40 / 84
第四十話 殿下とわたし
しおりを挟む
「でもおにいさまは、この方に好意を持っておられるのでしょう?」
いたずらっぽく言うラディアーヌ様
「それは、好意を持っていますが……」
殿下が恥ずかしそうに言うと、ラディアーヌ様はわたしの方を向く。
「フローラリンデさんは、殿下のことが好きですか?」
いきなり聞いてきた。
「好き」っていいたいところだけど……。
わたしは、ますます恥ずかしい気持ちになる。
「素敵な人だと思います」
そういうのがやっと。
「おにいさま、フローラリンデさんもおにいさまのことが好きだそうですよ」
ラディアーヌ様は、うれしそうに言う。
「いや、わたしのことを褒めていただいただけです。それほどの人間ではないのに、褒めていただいたのはありがたいです。でも「好き」とは違うと思います」
「またおにいさまったら。鈍いですよね。もう少し女心を理解した方がいいですよ」
「うーん、そんなにわたしって、鈍い男なんでしょうか……」
「せっかくのチャンス、ものにした方がいいですよ」
ラディアーヌさんにそう言われて、殿下は、
「そうは言われても……」
と言って、顔をますます赤くしていく。
「フローラリンデさんも、もっとアプローチしてくださいね。おにいさまは今まで女性とお付き合いをしたことがありません。恋人になるなら、今がチャンスですよ」
今度は、わたしに対して、ラディアーヌ様はいたずらっぽい笑顔を向けてくる。
殿下の恋人。
あこがれではあるけれど……。
「わたしは貴族ではないので、殿下にふさわしくないと思っています」
わたしがそう言うと、
「何を言っているんですか。好きだったら身分の差ぐらい乗り越えられると思います」
とラディアーヌ様は言う。
「でも身分の差がなくても、殿下と釣り合うとは思えなくて」
「もしそうなら、これから努力をしていけばいいと思います。でもおにいさまが一緒に仕事をしたいと思うほどの方ですから、おにいさまの恋人になるのにふさわしい方だと思っています」
「そう言ってくださるとありがたいです」
「おにいさまも、フローラリンデさんにもっと好きになってもらえるように、努力した方がいいですよ」
「お気づかいありがとうございます」
殿下は恥ずかしそうにそう言うと、
「そろそろフローラリンデさんは、お二人のところにいかなくてはいけない。このドレスを使わせてもらうけど、いいですね」
とラディアーヌ様に言った。
「もちろんです。使ってください」
「ではお願いします。わたしは少しの間、席を外しますので、ここで着替えてください」
「わかりました。ありがとうございます」
わたしが言った後、殿下は、部屋の外に出て行った。
「それでは着替えましょう」
「では着替えさせていただきます」
わたしはラディアーヌ様のドレスに着替えた。
「わたしはそれほど豪華なドレスを持っていませんので、気に入っていただけるかどうかはわかりませんが」
「いいえ、これでも十分すぎるぐらいです。ありがとうございます」
今まで着ていた服に比べたら雲泥の差。
子爵家では、わたしが少しでも華やかな服を着ていると、継母にいつも嫌味を言われたので、なるべく質素な服を着ていたわたし。
それが心の傷となって、いつしか華やかな装いをすること自体を敬遠するようになった。
いたずらっぽく言うラディアーヌ様
「それは、好意を持っていますが……」
殿下が恥ずかしそうに言うと、ラディアーヌ様はわたしの方を向く。
「フローラリンデさんは、殿下のことが好きですか?」
いきなり聞いてきた。
「好き」っていいたいところだけど……。
わたしは、ますます恥ずかしい気持ちになる。
「素敵な人だと思います」
そういうのがやっと。
「おにいさま、フローラリンデさんもおにいさまのことが好きだそうですよ」
ラディアーヌ様は、うれしそうに言う。
「いや、わたしのことを褒めていただいただけです。それほどの人間ではないのに、褒めていただいたのはありがたいです。でも「好き」とは違うと思います」
「またおにいさまったら。鈍いですよね。もう少し女心を理解した方がいいですよ」
「うーん、そんなにわたしって、鈍い男なんでしょうか……」
「せっかくのチャンス、ものにした方がいいですよ」
ラディアーヌさんにそう言われて、殿下は、
「そうは言われても……」
と言って、顔をますます赤くしていく。
「フローラリンデさんも、もっとアプローチしてくださいね。おにいさまは今まで女性とお付き合いをしたことがありません。恋人になるなら、今がチャンスですよ」
今度は、わたしに対して、ラディアーヌ様はいたずらっぽい笑顔を向けてくる。
殿下の恋人。
あこがれではあるけれど……。
「わたしは貴族ではないので、殿下にふさわしくないと思っています」
わたしがそう言うと、
「何を言っているんですか。好きだったら身分の差ぐらい乗り越えられると思います」
とラディアーヌ様は言う。
「でも身分の差がなくても、殿下と釣り合うとは思えなくて」
「もしそうなら、これから努力をしていけばいいと思います。でもおにいさまが一緒に仕事をしたいと思うほどの方ですから、おにいさまの恋人になるのにふさわしい方だと思っています」
「そう言ってくださるとありがたいです」
「おにいさまも、フローラリンデさんにもっと好きになってもらえるように、努力した方がいいですよ」
「お気づかいありがとうございます」
殿下は恥ずかしそうにそう言うと、
「そろそろフローラリンデさんは、お二人のところにいかなくてはいけない。このドレスを使わせてもらうけど、いいですね」
とラディアーヌ様に言った。
「もちろんです。使ってください」
「ではお願いします。わたしは少しの間、席を外しますので、ここで着替えてください」
「わかりました。ありがとうございます」
わたしが言った後、殿下は、部屋の外に出て行った。
「それでは着替えましょう」
「では着替えさせていただきます」
わたしはラディアーヌ様のドレスに着替えた。
「わたしはそれほど豪華なドレスを持っていませんので、気に入っていただけるかどうかはわかりませんが」
「いいえ、これでも十分すぎるぐらいです。ありがとうございます」
今まで着ていた服に比べたら雲泥の差。
子爵家では、わたしが少しでも華やかな服を着ていると、継母にいつも嫌味を言われたので、なるべく質素な服を着ていたわたし。
それが心の傷となって、いつしか華やかな装いをすること自体を敬遠するようになった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる