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本当の結末と
しおりを挟む早朝、ガイとメイアは宿の前で、1人の男と向き合う。
その男の名はクロード。
六大英雄の1人であると名乗ったが、ガイとメイアはそれを聞き、顔を見合わせ困惑する。
最初に口を開いたのはメイアだった。
「六大英雄に裏切り者がいたって、どういうことでしょうか?」
「メイア、真面目に聞き返すなよ。そんな話し信じられるか」
「確かに信じられないだろうな。今の時代の人間は、英雄がいたことすら、おとぎ話のように思ってる」
それはガイとメイア、どちらもそうだった。
魔王を倒した英雄のお話し。
だが、そもそも英雄や魔王はいたのか?
それすらも疑問であった。
最初から魔王なんておらず、魔物だけが存在する。
そんな世界と思えばシンプルだ。
「疑問に思ったことはないか?もし魔王が存在したとして、それが親なら、子である魔物はなぜ存在し続けているのか」
「……確かに」
メイアは過去に母から寝る前に聞いていた英雄の話を思い出していた。
そして、そこに感じた六大英雄のお話しの矛盾点。
"魔王は倒され、世界は平和になった"
六大英雄のお話しの結末だ。
だが、世界は魔物で溢れて、次々に生まれている。
それが何故なのか、誰も知らない。
ガイは、それでもクロードと名乗った青年を睨んだ。
「魔王なんていなかった。魔物は単独で生まれてる。ただ、それだけだろ」
「なら、魔物はどこから来たんだ?」
「そ、それは……わからない」
クロードは大きく息を吸うと、神妙な面持ちで口を開いた。
「僕たち六人は"魔王カリムス"を倒せなかった」
「……え?」
「どういうことだ……?」
「そのままの意味だ。魔王は生きてる」
ガイとメイアは息を呑む。
クロードの真剣な眼差しは、それが偽りでないことを表すが如くだった。
「何故、俺達にそんな話しをするんだ?俺達は駆け出しの冒険者だ」
「それは、君が低波動だからだ」
「は?」
ガイはバカにされていると思った。
目の前の男も自分のことを蔑むのかと、いたたまれない気持ちになっていた。
「勘違いしないでほしい。君には大きい使命がある」
「……意味がわからない」
「さっきも言ったが低波動は、その数値のぶんだけ特殊なスキルを構成できる。そのスキルが無ければ、僕達が使っていた武具は使えない」
「六大英雄の武具……それって、まさか……」
「"ロイヤル・フォース"だ」
ガイとメイアは絶句した。
それこそ、おとぎ話の代物。
この世界のどこかにあるとされる最強の武具だ。
「僕が使ってた武具は奪われてしまってね。それを取り返したいからロスト・ヴェローに行きたい。そして他の武具がある場所もわかってる」
「本当に存在するのか……そんなもの……」
「ああ。魔王を倒せる可能性があるとするなら、低波動の人間であり、武具で言えばロイヤル・フォースだけだ」
ガイが"ありえない"と言いかけた時、ギルドがある方向へ、冒険者達が走って向かって行く。
その表情は険しいものだった。
「何かあったのかしら?」
「行ってみるか」
ガイとメイア、クロードは会話を切り上げ、ギルドへと向かった。
____________
ギルドに入ると、この街に滞在している冒険者達が、依頼を張り出す掲示板の前に立っていた。
皆は険しい顔で、掲示板を見ており、パーティの仲間が集まったメンバーは話し合いを始めていた。
「一体どうしたんだ?」
「掲示板を見ればわかるだろう」
3人は掲示板の前に立つ人混みを掻き分けて、張り出された依頼を見る。
_________________
討伐任務
場所 西の森
討伐対象
ベーオーウルフ
魔物レベル8
賞金30000ゼク
達成できた場合、冒険者ランクを2つ昇格
