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第四十話 殿下とわたし

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「でもおにいさまは、この方に好意を持っておられるのでしょう?」

いたずらっぽく言うラディアーヌ様

「それは、好意を持っていますが……」

殿下が恥ずかしそうに言うと、ラディアーヌ様はわたしの方を向く。

「フローラリンデさんは、殿下のことが好きですか?」

いきなり聞いてきた。

「好き」っていいたいところだけど……。

わたしは、ますます恥ずかしい気持ちになる。

「素敵な人だと思います」

そういうのがやっと。

「おにいさま、フローラリンデさんもおにいさまのことが好きだそうですよ」

ラディアーヌ様は、うれしそうに言う。

「いや、わたしのことを褒めていただいただけです。それほどの人間ではないのに、褒めていただいたのはありがたいです。でも「好き」とは違うと思います」

「またおにいさまったら。鈍いですよね。もう少し女心を理解した方がいいですよ」

「うーん、そんなにわたしって、鈍い男なんでしょうか……」

「せっかくのチャンス、ものにした方がいいですよ」

ラディアーヌさんにそう言われて、殿下は、

「そうは言われても……」

と言って、顔をますます赤くしていく。

「フローラリンデさんも、もっとアプローチしてくださいね。おにいさまは今まで女性とお付き合いをしたことがありません。恋人になるなら、今がチャンスですよ」

今度は、わたしに対して、ラディアーヌ様はいたずらっぽい笑顔を向けてくる。

殿下の恋人。

あこがれではあるけれど……。

「わたしは貴族ではないので、殿下にふさわしくないと思っています」

わたしがそう言うと、

「何を言っているんですか。好きだったら身分の差ぐらい乗り越えられると思います」

とラディアーヌ様は言う。

「でも身分の差がなくても、殿下と釣り合うとは思えなくて」

「もしそうなら、これから努力をしていけばいいと思います。でもおにいさまが一緒に仕事をしたいと思うほどの方ですから、おにいさまの恋人になるのにふさわしい方だと思っています」

「そう言ってくださるとありがたいです」

「おにいさまも、フローラリンデさんにもっと好きになってもらえるように、努力した方がいいですよ」

「お気づかいありがとうございます」

殿下は恥ずかしそうにそう言うと、

「そろそろフローラリンデさんは、お二人のところにいかなくてはいけない。このドレスを使わせてもらうけど、いいですね」

とラディアーヌ様に言った。

「もちろんです。使ってください」

「ではお願いします。わたしは少しの間、席を外しますので、ここで着替えてください」

「わかりました。ありがとうございます」

わたしが言った後、殿下は、部屋の外に出て行った。

「それでは着替えましょう」

「では着替えさせていただきます」

わたしはラディアーヌ様のドレスに着替えた。

「わたしはそれほど豪華なドレスを持っていませんので、気に入っていただけるかどうかはわかりませんが」

「いいえ、これでも十分すぎるぐらいです。ありがとうございます」

今まで着ていた服に比べたら雲泥の差。

子爵家では、わたしが少しでも華やかな服を着ていると、継母にいつも嫌味を言われたので、なるべく質素な服を着ていたわたし。

それが心の傷となって、いつしか華やかな装いをすること自体を敬遠するようになった。
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