
その時、何か黒い点が見えたと思った瞬間、肩に衝撃と激痛が走る。
後から、轟音が右耳に響き、異常なまでの耳鳴りにルガーラは苦痛の表情を浮かべた。
「がはぁ……なんと……!!」
右肩の漆黒に模られたショルダーアーマーが砕けた。
その後、後方に何かが着地した。
「やっぱりそうだ……ローラの話を信じた俺がバカだったよ」
背後からの声だ。
その言葉に右肩を押さえて振り向くルガーラ。
そこにいたのは少年ガイだった。
「"闘気を感じる"って意味がわからなった。感覚的なものなら俺だってわかるはず。でも俺は全く感じなんだ。なおさら闘気の存在を知ってても、それを全く使えない人間が対策なんてできない。"感じる"なんて曖昧なものに対して、あんたの師匠は対策なんてしようがないんだ。もっと確実な何かがあった」
「……」
「あんた、"見えてる"んだろ?人間の体から出てる闘気が」
そう言ってガイは持っていた両手に持ったダガーを両方投げ捨てる。
ダガーの刃は完全に砕けていた。
「見てるなら、見えない場所から攻撃したらいい。あんたの師匠もそうしたんじゃないか?」
「御名答。だが、なぜ私が"斬り上げる"と?」
「わからない。何故かそんな気がしたんだ」
ガイの言葉にルガーラはニヤリと笑った。
そして目を閉じて深呼吸すると静かに口を開いた。
「……私の負けだ」
「え?」
「肩の骨が砕けてる。これ以上は続けられない」
ルガーラが審判の方に視線を送り頷く。
そのアイコンタクトを受け取った審判も頷き返した。
「勝者、ガイ!!」
審判の叫びに闘技場が大いに沸いた。
ルガーラは肩を押さえながらもガイに近づいた。
「いやぁ、素晴らしいバトルセンスだ。同じパーティリーダーとして仲良くしよう」
ガイに向かってニコリと笑ったルガーラはそう言ってステージを降りた。
ガイの手は途端に震え出す。
相手は自分よりも数段格上であることは間違いない強敵だった。
そんな相手に勝利を収めたという実感が無いまま、ガイもステージを降りるのだった。
額から汗が自然と滴るような暑さの中、石造りのステージの上に立つ2人。
間は距離は数百メートルといったところ。
そんな2人に送られる観客からの声援が最高潮に達する。
お互い動かずにいた。
黒い鎧の男、ルガーラから告げられた"闘気"の真実に息を呑む少年ガイ。
"未来を予測できる能力"
波動とはまた違った力がこの世界には存在していた。
そしてガイは無意識のうちに"それ"を使っていたのだ。
確かにスペルシオ家でゼニアと戦った時もそうだった。
ゼニアの渾身の拳が直撃しても多少の傷で済んだ。
旅を始めて、どの時点から自分はそんなことができるようになっていたのかはわからないが、確実に"闘気"と呼ばれる存在は自分を守ってくれていると実感できた。
だが、ガイの闘気は防御へと向けられるもの。
闘気の存在がわかったところでルガーラの"未来予測"の能力に立ち向かえるものではない。
ガイはただ背中にクロスで差したダガーを両手を引き抜き前に構えるだけだ。
そして、第三回目の攻防が幕を開ける。
「……!!」
ガイは走り出した。
その凄まじいスピードは一気にルガーラとの距離を縮める。
ルガーラは左拳を前へ、右拳を腰に構えた姿勢を崩すことはない。
「何の考えも無しに突っ込んでくるとはね。同じことの繰り返してだと思うが」
「あいにく考えてもわからないことは、考えないようにしてる。俺は"感覚"でしか判断できない!」
「なるほど。それが、この闘気操作に繋がってるのか」
ルガーラの目の前に到達したガイ。
放たれたのは両手に持ったダガーによる連続の斬撃だ。
