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英雄達の肖像編
青の覚醒
しおりを挟む荒野、天候は曇り空だった。
雨は重力の影響を受けて地面に落ちていたが、1人の女性の"圧"によって雨粒は空中で停滞する。
恐れなのか……ブルブルと雨粒たちは空中で震えていた。
メリル・ヴォルヴエッジは雨に濡れ、額からそれが滴る。
目に入りそうになるが、瞬きすら許されない状況にあった。
正面からゆっくりと歩いて来る存在。
ローラ・スペルシオから目が離せない。
両腕のガンドレットはゼニアのもので間違いない。
何よりも髪の色が発光し、今までに見たこともないほどの鋭い眼光でメリルを睨んでいる。
ローラから一瞬でも目を背けてしまったら噛み殺される……そんな恐怖心にかられていたのだ。
「なぜ……ここにいる……」
メリルはそう呟くことがやっとだった。
硬直した体をなんとか動かして剣を前に構える。
「手紙をもらったのよ。励ましの手紙をね」
「励ましの手紙?」
「ええ。たった二行の手紙。"犯人はメリル・ヴォルヴエッジ"。"北西の荒野で戦闘中"と」
それはクロードがメイアを介して送られた手紙だった。
この状況になる前に渡されたものだが、クロードという男は完全にこうなることを予測して、手紙をローラへと送っていた。
「あの男の差し金か……」
「そうね。まさかこんな状況になってるなんて」
距離が数十メートル離れ、向かい合う2人。
メリルの足元に倒れるガイは意識を失っていた。
「この男の首を刎ねられたくなければ、ガンドレットを外して捨てなさい。そして、ここから立ち去るのよ」
「あたしが去ったらガイを殺す気でしょう。その手には乗らないわ」
「だけど……この状況はあなたが不利だと思うけど」
メリルはニヤリと笑う。
人質が2人もいる状況で、ローラには為す術など無いと思っていたのだ。
「どうかしら?あたしは怒ってるのよ。メリル!!」
その瞬間、空中で停滞していた雨粒が落ち始めた。
さらに強く土砂降りの雨が降り、それは目を開けていられないほどだ。
「く!!」
「水蓮拳……」
ローラは肩幅に足を開くと、両拳を正面で力強く打ちつける。
甲高い金属音が周囲に響き渡ると、ガンドレットに付いた波動石が青く光り輝く。
「"青龍極海"」
ローラの言葉に反応するように、大竜の咆哮のような轟音が鳴る。
ローラとメリルを囲むように大量の水が渦をなして、2人が立つ中央へと迫っていく。
渦の形は二頭の水龍のようだった。
水龍の渦はローラとメリルを巻き込んだ。
あたりは一面、水中と化し、メリルは浮きじめる。
地面に倒れていたガイはどこかに流され、姿を消していた。
「がはぁ……い、息が……」
メリルの悲痛な表情。
首元を押さえて、その苦しみに耐える。
手足を動かすも水中だと自由が効かない。
「苦しいでしょう。お姉様と同じ気持ちを味わってから、これを食らうがいい!!」
ローラは水中にいても地に足をつけていた。
右足を下げ、左手を前、右手を腰に構える。
重心は中央に置き、ゆっくりと息を吐いて筋肉を引き締めた。
「ク……ソ……意識が……」
メリルは意識を失いそうになるが、そんな中でも、目の前に立つローラの動きを見ていた。
その動きは完全にゼニア・スペルシオ。
ローラは下げた右足から前へ流れるように重心を移動させ、前に出した左足に一気に乗せる。
そして右拳を勢いよく地面に打ちつけた。
「"デッドリー・インパクト"!!」
地面に一線の亀裂。
その"衝撃"が音も無くメリルへ高速で向かい激突する。
瞬間、水面も一直線に割れて、全ての水が時間差で周囲に吹き飛んだ。
「ゼニアお姉様……仇は討ちました……」
ローラがそう呟くと、ガンドレットに付いた波動石が粉々に砕け散った。
メリルは地面を転がり、仰向けで止まる。
意識はかろうじてあった。
上に着たワイシャツはボロボロではだけ、ブラウンのパンツはところどころ破ける。
右の肩から骨盤が折れ、右足はあらぬ方向に曲がっていることは、少し頭を働かせただけでわかった。
雨は小降りに戻っていた。
止むことのない雨はメリルの神経を刺激し続けて気を失うこともできない。
「がはぁ……コリン……私は……」
涙なのか雨なのかわからないが、水滴が目元から流れ落ちるのを感じると同時に、ついにメリルは激痛に耐えられずに気を失った。
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双水龍
一の龍水 ???
二の龍水 青龍極海(敵を水の牢獄で拘束する)
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