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第四十四話 殿下のねぎらい
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国王陛下と王妃殿下との謁見を終え、わたしは殿下と一緒に執務室に戻った。
そして、テーブルの前に、殿下と向き合って座った。
執事がいれてくれた紅茶がテ-ブルに置かれている。
「お疲れ様でした。これで、あなたはこの王国の役職につくことができ、王宮に住むことができるようになりました。わたしとしてもうれしいです」
「こちらこそ。殿下に救われなかったら、今頃、どうなっていたか想像もつきません。ここまで配慮していただき、ありがとうございました。」
「いや、わたしはたいしたことはしていません」
「そんなことはないです。賊からわたしを救けてくださっただけでも十分すごいことなのに、わたしを殿下のアドバイザーにしていただき、王宮に住むことまでさせてくださる。これほどのことをしていただけるのは、とてもすごいことですし、ありがたいことです」
「わたしはただ、自分のすべきことをしただけです。すごいだなんて、そんな……」
恥ずかしそうにする殿下。
普通だったら、もう少し自分の功績を誇らしげに言いそうな気がする。
しかし、殿下は、決して自分のことを誇らない。
わたしはそんな殿下に心が傾いていく。
殿下は、紅茶を飲んだ後、続ける。
「あなたの方こそすごいと思います。あなたの国内経営についての意見を聞いて、わたしは感動しました。そして、絶対に、わたしのアドバイザーになってほしいと思ったのです。そうすれば、きっと王国は豊かになると思いました。さらにすごいと思ったのは、お父上やお母上の前で全く動ぜずに意見を言ったことです。大臣のほとんどは、あの厳しい表情を向けられると、冷静さを失ってしまいます。萎縮してしまって、意見の半分もいえないのです。わたしも、意見が言いにくい時があるのです。でもあなたにはそういうところがない。すごいことだと思います」
「いや、全然たいしたことはありません。わたしなんて」
「自分を誇らない。そういうところも素敵だと思います。わたしはそういうあなたがいいと思っています」
殿下は少し顔を赤くしながら言う。
もしかして、これはわたしのことを「好き」だと言っているのだろうか?
そうだとしたら、どう対応したらいいのだろう。
わたしは殿下に恋をし始めている。
でもまだ心の準備ができていないところがある。
どうすればいいんだろう。
いや、殿下は、
「あなたがいいと思っています」
と言っただけだ。それ以上のことは言っていない。
「好き」と言ったわけではない。
冷静にならなければ。
そう思っていると、
「それでは、そろそろ、これから住むことになる部屋に案内しないといけませんね。もう夜も遅くなってきましたので」
と殿下は言った。
わたしは、少し残念な気持ちになる。
あと一歩進んで、
「あなたのことが好き」
と言ってほしかった。
殿下は執事を呼び、
「侍女のリデーヌさんを呼んで、フローラリンデさんを部屋まで案内させてください」
と言った。
「かしこまりました」
執事は、部屋から出て少しした後、女性を連れて戻ってきた。
なかなかの美人だ。
「紹介します。これからあなたの世話をしてもらう侍女のリデーヌさんです。よろしくお願いします」
わたしのお世話をする女性? わたしはここに来たばかりなのに、そういう人をつけてもらっていいのだろうか?
そういう気持ちがする。
そして、テーブルの前に、殿下と向き合って座った。
執事がいれてくれた紅茶がテ-ブルに置かれている。
「お疲れ様でした。これで、あなたはこの王国の役職につくことができ、王宮に住むことができるようになりました。わたしとしてもうれしいです」
「こちらこそ。殿下に救われなかったら、今頃、どうなっていたか想像もつきません。ここまで配慮していただき、ありがとうございました。」
「いや、わたしはたいしたことはしていません」
「そんなことはないです。賊からわたしを救けてくださっただけでも十分すごいことなのに、わたしを殿下のアドバイザーにしていただき、王宮に住むことまでさせてくださる。これほどのことをしていただけるのは、とてもすごいことですし、ありがたいことです」
「わたしはただ、自分のすべきことをしただけです。すごいだなんて、そんな……」
恥ずかしそうにする殿下。
普通だったら、もう少し自分の功績を誇らしげに言いそうな気がする。
しかし、殿下は、決して自分のことを誇らない。
わたしはそんな殿下に心が傾いていく。
殿下は、紅茶を飲んだ後、続ける。
「あなたの方こそすごいと思います。あなたの国内経営についての意見を聞いて、わたしは感動しました。そして、絶対に、わたしのアドバイザーになってほしいと思ったのです。そうすれば、きっと王国は豊かになると思いました。さらにすごいと思ったのは、お父上やお母上の前で全く動ぜずに意見を言ったことです。大臣のほとんどは、あの厳しい表情を向けられると、冷静さを失ってしまいます。萎縮してしまって、意見の半分もいえないのです。わたしも、意見が言いにくい時があるのです。でもあなたにはそういうところがない。すごいことだと思います」
「いや、全然たいしたことはありません。わたしなんて」
「自分を誇らない。そういうところも素敵だと思います。わたしはそういうあなたがいいと思っています」
殿下は少し顔を赤くしながら言う。
もしかして、これはわたしのことを「好き」だと言っているのだろうか?
そうだとしたら、どう対応したらいいのだろう。
わたしは殿下に恋をし始めている。
でもまだ心の準備ができていないところがある。
どうすればいいんだろう。
いや、殿下は、
「あなたがいいと思っています」
と言っただけだ。それ以上のことは言っていない。
「好き」と言ったわけではない。
冷静にならなければ。
そう思っていると、
「それでは、そろそろ、これから住むことになる部屋に案内しないといけませんね。もう夜も遅くなってきましたので」
と殿下は言った。
わたしは、少し残念な気持ちになる。
あと一歩進んで、
「あなたのことが好き」
と言ってほしかった。
殿下は執事を呼び、
「侍女のリデーヌさんを呼んで、フローラリンデさんを部屋まで案内させてください」
と言った。
「かしこまりました」
執事は、部屋から出て少しした後、女性を連れて戻ってきた。
なかなかの美人だ。
「紹介します。これからあなたの世話をしてもらう侍女のリデーヌさんです。よろしくお願いします」
わたしのお世話をする女性? わたしはここに来たばかりなのに、そういう人をつけてもらっていいのだろうか?
そういう気持ちがする。
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