地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ

文字の大きさ
46 / 200
魔法学校編

リベンジマッチ(1)

しおりを挟む
闘技場

アイン、マーシャチームとマルティーナ、トビーチームの試合が終わり二つ目の準決勝がおこなわれようとしていた。

闘技場内は先ほど同様、沸き立っていた。
中央にはアルフィスとアゲハが立つ。
そして遅れて対戦相手がやってきた。

リナ・ロックハートとロイ・フォーナー。
リナは相変わらずゴーグルを首に下げ、二本のショートソードを持っている。
上半身には軽装の鎧を纏い、ニヤニヤしながらアルフィス達を見ていた。
ロイも相変わらずの大きな杖を持ち、やる気なさそうな顔だった。

中央には教官が立ちコイントスの準備に入っている。

「おいおい、二刀流にしたのか?」

アルフィスが小馬鹿にした口調でリナを煽る。
リナはニヤニヤしながら答えた。

「前にあなたと戦った後、授業で剣を抜いたら折れてたわ。流石にまたああなると困るから予備よ」

リナは余裕の表情だが、その警戒心は異常だった。
まさかエンブレムで解除したはずの魔法で剣が折れるとは思ってもみなかったのだ。

「あなた……まさかあの女、セレン・セレスティーから二つ名をもらうなんて。あの女が魔法使いに二つ名を与えたことは無かったはず。買収でもしたのかしら?」

挑発のつもりでリナは言っているだろうとアルフィスは思ったが、以前にもノアに同様のことを言われていたのでさほど血はのぼらなかった。

「一人で魔人を倒しただけさ、大したことはしてねぇよ」

「信じ難い話しだけど、授業で習うよりも魔人がさほど強くは無いと仮定すれば納得はいくわね」

「ここを出たら戦ってみるといい、なかなか面白いつらしてたぜ」

アルフィスとリナの煽り合いにアゲハとロイはなかば呆れ、恐らくこの二人は似たもの同士なのだろうと感じていた。

教官が二人の煽り合いを止め、距離を取るように促すとチーム同士、距離は15メートルほど離れる。
開始の合図であるコイントスをおこなうようだ。

「前より連携が取れてるといいけど」

「今度こそ生きて帰れると思うなよ」

それでも煽り合う二人を無視して教官はコイントス準備に入り、勢いよく指で弾く。

コインは高く上がり地面に落ちる。

「複合魔法!」

コインが落ちた瞬間に前衛のアルフィスが魔法を発動する。
アルフィスが立つ場所に魔法陣が展開され、それが消えたと同時にアルフィスも消える。

「またそれね。エンブレム」

リナはすぐさまエンブレムを発動し、アルフィスの攻撃に備える。

「ウィンドカッター」

……と思いきや、リナはすぐにバックステップし、その頭上を風の刃が通る。
確実にアルフィスは目の前に現れることを先読みしての行動だった。

「エンブレム・完全形状変化シェイプ・チェンジ!」

だがアルフィスは姿を現さず、目の前にいるのはアゲハだけだった。
アゲハは右肩に羽織る半透明のエンブレム・マントをなびかせ、時計回りに回転して風の刃を消した。

「まさか完全形状変化ができるなんて……」

驚愕しているリナへと向かうアゲハ。
ロイはアゲハのエンブレム範囲外の左側へ、風の魔法で瞬時に移動していた。

リナはアゲハの突進にショートソードを左肩へ横一線に振り対応しようとした。
もし前回同様に柄頭で弾かれても、ロイがすぐさま援護できる体制をとっている。

だがリナの考えはすぐに崩れることになる。
アゲハの左方向に姿を現したアルフィスが右アッパーでリナのショートソードを弾いたのだ。
アルフィスの魔法は解除される。

「あんた一体どこにいたのよ!!」

仰反るリナはもう冷静さを失っていた。
横から風の刃が飛んでくるが、アルフィスがすぐさま動いた。

「複合魔法」

ファイアマジックガードを重ね掛けし、右の回し蹴りでそれを掻き消す。
アゲハの左側に立つアルフィスの距離が近くアゲハは抜刀できないが、その対策は立てられていた。

「天覇一刀流・空塵!」

アゲハは親指に力を込め思い切り鍔を弾く。
エンブレムで強化された肉体から放たれた空塵はリナのみずおち付近へ直撃する。
その反動で刀は鞘へ帰る。

「がはっ!」

リナは腹を抑えて苦悶の表情を浮かべた。
そこにアルフィスが追撃に入ろうとリナめがけてダッシュした。

その瞬間だった。
凄まじい爆風が辺りを覆い始め、砂埃が舞う。
それは砂嵐と言っても差し支えないほどだ。
ちょうどそれは円形状に天井まで舞い上がり、アルフィス、アゲハ、リナを覆っている。
観客席からは三人の姿は全く見えない状態だった。

「くっそ!なんだこの砂嵐は前が見えねぇ!」

「アルフィス、落ち着いて下さい。ロイの魔法でしょう。しかし、ここまで広範囲だとエンブレムでも消しきれない」

二人は目を細める。
リナを完全に見失ってしまった。
何も見えない中でリナの声が聞こえてくる。

「いい連携だったけど遊びはここまで。この"ウィンド・ウォール"の戦略を出した以上は、ここで終わらせる」

リナが薄らと数メートル先に現れる。
アルフィス達は薄目でリナの顔を見るとゴーグルをし、口にはフェイスタオルを巻いてあった。

そしてリナは二本目のショートソードを構えアルフィスへと迫った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

処理中です...