闘気で相手の動きがわかったとしても、回避できないほどの連続攻撃であれば……ガイは即座にそう思考していたのだ。
ルガーラは少し後ろへと引き、ガイが前へ踏み込むたびにそれを繰り返した。
「考えてないようで、考えてるじゃないか」
ルガーラは笑みを溢して感心する。
ガイが放つ連斬は回避が困難なほどのスピードだ。
それが確実にルガーラの体へと近づく。
「これでどうだぁぁぁぁ!!」
「面白い少年だ……若い頃を思い出す」
ルガーラはそう言うと、後ろに飛び引いていた行動をやめた。
そしてガイの連撃に合わせて、左拳の高速二連ジャブ。
闘技場に高い金属音が二度響き渡った。
ガイは何故かバンザイする形で仰け反っていた。
「な、なんだと!?」
「ルザール拳法、"スーパー・ダイナミック・ショット"。……そして、これで終わりだ」
ルガーラは背負った大剣のグリップを握る。
そして一気に引き抜くと両手持ちで下に構え、地面に擦り付けるように大剣の刃をガイへ向かわせる。
「ルザール剣術……"烈剣・地爪斬"!!」
高速の斬り上げ攻撃だった。
拳の連撃から斬り上げ攻撃前までの時間はわずか数秒。
常人であれば対応など不可能なレベルだ。
だが、ガイは即座にダガーで十字を作って斬り上げ攻撃に対処した。
あまりの衝撃にダガーにヒビが入る。
ガイはそのまま空中に打ち上げられた。
「凄い反応だな。もしかしたら無意識ではあるが他人の闘気を認識できているのかもしれんな」
ルガーラは必要であれば追撃を……と思考して上空を見た。
強い日差しで目を細める。
その時、何か黒い点が見えたと思った瞬間、肩に衝撃と激痛が走る。
後から、轟音が右耳に響き、異常なまでの耳鳴りにルガーラは苦痛の表情を浮かべた。
「がはぁ……なんと……!!」
右肩の漆黒に模られたショルダーアーマーが砕けた。
その後、後方に何かが着地した。
「やっぱりそうだ……ローラの話を信じた俺がバカだったよ」
背後からの声だ。
その言葉に右肩を押さえて振り向くルガーラ。
そこにいたのは少年ガイだった。
「"闘気を感じる"って意味がわからなった。感覚的なものなら俺だってわかるはず。でも俺は全く感じなんだ。なおさら闘気の存在を知ってても、それを全く使えない人間が対策なんてできない。"感じる"なんて曖昧なものに対して、あんたの師匠は対策なんてしようがないんだ。もっと確実な何かがあった」
「……」
「あんた、"見えてる"んだろ?人間の体から出てる闘気が」
そう言ってガイは持っていた両手に持ったダガーを両方投げ捨てる。
ダガーの刃は完全に砕けていた。
「見てるなら、見えない場所から攻撃したらいい。あんたの師匠もそうしたんじゃないか?」
「御名答。だが、なぜ私が"斬り上げる"と?」
「わからない。何故かそんな気がしたんだ」
ガイの言葉にルガーラはニヤリと笑った。
そして目を閉じて深呼吸すると静かに口を開いた。
「……私の負けだ」
「え?」
「肩の骨が砕けてる。これ以上は続けられない」
ルガーラが審判の方に視線を送り頷く。
そのアイコンタクトを受け取った審判も頷き返した。
「勝者、ガイ!!」
審判の叫びに闘技場が大いに沸いた。
ルガーラは肩を押さえながらもガイに近づいた。
「いやぁ、素晴らしいバトルセンスだ。同じパーティリーダーとして仲良くしよう」
ガイに向かってニコリと笑ったルガーラはそう言ってステージを降りた。
ガイの手は途端に震え出す。
相手は自分よりも数段格上であることは間違いない強敵だった。
そんな相手に勝利を収めたという実感が無いまま、ガイもステージを降りるのだった。
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