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武具
しおりを挟むカレアの町
ギルドを出たガイとメイア、クロードの3人は武具屋に向かった。
ここから少し長旅になる。
その前に装備を新調しておこうと話し合っていた。
ギルドを出る頃には昼前になっていた。
町は露天商が店を出し、そこに買い物客が大勢歩いている。
そんな人混みをかき分けながら3人は武具屋を目指していたのだった。
「そういえば、俺のダガーは……」
向かっている最中、思い出したようにガイが呟く。
隣を歩くメイアは杖を持っているが、気づくと自分は武器無し状態だった。
「ああ。一応、預かっていたよ」
そう言って、ガイの前歩くクロードがボロボロのマントの懐に手を入れるとごそごそと探った。
そこから取り出さられたのは刃の部分がグニャグニャに曲がり焼け焦げたダガーだった。
「なんだよ、これ……。お前、俺のダガーになにしやがった!」
「落ち着けガイ。これは、お前がやったんだ」
「どういうことだよ」
「君の波動量が多すぎて、このダガーに装着してあった波動石が耐えられなかった」
「え?」
「君の波動は特別だ。普通の武具だと耐えられない。一度、波動を通せば、どんなにデカい武具でもこうなるだろう」
「じゃあ、どうするんだよ……」
「一応、報酬の三万ゼクがある。これで君の武具を買いまくる」
ガイは言葉を失った。
自分の波動の対策が、武具の買い占めとは思いもよらなかった。
「他に方法はないのかよ」
「今はこれでいくしかないだろう」
「今は?」
「ああ。次の目的地に、もしかしたら打開策があるかもしれない」
ガイとメイアは顔を見合わせた。
それは先ほどギルドでの話に繋がるのだろうと2人は思った。
「さっきのギルドでの話か?なんで勝手に目的地決めるんだよ」
「ガイ、またそんな言い方は」
「メイアもいい子ぶるなよ。何考えてるのか教えもせずに勝手に決められてるんだぞ」
「話すつもりだったさ。なにせこのパーティのリーダーは君だ」
そう言って笑みをこぼすクロードだが、ガイは細目で睨んでいた。
まだ、ガイはクロードという男を信用していなかったのだ。
「単刀直入に言うが、恐らく次の町、リア・ケイブスのギルドマスターは低波動。つまりワイルド・ナインだ」
「なんだと?」
「噂で聞いたんだ。その町のギルドマスターが所持している武具はロイヤル・フォース。六大英雄の武具だろう」
「マジか……。だけど、それが俺の波動と、どんな関係があるんだ?」
「君の波動量に耐えられる武具はロイヤル・フォースだけだ。もしリア・ケイブスにそれがあるとするなら見に行く価値はある……と思ってね。武具が君に適合する物なら入手したい」
「なるほどな」
ガイは理屈は理解できた。
クロードは、まず武具を入手することを最優先とし、そこから波動の使い方を徐々に教えていこうとしている……そう思った。
「まぁ、それだけじゃないけどね」
「どういうことだよ?」
「ロイヤル・フォースがあるってことは、僕が探している人間が近くにいるかもしれないってことさ」
「裏切り者……」
メイアが"信じられない"と言った様子で呟く。
自分が今まで聞いていた六大英雄のお話は偽りだったのかと思うと悲しくなった。
「リア・ケイブスのギルドマスターは剣の達人と聞いている。とういうことは所持している武具は恐らく"月の剣グロウ・ゼル"。六大英雄ミル・ナルヴァスロの剣だ」
「それって、あの美剣士の……」
"ミル・ナルヴァスロ"は六大英雄のお話に出てくる剣士だ。
それは誰が見ても美男子で、しかも優しい青年剣士という逸話があった。
このお話に出てくる六大英雄の中でも、女の子なら特に意識したキャラクターだった。
「まぁ……確かに顔はいいが……性格に難がある。会いたくは無いが、その町のギルドマスターがミルって可能性もあるからな」
「え?」
「あいつが裏切り者だとは到底思えない。だが万が一ってこともあるからね。とにかく買い出しを済ませて北東を目指そう。長旅になるぞ」
「ああ」
こうして3人は買い出しを済ませることにした。
ガイはダガーを数本買い込み、装備も少し見直した。
さらに食料を買い出しを終わらせ、宿で一泊する。
ガイとメイアは、この旅に乗り気ではなかったものの、それでも"まんざら"でもなかった。
新しい出発と冒険に興奮していたのだ。
こうして最速で冒険者ランクをDまで上げた3人は北東にある町。
リア・ケイブスを目指すのだった。
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