最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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リア・ケイブス


宿の一室にメイアがいた。
ベッドに横になっていたのはローラだ。

昼前頃になって、ようやく目を覚ましたローラ。
虚な目で天井を見る。
少し間を置いて、ようやく自分が無事であることがわかった。

「ローラさん。よかった!」

「メイア……ごめん……あたし、迷惑かけちゃったね」

「いえ、いいです。それよりも無事でよかった」

メイアの笑顔にローラは泣きたくなる。
歯を噛み締めて、それに必死に耐えた。
家族でも、姉以外に優しくされたことはない。
女学校時代もそう。
家柄が大きいのに"低波動"の彼女には友達なんておらず、学生時代は、ただひっそりと地味に過ごしていた。

「一緒に行けて凄く楽しかった、でも……あたしがいたら迷惑よね」

「そんなことは……」

「いいのよ、メイア。あたしはまた一人で旅をする」

そう言ってローラはメイアに背を向けるように横になる。
メイアはどうしていいのかわからなかった。
ただ、これ以上、話をすればローラはさらに傷つくのではないかと思った。
幾分か思考したのち、メイアは立ち上がると部屋を後にした。


____________



メイアが宿の外へ出ると、ちょうどガイとクロードが帰って来た時だった。

2人はメイアの悲しそうな表情を見て顔を見合わせた。

「メイア、どうしたんだ?」

「ローラさん、目を覚ましたんだけど……また一人で旅をするって」

「そっか……」

ガイは少し寂しいと感じていた。
短い間ではあったが、一緒に戦った仲間には違いない。

そんな中、クロードが少し考えて口を開く。

「理由はなんと?」

「迷惑かけるからって」

「なんだ、そんなことか」

クロードが、ため息混じりに苦笑いすると、宿の中へ向かおうとしていた。

「どうするつもりだよ」

「彼女をパーティに誘う。君たちはギルドへ報告へ行ってくれないか」

「え……だけど、ローラは戦えないんだぞ」

「戦いなんて場数さ。それに彼女は"ワイルド・ナイン"だ。必ず強くなる」

クロードは笑みをこぼすと、宿へ入っていった。
取り残されたガイとメイアは仕方なく2人でギルドへと報告へ向かった。


___________



ギルドに到着したガイとメイアは受付カウンターへと向かった。
そこにはマーリン・バーベッチだけがいた。

ガイが東の湿地帯で何があったのか説明する。
それを無表情で聞くマーリン。
頷くこともない、その姿に困惑しつつも、説明を続けた。

「というわけで、盗賊には逃げられたし、デレクはもう死んでたよ」

「……そうですか。では、依頼は未達成ということで」

表情を一切崩す事のないマーリンに対して不気味さを感じつつ、2人はギルドを後にしようと入口へと向かう。
その際、ガイが少しだけ振り向き、マーリンの姿を確認する。

この時、マーリンは"俯き、体を震わせていた"。

それは悲しみによるものなのだろうとガイは思いつつ、ギルドを後にするのだった。



____________




ある大雨の日のこと。

早朝、日も出ないうち、オクトー・ランヴィスターの自宅に来客があった。

軽いノックの音が聞こえると、この家に雇われている老婆は、すぐに玄関へと向かった。

「はいはい」

そう言って玄関ドアを開けると、そこに立っていたのは雨よけのマントを羽織るショートカットのブロンド女性だった。

「これはこれは、マーリン様。こんな朝早くから……中へどうぞ」

「いや、ここで」

「はぁ……どうされましたか?」

「昨日、妙な駆け出しの冒険者が来て、"ミル・ナルヴァスロ"のことを聞いてきた」

「なんと……」

「もしかしたら、この場所を訪れるかもしれない。警戒は怠らぬよう。誰が来ても絶対に2階には行かせるな」

「かしこまりました」

そう言って老婆は頭を下げた。
マーリンはそれだけ告げると雨の中、足早にギルドへと向かった。


マーリンがギルドへ到着しそうな頃、見慣れぬ男2人が"動く何か"を抱きかかえて建物の間へと入って行った。

最初は無視しようと、そのまま通り過ぎようとした。
だがマーリンは男たちの抱えていたものが気になり、腰に下げた武具である"鉄球"を手に取ると、建物の間へと向かった。
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