最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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霧の中の戦い

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リア・ケイブス
北東入り口


ガイ、メイア、クロードは東の湿地帯に向かうため町から出ようとしいた。

北東の入り口付近に辿り着くと、見覚えのある人物が腕を組んで仁王立ちしていた。

「来たわね」

「また、お前かよ」

そこにいたのは青色のショートヘアの女性。
白いローブに下は、こちらも白のキャミソールと青のホットパンツ、腰にはレイピアを差している。

「あなた達、湿地帯に向かうんでしょ?このローラ様が、ついて行ってあげようじゃないの!」

「いいよ別に」

「なんでよ!?」

呆れた様子のガイは即答だった。
そのやり取りに唖然とするメイア。
クロードは無表情だったが、彼女が首から下げた"濃い青色の波動石"に目をやった。

「戦力が多いに越したことはないさ。パーティも賑やかな方が楽しいだろ?」

「はぁ?何を今さら言ってるんだよ」

「彼女の波動石の濃さは今までに類を見ないほどだ。僕が見るに相当な手練れだろう」

「え?」

「え?」

クロードの言葉に驚いたのはガイだけでなく、ローラもだった。
なぜか冷や汗をかきながら、あさっての方向を見ながら音が微妙に鳴らない口笛を吹く。

「波動石の色を見たところ、"水の波動"を使うんじゃないか?」

「え?ええ。そ、そ、そ、そうよ!み、み、み、水の波動の使い手よ!!」

「なんで、動揺してるんだよ」

「してないわよ!!」

ガイとローラのやりとりを見ていたメイアは少し笑った。
クロードも苦笑いし、すぐに口を開く。

「それで?行くのかい?」

「行くわよ!!」

こうしてガイ、メイア、クロード、ローラのパーティは東の湿地帯へ向かうのだった。


____________



湿地帯には徒歩一時間ほどで到着した。

昼間にも関わらず濃い霧が立ち込めている。
木々は等間隔で立ち、草花が一面に生えていいた。
地面は歩くと沈むほどに湿っている。

「魔物の気配を感じるな」

「やっぱり、いるのか……」

「前衛はガイとローラ、後衛は僕とメイアでやる」

「了解」

「え?私も前衛?」

「君の腰の剣を見れば、誰でも前衛だと思うけどね」

「え、ええ。そうよ!任せなさいって!」

強がりにも思えるローラの発言に一同眉を眉を顰めつつも、ため息混じりのガイは前に出る。
それにローラが続いた。
後方にはクロードとメイアが背後も警戒しつつ前に進んだ。

道自体は木材を切った板が一本道を作っていたため迷うことは無く、ただひたすらに、その道を歩くだけだった。

霧の中、ある程度進むと、ガイ達の足音ではない何かが、周囲に聞こえ始める。
それはカサカサとゆっくり近づいてくるようだ。

「気をつけろ。魔物だ」

クロードのその言葉にガイとメイアの緊張感は増した。

ガイは両腰と両太ももににダガーを差していおり、左腰のダガーを引き抜くと逆手に持って前に構えた。
それを見たローラは首を傾げる。

「なんで、そんなにダガーいっぱい持ってるの?ダガー好きなの?」

「これには事情があんだよ!」

「なによそれ」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

「いいじゃない、教えてくれたって」

ガイとローラは相変わらずで、その様子を見ていたメイアは呆れている。
だが逆に、いつも冷静なクロードは、この時ばかりは声を荒げた。

「前から来てるぞ!油断するな!」

ガイとメイアの数十メートル先に黒い影が2つあった。
霧をかき分けるように、だんだんと近づく、それは人間ほどの大きさだった。

「な、なんだあれは……」

「シザーマンティス!?」

それは真っ黒な体の"カマキリ"だった。
4本の足と、両腕は鋭い鎌のようになっている。
人間ほどの大きさというのもあるが、両腕の鎌を研ぐようにして擦り合わせる動作は不気味だった。

「レ、レ、レ、レベル4の魔物!?これは流石に……」

動揺するローラをよそにガイは前に出る。

「メイア!援護を頼む!」

「ええ!」

ローラは絶句した。
この湿地帯に、ここまでのレベルの魔物が生息していたのもそうだが、それ以上にルーキーにしか見えない少年ガイと少女メイアの勇ましさに言葉を失ったのだ。

だが瞬間、ローラはハッとする。
ある重要なことに気づいてしまった。

「ちょっと待って!あんた低波動でしょ!7じゃ波動使えないじゃな……」

そう言いかけた時、ガイの姿に違和感があり、ローラは眉を顰める。
ガイの赤髪が少し発光しているように見えるのだ。

「あんたも戦うんだろ!」

「え、ええ!」

ローラはすぐに腰のレイピアを抜き、前に構える。
剣を持つ手は心なしか、少し震えているようだった。

その行動が戦闘開始の合図だと感じた、二体のシザーマンティスはカサカサという音と共にガイとローラに近づく。

ローラは後退りするが、ガイは違った。

一歩前に足を踏み出すと、そこに体重をかける。
逆手持ちしたダガーを前に構え、一気にダッシュした。

「な、なんで、あんたも走るわけ!?」

驚くのも束の間、後方からローラの横を"熱の塊"が猛スピードで通り過ぎる。
それは大きな炎の球体で、ガイをも通り過ぎると、一体のシザーマンティスに着弾した。

ドン!と鈍い音と共に、瞬く間に火炎に包まれたシザーマンティスは悶え苦しんでいるようだ。

だが、それに構うことなく、もう一体のシザーマンティスが大きな腕の鎌を振り上げ、ガイに襲いかかった。

ガイのダガーによる横斬りと、シザーマンティスの鎌の振り下ろしがぶつかり、甲高い金属音が周囲に響き渡る。

「援護を!!」

「あ、あたしは……」

ここで前衛の連携があれば容易にシザーマンティスは討伐できる。

だが、ローラは踏み出すことができなかった。

「何やってる!!その波動石は飾りか!!」

「……」

ガイが少し振り向き、ローラの顔を見ると、その表情は悲しみに満ちているようだった。

「メイア!!クロード!!」

「すまない、後ろからも二体来た」

「クソ!!」

ガイのダガーを持つ手は限界だった。
シザーマンティスもそれを見抜いてか、ガイの横腹に、もう片方の鎌を打ちつける。

「がは!!」

その衝撃でガイの体は簡単に吹き飛び、霧の中へ消えて行った。
飛ばされたガイを追いかけるようにシザーマンティスも霧の中へ入っていく。

「そ、そんな……」

涙目のローラは、メイアとクロードに助けを求めようと振り向くが、そこには2人の姿は無い。
恐らく援軍で来た二体のシザーマンティスの相手ではぐれたのだろうと思った。

ただ1人、取り残されたローラは恐怖で足が震え、動けなくなってしまうのだった。
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