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土の国編
思わぬ来客(1)
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土の国 中央ザッサム
ダイアス家
マーシャは自室のベッドに寝ていた。
金髪ワンカールの褐色肌、その肌が目立つくらいの白いワンピースを着ている。
マーシャは緊張していた。
まさか自分の家にアインが来るというのだから気が気ではない。
「はぁ……」
マーシャはずっとこの調子だった。
一番の心配は母親であるイザベラがアインを気にいるかどうかだった。
さらにスペルシア家という大きい家柄なので大丈夫だろうとは思ったが、アインがイザベラという存在の重圧に耐えうるのかが心配だったのだ。
そんなことを色々考えていると全く眠れず、毎日、鏡で自分の顔を見るたびに目の下のクマが濃くなっていくことが、さらにマーシャを追い詰めた。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
「失礼致します」
ドアを開けて入ってきたのは執事のベンだった。
「お嬢様、お客様がお見えです」
「え、ええ。今行きます」
マーシャの心臓は張り裂けそうなくらい高鳴っていた。
まさか自分の屋敷に男性が来るとは。
さらに母親の心配もあってか、今の自分の感情がどういう状態なのかがよくわからなかった。
マーシャはそのまま屋敷の玄関へ赴いた。
____________
屋敷の玄関先、マーシャが外へ出るとそこには3人いた。
ダイアス家当主のイザベラと執事のベン。
そしてもう一人、客人と思われるその人物はマーシャが想像していた者とは違っていた。
青髪に少し銀が混ざり、大きい杖を持ったローブ姿の青年だった。
青年はニコニコしながらマーシャを見た。
「あ、あのどちら様でしょうか?」
困惑するマーシャはイザベラと青髪の青年を交互に見ていた。
そんなマーシャを見たイザベラは口を開いた。
「こちらは、水の国のリーゼ王だ」
「へ?」
マーシャの思考は全くついてきていない。
何せアインが来ると思っていたが、まさか来たのは水の国の王であるリーゼ。
一体どうなっているのかさっぱりわからなかった。
「突然の訪問、申し訳ありません。マーシャさんにお会いしたくて来てしまいました」
ニコニコしているリーゼのその言葉にさらに混乱するマーシャ。
なぜ水の国の王が、なんの階級も持たない一般の聖騎士に会いに来るのか。
「あ、あの、私に何か……」
「単刀直入に言いますが、あなたにシックス・ホルダーになってもらいたい」
「は、はい?」
マーシャの頭はパンク寸前だった。
いきなり王が会いにきたと思ったら、二つ名すら持たないマーシャにシックス・ホルダーになってもらいたいなんてありえない話しだった。
「あ、あの私は二つ名を持っていませんけど……」
「そうですね。なのでマーシャさんさえよければ、あなたの実力が見たい」
「へ?それは一体どういう……」
「私がここに来た理由です。私はあなたと戦いたい。もちろん非公式で」
その言葉を聞いたマーシャは絶句して固まってしまった。
王と戦うなんて常軌を逸している。
確かに聖騎士は魔法使いより何十倍も強いが、相手が王となれば話は別だった。
「無理にとは言いませんが……私にはわかる。あなたは遅かれ早かれシックス・ホルダーになります。ただそれが少し早まるだけだ」
リーゼの発言でイザベラもベンも驚いた。
ダイアス家からシックス・ホルダーが出たとなれば今後も家柄は安泰だ。
「もうすぐここに宝具が届く。私と戦って二つ名を手に入れシックス・ホルダーになるか、ここで断って普通の聖騎士として任務をこなすか……あなた次第です」
「私は……」
イザベラはマーシャの表情を見ていた。
次に出る言葉が気になっていたのだ。
これだけは親であろうと強制することではない。
「一つ……質問よろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「確か聖騎士の二つ名は三人いたはず……その三人ではなく、なぜ私が?」