_________________
この街において、ありえない魔物レベルだった。
レベルが4を超える魔物は、このカレア周辺には存在しないと思われていた。
しかも、この魔物のレベルは8。
これは、この世界で最高クラスの魔物レベルであり、Bランク冒険者パーティですらも死を覚悟しなければならないほどのレベルだった。
そして場所は西の森。
ガイとメイアは思い当たる節があった。
「ま、まさか……あの魔物なのか?」
「あの時の犬みたいな魔物かしら?」
「ほう。こいつに会って生きてるとは」
「え?」
「こいつは、僕でも少し時間が掛かるな。かなり素早いからね。……あ、いいこと思いついたぞ」
そう言うとクロードはニヤリと笑う。
その発言を聞いたガイとメイアは顔を見合わせる。
間髪入れず、クロードはその依頼が書かれた紙を掲示板から剥ぐと、カウンターへ持って行く。
受付はジェシカだった。
「あ、あのぉ……この依頼は辞めておいたほうが……それにクロードさん、パーティがいらっしゃらないのでは?」
「パーティならいるさ、後ろのガイとメイアだ」
「え?」
「え?」
ガイとメイアは言葉を失った。
さらに、他の冒険者達もクロードの行動に呆気に取られていた。
ここにいる冒険者達は、この依頼を受けるかどうかを迷っている。
それは自分達には無謀な依頼だということを重々承知してのことだ。
「え……ガイさんも、メイアさんも、クロードさんも、三人とも駆け出しの冒険者で"Fランク"なんですよ!?」
「構わないさ。すぐに戻ってきて、僕達はDランクに上がる。そして次の町に行く」
クロードとジェシカのやり取りを見ていた、1人の冒険者が受付へやってくる。
それは昨日、クロードにやられたスキンヘッドの大男だった。
「これは俺達、"ボーン・ブラッド"が受ける!」
「はぁ?君らが迷ってるから、僕達が行くって言ったんだけど?」
クロードはスキンヘッドを睨む。
その眼光に息を呑むスキンヘッド。
「依頼は早い者勝ちです。ボーン・ブラッドにこの依頼を受ける権利は、今、無くなりました」
「なんだと!?」
「また、恥をかきたいわけ?"髪無し君"」
「き、貴様……」
スキンヘッドのこめかみに血管が浮き出る。
クロードの胸ぐらを掴もうと手を伸ばすが、横からそれを止める者がいた。
それは背の低い白髪の老人だった。
「やめろ。わしのギルドで暴れるな。冒険者ランクを剥奪するぞ」
「ギ、ギルドマスター……ノーマン……」
そう呟くスキンヘッドは後ずさる。
カレアの町のギルドマスター、ノーマンはクロードを見た。
そして、不安な表情を浮かべるガイとメイアを見るとニヤリと笑った。
「貴様らのパーティ名は?」
「え?えーと……」
クロードは少し考え、ハッとしたように答えた。
完全に"今、この場で考えた"、そんな間だった。
「"ナイト・ガイ"だ」
「"ナイト・ガイ"だと?貴様、"ナイト"の意味をわかって言ってるのか?」
「わかってるさ」
ガイは自分の名前がパーティ名に使われたことで頬を赤らめるが、それ以上に"ナイト"の意味がわからず、気になった。
「"ナイト"はS級冒険者の三人しか持っていない称号だぞ。平民が唯一、王宮に入って王から直々に与えられる称号だ。そして、この国のお姫様との婚約条件の一つ」
「最近Sランクの一人は死んだろ?今のSクラスは二人だけ。それに、その二人はどちらも女だ。お姫様と婚約はできない」
「貴様……」
ノーマンは険しい表情で、目を細めてクロードを見た。
「ガイは"ナイト"になる男だ。その男がパーティ名に"ナイト"と付けても、なんの問題もあるまい」
それは冒険者であれば誰もが憧れ、夢に見ること。
その第一歩が、この依頼から始まっていることにガイは、まだ実感を持てずにいたのだった。
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