最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ

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報酬

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カレアの町 ギルド


早朝。
ガイとメイア、クロードがギルドに入ると、そこにいた冒険者達の注目を集めた。

この建物内に入るだけで笑われていた3人を笑う者はもういなかった。

それどころか、3人が奥のカウンターへ歩くと、立っていた冒険者達は道を開けるほど。

そしてヒソヒソと冒険者達は会話する。
あの討伐依頼を達成したことが、みな信じられなかったのだ。

「あいつら、ほんとに倒したのか?」

「ああ。森まで確認しに行ったらしい。戦闘した後が残ってたってさ」

「なんでも、地面が一直線に抉れて、燃えた跡があったってさ。どんな戦闘したらそうなるんだ?」

三日前まで嘲笑っていた冒険者達は、3人の姿を見て息を呑む。

そんな中、カウンターの少し前で、3人の道を阻むようにスキンヘッドの大男が立った。

「お前ら」

「な、なんだよ」

スキンヘッドがガイを睨み、後方に立つクロードに目をやった。
クロードの表情は冷ややかだ。

「無事でなによりだ」

ただそれだけを、ため息混じりに言うと道を開けた。

3人はカウンターへ向かう。
カウンターにいたのはジェシカだった。
3人の帰還を喜ぶように、目に涙を溜めつつも笑みを溢す。

「お疲れ様でした!」

「報酬を貰いに来た」

クロードがそう言うと、ジェシカの笑顔が消える。
そして神妙な面持ちで口を開いた。

「そのことですが、ギルドマスターがお会いしたいそうです」

その言葉に3人は顔を見合わせた。
3人はジェシカに案内され、2階にあるギルドマスターがいる部屋へと通された。

部屋は中央にテーブル、向き合うようにソファが置かれていた。
ソファに座っていたのは白髪の老人。
ギルドマスターのノーマンだ。
3人はジェシカの案内で、ノーマンの向かい側のソファへ。
ガイとメイアが座り、クロードはその後ろに立つ。
ジェシカはノーマンが座るソファの後ろに立った。

最初に口を開いたのはノーマンだった。

「まさか、ルーキーが本当にやってのけるとはな。かなり強力な魔物だ。それを、たった三人で討伐するとは」

「俺たちは運がよかったんだ。それにクロードがいなければ死んでた……」

「クロード?」

ノーマンは眉を顰める。
そして気づいたように、ガイの後ろに立つ青年に目を向けた。

「六大英雄の一人の名を持つのか」

「たまたまさ」

「"クロード"は魔王にトドメを刺した、六大英雄で最強の男との逸話だ」

「……」

ノーマンの話を聞いてガイとメイアは驚く。
この世界に住む人間なら六大英雄の名前は知っている。
だが、その功績を知るものは少ない。
なにせ存在すら疑われる者たちだ。

「そんなことはどうだっていいだろ?僕達は報酬をもらいにきた」

「ああ。そうだったな」

ノーマンはジェシカに大きな鞄を持って来させた。
その中を開けると大金が入っており、それを見たガイとメイアは目を丸くした。
今まで見たこともないような金額だった。

「そして、ランクも2つ上げる。3人ともFランクからDランクへ」

「こ、こんなに早くDランクになれるなんて……」

「ワシが知る限り最速だろう。これで入れる町が増える。次はどこの町に行く気だ?すぐに移動するんだろ?」

「ああ。僕たちは"リア・ケイブス"へ行く」

それを聞いたノーマンとジェシカは唖然する。
開いた口が数秒ふさがらなかった。
その様子を見たガイとメイアは首を傾げた。
2人は"リア・ケイブス"という町を知らない。

「冗談だろ?」

「いや、本気さ」

「あの町で冒険者をやることがどういうことかわかって言ってるのか?」

「わかっているさ。あそこのギルドマスターのことも噂で聞いてる」

「そうか……」

クロードとノーマンの会話についていけないガイとメイア。
だが、ここでの会話はこれだけだった。


ガイ達3人が部屋を後にすると、ノーマンとジェシカが神妙な面持ちでいた。
彼らが向かおうとしている町は駆け出しの冒険者が行くような場所ではない。

「あそこのギルドマスターのことを知ってて行くとは……何がしたいんだ?あのクロードという男」

「オクトー・ランヴィスターでしたか。元Aランク冒険者の"氷狼のオクトー"」

「ああ。冒険者時代のオクトーのことを知っている者は、あの町には絶対に行かないだろう。あの町のギルドでランクを上げることは不可能に近い」

「ですが、もしかしたらクロードさんがいれば……」

「うむ……」

ノーマンは考え事をしていた。
ジェシカはそれが3人が次の町に行くことの懸念ではないことを察した。

「どうかされましたか?」

「かなり前になるが、妙な噂を聞いた」

「妙な噂ですか?」

「ああ。とある町のギルドに、"六大英雄と同じ名前の人間"が現れたと」

「え?」

「それが、どの英雄の名前なのかはわからない。しかし何か……ただならぬことが起こりそうだ」

そのノーマンの言葉に息を呑むジェシカ。
ただならぬこと……それが何かはわからないが、西の森に強力な魔物が現れたことを合わせて考えた時、それはあながち間違いではないのではないか……
ジェシカはそう考えるのだった。
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