「風の国のシックス・ホルダーの件は聞いてますか?」
マーシャは首を傾げた。
風の国にはシックス・ホルダーはいなかったというのがマーシャの認識だった。
「風の国で宝具が盗まれ、その奪還作戦で聖騎士一人と魔法使い一人が戦死した。どちらも土の国出身です」
「え……それってまさか……」
「エイベルとヴァイオレットです」
マーシャは衝撃を受け、そして涙した。
ノアール家、ペレス家とは交流があったのもそうだが、特にエイベルはマーシャにとって特別な存在だったからだ。
「そ、そんな……エイベル様が……」
「彼の功績は大きい。なにせこの国のあらゆるならず者を抑えてきた。まさに"鉄壁"でした。だが彼が死んだことで、この国の秩序が乱れ始めている」
「……」
「今の土の国には、その混乱を鎮めるほどの出来事が必要だ。それが、この国にシックス・ホルダーが誕生することだと私は思っています」
マーシャはリーゼの言葉に息を呑んだ。
まさか自分がそんな重大な出来事に巻き込まれてしまうとは想像もつかなかった。
「でも……なぜ私が……」
「そんなことは考えるだけ無駄ですよ。なにせ今いるシックス・ホルダーは全員、シックス・ホルダーになりたくてなったわけではない。あの大賢者シリウスでさえね」
「……え?」
「エリス副団長は聖騎士を引退した。ナナリー・ダークライトは最初からシックス・ホルダーにはならないと宣言している。そこで私は君しかいないと思ってここに来た。さぁ、どうしますか?決めるのはマーシャさん、君自身だ。……私と手合わせ願えますか?」
この突然の出来事で考える暇すらない状況にマーシャは目を閉じて深呼吸していた。
確かにこの国はエイベルがいた時ですら、かなり不安定な状態だった。
それが今エイベルが死んだことによって、さらに荒れはじめていると知れば、じっとはしていられない。
マーシャはゆっくり目を開けると、真剣な表情でリーゼの方を見る。
そして決意の表情で頷くのだった。
その表情と返答を見たリーゼは笑みを溢した。
マーシャは着替えのため自室へ。
リーゼとイザベラの2人は先にダイアス家の修練場へ向かった。
ダイアス家
マーシャは自室のベッドに寝ていた。
金髪ワンカールの褐色肌、その肌が目立つくらいの白いワンピースを着ている。
マーシャは緊張していた。
まさか自分の家にアインが来るというのだから気が気ではない。
「はぁ……」
マーシャはずっとこの調子だった。
一番の心配は母親であるイザベラがアインを気にいるかどうかだった。
さらにスペルシア家という大きい家柄なので大丈夫だろうとは思ったが、アインがイザベラという存在の重圧に耐えうるのかが心配だったのだ。
そんなことを色々考えていると全く眠れず、毎日、鏡で自分の顔を見るたびに目の下のクマが濃くなっていくことが、さらにマーシャを追い詰めた。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
「失礼致します」
ドアを開けて入ってきたのは執事のベンだった。
「お嬢様、お客様がお見えです」
「え、ええ。今行きます」
マーシャの心臓は張り裂けそうなくらい高鳴っていた。
まさか自分の屋敷に男性が来るとは。
さらに母親の心配もあってか、今の自分の感情がどういう状態なのかがよくわからなかった。
マーシャはそのまま屋敷の玄関へ赴いた。
____________
屋敷の玄関先、マーシャが外へ出るとそこには3人いた。
ダイアス家当主のイザベラと執事のベン。
そしてもう一人、客人と思われるその人物はマーシャが想像していた者とは違っていた。
青髪に少し銀が混ざり、大きい杖を持ったローブ姿の青年だった。
青年はニコニコしながらマーシャを見た。
「あ、あのどちら様でしょうか?」
困惑するマーシャはイザベラと青髪の青年を交互に見ていた。
そんなマーシャを見たイザベラは口を開いた。
「こちらは、水の国のリーゼ王だ」
「へ?」
マーシャの思考は全くついてきていない。
何せアインが来ると思っていたが、まさか来たのは水の国の王であるリーゼ。
一体どうなっているのかさっぱりわからなかった。
「突然の訪問、申し訳ありません。マーシャさんにお会いしたくて来てしまいました」
ニコニコしているリーゼのその言葉にさらに混乱するマーシャ。
なぜ水の国の王が、なんの階級も持たない一般の聖騎士に会いに来るのか。
「あ、あの、私に何か……」
「単刀直入に言いますが、あなたにシックス・ホルダーになってもらいたい」
「は、はい?」
マーシャの頭はパンク寸前だった。
いきなり王が会いにきたと思ったら、二つ名すら持たないマーシャにシックス・ホルダーになってもらいたいなんてありえない話しだった。
「あ、あの私は二つ名を持っていませんけど……」
「そうですね。なのでマーシャさんさえよければ、あなたの実力が見たい」
「へ?それは一体どういう……」
「私がここに来た理由です。私はあなたと戦いたい。もちろん非公式で」
その言葉を聞いたマーシャは絶句して固まってしまった。
王と戦うなんて常軌を逸している。
確かに聖騎士は魔法使いより何十倍も強いが、相手が王となれば話は別だった。
「無理にとは言いませんが……私にはわかる。あなたは遅かれ早かれシックス・ホルダーになります。ただそれが少し早まるだけだ」
リーゼの発言でイザベラもベンも驚いた。
ダイアス家からシックス・ホルダーが出たとなれば今後も家柄は安泰だ。
「もうすぐここに宝具が届く。私と戦って二つ名を手に入れシックス・ホルダーになるか、ここで断って普通の聖騎士として任務をこなすか……あなた次第です」
「私は……」
イザベラはマーシャの表情を見ていた。
次に出る言葉が気になっていたのだ。
これだけは親であろうと強制することではない。
「一つ……質問よろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「確か聖騎士の二つ名は三人いたはず……その三人ではなく、なぜ私が?」
「風の国のシックス・ホルダーの件は聞いてますか?」
マーシャは首を傾げた。
風の国にはシックス・ホルダーはいなかったというのがマーシャの認識だった。
「風の国で宝具が盗まれ、その奪還作戦で聖騎士一人と魔法使い一人が戦死した。どちらも土の国出身です」
「え……それってまさか……」
「エイベルとヴァイオレットです」
マーシャは衝撃を受け、そして涙した。
ノアール家、ペレス家とは交流があったのもそうだが、特にエイベルはマーシャにとって特別な存在だったからだ。
「そ、そんな……エイベル様が……」
「彼の功績は大きい。なにせこの国のあらゆるならず者を抑えてきた。まさに"鉄壁"でした。だが彼が死んだことで、この国の秩序が乱れ始めている」
「……」
「今の土の国には、その混乱を鎮めるほどの出来事が必要だ。それが、この国にシックス・ホルダーが誕生することだと私は思っています」
マーシャはリーゼの言葉に息を呑んだ。
まさか自分がそんな重大な出来事に巻き込まれてしまうとは想像もつかなかった。
「でも……なぜ私が……」
「そんなことは考えるだけ無駄ですよ。なにせ今いるシックス・ホルダーは全員、シックス・ホルダーになりたくてなったわけではない。あの大賢者シリウスでさえね」
「……え?」
「エリス副団長は聖騎士を引退した。ナナリー・ダークライトは最初からシックス・ホルダーにはならないと宣言している。そこで私は君しかいないと思ってここに来た。さぁ、どうしますか?決めるのはマーシャさん、君自身だ。……私と手合わせ願えますか?」
この突然の出来事で考える暇すらない状況にマーシャは目を閉じて深呼吸していた。
確かにこの国はエイベルがいた時ですら、かなり不安定な状態だった。
それが今エイベルが死んだことによって、さらに荒れはじめていると知れば、じっとはしていられない。
マーシャはゆっくり目を開けると、真剣な表情でリーゼの方を見る。
そして決意の表情で頷くのだった。
その表情と返答を見たリーゼは笑みを溢した。
マーシャは着替えのため自室へ。
リーゼとイザベラの2人は先にダイアス家の修練場へ向かった。
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