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魔法学校編

手紙

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"ダイアス家の呪われた子"とは一体どういう意味なのか?
アインはトッドから一方的にマーシャとのバディを解消しろとの言葉に納得できずにいた。
そもそも昨日組んで、今日解散なんて、酷すぎる話しだ。

「呪われてる?どういうことだよそれ!」

教室に響き渡るアインの声に、他の生徒達も反応する。
まじまじとは見ないものの明らかに皆、神経をこちらに向けていた。

「とにかく今日学校が終わってからでもいいから断ってきた方がいい」

「なんでいきなり……確かに、本人は"ちょっと変"とは言ってたけど……」

トッドはその言葉に眉を顰める。
今までアインとは口喧嘩なんてしたことはないが、ことが事であるため仕方ないとため息混じりに語り出す。

「ちょっと?……その"ちょっと"で、実の母親と姉を半殺しにするか?姉の方はまだ歩けないって聞いてるぞ」

「え……?何かの間違いじゃないのか……?」

アインはマーシャがそんな事をするような子には見えなかったため困惑する。
そんなアインに構わずトッドは続ける。

「ダイアス家はノアール家と争えるくらい剣の達人が多い。その中でもマーシャの母親は飛び抜けてて、その当時はいなかったセントラルのシックスホルダー候補だった。それを倒すくらいだから剣の腕は確かだろうけど、性格に問題があるんだろ」

「……」

「とにかく今日中に話しをつけてきたほうがいい。バディ探しなら手伝うからさ」

土の国は剣士が強いと言われている。
その中でもダイアス家とノアール家は別格な強さで、他国からも恐れられていた。
しかもマーシャの母親は聖騎士団長ノア・ノアールが持つ宝具の使い手候補だったのだ。
それを倒す技量なら、騎士団長にも匹敵する強さということになる。

だが、強さはさておきとしても、マーシャの優しい笑顔や素振りを見ていたが母親や姉にそんなことをするようには見えない。

これは真相を確かめる以外ないとアインは放課後に聖騎士学校の校門前で待つことにした。


______________________


聖騎士学校校門前


アインが緊張しながら聖騎士学校校門前で待つ。
女子が多くて目のやり場に困っていたが、見ないことにはマーシャを見つけられない。
異様に視線を感じることに不安は覚えるが、それでもアインは勇気を出して校門の先を見つめていた。

「あら、アイン君じゃないですか」

トタトタと走って近づいてきたのは、トッドのバディのメル・カルデアだった。

「どうしたんですか?」

「ああ、マーシャ・ダイアスさんを待ってるんだ」

メルはトッドと違い、マーシャの名前を聞いても何の反応もない。
メルは風の国出身というのもあるのかもしれないとアインは思った。

「マーシャちゃんは同じクラスです!あ、来たきた!」

マーシャがアインとメルに気づくと、ペコペコ頭を下げて、トコトコと走ってきた。

「マーシャさん、昨日はどうも」

「アインさん、昨日はどうも」

声がハモる。
目を合わせない二人の顔は少し熱を帯びていた。
メルはその姿を見て、バディを組んだんだなと察してニヤけ顔になる。

「私はお邪魔みたいね、じゃまた明日!」

メルが手を振りその場をそそくさと退場するが、二人には手を振る余裕なんてなかった。

「あの、今日は少しお聞きしたいことがあって」

「……はい」

二人は学校の中庭に移動する。
夕日に照らされる中庭には生徒はおらず、完全にアインとマーシャの空間だった。
中庭の端にある二人掛けのベンチに座り、少し沈黙があったが、マーシャが口を開く。

「家のことを聞いたんですよね……」

アインの神妙な面持ちにマーシャは察していた。

「うん。友達から聞いたんだ。お母さんとお姉さんの話し……それは本当なの?」

「……本当です。私、ちょっと変なんです」

「どういうこと?」

「……今日、色々考えてました。昨日アインさんから妹さんを助けたいって話を聞いて、やっぱり私とじゃダメだなって……」

マーシャは俯き涙を見せていた。
答えになっていない返答で、アインは困惑する。
なにか一体どう変なのかが気になった。

「ごめんなさい……」

そう言って、マーシャは席を立ち、走って行ってしまった。
アインも席を立つが追いかけることも出来ずにただその場に立っていることしかできなかった。


夜 魔法学校寮
アインの部屋


アインはベッドに寝ながら考えていた。
これからどうしようかと。
いつもの自分なら仕方ない、また探そうと心の切り替えに頑張るが、今回はそうもいかない。
なにせアインはマーシャの事が気になっていたからだ。
気づけばマーシャの事を考えている。
この気持ちが一体なんなのか、この時のアインにはわからなかった。

「よし!決めた!」

アインはベッドから起き上がり、自室の机へ向かう。
一枚の紙に筆を走らせ思いをつづる。
思いの外、筆が乗ってしまった文章はもはやラブレターだった。

"週末、あのカフェで待ってます"

そう最後に綴り手紙を出した。
アインは緊張感とはまた違う、興奮にも似た感情に戸惑いつつも、週末を待った。
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